2012/01/31

独断的映画感想文:岳 -ガク-

日記:2012年1月某日
映画「岳 -ガク-」を見る.7
2010年.監督:片山修.
出演:小栗旬(島崎三歩),長澤まさみ(椎名久美),佐々木蔵之介(野田正人),石田卓也(阿久津敏夫),矢柴俊博(座間洋平),やべきょうすけ(安藤俊一),浜田学(関勇),鈴之助(守屋鉄志),尾上寛之(遭難する青年),波岡一喜(三歩の親友),森廉(青木誠),ベンガル(遭難者の父),宇梶剛士(横井修治),小林海人(横井ナオタ),光石研(梶一郎),中越典子(梶陽子),石黒賢(椎名恭三),市毛良枝(谷村文子),渡部篤郎(牧英紀).
島崎三歩は北アルプスの山小屋を根城にする「山バカ」,北部警察署山岳救助隊のボランティアとしてその素晴らしい力量を発揮する.
一方,北部警察署山岳救助隊に新たに配属された椎名久美は,人一倍の遭難救助への心を持ちながらなかなか結果に繋がらない.3
久美は三歩に現場の実際を教えられながら,次第に救助隊に溶けこんでいく….
と書くと新人失敗物語に聞こえるが,この映画はなかなかにシビアな遭難と山岳救助の実態を描く.
救助隊員の背中で遭難者が息を引き取る瞬間や,死者と生存者の峻烈な仕分け等印象深い場面が続く.
ところで僕はこの映画は殆ど予備知識無しで見た.この島崎三歩という素っ頓狂な山バカを演じているのは,ネプチューンのほりけんだと思ったし,椎名久美は長澤まさみに似ている演技派の女優が演じているのだと思って見ていた.
アイドル系の小栗旬と長澤まさみが主演だとは,嬉しい驚きである.
物語は上に述べた様にかなりシビアな山岳救助の物語である.山岳映画としての水準は高く,撮影は相当困難だったことがうかがえる.
もっとも物語は主人公三歩の現実離れした不死身ぶりと言い,主人公二人が凍傷も負わずに無事生還するところと言い,どうも漫画チックで隙がある(と思ったら原作は本当に漫画なんですってね.ものを知らないで申し訳ない).6
とは言え,映画の面白さ,映像の美しさに引っ張られ最後まで一気に見た.音楽もなかなか良い.
見て損はない映画.
★★★★(★5個が満点)
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2012/01/28

独断的映画感想文:パイレーツ・オブ・カリビアン/生命(いのち)の泉

日記:2012年1月某日
映画「パイレーツ・オブ・カリビアン/生命(いのち)の泉」を見る.4
2011年.監督:ロブ・マーシャル.
出演:ジョニー・デップ(ジャック・スパロウ),ペネロペ・クルス(アンジェリカ),ジェフリー・ラッシュ(バルボッサ),イアン・マクシェーン(黒ひげ),サム・クラフリン(フィリップ),アストリッド・ベルジュ=フリスベ(シレーナ),ケヴィン・R・マクナリー(ギブス),キース・リチャーズ(ティーグ・スパロウ),スティーヴン・グレアム(スクラム),グレッグ・エリス(グローブス),リチャード・グリフィス(ジョージ王),ジュディ・デンチ(上流階級の婦人),ジェマ・ウォード(人魚(1)),クリストファー・フェアバンク(エゼキエル).
相棒ギブスが捕まりロンドンで裁判にかけられるというので,ジャックは判事に変装,ギブス救出に奔走するが,ジャックも結局捕まって国王ジョージと会う.9_2
ジャックが船員を募集して「生命の泉」探索の旅に出るという噂があるらしく,今や国王の臣下となった仇敵バルボッサが現れて「生命の泉」の有りかを問い質す.
ジャックは辛くも脱出,彼の名をかたって船員を募集している人物を突き止めると,何とそれはかっての恋人女海賊のアンジェリカであった.
彼女は父である悪名高い海賊「黒ヒゲ」の命を救うべく,生命の泉を見つけようとジャックを拉致する.一方バルボッサ率いる英国船,スペイン艦隊も共に生命の泉を目指すが,生命の泉で生命を救うには,泉の水の他に伝説の海賊船ポン・セデ・レオン号にある聖杯,ホワイトキャップ湾に住む人魚の涙が必要なのだ.
黒ヒゲとバルボッサは共にホワイトキャップ湾を目指し船を進めるが….
シリーズ4作目は,今までのややこしい人間関係や経緯が単純明解にされ,ジャックが本来のアホかしこのキャラクターを取り戻して大活躍,痛快なエンタテインメントとなった.
シリーズものの弊害はとにかく話が複雑になって登場人物がやたら増えること,今回思い切って今までのキャラクターの大半を捨て去った英断は評価されるべきであろう.1_2
お陰でおじさんも安心して最後までアハアハと笑って映画を見ることが出来たのは,実にめでたい.
今回は黒ヒゲとその娘アンジェリカ対ジャックのあの手この手を尽くした闘いに加え,英国海軍を従えたバルボッサ,更にいざとなると出現して事態を単純に悪化させるスペイン軍という構成が,活劇をスリリングにしてなかなかに楽しい.
今回惜しかったのは海賊船同士の闘いのシーンが無かった点であるが,ラストでジャックがブラックパール号を再度ものにしそうな気配があり,次回が楽しみである.
★★★★(★5個が満点)
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独断的映画感想文:アレクサンドリア

日記:2012年1月某日
映画「アレクサンドリア」を見る.1
2009年.監督:アレハンドロ・アメナーバル.
出演:レイチェル・ワイズ(ヒュパティア),マックス・ミンゲラ(ダオス),オスカー・アイザック(オレステス),マイケル・ロンズデール(テオン),サミ・サミール(キュリロス),アシュラフ・バルフム(アンモニオス).ルパート・エヴァンス(シュネシオス),ホマユン・エルシャディ(アスパシウス),オシュリ・コーエン(メドルス).
4世紀のアレクサンドリア,図書館長の一人娘ヒュパティアは,学生に自然哲学を講義する美貌の学者である.
異なる宗教を信じる学生達を分け隔てなく扱い,自分の奴隷のダオスにも講義への参加を許す彼女は,ひたすら学問に打ち込み男性からの求婚も断っていた.
折しもアレクサンドリアではキリスト教徒が勢いを増し,ユダヤ教徒と連合した彼らは,図書館に依る古代神を信奉する学者・上流階級と衝突,遂に図書館は彼らに奪われ集積された書籍はことごとく灰燼に帰した.
その後ヒュパティアは自邸で研究を重ね,教え子達は形式的にキリスト教徒に改宗して政府の要職に就いていた.
勢力の伸張を狙うキリスト教徒はユダヤ教徒を殺戮,更に政府の実権を握ろうと,司令官オレステスの師であるヒュパティアに魔手を伸ばす….
ヒュパティアは実在の学者で,キリスト教徒に惨殺された.
この映画で描かれるキリスト教はまさに邪教で,彼らのために人類の科学は1200年停滞したとまで映画は述べている(映画では,ケプラーの惑星公転周期に関する法則を,ヒュパティアが見いだしかけていたことが示唆されている).3
アメナーバル監督はよくまあここまでキリスト教を悪し様に描いたものである.
日本で特定の宗教を題材にこういう映画を撮ること自体考えられないであろう.
悲運の女性ヒュパティアを演じるレイチェル・ワイズが美しく魅力的.また,彼女の学生で彼女に求婚もしたオレステスの人物像も魅力がある.
ヒュパティアに憧れ,彼女に解放された後,キリスト教徒に転じる奴隷のダオスの運命も印象に残る.
映画は,宇宙から俯瞰した地球,更にその地中海南岸のアレクサンドリアの映像をしばしば挿入し,天文学に没頭するヒュパティアと併せて,宗教を巡って古都アレクサンドリアで殺し合う人間達と対比させている.今に繋がる人間の愚かさとして無常感を感じざるを得ない.2
もっと若い時に見たら別な感想を持ったかも知れないが,今見るこの映画には.むなしさを痛感する次第.
★★★☆(★5個が満点)
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番外:独断的歌舞伎感想文:平成中村座 義経千本桜 鳥居前/身替座禅/雪暮夜入谷畦道

日記:2012年1月某日
歌舞伎:平成中村座を見る.201111222234519ad_2
昼の部は,「一、義経千本桜(よしつねせんぼんざくら) 鳥居前」.出演:佐藤忠信実は源九郎狐(獅童),静御前(梅枝),源九郎判官義経(萬太郎),武蔵坊弁慶(亀蔵).
「二、新古演劇十種の内 身替座禅(みがわりざぜん)」.出演:山蔭右京(勘三郎),太郎冠者(獅童),奥方玉の井(彌十郎).
「三、雪暮夜入谷畦道(ゆきのゆうべいりやのあぜみち)」.出演:片岡直次郎(橋之助),三千歳(七之助),按摩丈賀(亀蔵).
「義経千本桜(よしつねせんぼんざくら) 鳥居前」はおっとりした義経,美しい静御前が魅力的.
獅童はもっと暴れて欲しかった.亀蔵は弁慶で坊主頭,後の「入谷」でも按摩の丈賀でハゲづらということで,こういう配役どうなんでしょうね.
「身替座禅」では久しぶりにコメディの勘三郎が見られて感激,
痩せているしみなぎるエネルギーには未だ欠けるものがあるが,軽妙洒脱なそのそぶりが懐かしい.
彌十郞の玉の井は,もう少し太ったら松子・デラックスである.
「入谷」は橋之助を見るのが楽しい.
七之助の三千歳が部屋の入り口に立ちすくみ,直次郎と互いに見交わすところが好きである.
今回も桜席,寒いが役者の動きがよく見れて楽しい.
ところで終演後テントの外に出たら,そば屋のおじさんが器を引いて帰るところだった.その器は,劇中で使われた蕎麦のものだったろうか?
このテントの外に蕎麦屋の屋台が出ていたら良いのにと,同行皆で言い合ったことでした.
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2012/01/16

番外:独断的歌舞伎感想文:2012年新春・矢の根/連獅子/め組の喧嘩

日記:2012年1月某日
新橋演舞場で歌舞伎を見る.Shinbashi201201b
演目は「一、歌舞伎十八番の内 矢の根(やのね)」
出演:曽我五郎(三津五郎),大薩摩主膳太夫(歌六),馬士畑右衛門(秀調),曽我十郎(田之助).
「二、連獅子(れんじし)-五世中村富十郎一周忌追善狂言」
出演:狂言師右近後に親獅子の精(吉右衛門),狂言師左近後に仔獅子の精(鷹之資),僧蓮念(錦之助),僧遍念(又五郎).
「三、神明恵和合取組(かみのめぐみわごうのとりくみ) め組の喧嘩 品川島崎楼より 神明末社裏まで」
出演:め組辰五郎(菊五郎),お仲(時蔵),尾花屋女房おくら(芝雀),九竜山浪右衛門(又五郎),柴井町藤松(菊之助),伊皿子の安三(松江),背高の竹(亀三郎),三ツ星半次(亀寿),おもちゃの文次(松也),御成門の鶴吉(光),山門の仙太(男寅),倅又八(藤間大河),芝浦の銀蔵(桂三),神路山花五郎(由次郎),宇田川町長次郎(権十郎),島崎楼女将おなみ(萬次郎),露月町亀右衛門(團蔵),江戸座喜太郎(彦三郎),四ツ車大八(左團次),焚出し喜三郎(梅玉).
「矢の根」は曽我もの.まあ荒事の代表みたいなお芝居で,訳の分からないことをわーわーと騒いで訳の分からないことを大仰にやっているうちに終わってしまう,と言うと実もふたもないが,まあそういうことである.
しかし歌舞伎の美的要素は全てそのうちに取り込まれているので,お客は拍手喝采.
三津五郎もこういう荒事をやるのかと改めて感心.
「連獅子」は冨十郎の遺児鷹之資くんと吉右衛門が踊る.吉右衛門も鷹之資もがんばれと言いたくなる50を越える年齢差の連獅子.
両方に暖かいかけ声が飛ぶ.
最後の「め組の喧嘩」は題名通りの芝居.それ以上でもそれ以下でもない.Renjishi_201201
料理屋で間の障子が外れたという些細なことから,相撲取り四ツ車の一門と火消しめ組が総力をかけて喧嘩をするというそれだけの物語.
呆れたことに間に立つ人がいて二度まで喧嘩を止めたのに,当事者の仲間内では止めようとかよそうとか言う人が一人として無く,辰五郎の女房までがけしかける始末で,「意気といなせとかっこよさ」自慢以外には何の取り柄もないぱっぱらぱーの男達が,舞台狭しと暴れ回る.
ところがその男達が一斉にときの声を上げて勇み立つと,見ているこちらもかっと頭に血が上るのが不思議.
男って本当に馬鹿だよね.戦争の時もこうだったのではないか.誠に芝居は浮き世の反映であるな.
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独断的映画感想文:嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん

日記:2012年1月某日
映画「嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん」を見る.1
2010年.監督:瀬田なつき.
出演:大政絢(まーちゃん(御園マユ)),染谷将太(みーくん),三浦誠己(藤田:刑事),山田キヌヲ(10年前の誘拐犯の妻),鈴木卓爾(10年前の誘拐犯),宇治清高(菅原道真),田畑智子(上杜奈月),鈴木京香(坂下恋日).
まーちゃんは一人暮らしの女子高生,10年前の誘拐事件のトラウマのため壊れている.
そんなまーちゃんのところに,誘拐事件の時もまーちゃんを助けたみーくんがやってくる.まーちゃんは大喜び,
子供の様にみーくんに甘えるが,まーちゃんの家には何故か誘拐されてきた姉弟が縛られて物置に監禁されていた.しかも折しも周辺では連続殺人事件が発生しているという….2
ふわふわした現実味のない映画の展開は,凄惨な過去の事件と現在のまーちゃんの状態を描くための方便か.
こういうライト・ノベルの表現にはなじめない.
染谷将太と大政絢にはそれなりに魅了があったが,まーちゃんの壊れた程度とか,みーくんは何処で何をしていたのかなど(そんなことは知る必要はないのかも知れないが)気にかかるところ.
何となく消化不良のまま映画は終わってしまった.僕も古い人間になってしまったのでしょうね.3
★★★(★5個が満点)
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2012/01/08

独断的映画感想文:ハンナ

日記:2012年1月某日
映画「ハンナ」を見る.3_3
2011年.監督:ジョー・ライト.
出演:シアーシャ・ローナン(ハンナ),エリック・バナ(エリック),ケイト・ブランシェット(マリッサ),トム・ホランダー(アイザック),オリヴィア・ウィリアムズ(レイチェル).
ハンナは父と二人フィンランドの北極圏の森で暮らす.
日夜父と格闘技,銃撃,狩猟,世界各国語の学習,百科事典の暗記等の訓練をひたすら繰り返す.
外の世界に出たいと懇願するハンナに父親は無線機のスイッチをわたし,世界に出たければそのスイッチを押す様言う.そのスイッチを押すとマリッサという女が来るが,彼女を殺してベルリンで落ち合おうというのだ.
ハンナはそのスイッチを押し,父親は一足先に森を脱出,ハンナは侵入してきた特殊部隊員に連れられ,マリッサが担当する米国CIAのモロッコ基地に拘束される….
人を殺すことを何とも思わない,殺人マシン・ハンナのある種ファンタジックな物語.
父とマリッサの確執の経緯や,ハンナが何故その渦中に巻き込まれなければならないのかは,極めてあいまいで,良く分からず終い.4_3
また,フィンランドの森の中で拘束されたハンナが基地を脱出すると,そこはモロッコの砂漠の真ん中という設定もシュールに過ぎる.
それよりはこの映画は,俳優の魅力で見る映画だ.
特に「ラブリー・ボーン」で主演した透明感ある美少女:シアーシャ・ローナンの魅力ある「純真無垢」な殺人マシンぶりは特筆に値する.
一方で電気もテレビも知らず,「音楽」はその定義を百科事典で知っているだけのハンナが,スペインで初めて見聞きするフラメンコに魅了されていくシーンは,大方の観客の共感を呼ぶだろう.他方,拘束された基地で一瞬の間に数名のエージェントを殺し脱出するその早業,追跡をかわしつつ独力で父との集合地点にたどり着くその能力には(まあ突っ込みたいところもあるが)圧倒されよう.2_2
エリック・バナ,ケイト・ブランシェットも期待通りの味を出している.ケミカルブラザースの音楽も悪くない.
★★★☆(★5個が満点)
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独断的映画感想文:聯合艦隊司令長官 山本五十六 -太平洋戦争70年目の真実-

日記:2012年1月某日
映画「聯合艦隊司令長官 山本五十六 -太平洋戦争70年目の真実-」を見る.4_2
長い題名だが,「連合艦隊司令長官 山本五十六」という三船敏郎主演の映画が別にあるのである.
監督:成島出.監修:半藤一利.
出演:役所広司(山本五十六),玉木宏(真藤利一),柄本明(米内光政),柳葉敏郎(井上成美),阿部寛(山口多聞),吉田栄作(三宅義勇),椎名桔平(黒島亀人),益岡徹(草野嗣郎),袴田吉彦(秋山裕作),五十嵐隼士(牧野幸一),河原健二(有馬慶二),碓井将大(佐伯隆),坂東三津五郎(堀悌吉),原田美枝子(山本禮子),瀬戸朝香(谷口志津),田中麗奈(神崎芳江),中原丈雄(南雲忠一),中村育二(宇垣纏),伊武雅刀(永野修身),宮本信子(高橋嘉寿子),香川照之(宗像景清).
1939年,日独伊三国同盟締結の機運が朝野を上げて盛り上がる中,海軍大臣米内光政,次官山本五十六,軍務局長井上成美の3名はあくまで反対論を譲らず,一旦は日独伊三国同盟は棚上げとなる.
しかしその後山本は聯合艦隊司令長官に転出,日独伊三国同盟は締結され,日米開戦は避けがたいものとなっていった.3_2
山本はあくまで開戦を避けようと願いながら,一方で真珠湾奇襲作戦を準備することとなる….
山本五十六の人間像を通して太平洋戦争の勃発と,講和が何故出来なかったかを描く.
映画で強調されていることの一つは,世論が(大新聞の煽りがあったにせよ)戦争を支持し,戦争を避けようとした勢力に悪口雑言を投げつけたことである(戦争を支持する理由は景気が悪いことだった).この世論を背景に,軍を含めた官僚達が雪崩を打って開戦への圧力を強めていく.
誠に政官軍にとって戦争は巨大な利権であった.それは今,政官産にとって原子力が巨大な利権であることと全く同じである.
また大新聞が戦争を煽り,事実を隠して大本営発表を国民に押しつけた構造は,今マスメディアが原子力について行っていることと全く同じである.
この映画はそういう意味では誠に現代的な映画であろう.1
個人的には聯合艦隊と山本五十六のファンである僕にとっては誠に辛い映画で,特にミッドウェイ海戦の敗北は見るに忍びない.映画はこの作戦の失敗を南雲中将に負わせているが,その辺りはいささか類型的な感じがする.山本自身にも幾つかの誤りはあったであろう.
そこを踏み込まないことや,最期は小椋佳の叙情的な歌で終わるのも,如何にも日本映画的.
★★★☆(★5個が満点)
ところで映画の最終局面,山本五十六を乗せた一式陸攻機は密林に突っ込み爆発炎上するが,記録に依れば機体は破損したものの爆発はしておらず,山本五十六の遺骸は発見され回収されたとのこと.
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独断的映画感想文:ソーシャル・ネットワーク

日記:2012年1月某日
映画「ソーシャル・ネットワーク」を見る.2
2010年.監督:デヴィッド・フィンチャー.
出演:ジェシー・アイゼンバーグ(マーク・ザッカーバーグ),アンドリュー・ガーフィールド(エドゥアルド・サベリン),ジャスティン・ティンバーレイク(ショーン・パーカー),アーミー・ハマー(キェメロン&タイラー・ウィンクルボス),マックス・ミンゲラ(ディビヤ・ナレンドラ),ブレンダ・ソング(クリスティ・リン),ルーニー・マーラ(エリカ),ジョセフ・マッゼロ(ダスティン・モスコヴィッツ),ジョン・ゲッツ(サイ),ラシダ・ジョーンズ(マリリン・デルピー).
ハーバード大学の学生マークは,ある日恋人のエリカと話しをしてて言い合いになる.
上から目線で一方的なマークの言いぶりにエリカは絶交を宣言,頭に来た上酔っていたマークは,エリカの悪口・中傷をブログに載せただけでなく,女子学生の品定めプログラムを開発して,各学生寮の女学生の個人情報と写真をハッキング,これを公開して男子学生が自由に女子学生を品定めできる様にした.
たちまちオンラインのアクセス数は急上昇,ハーバードのサーバーはパンクする.
これで名を売ったマークは,学生クラブの実力者・双子のウィンクルボス兄弟の依頼で,学生交流用のネットワーク作りを引き受ける.
資金担当に唯一の親友エドゥアルトを誘ったマークは,斬新なアイディアを次々に打ち出しそのネットワークは人気を得てアカウント登録はうなぎ登りとなる.3
マークはナップスターで有名なショーンの知遇を得て,Facebookと名付けたネットワークの開発に奔走するが….
Facebookの創設者の物語,映画は途中からFacebookを巡るマーク,ウィンクルボス兄弟,エドゥアルトの訴訟を前提とした調停の場をメインとしながらその後の経過を追っていく.
如何にもという感じの,アメリカの才能に恵まれた学生の起業とそれを巡る学生同士の争いを描いて面白い.
マークの様な人がアメリカ社会の成功者なのだろうか?映画は必ずしもそう主張している訳ではない.
結果としてはマークは和解金を払って事態を解決するが,マークが正義であった訳ではない.
唯一の友エドゥアルトを失い,エリカは忘れられないままだ(エリカに自分が何をしたか,マークは正しく認識しているのだろうか?).
という訳で,映画は普通の成功者の裏面を描いた実録ものという感じである.
俳優の台詞が概してとんでもない早口なのが鬱陶しい.
起業で成功するにはこんなスピードでの会話と攻撃的な態度が必要なのかと,反発を感じてしまう.
映像的にはウィンクルボス兄弟を一人が演じていたというのが傑作,何でそんな手間をかけたんだろう?(双子という設定をやめる,本当の双子に演じさせると,他の手段もあったと思うのだが).
アカデミー賞総なめという迫力は感じませんでした.4
★★★☆(★5個が満点)
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番外:独断的歌舞伎感想文:国立劇場初春歌舞伎公演「通し狂言 三人吉三巴白浪」「奴凧廓春風」

日記:2012年1月某日
歌舞伎「国立劇場開場45周年記念歌舞伎」を見る.Sanninkitisa20120103
演目は1.河竹黙阿弥=作「通し狂言 三人吉三巴白浪 (さんにんきちさともえのしらなみ)  四幕七場」.序幕:大川端庚申塚の場.二幕目:第一場 割下水土左衛門伝吉内の場,第二場 本所お竹蔵の場.三幕目:第一場 巣鴨在吉祥院本堂の場,第二場 同 裏手墓地の場,第三場 同 元の本堂の場.大詰:本郷火の見櫓の場.
2.河竹黙阿弥=作・鈴木英一・国立劇場文芸課=補綴.「奴凧廓春風 (やっこだこさとのはるかぜ)」.
出演:松本幸四郎,中村福助,市川高麗蔵,大谷廣太郎,大谷廣松,松本金太郎,市川寿猿,中村歌江,松本錦吾,市川染五郎,大谷友右衛門.
1.は河竹黙阿弥の傑作.
100両の金と庚申丸という名刀が次々と人手に渡りながら悲劇を巻き起こしていく,お坊・和尚・お嬢の三人吉三の物語.
冒頭,いきなり庚申丸のやり取りがあるのだが,この辺の事情が判然としないままいきなりお嬢吉三が夜鷹から100両を奪い川に放り込む.
この出だしの経緯は後から説明があるものの,如何にも唐突である.
しかしその後の展開は名場面,名台詞の連なりに誘われ気持ちよく見た(途中開幕前に振る舞われた升酒が効いて気持ちよく寝たところもあったが).
特に第3幕吉祥院本堂の場での,お坊とお嬢の悪党二人のやり取りが切なくて宜しい(この二人は未だ20歳前後という設定である).
またそれに続く,裏手墓地の凄惨な殺し,本堂に戻っての謎解きでドラマが展開して,本郷火の見櫓の大詰めに至る辺りは,見応えあり.
役者は皆それぞれに良く,高麗蔵と友右衛門のカップルも素敵でした.Kokuritu1201032
2.も黙阿弥の作品,曽我もので始まった郭前の場から舞台はどんどん変転し,その郭の亭主幸四郎とせがれ金太郎が揚げた奴凧が,染五郎となって宙吊り(舞台の上空で舞い踊ります)後更にくるくると回転.
染五郎は空中で回転する振り付けが好きなのかしら.
最期は奴凧を突っかけて暴れるイノシシを染五郎が退治しておしまい.
お正月らしい楽しい舞台であった.終了は16:15.
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2011/12/31

独断的映画感想文:蜂蜜

日記:2011年12月某日
映画「蜂蜜」を見る.2
2010年.監督:セミフ・カプランオール.
出演:ボラ・アルタシュ(ユスフ),エルダル・ベシクチオール(ヤクプ),トゥリン・オゼン(ゼーラ).
冒頭,深い森の中から現れる馬をつれた男.やがてとある木の側で立ち止まると,ロープを取り出し放り上げて枝にかける.
強さを試した後おもむろに木を登り始めるが,相当高く登ったところで枝が折れ,男は転落寸前になる.
トルコ映画「蜂蜜」は極めて個性的な映画である.
主な登場人物は6才くらいの少年ユスフと父ヤクプ,母ゼーラの三人.音楽は一切使われず説明的な描写も殆どない.3
トルコの山岳地帯の森の中の村に住むユスフ一家,ヤクプは蜂蜜をとって暮らしを立てているが,森から蜂が姿を消す事態が起こる.
別の場所に巣箱を仕掛けようと森に出かけたヤクプは,そのまま姿を消す.
ユスフは教室では吃音に悩む生徒,父ともささやき声で話す.ユスフは蜂蜜取りに連れて行ってくれ,自分の苦手なミルクを代わりに飲んでくれる父が大好きだ.
父の帰りを母と共に待つユスフだったが….
冒頭のシーンはユスフが見た夢らしい.映画を見ている間はそのことに気付かず,後に起こる事実の描写と思っていたがそうではなく,ユスフの見た予知夢ということになる.
この映画はユスフの立場,ユスフの視点から見た映画なのである.
6才の少年の両親への甘え,同級生への妬み,女生徒へのあこがれ,喜び,悲しみがそのまま描写される.大人の視点的な説明は不充分だが,観客は子供の心を率直に受け容れることが出来るだろう.1
自然の描写も限りなく美しい.トルコにもこういう日本的な山村があるのだと,新鮮な思いで見た.
長回しを多用した独特なテンポも印象的である.
最終局面,父が愛育していた鷹の飛翔を追って,暗くなっていく森を走るユスフの姿が心に残る.
一見の価値あり.
★★★☆(★5個が満点)
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2011/12/28

番外:独断的歌舞伎感想文:平成中村座 十二月大歌舞伎昼の部

日記:2011年12月某日
歌舞伎「平成中村座 十二月大歌舞伎昼の部」を見る.Nakamuraza201112b
演目は,「菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)」.
1.「車 引(くるまびき)」出演:梅王丸(勘太郎),桜丸(菊之助),杉王丸(虎之介),藤原時平(亀 蔵),松王丸(彌十郎).
2.「賀の祝(がのいわい)」出演:桜丸(菊之助),梅王丸(勘太郎),八重(七之助),千代(松 也),春(新 悟),松王丸(亀 蔵).白太夫(彌十郎).
3.「寺子屋(てらこや)」出演:松王丸(勘三郎),武部源蔵(菊之助),戸浪(七之助),園生の前(新 悟),春藤玄蕃(亀 蔵),千代(扇 雀).
この3幕を続けて見たのは初めてである.
この様に見ることによって,松王丸,桜丸,梅王丸の3兄弟がどのような関係であるかが判る.
すなわち,「車引き」では兄弟の「公的な」対決が描かれるが,それにも拘わらず「賀の祝」では殆どじゃれ合っている様な松王丸・梅王丸の兄弟げんかが描かれる.
しかしその「賀の祝」の後半は,思いがけない桜丸の覚悟の自害だ.
そして「寺子屋」の終盤では,公的には敵と思われた松王丸が,我が子小太郎をお役に立てたと言う一方で,桜丸の自害の憐れさを嘆くという結末となる.
この物語の悲劇性が改めて印象づけられるのである.
役者では「賀の祝」での彌十郞と菊の助がそれぞれに好演で印象深い.
亀蔵は出ずっぱりで様々な役を演じ,ひいきとしては大満足.久しぶりに見る勘三郎が元気そうで何よりである.
座った2階桜席は幕の内側で,役者の顔は殆ど横顔しか見えないが,黒子の動きや開幕前の支度などが丸見え,義太夫席も正面から見える.
なかなかに面白いが,太鼓の音が真下から腹に響くのには閉口した.
隅田川を飛ぶヘリコプターの音も結構気になる.
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独断的映画感想文:アンチクライスト

日記:2011年12月某日
映画「アンチクライスト」を見る.3
2009年.監督:ラース・フォン・トリアー.
出演:シャルロット・ゲンズブール(彼女),ウィレム・デフォー(彼).
映画の冒頭,激しいセックスシーンがモノクロのスロースピードで流れる.
ベビーベッドから抜け出し机によじ登る,彼等の幼い息子.机の上には「苦痛」「絶望」「悲嘆」と刻印された三体の人形.
やがて子供は窓から転落死する.
子を失ったショックに心を病んで入院する彼女.セラピストでもある夫は彼女を退院させ,かって彼女が論文を書こうと息子と滞在した,森の中の山荘に彼女を連れて行く.
理詰めの説得で彼女の治療に当たる彼,やがて彼女は快方に向かうかと思われたが….
「ダンサー・イン・ザ・ダーク」「ドッグヴィル」を監督したラース・フォン・トリアーの作品.4
寓話に満ちたストーリー,象徴的な映像が繰り広げる極めて映画的な映画である.
アンチクライストとは何か?この概念そのものが自分の様な日本人にとってはそもそも難解である.
彼らは治療のために森に赴くが,森そのものは「死」の世界として描かれている様だ.
山荘の屋根に落ちる夥しいドングリ,しかし樹として育つのは1000年に1本であり,その他のドングリはただ死んでいくのだと彼女は言う.
しかしその死の世界の方が,彼の語る正論の「生」の世界より遙かに豊穣に見えるのは何故だろう?
一方で彼女は,以前この山荘で論文に取り組んでいた時から既に精神に異常を来していたらしいことが描かれる.息子は彼女に虐待されていたらしいことを示唆する描写も.
ある夜突然に繰り広げられる惨劇は,思いもかけぬ結末に観客を投げ込む.
基本的に日本人たる自分の自然観・宗教観とは全く異質な世界の物語である.判らぬまま翻弄されたに等しい.
しかし俳優の迫力は並大抵ではない.1
「最後の誘惑」でキリストを演じたウィレム・デフォーが,またそれとは別のキリスト像を好演.シャーロット・ゲンズブールの体を張った熱演は,真の狂気を感じさせて極めて印象的.
見て楽しい映画ではないが,生と死,絶望と狂気,苦悩と悲哀を突きつけられ心に残る映画.
欧米人であれば,あるいはキリスト教徒であれば,もう少しこの寓意は読み取れただろうか?
★★★☆(★5個が満点)
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2011/12/23

番外:独断的歌舞伎感想文:七世松本幸四郎襲名百年 日生劇場 十二月歌舞伎公演 昼の部

日記:2011年12月某日
歌舞伎「七世松本幸四郎襲名百年 日生劇場 十二月歌舞伎公演 昼の部」を見る.Nissei201112b
演目は,「一、碁盤忠信(ごばんただのぶ)」
出演:佐藤忠信(染五郎),横川覚範(海老蔵),源義経(亀三郎),静御前(春 猿),塩梅よしのお勘実は呉羽の内侍(笑三郎),番場の忠太(猿 弥),小柴入道浄雲(錦 吾),忠信女房小車の霊(高麗蔵).
忠信が義経の名前と剣,鎧を拝領し,鎌倉方の追っ手を相手に大暴れという荒事の見本みたいな芝居.
100年ぶりの再演とあってか,今ひとつ筋立てや細々としたところが洗練されていない気がする.
しかし大詰めで染五郎・海老蔵が方や引っこ抜いた桜の大木,こなたいぼいぼ付の鉄棒で渡り合う大立ち回りになれば,観客大喜び.大味ながら楽しいお芝居.
「二、新古演劇十種の内 茨木(いばらき)」
出演:伯母真柴実は茨木童子(松 緑),渡辺源次綱(海老蔵),家臣宇源太(亀 寿),太刀持音若(梅 丸),士卒仙藤(亀三郎),士卒軍藤(市 蔵),士卒運藤(高麗蔵).
こちらは緊張感みなぎる古典劇.
羅生門で鬼人・茨木童子の左腕を切り落とした綱は,安倍晴明の指示により物忌み中,そこに育ての親たる叔母に扮し茨木童子が訪ねてくる,という物語.
静かなたたずまいの老女として登場する松緑の足運び,左手を見せない所作が素晴らしく,また茨木童子に変身してからのダイナミックな立ち回りが素敵.
小姓役の中村梅丸が美しく,見事な踊りを若々しく舞う.梅丸は15才.
丁度10年前に岡村研祐(現・尾上右近)が同じ「茨木」の小姓役で踊った姿も素晴らしかった.未だに印象に残るが,研祐は10才前後ではなかったかしら.
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独断的映画感想文:ザ・タウン

日記:2011年12月某日
映画「ザ・タウン」を見る.5
2010年.監督:ベン・アフレック.
出演:ベン・アフレック(ダグ),ジョン・ハム(フローリー),レベッカ・ホール(クレア),ブレイク・ライヴリー(クリスタ),ジェレミー・レナー(ジェム),タイタス・ウェリヴァー(ディノ),ピート・ポスルスウェイト(ファーギー),クリス・クーパー(ビッグ・マック),スレイン(グロンジー),オーウェン・バーク(デズモンド).
ボストンのチャールズタウンは全米一現金輸送車の強盗事件が多いと言われる.
ケンブリッジ銀行の支店が4人組に襲われ,女性支店長が人質となって拉致された.
犯行手口は水際だっており,解放された女性支店長がFBIに尋問されるが手がかりは皆無.ところが犯人側は女性の運転免許を見てびっくり,彼女は同じ街に住んでいたのだ.2
マスクをかぶっていたとは言え,いつ街で顔を合わせてもおかしくない状況.一味のリーダー格ダグは思い切って彼女クレアに接触するが,二人は次第に恋に落ちて行くのだった….
FBIの裏をかきながら犯行を重ねる一味,彼らは逃げ延びられるか,クレアとダグの恋の行方は?というクライムアクション.
ストーリーの展開とアクション・ロマンスのバランス,スピード感の組み合わせが絶妙である.
ダグは今は終身刑として刑務所にいる父から「家業」を引き継いだ犯罪者だが,アイスホッケーの選手としてドラフトに乗ったこともあり,それに挫折した過去を持つ.
頭脳明晰で合理的,人を殺したことはない.
そのダグがクレアと恋に落ち,足を洗おうとまで思い詰めるが,組織はそれを許さない.降りると言い出したダグに組織は牙をむくのだ.1
最終局面,組織とFBIに追い詰められクレアにも拒絶された状況からダグは如何に脱出するのか.
結末は後味も良く,一見の価値あり.
俳優はべン・アフレックがやはり魅力的,木村佳乃似のレベッカ・ホールもいい.
ダグの親友ジェムを演じたジェレミー・レナーが素晴らしい.
★★★☆(★5個が満点)
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2011/12/17

独断的映画感想文:SP 革命篇

日記:2011年12月某日
映画「SP 革命篇」を見る.5
2011年.監督:波多野貴文.
出演:岡田准一(井上薫),堤真一(尾形総一郎),香川照之(伊達國雄),真木よう子(笹本絵里),松尾諭(山本隆文),神尾佑(石田光男),春田純一(室伏茂),野間口徹(田中一郎),大出俊(伊勢崎武則),江上真悟(中尾義春),平田敦子(原川幸子),伊達暁(梶山光彦),古山憲太郎(木内教永),近江谷太朗(高島清),堀部圭亮(伊達の秘書),平岳大(滝川英治),波岡一喜(安斎誠)入山法子(青池由香莉).
要人警護に当たるSP警視庁警備部警護課第四係の井上以下の面々は,今日も各対象者の警護で国会に入る.2
同じ日,係長の尾形の指揮下,国会占拠を企図するテロリストグループは国会議事堂を制圧, 4係以外のSPもすべて寝返り,テロリスト達と志を同じくする若手官僚グループが酒宴を開きながら見守る中,衆議院議場に乗り込んだテロリストは議場を制圧し閣僚全員の不正をTV中継の面前で糾弾し始めた.
一人国会内に孤立したSP4係は,議事堂の奪回目指して活動を開始する.
尾形の真の意図は何か,テロリストグループの工作は成功するのか….
テンポ良く進む物語展開はなかなかのもの,最期まで一気に見た.
しかし個々の人物の描写は如何にも平板で,画面での俳優の熱演には引き込まれるが,この人達は実際はどういう人で,何がこういう事態を生じさせたか,という点は殆ど語られていない.その意味では,TVドラマをスクリーンにしてみましたという以上のものではない.3
官僚達の描写もあまりに類型的で,映画の制作元がフジTV系だから,逆に国民のガス抜きをして真の官僚の悪事から目をそらそうという政治的意図のある映画ではないかと邪推させる結果となる.
岡田准一のアクションはまずまずだが,映画の冒頭からの無前提なしかめっ面は意図が良く分からない.
映画全体も結局数時間の国会議事堂内の話に限定されているので,ふくらみがなく終わってみれば何も残らない,単純なアクション映画である.
TVドラマを見ずに映画を見た僕が悪かったのだろう.
でも★★(★5個が満点)しか上げられません.
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2011/12/11

独断的映画感想文:はなれ瞽女おりん

日記:2011年12月某日
映画「はなれ瞽女おりん」を見る.4
1977年.監督:篠田正浩.
出演:岩下志麻,原田芳雄,奈良岡朋子,神保共子,横山リエ,宮沢亜古,中村恵子,殿山泰司,桑山正一,樹木希林,西田敏行,安部徹,小林薫,原泉,不破万作,山谷初男,浜村純,加藤嘉.
若狭小浜で生まれた盲目のおりんは,6歳の時母親に捨てられ,薬売りの斉藤の世話で越後高田の瞽女屋敷に弟子入りする.
ここで厳しく歌と三味線を仕込まれたおりんは,美しく成長する.
瞽女は,盲目の女性が集団で門付けをしたり宴席に呼ばれたりして,歌と三味線の芸を披露する.厳しい掟の下に暮らし,男に体を許したものは追放される.1
おりんは美貌が災いし,瞽女宿に侵入した酔漢(西田敏行)に手込めにされ,瞽女屋敷を追われる結果となった.
はなれ瞽女となったおりんは以降,体をまかせることを条件にした男の手引で,一人瞽女の旅を続けるのだった.
ある日阿弥陀堂で出会った男鶴川(原田芳雄)は,おりんの手引となることを申し出ともに旅するが,何故かおりんの体を求めない….
街道を行き来する芸人達の世界が未だ辛うじて成立していた第1次大戦前後の日本海沿岸,それを舞台に展開するはなれ瞽女おりんの物語.
母を幼くして失い,育ての親である瞽女屋敷の親方にも追放されたおりんは,自分を暖めてくれる存在を必死に求めるが,男達は皆おりんの体だけが目当てだった.3
ところがこの男鶴川はおりんに心から優しくしてくれるが,自分とおりんは兄妹でいようと言うのだ.
それは何故か.二人の運命はどうなるのか.
北陸の四季を追う,美しいカメラ.この地方に色濃く残る阿弥陀信仰を背景に物語は進む.
一心に鶴川を思い慕うおりんの哀れさ,その運命が心を打つ.
物語の終焉を予告する中盤のショット(ポスター写真)の印象が強烈である.
俳優は,原田芳雄が素晴らしい.この時代の名脇役がこぞって参加しているのも嬉しい.新人で出ている小林薫の印象が鮮烈.2
樹木希林のはなれ瞽女は見事.
岩下志麻のおりんは,川で水浴していて原田芳雄から「阿弥陀様じゃ」と声をかけられるシーンが印象的.
骨太の原作を見事に映像化した傑作.★★★★(★5個が満点)
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2011/12/04

独断的映画感想文:八日目の蝉

日記:2011年11月某日
映画「八日目の蝉」を見る.8
2011年.監督:成島出.
出演:井上真央(秋山恵理菜=薫),永作博美(野々宮希和子),小池栄子(安藤千草),森口瑤子(秋山恵津子),田中哲司(秋山丈博),渡邉このみ(秋山恵理菜/薫(少女時代)),市川実和子(沢田久美(エステル)),余貴美子(エンゼル),平田満(沢田雄三),風吹ジュン(沢田昌江),劇団ひとり(岸田孝史),田中泯(タキ写真館・滝).
不倫の子を堕胎した希和子は二度と子供の産めない体になる.3_2
愛人には捨てられ,その妻に押しかけられ罵倒された希和子は,愛人の赤ん坊を誘拐し姿を消す.
4年後,希和子は逮捕され子供は親元に戻ったが,子供は実の母になつかぬことで虐待されて育った.
その子・恵理菜/薫が成長し親元から自立後,自分の被誘拐時代を思い返しつつ自分探しを続けるという物語.
前回の「海炭市叙景」に匹敵する長尺であるが,これも一気に見た.
物語は希和子の回想(といっても現代の希和子は行方不明で登場しない),恵理菜/薫の回想・現状をとりまぜて構成されているが,その処理が巧妙で混乱は生じない.6
それは物語の焦点が,現代の恵理菜/薫がどう人生を掴んでいくかに絞られているからではないか.
映画の魅力はまず子役渡邉このみの愛らしさにあろう.彼女と希和子の別れのシーンは涙を禁じ得ない.
今ひとつの魅力は井上真央にある.
数奇な運命と実母の虐待に負けず人生に立ち向かおうとする恵理菜/薫の面構えは,なかなかに見事である.期せずして育ての母と同じく妻子ある愛人を持った彼女がどのように人生を歩むのか,その彼女を見守る映画の視点は前向きである.7
見て損はなし.永作博美,田中泯の演技も見応えあり.
★★★★(★5個が満点)
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独断的映画感想文:海炭市叙景

日記:2011年11月某日
映画「海炭市叙景」を見る.1
2010年.監督:熊切和嘉.
出演:谷村美月(井川帆波),竹原ピストル(井川颯太),加瀬亮(目黒晴夫),三浦誠己(萩谷博),山中崇(工藤まこと),南果歩(比嘉春代),小林薫(比嘉隆三).
夭折した作家・佐藤泰志の短編集を,函館市民の協力で映画化した作品.
不況渦巻く海炭市で造船所をクビになった兄妹の迎える正月の朝.
再開発の進む郊外で,豚や羊を飼いながら一人踏ん張るトキばあさんの暮らし.
市営のプラネタリウムに勤める隆三と水商売を始めた妻との葛藤.2
市内でガス屋を営む晴夫の不倫を知ったその後妻が虐待する晴夫の連れ子.
廃止される路面電車の運転手の老父とその息子の邂逅.
短編集から選ばれた5つの物語が織りなす人生の哀歓が,穏やかな語り口で描かれる.
これらの物語の登場人物は微妙に重なり合っていて,時間を相前後して織り上げられた5つの物語が集約する最後のシーンには胸を突かれる.
等身大に描かれる海炭市の風景は,自分の街でもあったかも知れないというリアルさを感じさせ,描かれる人々の暮らしは,自分であったかも知れないという切実さを思わせる.3
長尺ながら程よい緊張感で最期まで見た.ジム・オルークの音楽も素敵.
★★★★(★5個が満点)
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