2018/10/01

独断的映画感想文:わたしは、ダニエル・ブレイク

日記:2018年10月某日
映画「わたしは、ダニエル・ブレイク」を見る.
2016年.監督:ケン・ローチ.
出演:デイヴ・ジョーンズ(ダニエル・ブレイク),ヘイリー・スクワイアーズ(ケイティ),ディラン・フィリップ・マキアナン(ディラン),ブリアナ・シャン(デイジー),ケイト・ラッター(アン),シャロン・パーシー(シェイラ),ケマ・シカズウェ(チャイナ).1_2
大工として40年間生きてきたダニエル・ブレイク,しかし心臓病が見つかり医師からは仕事を止められる.
公的支援の手続に行くと,当初認められた支援は,役所が委託した民間会社の「医療専門家」スタッフとの面談で取り消されてしまう.その場で役所のスタッフに不当な取扱を受けていたケイティと知り合うが,彼女は未婚の2児の母だった.
3_2
ケイティ一家を支援しつつ不服審査申請の手続も進めるが,当面は就職活動をするようにとの役所の指示が出て,やむなく役所の指定した履歴書作成講習も受け,週35時間の就職活動を律儀にこなすダニエル.しかし根拠となるエビデンスがないという理由でその活動すら役所から認められず,かえって処罰を喰らう.
一方ケイティは自身を犠牲にしての育児に疲れ,万引きに手を出してしまう….4_2
ダニエルとケイティを傷めつける役所の頑迷な保身行動は,何も英国保守党政権に限ったことではなく,我が国の現政権でも同様であろう.
この役所の,自身のルールを押し通すためにはひとの尊厳を傷つけ惨めな目に遭わせることを意に介さない様は,G.オーウェルの「1984年」を彷彿とさせるものがある.

5
主人公等を演じるデイヴ・ジョーンズとヘイリー・スクワイアーズが好演.ケイティが子供に食事を回した結果,飢えのあまりフードバンクで貰った食材をその場で口にしてしまうシーンは,涙を禁じ得ない.
またダニエルの,自身の不服審査で読み上げるための原稿も感銘的.
人間にとって尊厳が如何に大切なものかを,改めて思い出させる映画,一見の価値あり.
★★★★(★5個が満点)
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独断的映画感想文:スペースウォーカー

日記:2018年9月某日
映画「スペースウォーカー」を見る.1
2016年.監督:ドミトリー・コンスタンチーノヴィチ・キセリョフ,監修:アレクセイ・レオーノフ.
出演:エフゲニー・ミローノフ/コンスタンチン・ハベンスキー/ヴラディミール・イリイン/アレクサンドラ・ウルスヤク.
2
1965年に打ち上げられた衛星宇宙船ボスホート2号で人類初の宇宙遊泳が行われた.この映画はその搭乗飛行士:アレクセイ・レオーノフとパーヴェル・ベリャーエフの活躍を描いたもの,アレクセイ・レオーノフ自身が監修し既に亡くなっているパーヴェル・ベリャーエフに捧げられている.
計画は冷戦下であり且つアメリカとの宇宙競争のまっただ中に企画され,2年前倒しで行われることになった.関係者の必死の努力にも拘わらず,無人実験機での飛行は帰還段階で失敗し,不安を残したままボスホート2号は打ち上げられる.
3
宇宙船は無事軌道に乗り,アレクセイの宇宙遊泳はTVカメラによる生中継で全世界に送信されたが….
その直後宇宙服の不調で,一時宇宙船に帰還できなくなったこと,宇宙船内のセンサー異常で酸素濃度が過度にに上がったこと,地表帰還のための自動点火が起動しなかったこと等,次々に起こる想定外の事態に必死に対応する両飛行士の苦闘が,スリリングに描かれる.
更に地球帰還後も,手動降下による着陸地点が不明だったため当局が把握できないまま,両飛行士はシベリアのタイガ地帯で凍死の危機にさらされる.
4
両飛行士が生還できたことは歴史的事実であるにもかかわらず,この展開は誠にサスペンスフルで,ヘリコプターが遂に二人を発見した時は涙が出た.全体として緊張感高く息もつかせない展開が印象的だ.
プロローグとエピローグに現れる幼少期のアレクセイのエピソードも合わせ,ドキュメンタリー的映画の枠を越えたロシア映画の表現力を味わえる良作,極めてアメリカ的だった「アポロ13」との対比も面白いだろう.
★★★★(★5個が満点)
蛇足:アレクセイの愛称はアリョーシャである.字幕でアレックスと表記され続けたのは違和感あり.
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2018/09/24

番外:独断的歌舞伎感想文 2018年秀山祭夜の部 操り三番叟/俊寛/幽玄

日記:2018年9月某日
歌舞伎座で秀山祭9月大歌舞伎夜の部を見る.Img_20180922_210812
「一、松寿操り三番叟(まつのことぶきあやつりさんばそう)」.出演:三番叟(幸四郎),後見(吉之丞).
近松門左衛門 作 平家女護島.「二、俊寛(しゅんかん) 鬼界ヶ島の場」.出演:俊寛僧都(吉右衛門),海女千鳥(雀右衛門),丹波少将成経(菊之助),平判官康頼(錦之助),瀬尾太郎兼康(又五郎),丹左衛門尉基康(歌六).
坂東玉三郎・花柳壽輔 演出・振付.「三、新作歌舞伎 幽玄(ゆうげん) 羽衣/石橋/道成寺」.出演:天女/白拍子花子(玉三郎),伯竜/獅子の精(歌昇),伯竜/獅子の精(萬太郎),伯竜/獅子の精(種之助).
操り三番叟は幸四郎,人形振りが素敵な踊り.
Kabukiza09_shunkan
俊寛は吉右衛門円熟の舞台,従来の幕切れは手を振り船を呼び続ける演出が多かったが,今回は只呆然と虚空を凝視し続ける.感動した.瀬尾の又五郎が朗々たる声で悪役を好演.
幽玄は鼓童の和太鼓を中心とした新作舞踊,踊りを見るより音楽を聴く要素が強い感あり.玉三郎は羽衣の踊りは良かったが,一般に踊りの方はあまり感心せず.中で石橋(歌昇等)は若々しく力強い踊りあり.
幽玄はやや長く感じたが,全体には見応えある良い舞台だった.この日の3階席には,花道に人が出ると平然と前のめり・中腰になる客が多く,殆ど花道は見えなかった.なんたることだ.
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独断的映画感想文:永い言い訳

日記:2018年9月某日
映画「永い言い訳」を見る.1_2
2016年.監督:西川美和.
出演:本木雅弘(衣笠幸夫(津村啓)),竹原ピストル(大宮陽一),藤田健心(大宮真平),白鳥玉季(大宮灯),堀内敬子(大宮ゆき),池松壮亮(岸本信介),黒木華(福永智尋),深津絵里(衣笠夏子).6
作家の衣笠幸夫はTVにモデル売れっ子作家だが,最近はまともな作品が書けない.妻の夏子はヘアスタジオを主催する美容師,映画の冒頭幸夫はその夏子に髪を刈ってもらっている.
やがて散髪は終わり,夏子は親友・大宮ゆきとバス旅行へ行く.入れ替わりに愛人の編集者福永を引き込んで情事にふける幸夫.ところが夏子の乗ったバスはその夜事故を起こし,夏子とゆきは帰らぬ人となる.
夏子の死後メディアの手前を取り繕いつつ,荒れた生活を送る幸夫.遺族会で初めて会ったゆきの夫・大宮陽一と思いがけないつき合いが始まり,長距離トラック運転手である陽一の子供・真平と灯の面倒を見ることになる.
ゆきを失った大宮一家の世話をしながら陽一と議論することを通じ,自分と夏子の関係を省みる幸夫だったが….2_2
ゆきに頼り切り,ゆきの喪失を嘆き悲しみながら暮らす陽一に対し,細々と助言し面倒を見る幸夫.しかしそのことを通じて幸夫は,逆に自分にとって夏子が如何に大切だったかを,長い時間をかけて教えられていくことになる.3_2
大宮一家の人々を通じて再生していく幸夫を演じる本木雅弘が,素晴らしい.
深津絵里は短い出演ながら圧倒的な存在感,特に真平・灯と共に登場する海辺の幻のシーンには,涙を禁じ得ない.5
竹原ピストルと子役達の大宮家も素敵な演技.見て損はなし.
★★★★(★5個が満点)
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独断的映画感想文:散歩する侵略者

日記:2018年9月某日
映画「散歩する侵略者」を見る.1
2017年.監督:黒沢清.出演:長澤まさみ(加瀬鳴海),松田龍平(加瀬真治),高杉真宙(天野),恒松祐里(立花あきら),前田敦子(鳴海の妹・明日美),満島真之介(丸尾),児嶋一哉(車田刑事),光石研(鈴木社長),東出昌大(牧師),小泉今日子(医者),笹野高史(品川),長谷川博己(ジャーナリスト・桜井).
2
或る日日本で宇宙人の侵略が始まる.
宇宙人は少年・天野と少女・あきらの肉体を侵略し,一家殺害事件を起こしたあきらの取材に来た記者・桜井を「ガイド」として,地球侵攻の準備を始める.桜井は彼等が宇宙人かどうか半信半疑ながら,記者根性で協力に応じる.
鳴海の夫・真治も侵略された一人.挙動がおかしくなった真治を病院に連れて行った鳴海は既に夫と破綻しかけていたが,侵略され一見以前の夫に近くなった真治への期待を持って,「ガイド」を勤めることになる.
侵略者は人間の持つ「概念」を情報収集のために奪うが,奪われた人間はその概念を失ってしまう.そこから巻き起きる騒動を交え,3人の侵略者が邂逅して進む宇宙人の侵攻の過程を描く….3
侵略者と「ガイド」の関係が,物語の進行に伴ってどんどん変転していく独特の視点が面白い.特に,侵略者となったが本来の夫らしい個性を取り戻す真治と,再び夫にたいする溢れるような愛情を取り戻す鳴海の関係が,魅力的.演じる松田龍平と長澤まさみに見応えあり.
4
侵略者と戦う日本政府側は,ウィルス感染として対応した厚労省の担当エージェントが,縦割り行政のお陰か為す術もなく全滅するのが情けない.
ちょっと変わった侵略もの,見終わった後の気分は良い.
★★★☆(★5個が満点).
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番外:独断的歌舞伎感想文 2018年秀山祭昼の部 金閣寺/鬼揃紅葉狩/河内山

日記:2018年9月某日
歌舞伎座で「秀山祭九月大歌舞伎 昼の部」を見る.Kabukiza_201809_f5_1a273a82c98ed7_2
「一、祇園祭礼信仰記 金閣寺(きんかくじ)」.出演:此下東吉実は真柴久吉(梅玉),雪姫(児太郎),狩野之介直信(幸四郎),松永鬼藤太(坂東亀蔵),此下家臣春川左近(橋之助,同 戸田隼人(男寅),同 内海三郎(福之助),同 山下主水(玉太郎),腰元(梅花),腰元(歌女之丞),十河軍平実は佐藤正清(彌十郎),松永大膳(松緑),慶寿院尼(福助).
萩原雪夫 作,今井豊茂 補綴.「二、鬼揃紅葉狩(おにぞろいもみじがり)」.出演:更科の前実は戸隠山の鬼女(幸四郎),平維茂(錦之助),侍女かえで(高麗蔵),侍女ぬるで(米吉),侍女かつら(児太郎),侍女もみじ(宗之助),従者月郎吾(隼人),従者雪郎太(廣太郎),男山八幡の末社(玉太郎),男山八幡の末社(東蔵).
河竹黙阿弥 作.「三、天衣紛上野初花 河内山(こうちやま) 上州屋質見世,松江邸広間,同 書院,同 玄関先」.出演:河内山宗俊(吉右衛門),松江出雲守(幸四郎),宮崎数馬(歌昇),大橋伊織(種之助),黒沢要(隼人),腰元浪路(米吉),北村大膳(吉之丞),高木小左衛門(又五郎),和泉屋清兵衛(歌六),後家おまき(魁春).Kabukiza09_kouchiyama
金閣寺は児太郎が美しく口跡良く見応えあり.特に立ち姿はお姫様らしくてきれい.贔屓の松緑も良い芝居で嬉しい.復帰の福助に拍手,福助は2013年8月に歌舞伎座で見て以来である.
鬼揃紅葉狩は音楽が素晴らしい.囃子方に竹本・常磐津が入れ替わり入れ替わり加わる他,中盤では大薩摩の演奏もあり,堪能した.踊りは,もうすぐ18になる玉太郎がお祖父さんの東蔵と踊った男山八幡の末社が,若々しくて素敵だった.
河内山は吉右衛門が魅力を存分に発揮,魁春がツボにはまったお内儀役で良かった.
それぞれ魅力ある演目で誠に見応えあり.
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2018/09/12

独断的映画感想文:ジャッキー/ファーストレディ 最後の使命

日記:2018年9月某日
映画「ジャッキー/ファーストレディ 最後の使命」を見る.1
2016年.監督:パブロ・ラライン.音楽:ミカ・レヴィ.
出演:ナタリー・ポートマン(ジャクリーン・ケネディ(ジャッキー)),ピーター・サースガード(ロバート・F・ケネディ(ボビー)),グレタ・ガーウィグ(ナンシー・タッカーマン),リチャード・E・グラント(ビル・ウォルトン),ビリー・クラダップ(ジャーナリスト),ジョン・ハート(神父).
2
1963年11月.ケネディ暗殺事件から間もない或る日,米誌ライフの記者がジャクリーン・ケネディを訪れる.ジャクリーンは自分が記事を検閲することを条件に,ロングインタビューに応じる.そこで語られる,暗殺直後から国葬までの4日間を中心とした物語.
冒頭,彼女が改装し面目を一新したホワイトハウスの内装が紹介された1962年放映のTV番組が紹介される.未だ31歳,スタッフのナンシーの助力を得ながら堂々とカメラに向かうジャクリーン.初々しい彼女の才気が溢れている.
3
大統領の受傷直後から病院への急行,大統領専用機での副大統領リンドン・B・ジョンソンの就任宣誓に血に汚れた服で立ち会うジャクリーン.彼女はワシントンでボブ・ケネディと会い,初めて心からの悲しみにひたる….
映画は緊張感に満ちている.
深い悲哀と喪失感の中,子供達に父の死を伝え,ケネディの葬られるべき場所を自ら選定し,国葬では棺の後を徒歩で進むことを決定するジャクリーン.ケネディ家・民主党政権のスタッフ・警備関係者等とのやり取りを強い意志で乗り切っていく一方,ケネディとの思い出にひたり牧師に心情を告白する姿は痛々しい.ナタリー・ポートマンの演技は誠に見応えあり.4
またジャクリーンを労る牧師のジョン・ハート,若々しいボブ・ケネディを演じたピーター・サースガードが印象的だった.
冒頭の不安と緊張に満ちた響きから,ラストシーンのある落ち着きに至るミカ・レヴィの音楽も素晴らしかった.見て損はなし.
★★★☆(★5個が満点)
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2018/09/04

番外:独断的歌舞伎感想文 義経千本桜 道行初音旅/川連法眼館

日記:2018年9月某日
「巡業 松竹大歌舞伎 西コース」を見る.Jungyo_2018west_4a36c66f31c33e5036b
「義経千本桜 一、道行初音旅 清元連中 竹本連中」.出演 佐藤忠信実は源九郎:片岡愛之助,静御前:中村壱太郎,逸見藤太:市川猿弥.「義経千本桜 二、川連法眼館 一幕」.出演 佐藤忠信・佐藤忠信実は源九郎:片岡愛之助,静御前:中村壱太郎,亀井六郎:市川猿弥,川連法眼:中村寿治郎,法眼妻飛鳥:上村吉弥,駿河次郎:中村松江,源義経:市川門之助.
道行初音旅は踊りがメイン,壱太郎はさすがに市民会館の花道が狭くて踊りにくそうだ.後段,忠信との踊りになるといきいきとして見違える様.
川連法眼館では,愛之助が音羽流の忠信を忠実に演じて熱演に拍手.壱太郎がここでもしっかりとした演技・口跡で見応えあり.
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独断的映画感想文:菊とギロチン

日記:2018年8月某日
映画「菊とギロチン」を見る.1_2
2018年.監督:瀬々敬久.
出演:木竜麻生(花菊ともよ),東出昌大(中濱鐵),寛一郎(古田大次郎),韓英恵(十勝川たまえ),渋川清彦(岩木玉三郎),山中崇(和田久太郎),井浦新(村木源次郎),大西信満(飯岡大五郎),嘉門洋子(玉椿みつ),大西礼芳(勝虎かつ),山田真歩(小桜はる),嶋田久作(田中半兵衛).3
アナーキストグループ「ギロチン社」は,関東大震災で大杉栄が虐殺されたことに対し復讐を決意,様々な事件を起こすが不成功に終わる.
残党の中濱・古田は東京近郊の海浜に潜伏,当地巡業中の女相撲・玉岩興業の相撲を見物して大いに共感,玉岩興業のチラシを作成して配布する等,行動を共にする様になる.4
一座には山形出身の力士の他,朝鮮人で遊郭にいた十勝川,沖縄出身の与那国等がおり,前頭の花菊は姉の死後その後妻に入るが,夫の暴力に耐えかねて逃げ出し一座に加わっている.
親方の岩木は興行主との関係を保ちつつ,様々な出自の力士達に目配りする,芯のしっかりした豪気な男.中濱・古田の出入りも黙認する.やがて中濱は十勝川と,古田は花菊とお互いに好意を持つ様になる.
5
一方地元の在郷軍人会の分会長・飯岡は,十勝川を朝鮮人と知り,拉致・拷問して震災時の朝鮮人の「犯行」を「自白」させようとするが….
3時間を越える長尺だが,アナキストグループと女相撲という特異な集団の交流を描いて間断するところがない.女相撲の興業を見事に再現した映像は,素晴らしかった.巡業地の砂浜で一座と中濱・古田,更に震災難民や地元の漁師も交えて踊り歌うシーンは誠に印象的.2
この後アナキストグループは闘争をエスカレート,また一座には花菊の夫が妻を取り戻しに来る等波乱が続く.大正13年・14年という,経済的破綻と軍部の台頭する不穏な空気を背景に描かれる勇壮な叙事詩.見応えあり.
★★★★(★5個が満点)
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ようやっと25万アクセス突破

台風21号が接近中で不要不急の外出を控えていたら,本blogが25万アクセスを越えていることに気付きました.
まあ細々と続いている本blogですが,それでも細々と見て下さる方がおられるようで,有り難いことであります.
Photo
これからも楽しく映画を見て独断的感想を上げていきたいと思いますので,相変わらぬご贔屓を頂きます様,宜しくお願い申し上げます.好きな映画の一つのポスターを掲げて,ご挨拶といたします.

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2018/09/01

独断的映画感想文:彼女がその名を知らない鳥たち

日記:2018年8月某日
映画「彼女がその名を知らない鳥たち」を見る.1
2017年.監督:白石和彌.
出演:蒼井優(北原十和子),阿部サダヲ(佐野陣治),松坂桃李(水島真),村川絵梨(國枝カヨ),赤堀雅秋(酒田),赤澤ムック(野々山美鈴),中嶋しゅう(國枝),竹野内豊(黒崎俊一).2_2
十和子は陣治と暮らす家を殆ど出ず,クレームの電話をかけたりビデオを見たりの自堕落な日々を送る.15歳年上の陣治はひたすら十和子に仕えるが,十和子はその稼ぎで暮らしているのに陣治には殆ど身体も許さない.
十和子は8年前付き合っていた黒﨑にひどい仕打ちを受け,暴行され捨てられたのだが,彼女は未だに黒﨑が忘れられない.クレームの担当者で黒﨑に似た感じの水島と付き合うようになるが,水島は女を引っかけては捨てる男らしい.3
一方,水島と十和子の情事を陣治は尾行していた.黒﨑が5年前から失踪しているという情報を得た十和子は,陣治が黒﨑の失踪に関係しているのではないかと疑うが….
4
出だしは不愉快極まりない十和子と陣治の共同生活の描写,それがミステリーとなりサスペンスとなり,最後に恋愛物語に昇華していく.それを演じていく蒼井優と阿部サダヲの演技が見応えあり.

5
後半次々に明らかになる事実の展開には圧倒される.全ての事実が明らかになったあと,ラストシーンで十和子が見上げる「彼女がその名を知らない鳥たち」の乱舞は印象的.
★★★★(★5個が満点)
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番外:独断的歌舞伎感想文 新作歌舞伎「NARUTO -ナルト-」

日記:2018年8月某日
新橋演舞場で新作歌舞伎「NARUTO -ナルト-」を見る.Shinbashi_201808_f5_60b3f3078388006
うずまきナルト(坂東巳之助),うちはサスケ(中村隼人),綱手(市川笑也),大蛇丸(市川笑三郎),春野サクラ(中村梅丸),うちはイタチ(市瀬秀和),はたけカカシ(嘉島典俊),自来也(市川猿弥),うちはマダラ(片岡愛之助).
人気長編コミックの歌舞伎舞台化.脚本・演出は7年前に見た新作歌舞伎『東雲烏恋真似琴』で大谷竹次郎奨励賞を受賞したG2.予備知識ゼロで見たが,冒頭いきなり竹本で始まったのには吃驚.
忍者学校の劣等生ナルトが,同級生サスケ等と共に成長しながら,九尾の狐の魔力を我が物にして世界を牛耳ろうという,うちはマダラの陰謀と戦う物語.
舞台をうまく使ったテンポの良い作品で,若手らしいアクションシーンが魅力的だ.客席も若い観客が目立ち賑やかな雰囲気,久しぶりの新橋だったが楽しかった.
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番外:独断的歌舞伎感想文 8月大歌舞伎3部 「通し狂言 盟三五大切(かみかけてさんごたいせつ)」

日記:2018年8月某日
歌舞伎座で「8月大歌舞伎3部 盟三五大切」を見る.Img_20180819_144710
四世鶴屋南北 作,郡司正勝 補綴・演出,織田紘二 演出.「通し狂言 盟三五大切(かみかけてさんごたいせつ) 序幕:佃沖新地鼻の場,深川大和町の場.二幕目:二軒茶屋の場,五人切の場.大詰:四谷鬼横町の場 愛染院門前の場」.
出演:薩摩源五兵衛(幸四郎),芸者小万(七之助),家主くり廻しの弥助(中車),ごろつき五平(男女蔵),内びん虎蔵(廣太郎),芸者菊野(米吉),若党六七八右衛門(橋之助),お先の伊之助(吉之丞),里親おくろ(歌女之丞),了心(松之助),廻し男幸八(宗之助),富森助右衛門(錦吾),ごろつき勘九郎(片岡亀蔵),笹野屋三五郎(獅童).
複雑な人間関係と凄惨な殺し場が特徴の,鶴屋南北の傑作狂言.
芸者小万に入れ揚げ何より大切な100両の金をまんまと美人局で巻き上げられる浪人源五兵衛,源五兵衛の狂気の5人切りを忠義のために身替わりとなって自首するその若党,源五兵衛に最愛の女房を斬殺されながら主筋と知って自らは切腹して果てる三五郎.
死屍累々の末,源五兵衛は義士の一員となり「めでたしめでたし」となる.やりきれない不条理劇だが緊張感高く,構成に隙が無い.役者がそれぞれに奮闘し,見応えがあった.
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2018/08/23

独断的映画感想文:美女と野獣

日記:2018年8月某日
映画「美女と野獣」を見る.
2017年.監督:ビル・コンドン.
出演:エマ・ワトソン(ベル),ダン・スティーヴンス(野獣),ルーク・エヴァンス(ガストン),ケヴィン・クライン(モーリス),ジョシュ・ギャッド(ル・フウ),ユアン・マクレガー(ルミエール),スタンリー・トゥッチ(カデンツァ),ネイサン・マック(チップ),ググ・ンバータ=ロー(プリュメット),オードラ・マクドナルド(マダム・ド・ガルドローブ),イアン・マッケラン(コグスワース),エマ・トンプソン(ポット夫人).1
傲慢の罪で魔女の呪いをかけられた王子とその召使い・城.呪いを解くには,魔女が残したバラの花びらが全て散る前に,「愛し愛されること」を王子が知らねばならなかった.
一方近隣の村で父モーリスと二人暮らしの娘ベル,本の虫で変わり者と村中から相手にされない.或る日モーリスが森で狼に襲われ,偶然逃げ込んだ王子の城で囚われの身となってしまう.モーリスを救いに城に来たベルは,身替わりに城で暮らすことになるが….3
子供だましの通俗的映画.
きら星の様な配役だが,エマ・ワトソン以外は映画の殆どで家具や調度品として登場するので,あまり意味は無い.
音楽的にもエマ・ワトソンの歌唱に特に魅力は無く,感銘を受ける楽曲も無い.
2
フランスが舞台と言っているが,何故黒人の登場人物がこれだけ出てくるのか,理解に苦しむ.
大人の都合で作られた映画という印象が最後まで残った.見て楽しさは特に感じられない.
★(★5個が満点)
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番外:独断的歌舞伎感想文 八月納涼歌舞伎1部・2部 花魁草/龍虎/心中月夜星野屋/東海道中膝栗毛/雨乞其角

日記:2018年8月某日
「八月納涼歌舞伎1部・2部」を見る.Img_20180819_143037
第一部:北條秀司 作・演出,大場正昭 演出.「一、(おいらんそう)」.出演:お蝶(扇雀),幸太郎(獅童),座元の妾お八重(高麗蔵),客孝吉(松江),米之助女房お松(梅枝),お糸(新悟),客平助(虎之介),小料理屋女房(梅花),客音松(吉之丞),小料理屋亭主(松之助),達磨問屋主人五兵衛(市蔵),菊岡女将お栄(萬次郎),座元勘左衛門(彌十郎),百姓米之助(幸四郎).大野恵造 作.「二、龍虎(りゅうこ)」.出演:龍(幸四郎),虎(染五郎).小佐田定雄 脚本,今井豊茂 演出.「新作歌舞伎 三、心中月夜星野屋(しんじゅうつきよのほしのや)」.出演:おたか(七之助),星野屋照蔵(中車),藤助(片岡亀蔵),母お熊(獅童).
第二部:十返舎一九 原作より.杉原邦生 構成,戸部和久 脚本,市川猿之助 演出.「お伊勢参りにまた行くの!?一、東海道中膝栗毛(とうかいどうちゅうひざくりげ) 弥次郎兵衛・喜多八/梵太郎・政之助 宙乗り相勤め申し候」.出演:喜多八(猿之助),伊月梵太郎(染五郎),五代政之助(團子),弥次郎兵衛(幸四郎),獅童,七之助,中車,右團次,竹松,市川右近,弘太郎,寿猿,門之助.伊藤鷗二 作.「二、雨乞其角(あまごいきかく)」.出演:其角(扇雀),船頭(歌昇),同(虎之介),芸者(新悟),同(廣松),其角の弟子(橋之助),同(男寅),同(福之助),同(鷹之資),同(千之助),同(玉太郎),同(歌之助),同(鶴松),大尽(彌十郎).Kabukiza_201808f3_e38509b265db77210
花魁草は7年前のやはり8月歌舞伎で見た.浩太郎は今回と同じ獅童,お蝶は福助.
今回も最終場面の舞台構成の見事さに感銘を受けた.扇雀の訳ありお蝶の演技が秀逸.
心中月夜星野屋は落語ネタで気楽に見れる一幕だが,落ちがいまいち.ここはやはり死んだ筈の旦那が出てくる怪談仕立てでは無いだろうか.
膝栗毛は,喜多さんが死んじゃって弥次喜多のやり取りが無いのは残念.一方,冒頭の意味も無く延々と繰り返される獅童・中車・七之助の早替わりシリーズや,閻魔大王の前での踊りの饗宴等,歌舞伎本来のネタを使った奇想天外なやんちゃは,なかなか面白い.
染五郎・團子のコンビや,市川右近の大活躍が楽しい.全体に8月らしく若手の溌剌とした活躍が嬉しかった.
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2018/08/16

独断的映画感想文:タクシー運転手 ~約束は海を越えて~

日記:2018年8月某日
映画「タクシー運転手 ~約束は海を越えて~」を見る.1_2
2017年.監督:チャン・フン.
出演:ソン・ガンホ(キム・マンソプ),トーマス・クレッチマン(ユルゲン・ヒンツペーター(ピーター)),ユ・ヘジン(ファン・テスル),リュ・ジュンヨル(ク・ジェシク).
2_2
1980年5月に起こった韓国の光州抗争事件に際し,その現場を撮影し事件の真相を世界に知らせた記者と,彼を乗せて光州潜入・ソウルへの脱出を実現したタクシー運転手の,実話に基づく映画.
妻を癌で亡くし一人娘と暮らす個人タクシー運転手:キム・マンソプは,貧しいが陽気な男.一方戒厳令撤廃を求める学生・市民と軍との衝突が深刻になっていた光州,軍は光州を包囲封鎖し,通信も遮断して市民が暴徒化したとのニュースを流していた.
3_2
日本に滞在していたドイツ人記者ピーターは,光州の実情を知るべく身分を隠して渡韓.ピーターの「通行禁止期限までに光州に行ったら10万ウォン払う」という話に飛びついたキムは,サウジ出稼ぎで身につけた片言の英語を武器に,ピーターを乗せて光州を目指すが….
物語は光州での惨劇,ピーター等を支援する学生・市民等と軍隊・警察との争闘,ピーター達がフィルムを持って無事光州を脱出できるか,というサスペンスが軸となって進行する.冒頭からのユーモアに満ちた展開と,このハラハラドキドキは,見応えあり.
4_2
他方で,光州市民とキムとの交流・葛藤もよく描かれている.
ピーターを連れて来たものの,厳しい状況に腰の引けているキムに対する光州市のタクシー運転手等の批判や,一旦仲間と認めたあとは二人を自宅に招いて歓待し,脱出時には身体を張ってキム等を支援する彼等の真情は印象的だ.5_3
自分にとっては韓国市民の,まずはぶつかり合い(忖度などということはない),一旦気を許せば情を通わせ合うという特質が,興味深かった.
★★★☆(★5個が満点)
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独断的映画感想文:四川のうた

日記:2018年8月某日
映画「四川のうた」を見る.1
2008年.監督:ジャ・ジャンクー.
出演:ジョアン・チェン(シャオホァ),リュイ・リーピン(ダーリー),チャオ・タオ(スーナー),チェン・ジェンビン(ソン・ウェイドン).2
2007年,四川省成都にある420工場は,50年にわたるその歴史を閉じようとしていた.工場の閉鎖式,施設設備の解体撤去,新しい高層マンション群の建設と進む状況を背景に,この工場で働いたり,この工場地区で学び育った人々のインタビューで綴るドキュメンタリー.
本作は420工場の労働者・子弟4人のインタビューと,4人の俳優がそれらの人々を演じて行うインタビューとで構成されている.3
工場創業と文革前後を語る何錫崑,420工場設置の毛沢東の政策を語る関書記,90年代のリストラ状況を語る侯麗君,420工場で生まれ進学後TVキャスターになった趙剛は本人が出演.
一方,工場創設時の異動の旅で一人息子が行方不明になった大麗(ダーリー),80年代の不況下で別れる羽目になった医学生の彼女が,「赤い疑惑」の山口百恵と同じ髪型だったと語る栄衛東(ソン・ウェイドン),80年代に工場に勤め婚期を逃した小花(シャオホァ)こと顧敏華,1982年に工場で生まれ今は上海で高級品のバイヤーをしている蘇娜(スーナー)をそれぞれ俳優が演じてインタビューを行う.4
それぞれのインタビューは印象的で,本人出演の如何にも風雪に耐えてきた労働者という顔貌と語り口も素晴らしい.
一方,リュイ・リーピン,チャオ・タオのインタビューはそれぞれ好演で感銘を受けた.特にジャ・ジャンクー監督の全映画に出演しているチャオ・タオが,廃校となった420工場の学校で父と母を語る映画のラストシーンは素晴らしい.
5_2
途中で流れる「ありがとう あなた」(赤い疑惑主題歌)を始め,挿入される中国歌謡や詩文も趣があり,映画に厚みを与えている.
見応えあり.★★★★(★5個が満点)
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2018/08/12

独断的映画感想文:ドライブイン蒲生

日記:2018年8月某日
映画「ドライブイン蒲生」を見る.1_2
2014年.監督:たむらまさき.
出演:染谷将太(蒲生俊也),黒川芽以(蒲生沙紀),永瀬正敏(蒲生三郎),小林ユウキチ(須田満),猫田直(蒲生しのぶ),平澤宏々路(岸本亜希子),鈴木晋介(パン屋のおじさん),足立智充(沙紀の担任教師).
3_2
寂れきったドライブイン蒲生.店主の蒲生三郎はやくざっぽい駄目親父,店を開けずに昼間っから酒を飲む.
そんな父に激しく反発する姉沙紀はヤンキー,どっちつかずの弟俊也は不良になりきれないグータラ高校生.
彼等の父親との過去の葛藤を,現在の沙紀がDVの夫に決着をつけるため俊也と共に出かける姿と絡めて描くドラマ.2_2
映画の前半は家族それぞれの怠惰で無為な日々が淡々と描かれる.物語が動き出すのは父親の病死から.
父の危篤から葬儀に至る経過での沙紀と俊也の描写から,彼等なりの父への愛情が感じられる.それは現在に戻っていよいよDV夫と決着をつける場面での,沙紀と俊也の行動に繋がっていくのだ.5
沙紀と俊也の人間的成長,父親の受け入れと継承が印象的なラストシーンだった.
黒川芽以・染谷昇太の寡黙で動きの少ない演技が面白い.
★★★☆(★5個が満点)
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独断的映画感想文:道

日記:2018年8月某日
映画「」を見る.1
1954年.監督:フェデリコ・フェリーニ.
出演:アンソニー・クイン(Zampano),ジュリエッタ・マシーナ(Gelsomina),リチャード・ベイスハート(Il Matto).
2
貧しい上に頭の足りないジェルソミーナは,母親に1万リラで売られ,芸人ザンパーノと共に旅に出る.
ザンパーノは野獣のような男,ジェルソミーナを強引に妻にするが,彼女にラッパや太鼓を仕込み,ジェルソミーナも懸命に芸を覚える.
しかし,行く先々で金ができると女と酒に入れ込むザンパーノに,自分は何のために生きているのかと涙を流すジェルソミーナ.一時合流したサーカスの一座で,空中ブランコを演じる「キ印」と呼ばれる青年に,「小石一つでもこの世に存在する価値がある」と励まされたジェルソミーナ,しかし「キ印」とザンパーノは折り合いが悪く,遂に或る日悲劇が起こる….3
天使の様に純情でしかし大人の哀しみを背負って人生を歩むジェルソミーナ,野獣のように思いのままに人生を突き進もうというザンパーノ.
この二人がいっとき共に歩いた道が,如何に貴重な日々だったのか.そのことに思い至って夜の海岸で慟哭するザンパーノのシーンは,目に焼き付いて離れない.
4
ニーノ・ロータの音楽が素晴らしい.
スリルもスペクタルもないが,映画とはこういうものだということを存分に味わえる名作,必見です.
★★★★☆(★5個が満点)
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2018/08/07

独断的映画感想文:ウインド・リバー

日記:2018年7月某日
映画「ウインド・リバー」を見る.1_3
2017年.監督:テイラー・シェリダン.
出演:ジェレミー・レナー(コリー・ランバート),エリザベス・オルセン(ジェーン・バナー),ジョン・バーンサル(マット),グレアム・グリーン(ベン),ケルシー・アスビル(ナタリー),ギル・バーミンガム(マーティン).
2_3
映画の冒頭,夜の雪原を走っていく女性.やがて力尽きて倒れる.続いて羊を狙う狼の群れを,純白の雪上用迷彩服を着て狙撃・射殺するコリーのシーン.
ワイオミングのネイティブ・アメリカン居留地:ウインド・リバーで働く魚類野生生物局の職員コリーは,牛を襲ったピューマを追跡中,雪原に倒れた女性の遺体を発見する.
3_3
遺体は親友マーティンの娘で,3年前に亡くなったコリーの娘の親友,ナタリーだった.ナタリーの死因は極寒中逃走したための肺損傷によるもの.通報で派遣されてきたFBIの捜査官ジェーンは,コリーに協力を求め,地元警察と共に捜査を進めるが….
コリーの娘もかって行方不明になり,発見された時はコヨーテに食い荒らされて,死因も不明だった.コリーは白人だが,娘の死後別れた妻はネイティブだ.過酷な自然の居留地で繰り返される少女の死は,何故起こるのか.
本作はクライムサスペンスであると同時に,娘を失った父の復讐劇でもある.4_3
犯罪捜査の進行を描く物語は,ワイオミングの自然の厳しさを描くと共に,居留地住民の生活の闇もあぶり出す.コリーはヤク中のナタリーの兄に,「おまえは軍にも大学にも行かずこの道を選んだ」と言う.居留地の若者の選択肢は少ないのだ.
事件は凄まじい銃撃戦で決着が付く(特にコリーによる狙撃は衝撃的だ)が,銃でしか決着をつけられないアメリカ社会もまた大きな闇の中にある.5_3
緊迫感に満ちた映像,ニック・ケイヴとウォーレン・エリスの音楽が素晴らしい.主演のジェレミー・レナー,エリザベス・オルセンの演技も素晴らしかった.見応えある映画.
★★★★(★5個が満点)
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独断的映画感想文:通し狂言 三國無雙瓢箪久(さんごくむそうひさごのめでたや)出世太閤記

日記:2018年7月某日
歌舞伎座で「七月大歌舞伎 昼の部」を見る.Kabukiza_taikoki201807
織田紘二 補綴・演出,石川耕士 補綴・演出,川崎哲男 補綴・演出,藤間勘十郎 補綴・演出.「通し狂言 三國無雙瓢箪久(さんごくむそうひさごのめでたや)出世太閤記 市川海老蔵宙乗り相勤め申し候」.序幕;第一場 西遊記(夢の場),第二場 本能寺の場,第三場 備中高松城外、秀吉陣中の場.二幕目;第一場 小栗栖村竹薮の場,第二場 近江湖水の場,第三場 松下嘉兵衛住家の場.大詰;第一場 大徳寺焼香の場,第二場 同 奥庭の場.
出演:羽柴秀吉/孫悟空(市川海老蔵),明智光秀/明智左馬之助(中村獅童),松下嘉兵衛/柴田勝家(市川右團次),北畠信雄(中村松江),加藤清正(坂東亀蔵),沙悟浄/滝川一益(中村亀鶴),秀吉女房八重(中村児太郎),三法師(堀越勸玄),福島正則(市村竹松),森蘭丸/片桐且元(大谷廣松),神戸信孝(市川男寅),脇坂安治(中村玉太郎),猪八戒/小栗栖長兵衛(市川九團次),高山右近(大谷桂三),中川清秀(澤村由次郎),村越伍助/佐久間信盛(片岡市蔵),丹羽長秀(河原崎権十郎),三蔵法師/筒井順慶(市川齊入),百姓畑作/佐々成政(市村家橘),紅少娥実は金毛九尾狐(市村萬次郎),前田利家(大谷友右衛門),光秀妻皐月(中村雀右衛門),嘉兵衛妻呉竹(中村東蔵).Kabukiza_shido201807
海老蔵の太閤記概要の解説に続き,冒頭は蘭丸の見た夢の中の孫悟空の場.ここで無理矢理宙乗りとなるが,ややとってつけた感じ.
この後は本能寺の変から大徳寺の信長法要までの50日間の物語.筋立ては込み入っていて光秀と左馬之助が早変わり二役だったりして判りにくい.
備中高松城外、秀吉陣中の場では,獅童・児太郎が海老蔵と絡んで笑いを取る場だが,ここも笑いが滑りまくって,獅童はこういう芝居が下手なのかと思ってしまう.
という訳で完成度はいまいち.大徳寺焼香の場では,勸玄ちゃんの三法師が,隣で懸命に台詞を喋っている海老蔵の横で,寝落ちしそうになって客席がざわつく.幸い自分の台詞を間違えずに堂々と言えたが,本作で最もスリリングなシーンだった.
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独断的映画感想文:きいろいゾウ

日記:2018年7月某日
映画「きいろいゾウ」を見る.1_2
2012年.監督:廣木隆一.
出演:宮崎あおい(妻利愛子(ツマ)),向井理(武辜歩(ムコ)),濱田龍臣(大地),浅見姫香(洋子),本田望結(幼少時代のツマ),リリー・フランキー(夏目),松原智恵子(セイカ),緒川たまき(緑),柄本明(アレチ).2_2
三重県の農村地帯の一軒家に住むムコとツマ.
ムコは地元の介護施設に勤めながら小説を書いている.ツマは少女のように純粋な女性,動物や草木の語る声を聴くことができる.出会ってすぐに結婚した二人だが,互いに相手の知らない秘密を抱えている.3_2
ツマは子供の頃心臓病のため入院していたが,満月を見ていた時きいろいゾウが現れ,その背に乗って世界中を旅した.その後心臓病は治ったが,月の影響を強く受け,また生きものの語る声が聞こえるようになる.
ムコは背中に美しい鳥のタトゥーを入れているが,それは鳥の絵を書くかっての恋人の原画をもとにしたものだった.ムコのもとにその恋人の夫から手紙が届き,ムコは東京に行く決意をする.そのことに激しく動揺するツマだったが….4_2
寡黙で飄々としているが感情にもろいムコを演じる向井理と,少女の感受性・大人の身体と狂気を備えたツマを演じる宮崎あおいの演技が,それぞれ見応えあるラブファンタジー.
過去を乗り越え大人の夫婦として新たな関係を作り始めるムコとツマ,彼等を囲む3組のカップルが織りなす物語が印象的だ.見て損はなし.
5_2
★★★★(★5個が満点)
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独断的映画感想文:22年目の告白-私が殺人犯です-

日記:2018年7月某日
映画「22年目の告白-私が殺人犯です-」を見る.221
2017年.監督:入江悠.
出演:藤原竜也(曾根崎雅人),伊藤英明(牧村航),夏帆(岸美晴),野村周平(小野寺拓巳),石橋杏奈(牧村里香),竜星涼(春日部信司),早乙女太一(戸田丈),平田満(滝幸宏),岩松了(山縣明寛),岩城滉一(橘大祐),仲村トオル(仙堂俊雄).222
1995年の阪神淡路大震災直後,東京で起こった5連続殺人事件.
捜査員・牧村刑事のアパートが爆破され,牧村の先輩・滝刑事が殉職するという最後の事件後犯人は姿を消し,必死の捜査も空しく事件は時効を迎えた.
ところがその後,曾根崎という男が「自分が犯人だ」と名乗って会見を開き,「私が殺人犯です」という告白本の出版を発表する.曾根崎は,被害者のもとを訪れ挑発したり,サイン会を開いたり,TV生出演を求めたりする.223
TVキャスター仙堂は,曾根崎に自分の番組への生出演を求め,曾根崎も了承したが….
出だしから,時効後の思いがけない犯行告白と美しい犯人という衝撃的な展開,被害者遺族の葛藤や,徐々に明らかになる事件の全貌等,丁寧な展開に引き込まれる.
ところが曾根崎の番組出演で強烈などんでん返しが判明するに至って,映画は先が見えなくなる.そして衝撃のラスト.なかなか良く練られたプロットだった.
224
藤原竜也が最近よく演じているサイコパス系の犯罪者,伊藤英明が見るからに体育会系の刑事,と思われるスタート時点の印象が,物語の進行に伴い変わっていく辺りも面白い.
エンタテインメントとして見応え充分.
★★★☆(★5個が満点)
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番外:独断的歌舞伎感想文 通し狂言 源氏物語

日記:2018年7月某日
歌舞伎座で「七月大歌舞伎 夜の部」を見る.Kabukiza_201807_f5_3d82cbba4495ec0b
今井豊茂 作,藤間勘十郎 演出・振付「通し狂言 源氏物語(げんじものがたり) 市川海老蔵宙乗り相勤め申し候」.
出演:光源氏/龍王(市川海老蔵),六条御息所(中村雀右衛門),右大臣(市川右團次),春宮後に朱雀帝(坂東亀蔵),葵の上/明石の上(中村児太郎),光の君/春宮(堀越勸玄),漁師(市村竹松),漁師(大谷廣松),漁師(市川男寅),藤大納言/漁師(中村鷹之資),漁師(中村玉太郎),頭中将(市川九團次),大宮/尼(市川齊入),左大臣(市村家橘),紫式部(市村萬次郎),兵部卿宮(大谷友右衛門),大命婦(中村東蔵),弘徽殿女御(中村魁春),六の君(板東玉朗),源の内侍(市川右若),能楽師出演者(片山九郎右衛門,梅若紀彰,観世喜正),闇の精霊(アンソニー・ロス・コスタンツォ),光の精霊(ザッカリー・ワイルダー).
回り舞台やセリの駆使はもとより,テノールとカウンターテナーのオペラ歌手,怨霊や生き霊・竜王等を演じる能楽師,劇場全体を使ったプロジェクションマッピング等々,従来の歌舞伎以外の要素を動員した絢爛豪華な舞台である.Kabukiza_genji201807
各開幕前の序曲や,アリアの伴奏をした洋楽の演奏も素敵.
海老蔵が竜王として宙乗りをした場面は良かったが,その為に源氏としての登場場面を大幅に削り,竜王の舞を延々と演じた辺りは,ややバランスを欠いた感あり.堀越勸玄の登場場面がドラマとしては最も盛り上がった感じがあるのもちょっとどうかしら.
雀右衛門の六条御息所がさすがの緊張感溢れる演技.終わってみればなかなかの力作で楽しかった.
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番外:独断的歌舞伎感想文 日本振袖始(にほんふりそではじめ)

日記:2018年7月某日
国立劇場で歌舞伎鑑賞教室「日本振袖始(にほんふりそではじめ) 一幕―八岐大蛇(やまたのおろち)と素戔嗚尊(すさのおのみこと)―」を見る.H3007kabukikansyokyoshitsuomote
二世藤間勘祖=振付,高根宏浩=美術,野澤松之輔=作曲.-出雲国簸の川川上の場-.主な配役:岩長姫実ハ八岐大蛇(中村時蔵),稲田姫(坂東新悟),素戔嗚尊(中村錦之助).
物語は素戔嗚尊が岩長姫の色香に騙され十握の宝剣を奪われたことや,稲田姫と恋仲になったことなどを事前説明でスルーして,稲田姫が八岐大蛇の生け贄になったところからスタート.
岩長姫が登場して瓶の酒を平らげた挙げ句,稲田姫をひと飲みする前半,本性を現した八岐大蛇と素戔嗚尊の大立ち回りの後半とで構成される.
舞踊劇だが良いテンポで楽しめた.途中の大薩摩も素晴らしく,歌と踊りを堪能した一幕.
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独断的映画感想文:ハクソー・リッジ

日記:2018年7月ぼ日
映画「ハクソー・リッジ」を見る.1
2016年.監督:メル・ギブソン.
出演:アンドリュー・ガーフィールド(デズモンド・ドス),サム・ワーシントン(グローヴァー大尉),ルーク・ブレイシー(スミティ・ライカー),テリーサ・パーマー(ドロシー・シュッテ),ヒューゴ・ウィーヴィング(トム・ドス),レイチェル・グリフィス(バーサ・ドス),ヴィンス・ヴォーン(ハウエル軍曹),ナサニエル・ブゾリック(ハル・ドス),ルーク・ペグラー(ハリウッド).2
デズモンドの父・トムは第1次大戦従軍者,戦争体験のためアル中となり,DVをふるう.デズモンドは非暴力を貫くことを信念とするにいたる.3
第2次大戦勃発後,兄ハルに続き軍に志願したデズモンドは衛生兵を目指すが,小銃訓練を拒否したため軍法会議にかけられることとなる….4
前半はデズモンドが父と恋人・ドロシーの協力で軍法会議を突破するに至る過程,後半は沖縄の激戦地ハクソー・リッジでのデズモンドの苦闘を描く,事実に基づいた映画.
この映画の後半,1時間にわたるハクソー・リッジでの日本軍との激戦は,酸鼻を極めた戦場描写で正視に耐えない.しかし戦争というものは実際こういうものなのだろう.そのことは受け入れざるを得ない.5
映画全体としてメル・ギブソンらしいあくの強い映画,唐突な日本軍指揮官の切腹シーンの挿入と言い,共感は出来なかった.
★★☆(★5個が満点)
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