2018/07/14

独断的映画感想文:追憶(2017)

日記:2018年7月某日
映画「追憶」を見る.0
2017年.監督:降旗康男.
出演:岡田准一(四方篤),小栗旬(田所啓太),柄本佑(川端悟),長澤まさみ(四方美那子),木村文乃(田所真理),矢島健一,北見敏之,安田顕,三浦貴大,高橋努,渋川清彦,りりィ,西田尚美,萩尾みどり,安藤サクラ(仁科涼子),吉岡秀隆(山形光男).1
或る日,富山の漁港で男性の刺殺死体が発見される.
被害者は川端悟,前日に市内の土建業者・田所啓太と金銭の授受があったことが判明する.担当した刑事四方篤と悟・啓太は幼馴染みであった.
25年前の富山,篤・啓太・悟の3人はそれぞれ親に捨てられ,喫茶「ゆきわり草」を営む仁科涼子に引き取られ世話になっていた.しかしこの年のクリスマスの日,ある出来事が起こり,3人は2度と互いに会わない約束をして散り散りになった.やはり事件前日,偶然悟と出会って飲んでいた篤は,啓太を訪ねるが….2
クリント・イーストウッドの「ミスティック・リバー」と似た感じの物語だが,本作は期待はずれ.
まず冒頭の富山の冬のシーン,ロケではなくCGのようだが出来が良くない.登場人物の吐く息も白くならず,現実感に欠ける映像である.
物語の展開にも緊張感がない.焦点は,過去の出来事を巡って悟が啓太をゆすり,啓太が悟を殺したのではという可能性なのだが,その謎が深まらないまま捜査は唐突に結論が出て終了してしまう.4_2
全体的にじっくりした描写がないまま映画は終わってしまったという感じ.豪華な配役だが,小栗旬,長澤まさみ,安藤サクラが好演していた以外は特に印象に残らなかった.5
見応えなし.★☆(★5個が満点)
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番外:独断的歌舞伎感想文 歌舞伎巡業中央コース 人情噺文七元結/中村芝翫・中村橋之助・福之助 襲名披露口上/棒しばり

日記:2018年7月某日
歌舞伎巡業中央コースを鑑賞.Jungyo_chuou_f3_3abc46a3da0999daf8c
三遊亭円朝口演・榎戸賢治作「一、人情噺文七元結(にんじょうばなしぶんしちもっとい)」.出演:左官長兵衛(橋之助改め中村芝翫),和泉屋手代文七(宗生改め中村福之助),鳶頭伊兵衛(国生改め中村橋之助),長兵衛女房お兼(芝喜松改め中村梅花),角海老手代藤助(中村吉之丞),角海老女房お駒(片岡秀太郎),和泉屋清兵衛(中村梅玉).「二、八代目中村芝翫 四代目中村橋之助 三代目中村福之助 襲名披露口上(こうじょう)」.橋之助改め中村芝翫,国生改め中村橋之助,宗生改め中村福之助,幹部俳優出演.岡村柿紅作「三、棒しばり(ぼうしばり)」.出演:次郎冠者(国生改め中村橋之助),太郎冠者(宗生改め中村福之助),曽根松兵衛(中村吉之丞).
文七元結は絵に描いた様な人情話で,突っ込みどころ満載なのにとってつけた様な大団円で幕となる辺り,馬鹿馬鹿しいとも思えるが,芝居としてはやる人次第.今の芝翫はこういう世話物を一番得意とするようで,左官長兵衛を快調に演じて面白かった.梅花の女房お兼が動き良くテンポ良く印象的.
その梅花が芝翫襲名披露口上に列席して自分の襲名も行えたのは,良い扱い.
棒しばりは橋之助・福之助大奮闘で,まだ失敗はあるが元気一杯で楽しかった.
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番外:独断的歌舞伎感想文 歌舞伎巡業東コース 近江のお兼/御所五郎蔵/高坏

日記:2018年6月某日
歌舞伎巡業東コースを鑑賞.Jungyo_east2018_fl_9edccd537c3a6b12
「一、近江のお兼(おうみのおかね)」.出演:近江のお兼(中村梅枝).河竹黙阿弥作「二、曽我綉俠御所染(そがもようたてしのごしょぞめ) 御所五郎蔵」.出演:御所五郎蔵(尾上菊之助),星影土右衛門(坂東彦三郎),皐月(中村梅枝),逢州(中村米吉),梶原平蔵(中村萬太郎),花形屋吾助(市村橘太郎),甲屋与五郎(市川團蔵).久松一声作「三、高坏(たかつき)」.出演:次郎冠者(尾上菊之助),高足売(中村萬太郎),太郎冠者(市村橘太郎),大名某(市川團蔵).
近江のお兼は上背のある梅枝にぴったりの踊り.
御所五郎蔵は,自分にとっては主役をやる役者によって芝居自体の評価が変わる芝居で,先年の仁左衛門の御所五郎蔵は素晴らしかった.今回の菊之助も同じラインで印象的,土右衛門 の彦三郎・皐月の梅枝も素晴らしく,逢州の米吉が健闘.若手中心ながら見応えある舞台だった.
菊之助の高坏は何と言っても勘三郎の先例と比べてしまうが,とぼけた味が出て力の抜けた次郎冠者が良い.いざタップダンスという辺りから力漲ってきての踊りもステキだった.
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2018/06/23

独断的映画感想文:ダンケルク

日記:2018年6月某日
映画「ダンケルク」見る.1
2017年.監督:クリストファー・ノーラン.音楽:ハンス・ジマー.
出演:フィオン・ホワイトヘッド(トミー),トム・グリン=カーニー(ピーター),ジャック・ロウデン(コリンズ),ハリー・スタイルズ(アレックス),アナイリン・バーナード(ギブソン),ジェームズ・ダーシー(ウィナント大佐),バリー・キオガン(ジョージ),ケネス・ブラナー(ボルトン中佐),キリアン・マーフィ(謎の英国兵),マーク・ライランス(ミスター・ドーソン),トム・ハーディ(ファリアー).2
映画の冒頭,ドイツ軍の降伏勧告ビラが舞う市街を駆け抜ける英軍兵士トミー.僚友はことごとく撃たれ,銃も鉄兜も失って命からがら友軍の拠点に転げ込む.その先はダンケルクの海岸,救出を待つ兵士の長い長い列が砂浜を覆い尽くす.
イギリスでは海軍の徴集に応じ,ドーソンの艇を含む多数の民間小型船舶が,ダンケルクに向け救出のため出港する.4
英空軍のスピットファイア3機編隊は作戦のため大陸に向け飛行中,独空軍メッサーシュミットと交戦,更に撤収作戦中の英艦船を襲う独爆撃機を撃墜する.5
この3つのエピソードがトミーの件が1週間,ドーソン艇の件は1日間,空軍の件は1時間の時間軸で同時進行するが,クライマックスで全てのエピソードは収斂する….
史実に基づいたダンケルク撤退作戦を描いた映画だが,上記のように3つの異なる時間軸を編集した描写である.更に登場するのは撤収する側の英軍兵士と艦船・航空機であり,独軍兵士は一切描かれない(描写されるのは独軍航空機と魚雷の航跡,飛来する銃弾のみ).この映画は,英軍のダンケルク撤収作戦の成功を描いた,一種の戦争叙事詩というべきであろう.6
映画としての緊張感は高い.トミー達がようやく英駆逐艦に収容され,看護婦に迎えられ紅茶とジャムパンを振る舞われた次の瞬間,Uボートの魚雷に撃沈される船内のシーン.敗残兵として辛くも生還し,英市民の罵倒を覚悟していたトミー等が,市民の暖かい歓待を受けるシーン.いずれも印象的だ.
同じ監督の「インターステラー」で素晴らしかったハンス・ジマーの音楽がやはり素敵.
戦史ものとして期待すると肩すかしだが,見応えある映画.
★★★☆(★5個が満点)
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2018/06/19

番外:独断的歌舞伎感想文 六月大歌舞伎夜の部 夏祭浪花鑑/巷談宵宮雨

日記:2018年6月某日
六月大歌舞伎夜の部を見る.Kabukiza_201806_ffl_4607bdc5b23519f
「一、夏祭浪花鑑(なつまつりなにわかがみ)」.鳥居前 三婦内 長町裏.出演:団七九郎兵衛(吉右衛門),お辰(雀右衛門),一寸徳兵衛(錦之助),お梶(菊之助),下剃三吉(松江),玉島磯之丞(種之助),傾城琴浦(米吉),団七伜市松(寺嶋和史),大鳥佐賀右衛門(吉之丞),三河屋義平次(橘三郎),堤藤内(桂三),釣船三婦(歌六),おつぎ(東蔵).宇野信夫:作,大場正昭:演出 「二、巷談宵宮雨(こうだんよみやのあめ)」.深川黒江町寺門前虎鰒の太十宅の場より,深川丸太橋の場まで.出演:龍達(芝翫),虎鰒の太十(松緑),おとら(児太郎),おとま(梅花),薬売勝蔵(橘太郎),徳兵衛(松江),おいち(雀右衛門).
夏祭浪花鑑は吉右衛門自在の境地による団七九郎兵衛が,圧倒的魅力.歌六の釣船三婦,錦之助の一寸徳兵衛が印象的だった.
お梶の出番ってこれだけだったろうか,菊之助と和史君はちょっとだけの出演.松江という人は今まであまり意識しなかったが,ここに来て存在感が増してきた.
巷談宵宮雨は実は怪談もの,しかし怖いというよりはおかしみと哀れを誘うストーリー.
主演級の芝翫,松緑,雀右衛門が,それぞれいつもと異なる役柄で良かったが,薬売勝蔵を演じた橘太郎が,この人らしい演技でほろりとさせ印象に残った.
雀右衛門のおいちは世話物のおかみさんで白塗りではないが,こういう扮装でもやはり美人.
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独断的映画感想文:罪の手ざわり

日記:2018年6月某日
映画「罪の手ざわり」を見る.1
2013年.監督:ジャ・ジャンクー.
出演:チャオ・タオ(シャオユー(小玉)),チアン・ウー(ダーハイ(大海)),ワン・バオチャン(チョウ(周)),ルオ・ランシャン(シャオホイ(小輝)),チャン・ジャーイー(ヨウリャン(佑良)),リー・モン(リェンロン(蓮蓉)).
映画の冒頭,山道をバイクで走行中3人組の追いはぎに襲われたチョウ,懐から銃を取り出し,あっという間に全員を射殺する.平然と山道を進むチョウ,ダーハイとすれ違う.4
ダーハイが働いてきた山西省の村の炭鉱はいつの間にか同級生の金持ちの所有となり,利益は村長一派と資本家のもの.抗議したダーハイは金持ちの側近に袋だたきにされる.ダーハイは猟銃を持ち出す….
チョウは正月に重慶の自宅に帰るが,銃を使った強盗で稼ぎ送金していたことは妻に判ってしまう.地元に留まるよう懇願する妻を置いて,チョウは白昼の強盗を犯し,長距離バスで逃亡する.6
そのバスに同乗していたヨウリャンは着いた湖北省の町で愛人シャオユーと会う.報われない愛人生活を続けてきたシャオユーは風俗サウナの受付.サウナに来た客から金づくで性サービスを強要されるが….
ヨウリャンの経営する広東省のクリーニング工場で働いていたシャオホイはナイトクラブに商売替え.そこの「ダンサー」リェンロンに心惹かれるが恋に破れ,更に稼いだ金は残らず母親に引き出され絶望する….3
現代中国の拝金主義とその犠牲となる庶民の絶望を描く,4つのエピソードによるオムニバス映画.
淡々とした描写ながら緊張感高く,各エピソードを演じる俳優も素晴らしい.最初のダーハイの物語に登場する京劇と,エピローグに登場する京劇がそれぞれ暗示的な台詞を繰り返すシーン,各エピソードの登場人物が重なっていくこと等,如何にも映画的な演出も面白い.5
★★★☆(★5個が満点)
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2018/06/12

独断的映画感想文:万引き家族

日記:2018年6月某日
映画「万引き家族」を見る.1
2018年.監督:是枝裕和.音楽:細野晴臣.
出演:リリー・フランキー(柴田治),安藤サクラ(柴田信代),松岡茉優(柴田亜紀),池松壮亮(4番さん),城桧吏(柴田祥太),佐々木みゆ(ゆり),緒形直人(柴田譲),森口瑤子(柴田葉子),山田裕貴(北条保),片山萌美(北条希),柄本明(川戸頼次),高良健吾(前園巧),池脇千鶴(宮部希衣),樹木希林(柴田初枝).2
映画の冒頭,柴田治と祥太がスーパーマーケット内を歩きながら万引きをする.目的の品をゲットし,地元の商店街に戻ってコロッケを購入する2人.
ところがその帰り道,虐待されマンションのベランダに放置されたゆりを見つけ,連れ帰ることにする.家に帰ると「家族」は夕飯の最中だ.3
初枝の家に住む信代・治の夫婦,孫の亜紀・祥太はいずれも血のつながりのない他人同士.生活は初枝の僅かな年金と信代・治のパートの給料,後は万引きでまかなっている.そこにゆりも加え,6人となる「家族」の物語.
信代はクリーニング工場のバイト,治は建築現場の補助作業員で働き,亜紀はファッションヘルスでバイトをしている.祥太(10歳前後?)は学校に通わず自宅で自学自習し,出かけては万引きをする.ゆり(5歳前後?)は祥太について万引きを習得しつつ,次第に「家族」に心を開いていく….
映画はこの「家族」の日常を淡々と描写しつつ,如何にこの「家族」が形成されていったかを次第に明らかにしていく.成員のそれぞれは深い傷を抱え,この「家族」に転がり込んできた.その結果形成された「家族」は,強い絆を持つに至る.その絆が表現される海水浴のシーンは,その前段のゆりの水着の万引きシーンと併せ,何と明るく楽しいことだろう.4
しかしこの後,家族の絆は破綻していくことになる.エピローグでの治と祥太の別離のシーンには,涙を禁じ得ない.万引きという手段で支えられた「家族」は,祥太の成長と正義感の目覚めと共に,瓦解せざるを得なかったのか.
自分が印象的だったのは,幾つかの「涙」の場面.
信代とゆりが初めて一緒に入浴し,信代の腕の傷跡をゆりがさわる.アイロンで火傷したのだと信代が言い,ゆりは自分もそうだと腕の火傷跡を示す.その後縁側でゆりを抱いて花火を見上げる信代,ゆりが信代の頬をさする.信代が涙を流しているのだ.
あるいは亜紀が自分の顧客「4番さん」とトークプレイをするシーン.取り止めもない話を一方的に亜紀がするが,「4番さん」は無言のまま.プレイ時間が終了して亜紀の膝枕から起き上がる「4番さん」,亜紀の膝に涙が残る.5
そして信代が刑事の取り調べを受けるシーン.子供達は信代を母と呼んでいたのかと問われ,信代ははぐらかす様に手で顔をこすり続ける.しかしやがて,隠しようもなく滂沱と流れる涙.
それぞれ「家族」・「絆」という命題に対する,監督のメッセージが示されているようだ.
映画は緊張感高くしかし楽しく進行する.俳優の活躍は(子役含めて)期待通り.リリー・フランキーは明るく気弱な小悪党を,安藤サクラは現代の日本の母性を体現したような演技.
樹木希林の演技は,社会に対してはしたたかに生きつつ「家族」に対しては何処までも優しい,昭和的な母性を見る様だ.6_2
細野晴臣の音楽も印象的.
パルムドールに相応しい,見応えのある映画.監督・キャスト・スタッフの出会いと,この映画に結実した力量が素晴らしい.
★★★★☆(★5個が満点)
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2018/06/09

独断的映画感想文:ファントム・スレッド

日記:2018年6月某日
映画「ファントム・スレッド」を見る.1
2017年.監督:ポール・トーマス・アンダーソン.
出演:ダニエル・デイ=ルイス(レイノルズ・ウッドコック),レスリー・マンヴィル(シリル・ウッドコック),ヴィッキー・クリープス(アルマ・エルソン),カミーラ・ラザフォード(ジョアンナ),ジーナ・マッキー(ヘンリエッタ),ブライアン・グリーソン(ロバート・ハーディ),ハリエット・サンソム・ハリス(バーバラ).2
ウッドコックはロンドンの高級仕立て服ハウスのオーナー,姉シリルをマネージャー役として,完全主義の仕事が社交界からも高く評価されている.
仕事のストレスに疲れ一人車で別荘に向かったウッドコックは,途上のレストランで若く美しいウエイトレスのアルマと出会う.一目でアルマが気に入ったウッドコックは彼女を自邸に迎え入れ,その美貌とウッドコックの服飾モデルへの要求にぴったりの肢体は,ウッドコックの創作欲を刺激する.3
やがて二人は愛し合うと同時に,ウッドコックの服飾への思いも共有するようになるが,一方でウッドコックなりのやり方で運営されてきた暮らしは,アルマによってかき乱される.他方,シリルにより完璧に庇護されているウッドコックに対し,自身がウッドコックを庇護するべきだと考えたアルマは,ある日思い切った行動に出る….
1950年代ロンドンの服飾ハウスや,郊外の別荘を舞台に繰り広げられる映像美がまず魅力的.4
演じる主演3名の演技も誠に見応えあり.特に別荘の食堂で,アルマが倒錯的な愛のかたちを提示し,ウッドコックがそれを受け入れていく長いシーン,ヴィッキー・クリープスとダニエル・デイ=ルイスの緊張感に満ちた演技が素晴らしい.初々しいアルマが女の凄みを示していく過程もスリリングだ.
同じ監督・主演の「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」でも担当した,ジョニー・グリーンウッドの音楽が,今回も印象的.映画的魅力に満ちた作品.
★★★★(★5個が満点)
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2018/06/01

独断的映画感想文:モリのいる場所

日記:2018年5月某日
映画「モリのいる場所」を見る.1
2017年.監督:沖田修一.
出演:山崎努(熊谷守一),樹木希林(熊谷秀子),加瀬亮(藤田武),吉村界人(鹿島公平),光石研(朝比奈),青木崇高(岩谷),吹越満(水島),池谷のぶえ(美恵ちゃん),きたろう(荒木),林与一(昭和天皇),三上博史(知らない男).
映画冒頭は,熊谷守一の作品を眺めている昭和天皇のアップ.「この絵は何歳の子供が書いたのか」とのご下問あり侍従が困惑している.2
映画は自宅の庭から外には一歩も出ずに30年間を暮らしているモリこと熊谷守一と,その妻秀子の飄々とした生活を描く.庭の草花,虫,蛙,トカゲ,自らが掘った池の魚たちを観察し共に生きそして共に昼寝するモリ.一方夜になると秀子に「学校の時間ですよ」とアトリエに追いやられ,創作に向き合う羽目になる.
モリの家には来客が多く,書の依頼者や写真家・藤田も出入りする.自宅の表札はモリが自作するためしょっちゅう盗まれる.世の中の時間とは無縁のモリの家のようだが,日照を大幅に遮るかたちで隣接地にマンションが建ちつつある….3
青春映画というカテゴリーがあるとすれば,この様な映画は白秋映画か玄冬映画と言うべきなのだろうか.
山崎努と樹木希林は文学座の先輩・後輩ではあるが,共演はこれが初めてだそうな.
この二人の息のあった演技がとにかく見もの.食事中やにわにモリがウィンナソーセージを食べる前にペンチで潰す,その瞬間布巾をさっと掲げて飛び散る油を防ぐ秀子.あるいは文化勲章内定を告げてきた電話に出た秀子が,来客が増えるのは嫌だというモリの対応に即座に「要らないと言ってます」と告げて切ってしまうシーン.両者の間がまさに絶妙である.5
共演も達者揃いで安心して映画を見ることが出来る.
こういう老境なら是非なって見たいと思わせる,ほんわか映画.終盤で,新設なった隣地のマンションの屋上に上がった藤田が俯瞰するモリの家と庭,以外と狭い庭(敷地は80坪程度らしい)の片隅に潜むモリを縁側から秀子が呼んでいる.何となく胸を突かれるラストシーン.4
★★★★(★5個が満点)
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2018/05/23

独断的映画感想文:セインツ -約束の果て-

日記:2018年5月某日
映画「セインツ -約束の果て-」を見る.1
2013年.監督:デヴィッド・ロウリー.
出演:ケイシー・アフレック(ボブ・マルドゥーン),ルーニー・マーラ(ルース・ガスリー),ベン・フォスター(パトリック),ネイト・パーカー(スウィーティー),ラミ・マレック(ウィル),キース・キャラダイン(スケリット).2
ボブとルースは強盗が稼業.共にスケリットに育てられ,その息子フレディと犯行を繰り返しているが,二人は夫婦同然でルースは妊娠している.
ところが最後の犯行と臨んだ仕事で3人は保安官に追い詰められ,フレディは射殺され,ルースの銃弾は包囲陣のパトリックの肩を打ち抜く.3
ボブはルースの銃撃を自分の犯行として投降,ルースは無罪となりボブは刑務所へ.ルースはシルヴィアを産み,今は正業に就いているスケリットの援助でシルヴィアを育てている.
ボブはルースとシルヴィアを恋い慕い,遂に脱獄しルースの街に向かうが,一方パトリックはルースに思いを寄せていた….4
テキサスの自然を舞台とした純愛映画と言って良い.俳優も好演し,特に主役3人とキース・キャラダインの出来が良い.
終盤,ボブがルースのもとに迫り,一方ボブに稼いだ金を独り占めにされた仲間が派遣した殺し屋達もボブを追い,パトリックもルースの家を訪れるシルヴィア4歳の誕生日の夜がスリリング.5
但し,ボブとルースがどれほどの犯罪者なのかは殆ど説明がなく,強盗常習者で脱獄犯のボブがとても良い人に(どちらかと言えば被害者に)見えてしまう点は,若干問題あり.
カメラは美しく,バックに流れるカントリー&ウエスタンを中心とする音楽も心地よい.
★★★☆(★5個が満点)
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独断的映画感想文:新宿スワンII

日記:2018年5月某日
映画「新宿スワンII」を見る.Ii1
2017年.監督:園子温.
出演:綾野剛(白鳥龍彦),浅野忠信(滝マサキ),伊勢谷友介(真虎),深水元基(関玄介),金子ノブアキ(葉山豊),村上淳(時正),久保田悠来(洋介),上地雄輔(森長千里),広瀬アリス(小沢マユミ),高橋メアリージュン(アリサ),桐山漣(鼠賀信之助),中野裕太(ハネマン),中野英雄(田坂晃),笹野高史(砂子),要潤(梶田),山田優(涼子),豊原功補(山城神),吉田鋼太郎(天野修善),椎名桔平(住友宏樹).Ii3
新宿歌舞伎町のスカウトグループ,バーストに所属する白鳥龍彦.前作で渋谷のグループ・ハーレムと統合したバーストは横浜進出を目指し,関と白鳥に横浜殴り込みを命じる.
関は横浜を仕切るウィザードを率いる滝との因縁の決着のために,白鳥は第1作で親友だった洋介の消息を求めて,横浜に向かう.折りしも横浜に大規模キャバレー開設を目指す全日本酒販連合会がキャバ嬢の大量スカウトを要望,ウィザードとバーストの熾烈な争いは,それぞれの上部団体のやくざを巻き込んで始まる….Ii2
人気コミックの実写化第2弾.
この映画の魅力はコミックキャラの白鳥龍彦をきっちりと演じる綾野剛の魅力と,園子温監督のカメラワーク・テンポの良さにある.また脇を固める俳優陣も,コミックらしい濃いキャラクターを過不足無く演じて見応えあり.Ii5
ヒロインは広瀬アリスだが,こちらは前回の沢尻エリカに比べると今一歩.特にダンスで審査員を魅了するシーンでは,体がふっくらしすぎて説得力に欠ける.そんなこんなで★★★(★5個が満点)
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2018/05/17

独断的映画感想文:モアナと伝説の海

日記:2018年5月某日
映画「モアナと伝説の海」を見る.0
2016年.監督:ジョン・マスカー/ロン・クレメンツ.
音楽:マーク・マンシーナ.声の出演:アウリイ・クラヴァーリョ(モアナ),ドウェイン・ジョンソン(マウイ),レイチェル・ハウス(タラおばあちゃん).2
南海の楽園,モツゥヌイ島.16歳の少女モアナは島長の娘,いつか島を治めることになる.
あるとき島では魚が捕れず,農作物が枯れ死する現象が起き始める.おばあちゃんに依れば,これは昔半神・半人のマウイが,女神テ・フィティの“心”を盗んだために生まれたという暗黒の襲来によるものだった.
島では珊瑚礁の外に出ることは固く禁じられていたが,海と特別の繋がりを持つモアナは,かって大海を押し渡った先祖の船に乗り,マウイを見つけ出して女神に“心”を返させるための,冒険の旅に出る….4
ディズニーのアニメーションミュージカル.ポリネシアの伝説に基づく物語らしいが,登場人物や楽曲は如何にもアメリカ風,この辺は好みに依るところだろう.5
一方映像の美しさやキャラクターの動き等は,ディズニーアニメならではの力があり,魅了された.特に,海や波の水の描き方は誠に素晴らしく,今まで見たことのない魅力がある.この点だけでも見て損はなし.
★★★☆(★5個が満点)
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