July 09, 2009

独断的映画感想文:レスラー

日記:2009年7月某日
映画「レスラー」を見る.4_2
2008年.監督:ダーレン・アロノフスキー.
出演:ミッキー・ローク(ランディ・ロビンソン),マリサ・トメイ(キャシディ),エヴァン・レイチェル・ウッド(ステファニー),マーク・マーゴリス,トッド・バリー.
20年前に絶頂期にあったプロレスラー・ランディ.今も小規模な小屋で試合をやってはスーパーの倉庫係でバイトして糊口をしのぐ.
身体はがたがただが,試合では手を抜かず,鉄条網やガラス釘カッターなどの凶器で血だらけになりながら,コーナーポストからダイブする決め技で客を熱狂させる.2
ところがある日,壮絶な試合後控え室で意識を失ってしまったランディ,気がつくと病院のベッドの上,心臓発作を起こして冠動脈のバイパス手術を受けたのだ.医者からはプロレスは無理と引導を渡され退院.
無頼の生活の末に大学生の娘とは義絶状態だったが,馴染みの店のストリッパー・キャシディの助言でプレゼントを持って行き,何とか心を開いて貰う.
バイトをしていたスーパーも正職員で雇ってくれた.キャシディも彼を好いていてくれているようだ.ランディの引退生活は軌道に乗るかと思われたのだが….1
あの甘いマスクで80年代人気絶頂だったミッキー・ロークが,肉体改造してカムバックした久々の主演映画.やさぐれの老レスラーをこの人が演じると何とも切ない.
物語は詰めの甘いところが随所に見られるが(父親を嫌い抜いていた娘が,コートとセーターで機嫌直しちゃうなんて),そんなことはどうでも良いのだ.
終盤スーパーの店内で血だらけの姿で泣き叫ぶランディの姿,その大いなる悲しみに胸が詰まる.
最後に臨んだ試合のマイクパフォーマンスにも涙を禁じ得ない.3
これは映画への共感も勿論あるが,それと同時に人生に不器用な大男に対する共感でもあり,ミッキー・ロークという個人の人生に対する思いでもある.
「シン・シティ」や「ドミノ」での存在感は別のミッキー・ロークだった.
ランディはあの80年代のミッキー・ロークが今に至った姿を示しているのだ.そこに感動を覚えるのである.そういう意味で,一見の価値有り.★★★★(★5個が満点)
蛇足:ストリッパー役のマリサ・トメイが御年44歳だというのも吃驚.こちらも一見の価値有り(失礼).
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July 05, 2009

独断的映画感想文:ペイルライダー

日記:2009年7月某日
映画「ペイルライダー」を見る.4
1985年.監督:クリント・イーストウッド.
出演:クリント・イーストウッド,マイケル・モリアーティ,キャリー・スノッドグレス,シドニー・ペニー,リチャード・キール,クリストファー・ペン,リチャード・ダイサート,ダグ・マクグラス,ジョン・ラッセル,チャールズ・ハラハン,マーヴィン・J・マッキンタイア.
冒頭,山を越えて馬を駆ってくる十数人の男達.
彼らは山間のカーボン渓谷で金採掘に従事する村を襲い,牛と飼い犬を射殺,家やキャンプを破壊して去っていく.5
襲った男達は大規模に金採掘を営むラフッド家の手下達,唯一独自の採掘権を保持しているカーボン渓谷への嫌がらせである.
渓谷の住人ハルは町に資材調達に行くが,ラフッド家の部下に捕まり袋だたきにされる.そこに通りかかった流れ者の男が逆にラフッドの手下達を叩きのめし,ハルと共に渓谷に帰ってそこに逗留することになる.
男は実は牧師だった.3
渓谷の住人はこの腕っ節の強い牧師のもとに団結して,ラフッド一家に当たろうと考える….
「ペイルライダー」とは黙示録に出る4騎士のうちの,青ざめた馬に乗る「死」のことを言う.
まさにラフッド一家にとっては「死」そのものであるこの牧師の登場は,パターン的には「シェーン」のそれと近いだろう.15歳の少女メイガンや,その母親サラとの交流も,「シェーン」を思わせる.2
違うのは正義の味方が牧師でかつガンマンであったというところか.その牧師の背中には多数の銃弾の痕.ラストシーンで彼に射殺された保安官の背中の銃痕とダブるのは何を物語るのか.
ストーリー展開には多少整理のつかないものもあるが(サラとメイガンに対する「牧師」の態度にはいまいち納得できないものがある),ウエスタンとして一見の価値あり.1
★★★☆(★5個が満点)
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July 04, 2009

独断的映画感想文:クライマーズ・ハイ

日記:2009年7月某日
映画「クライマーズ・ハイ」を見る.7
2008年.監督:原田眞人.
出演:堤真一(悠木和雄),堺雅人(佐山達哉),尾野真千子(玉置千鶴子),高嶋政宏(安西耿一郎),山崎努(白河頼三),遠藤憲一(等々力庸平),田口トモロヲ(岸円治),堀部圭亮(田沢善吉),マギー(吉井弁次郎),滝藤賢一(神沢周作),皆川猿時(伊東康男),でんでん(亀嶋正雄),中村育二(粕谷隆明),螢雪次朗(追村穣),野波麻帆(黒田美波),西田尚美(安西小百合),小澤征悦(安西燐太郎).
日航ジャンボ機墜落事故に際し,群馬の地方紙のデスクを勤めた悠木を通して描く,記者達の悪戦苦闘.
登山を愛する悠木が友人の安西と谷川岳に向かおうという夜,日航ジャンボ機が行方不明になる.日航機事故の全権デスクを命じられた悠木は,不眠不休で記事の収集に努める.4
社内の上層部や販売部門,オーナー社長との軋轢に苦しみつつ,悠木は若手を統率しスクープを狙い地方紙の存在感を示そうと,必死の戦いを展開する….
現在の谷川岳ロッククライミング(悠木と安西の息子燐太郎とが登る)を挟みながら語られるこの大事故の取材ドラマは,ドキュメンタリーのように進行し,その迫力とスリルはなかなかのものだ.
大久保連赤(殺人鬼大久保清と連合赤軍事件が成功体験だったのか?)と揶揄される古い世代の上司との,凄まじい闘争と他方での共闘も印象的.見て損はない映画.
ただ原作がそうなのかとにかくエピソードが多い.2
触れられたままほったらかしのものもある.
安西は(あの晩くも膜下出血を起こしていたのだ)その後どうなったのか,悠木の別れた妻はどうなったか,遭難者名簿の子供の名前を見てぎくりとした悠木の驚きは何だったのか(彼自身の息子かと思ったが,結局息子と同い年という程度のことだろうと推測する),その辺のごちゃごちゃ感が惜しい.1
役者は豪華,昔朝日新聞にいた友人のT君そっくりの遠藤憲一(大好き)や,目立たず出ている西田尚美,でんでんが素敵.
田口トモロヲと螢雪次朗の競輪選手中野浩一を巡る話など,本筋ではないのだが絶品である.
★★★★(★5個が満点)
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独断的映画感想文:愛を読む人

日記:2009年6月某日
映画「愛を読むひと」を見る.Reader02
2008年.監督:スティーヴン・ダルドリー.
製作:製作:アンソニー・ミンゲラ,シドニー・ポラック.
出演:ケイト・ウィンスレット(ハンナ・シュミッツ),レイフ・ファインズ(マイケル・バーグ),デヴィッド・クロス(青年時代のマイケル・バーグ),レナ・オリン(ローズ・メイザー/イラナ・メイザー),アレクサンドラ・マリア・ララ(若き日のイラナ・メイザー),ブルーノ・ガンツ(ロール教授).
1958年ベルリン.15歳のマイケルは,下校途中気分が悪くなりとあるアパートの入り口で嘔吐,そのアパートの住人ハンナに世話になる.
病気が治り,花を持ってお礼に行ったマイケルは,そのハンナの着替え姿を目にしたことから彼女と深い仲になる.Reader01
36歳の彼女は本を朗読して貰うことを好み,いつしか本を朗読してはベッドをともにするのが彼らの習慣となった.夢のような日々に有頂天になるマイケル,しかしハンナはある日忽然と姿を消した.
幾年かが経ち,法科学生になったマイケルは,思わぬ場所でハンナと再開することになる….
ベストセラー「朗読者」の映画化.原作は6年前と今年と2回読んだ.
なかなか味わいのある小説で,特にハンナの抱えた秘密とそれに対するマイケルの対応が,余韻のあるエンディングに繋がっている.その原作の映画化として充分満足できる内容だった.
特にケイト・ウィンスレットが良い.Reader04
かっての職業を思わせる鋭い目つきと苦悩に満ちた面影.セックスシーンが話題だが,それは美しいと言うより生々しいといった方が良いだろう.
そのセックスシーンが物語る二人の関係が,マイケルの生涯をあのように拘束することになろうとは.第2次世界大戦の今に続く傷跡を背景に,描かれるマイケルの生涯が印象的.
原作にない娘ジュリアとのエピローグが良かった.
他のブログでも言及があったが,邦題は原題通り「朗読者」とするべきであった.ベストセラーの原作に対する敬意があるべきだ.
また主人公の名前も原作通りミヒャエルであるべきだろう.
★★★★(★5個が満点)Reader05

蛇足だが教授役のブルーノ・ガンツはかってヒトラーを演じたことが強烈に脳裏に残っている.その当人がナチを裁く裁判を傍聴しているのは,不思議な感じ.
そういえばその映画で競演しているアレクサンドラ・マリア・ララもこの映画に出ているのだ.
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June 28, 2009

独断的映画感想文:ナルニア国物語/第2章:カスピアン王子の角笛

日記:2009年6月某日
映画「ナルニア国物語/第2章:カスピアン王子の角笛」を見る.2_2
2008年.監督:アンドリュー・アダムソン.
出演:ジョージー・ヘンリー(ルーシー・ペベンシー),スキャンダー・ケインズ(エドマンド・ペベンシー),ウィリアム・モーズリー(ピーター・ペベンシー),アナ・ポップルウェル(スーザン・ペベンシー),ベン・バーンズ(カスピアン王子),ピーター・ディンクレイジ(トランプキン),ピエルフランチェスコ・ファヴィーノ(グロゼール),セルジオ・カステリット(ミラース),ワーウィック・デイヴィス(ニカブリク).
4人の「伝説の王」がナルニア国を離れて1300年(だそうである),ナルニア国は好戦的なテルマール人に支配され,生き残りの民は森に逃れた.
テルマールの王子カスピアンは,叔父の国王に男子が産まれ命を狙われる.家庭教師の博士の導きで森に逃げるが,追い詰められた王子は言い伝えの角笛を吹き鳴らすのであった….
この角笛に導かれ再びナルニア国にやってきたペベンシーの4兄弟が,カスピアン王子と共にテルマールの軍勢を倒し,ナルニアに平和を回復するまでの物語.3_2
子ども向けファンタジーだが150分の長編.
CGの出来は良いし波瀾万丈の物語も息をつかせない.動物たちのキャラクターも素敵だ.前作より明らかに成長した(特にエドマンドとルーシー)兄弟を見るのも楽しい.
しかしあくまでも子ども向けという感じ,大人のおじさんにはいろいろ湧いてくる疑問もある.
確かに血生臭いシーンはないけど,前半無謀に攻め込んで逃げ遅れ,殲滅されてしまうナルニア国軍の軍勢の無念さはどうなるのか.遺族達はどういう思いをするのか.
ミラースに忠誠を誓って万歳を叫ぶ人々と,そのすぐあとにカスピアン王子と4人の伝説の王の勝利に歓呼の声を送る人々とはどう違うのか.4
4人が帰っていく先は第2次大戦中のロンドンであるが,それにしては戦争の影などどこにもなさそうではないか.
そんなこと子ども映画相手に言ってもしょうがないか.
★★★(★5個が満点)
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独断的映画感想文:歩いても歩いても

日記:2009年6月某日
映画「歩いても歩いても」を見る.3
2007年.監督:是枝裕和.
出演:阿部寛(横山良多),夏川結衣(良多の妻、ゆかり),YOU(良多の姉、ちなみ),高橋和也(ちなみの夫、信夫),田中祥平(横山あつし),寺島進,加藤治子,樹木希林(横山とし子),原田芳雄(横山恭平).
冒頭きんぴらを作るため大根とにんじんをささがきにしている母と娘.
横山家では長男純平の命日に家族が集まる,その準備をしているのだ.
父で開業医の恭平は,跡取りを亡くして失意のうちに最近廃業,妻とし子は夫と喧嘩しつつその世話にいそしむ.娘ちなみは親と同居しようと画策中,次男良多は父と折り合い悪く,気の進まないまま新婚の妻ゆかりとその連れ子あつしと共にやってくる.
その命日を挟む一両日を描くドラマ.2
この一家の歴史が随所に語られるが,それは全く日常的などこの家族にもある会話の中で提示される.その呼吸が見事.
頑固で怒りっぽいが今や家族に疎外されかけている父親,柔軟に受け答えするが芯が強く怖さも併せ持つとし子.その描き方は過不足なく面白い.
個人的には(僕も次男ですので)ゆかりととし子のやりとりは身の縮む記憶が蘇り,いささか緊張した.
エピローグで良多にも子どもができ車にも乗っている姿を見て一安心.
ところでさんざん同居をせがんでいたちなみの一家がエピローグに出てこないが,その後どうなったかが気になる.1
随所に示される3人の女性の料理シーンが味わいあり.
役者では樹木希林が圧倒的に良い.阿部寛はもっと別な役で見たいな(時代劇とか).
★★★☆(★5個が満点)

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June 13, 2009

独断的映画感想文:ある光

日記:2009年6月某日
映画「ある光」を見る.3
2009年.監督・脚本・編集:高橋明大.
出演:足立智充(柚原卓人),柳沢茂樹(田伏悠),稲毛礼子(出口栞),上村 聡(南雲宗介),ホナガヨウコ(白石涼子),鈴木将一朗(蓼科富士夫),岸建太朗(会田繁),松永大輔(深町研二),渡邊 優(碓井英則),南波典子(野口文枝),宇野祥平(梶陸夫),笠木 泉(出口依子),戸田昌宏(出口真之).挿入歌『 マーガレット 』 THE YOUNG GROUP.
女とのいざこざに切れた男の無差別殺人で命を落とした出口栞.
その恋人田伏悠は彼女の死を受け入れ難く,その骨を口にすることで肉体を一体化しようと図る.
二人の大学時代からの友人で失職中の柚原卓人は,栞の死の現場に居合わせたが,事件後体の変調に気づく.4
栞の勤務していた出版社に出入りして彼女を見知っていたフリーライター南雲は,彼女の死を巡る状況を取材する.
栞の実の兄で小学校教師の真之は,不登校の宏の自宅を訪れる.彼は共稼ぎですれ違うことの多い妻依子との間の違和感を意識している.
宏の母文枝は,徘徊者に対して組織された自警団への参加要請に,違和感を表明する….
個人と家族,社会と個人の間の違和感,理解し合えない状況,それが生み出す悲劇的な結果を描く群像劇.
冒頭から緊張感にあふれた,共通のテンポで進む群像劇の展開が素晴らしい.2
特に,「犯人」と女の携帯の会話から始まるシークエンスの緊張感.暗転後挿入歌が流れ葬列が描かれるシーンの哀切感.主人公二人の痛切な喪失感の,それぞれの表現が心に残る.
時制を相前後しながら展開される群像劇は,解決ではなくカタストロフでもない不思議な(しかし明るい)結末に向け進行していく.
エピローグでの光あふれるシーン.「ある光」とは「光あれ」のことであったか?
一見の価値あり.
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June 11, 2009

番外・独断的歌舞伎感想文:歌舞伎 6月大歌舞伎

日記:2009年6月某日.
歌舞伎座で6月大歌舞伎を見る.その感想.0906
「門出祝寿連獅子(かどんでいおうことぶきれんじし)四代目 松本金太郎 初舞台」.
右近後に仔獅子の精(染五郎),左近後に親獅子の精(幸四郎),里の女(芝雀),右近の妻(福助),里の男(松緑),樵人(高麗蔵),修行僧(友右衛門),左近の妻(魁春),大名某(梅玉),村の長(吉右衛門).
「極付幡随長兵衛(ばんずいちょうべえ)『公平法問諍』」
幡随院長兵衛(吉右衛門),水野十郎左衛門(仁左衛門),坂田公平(歌昇),御台柏の前(福助),子分極楽十三(染五郎),子分雷重五郎(松緑),子分神田弥吉(松江),子分小仏小平(男女蔵),子分閻魔大助(亀寿),子分瘡森団六(亀鶴),子分地蔵三吉(種太郎),倅長松(玉太郎),伊予守頼義(児太郎),坂田金左衛門(由次郎),慢容上人(家橘),渡辺綱九郎(友右衛門),出尻清兵衛(歌六),近藤登之助(東蔵),唐犬権兵衛(梅玉),女房お時(芝翫).
「梅雨小袖昔八丈(つゆこそでむかしはちじょう)髪結新三」
髪結新三(幸四郎),弥太五郎源七(歌六),手代忠七(福助),下剃勝奴(染五郎),娘お熊(高麗蔵),下女お菊(宗之助),車力善八(錦吾),後家お常(家橘),家主女房おかく(萬次郎),家主長兵衛(彌十郎),加賀屋藤兵衛(彦三郎).
門出祝寿連獅子は4歳に成り立ての金太郎君初舞台,後見,松本錦吾の苦労が忍ばれる.連獅子では祖父幸四郎の振りが調子狂って金太郎君の方がのびのび振っているのが傑作.口上も福助・芝雀の話が面白かった.
幡随長兵衛は吉右衛門がさすがの台詞回し.
芝翫が玉太郎のおっかさんというのは,ちと無理がある.芝翫の芝居は悪くはなかったが.
劇中劇の歌昇が以外の熱演.児太郎は声変わりか.
髪結新三は,中盤の新三・幸四郎と家主長兵衛・彌十郎のやりとりが抱腹絶倒で大満足.
大詰めの様式美も歌舞伎らしくて良かった.
新三がただの髪結いではない悪党だが,一方で家主には頭の上がらぬ小物だという設定も面白い.見て損はなし,見応えのある芝居2題と華やかな襲名で満足度高し.
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June 01, 2009

独断的映画感想文:バンク・ジョブ

日記:2009年5月某日
映画「バンク・ジョブ」を見る.Bankjob3
2008年.監督:ロジャー・ドナルドソン(世界最速のインディアン).
出演:ジェイソン・ステイサム(テリー・レザー),サフロン・バロウズ(マルティーヌ),リチャード・リンターン(ティム・エヴェレット),スティーヴン・キャンベル・ムーア(ケヴィン),ダニエル・メイズ(デイヴ),ピーター・ボウルズ(マイルズ・アークハート),キーリー・ホーズ(ウェンディ・レザー),コリン・サーモン(ハキム),ピーター・デ・ジャージー(マイケルX),ジェームズ・フォークナー(ガイ),シャロン・モーン(ソニア).
事実に基づく犯罪映画.
映画の冒頭,リゾートでセックスに興ずる若い男女を盗撮する男.一方,マイケルXと名乗る黒人運動指導者が王室関係者の乱交写真を種に検察を強請り,逮捕を免れているという話が当局者間で交わされる.
経営苦に悩む中古車販売業テリーのもとに昔なじみのモデル・マルティーヌが来て,ロイド銀行のセキュリティシステムがダウンする週末に,貸金庫を狙わないかと誘う.
実はマルティーヌはMI-5のティムに強要され,マイケルXの貸金庫にある王室乱交写真を盗み出すための作戦として,この強盗を持ちかけたのだった.Bankjob2
仲間を集めたテリーはトンネルを掘り,まんまとロイド銀行の貸金庫室からの強奪に成功するが,盗品の中にはティムも彼ら自身も想像もしなかったものが含まれていた….
盗品の中には王室乱交写真の他,娼館でSMプレイに興じる閣僚の写真,その娼館のオーナーが警官に送った賄賂の明細等々が含まれていた.しかも彼らの強奪作戦時の無線交信は,アマチュア無線家によって傍受録音されていた.
その盗品を巡って一斉に動き出す良い警官,悪い警官,MI-5,犯罪者群.果たしてテリー達の運命や如何に…という物語.
テンポ良く進行する複雑なプロット.一癖もふた癖もある登場人物も皆類型的ではあるが魅力的.
最後の大団円にいたる顛末はガイ・リッチー監督ものを見る様な鮮やかさで,これが事実に基づく物語とは吃驚である.
この映画の面白さには,イギリスという社会の不思議さもあるだろう.いかれた王室・貴族と付き合うかの国の国民も大変だろうなと思う.Bankjob4
最後に1場面だけ出るマウントバッテン伯爵が格好良かった(王室乱交写真を一瞥して,「お転婆娘だ」とテリーにウィンクを送るのだ).
記憶に依れば伯爵はこの数年後にIRAに爆殺される.見て損はない映画.
★★★☆(★5個が満点)
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独断的映画感想文:浮草

日記:2009年5月某日
映画「浮草」を見る.5
1959年.監督:小津安二郎.
出演:中村鴈治郎(嵐駒十郎),京マチ子(すみ子),若尾文子(加代),川口浩(本間清),杉村春子(母お芳),野添ひとみ(「小川軒」のあい子),笠智衆(「相生座」の旦那),三井弘次(吉之助),田中春男(矢太蔵),入江洋吉(杉山),星ひかる(木村),潮万太郎(仙太郎),浦辺粂子(しげ),高橋とよ(あい子の母),桜むつ子(「梅廼家」おかつ),賀原夏子(八重).
志摩半島の海辺の街.旅回りの嵐駒十郎一座がやってくる.2_2
この街には駒十郎の愛人お芳が息子と共に住んでいて,駒十郎はお芳の兄と称して息子と会うのを楽しみにしている.
ところがその関係を一座の女優で現在の愛人すみ子に知られ,すみ子の嫉妬から事態は思わぬ方向に突き進むことになる….
鴈治郎と杉村春子,京マチ子の芝居を堪能する映画.3
20代であれば,例え監督が小津安二郎であっても,僕はこの映画になんの価値も認めなかったであろう.そもそもこの駒十郎という人物に魅力を感じなかったに違いない.
今の年になってこういう映画を見ると,駒十郎,お芳,すみ子のそれぞれの感情の動きが見当がつくと共にそれなりに受け入れられるのが,いわば年の功というべきものなのであろう.6
そこに面白さが生じ感動が生まれる.
駒十郎の役者としての・男としての矜持,親としての愛情,成熟した男としての決断とそれにも拘わらず愛人ともう一旗揚げようという矛盾した別の決断.これを演じる鴈治郎の演技は見応えあり.
その両脇でやり合う京マチ子・杉村春子も同様.4
★★★☆(★5個が満点)
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独断的映画感想文:団塊ボーイズ

日記:2009年5月某日
映画「団塊ボーイズ」を見る.003
2007年.監督:ウォルト・ベッカー.
出演:ジョン・トラヴォルタ(ウディ・スティーヴンス),ティム・アレン(ダグ・マドセン),マーティン・ローレンス(ボビー・デイヴィス),ウィリアム・H・メイシー(ダドリー・フランク),マリサ・トメイ(マギー),ジル・ヘネシー(ケリー・マドセン),レイ・リオッタ(ジャック),ケヴィン・デュランド(レッド),M・C・ゲイニー(マードック),ドミニク・ジェーンズ(ビリー・マドセン),ピーター・フォンダ(ダミエン・ブレイド).
それぞれ生活に行き詰まっているバイクが趣味の中年男4人組が,ふとしたきっかけで西海岸までのツーリングに出かけるという冒険コメディ.
型どおりの展開でお気楽に楽しめる愉快な映画.途中のバイカー酒場を根城にする不良バイカーの親玉レイ・リオッタが素敵.001
もっと素敵なのは,大詰めで場を納めに登場するその父親ピーター・フォンダか.
全体の雰囲気はほどよくいい加減でリラックスできる.
冒頭のスペンサー・デイヴィス・グループの「ギミ・サム・ラヴィン」や,最後のビーチ・ボーイズの「グッド・バイヴレーション」等,音楽も趣味が良い.あははあははと笑って一気に終わりまで.
因みに彼らのチーム名ワイルド・ホッグスのホッグは豚のことだが,ハーレイ・ダビッドソンの俗称でもあるそうな.
★★★(★5個が満点)
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May 27, 2009

独断的映画感想文:ワールド・オブ・ライズ

日記:2009年5月某日
映画「ワールド・オブ・ライズ」を見る.4
2008年.監督:リドリー・スコット.
出演:レオナルド・ディカプリオ(ロジャー・フェリス),ラッセル・クロウ(エド・ホフマン),マーク・ストロング(ハニ・サラーム),ゴルシフテ・ファラハニ(アイシャ),オスカー・アイザック(バッサーム),サイモン・マクバーニー(ガーランド),アロン・アブトゥブール(アル・サリーム),アリ・スリマン(オマール・サディキ).
CIAアクションもの.
冒頭英国で特殊部隊がアパートの一室に突入を図る.中で働くアラブ人達,部隊が突入に踏み切るのと同時に気づいたアラブ人がスイッチを押す.大爆発が怒り跡形も無く吹っ飛び炎上するアパート.
イラクではCIAのエージェントフェリスが,上役のエドとやり合いながらこの爆破の黒幕アル・サリームを探っている.3
フェリスは根っからの現場人間,命を削りながら現地人のエージェントと組んで成果を上げていく.エドはアメリカのラングレーのCIA本部にいて,そのフェリスを無人飛行機からのモニタ映像で監視しながら次々に指示を出す.
情に流されながら自分の身を犠牲にして突っ走るフェリスは,たびたび非情で合理主義一辺倒のエドと対立する.
イラクで重傷を負いながらアル・サリームの手掛かりを掴んだフェリス,そのアジトはヨルダンにあった.エドの指示でヨルダンに飛んだフェリスはヨルダン情報部長ハニと会う.
ハニはアメリカ式合理主義を嫌い,自分に嘘はつくなとフェリスに求めるのだった….
「テロとの戦い」を戦うCIAの活動を描く映画.
お定まりの独善的アメリカ主義が描かれるが,登場人物は皆嘘つきである.それぞれが相手を騙すそのやりとりが物語の軸.2
但し独善的で嘘つきだが,皆真面目で一生懸命なのが現実とはちょっと違うと思う.現実にはもっと皆不真面目で腐敗していて荒廃しているんじゃないのか.
映画はアメリカ自身への辛辣な態度とエンタテインメントが,中途半端に同居しているのがうさんくさい.
結果はハッピーエンドだし,エドとフェリスは(フェリスの決別宣言にもかかわらず)これからも一緒にCIAをやっていくだろう,たぶん.1
アイシャが無条件にフェリスを好きになったり,彼女の回りのアラブ人が皆アメリカに行きたがっているというのも現実離れしている.
ディカプリオは必死にアクションしているが,映画全体としては,そうかなあという感じが残る.
★★★(★5個が満点)
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May 20, 2009

独断的映画感想文:グラン・トリノ

日記:2009年5月某日
映画「グラン・トリノ」を見る.3
2008年.監督:クリント・イーストウッド.
出演:クリント・イーストウッド(ウォルト・コワルスキー),ビー・ヴァン(タオ・ロー),アーニー・ハー(スー・ロー),クリストファー・カーリー(ヤノビッチ神父),コリー・ハードリクト(デューク),ブライアン・ヘイリー(ミッチ・コワルスキー),ブライアン・ホウ(スティーブ・コワルスキー),ジェラルディン・ヒューズ(カレン・コワルスキー),ドリーマ・ウォーカー(アシュリー・コワルスキー).
映画の冒頭,葬儀に参列する人々.
棺の横に立つウォルトは参列者に挨拶を返すが,へそピアス姿で来る孫娘や,ふざけた祈りをする孫達に,苦虫をかみつぶした様な顔だ.亡妻に頼まれたからと繰り返し訪れ,懺悔を進めるルター派の若い神父にも悪態をついて追い返す.
フォードの組み立て工として生涯を過ごしてきたウォルトの唯一の平安は,ガレージにあるお気に入りの72年製のグラン・トリノを見て過ごすときだ.1
そんな彼が,隣に住む彼が嫌っていたアジア系モン族の姉弟と知り合いになる.
街で偶然におとなしい弟タオ,勇敢な姉スーを助けたことから,ウォルトは隣の家族から厚遇され,パーティーに招かれる.そこで彼は祈祷師のお告げを受ける.
一方,彼に追い払われたモン族の不良グループは姉弟に魔の手を伸ばしてきた….
ウォルトは言われているほどに孤独の人ではないと思う.なじみの床屋や,行きつけのバーの飲み友達がいる.
しかし家族はいない(彼の息子達は,すでに彼の家族ではなかった).
その彼がスー・タオの姉弟と親密になっていく過程は,何となく落語的なユーモアをもって巧みに語られる.
また彼を見立ててモン族の祈祷師が告げた言葉は,彼の心に深く残った様だ.彼は神父の元に懺悔をしに行き,その後不良グループから姉弟を守るために,ウォルトは単身彼らのアジトに乗り込んでいく….
エピローグは,プロローグ同様葬儀の場面から始まる.
最終場面で,グラン・トリノが明るい陽光を浴びて海岸線の道を走っていく.そこに重ねられるイーストウッド本人が歌う「グラン・トリノ」.2
ウォルトのアメリカは,誰に引き継がれどうなっていくのだろうと,思わずにいられない.気むずかしい老人の誇りと愛情が結実した結末に,涙を禁じ得なかった.
男がみんなこんな老人になったら若い人は迷惑至極であろうが,でもこんな老人になりたいものである.
俳優はイーストウッド本人はもちろんだが,床屋役のジョン・キャロル・リンチが良かった.彼がイーストウッドと二人でタオに「男の会話術」を仕込むシーンは,傑作.
一見の価値有り.
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May 16, 2009

独断的映画感想文:レッドクリフ Part II ―未来への最終決戦―

日記:2009年5月某日
映画「レッドクリフ Part II ―未来への最終決戦―」を見る.Redcliff23
2009年.監督:ジョン・ウー.
出演:トニー・レオン(周瑜),金城武(孔明),チャン・フォンイー(曹操),チャン・チェン(孫権),ヴィッキー・チャオ(尚香),フー・ジュン(趙雲),中村獅童(甘興)(特別出演)),リン・チーリン(小喬),ユウ・ヨン(劉備),ホウ・ヨン(魯粛),トン・ダーウェイ(孫叔材),ソン・ジア(驪姫),バーサンジャプ(関羽),ザン・ジンシェン(張飛),チャン・サン(黄蓋).
三国志の最大の山場,赤壁の闘いを2部作で描くそのPart2.Redcliff22
80万の大群で赤壁に攻め込んだ曹操軍に対し,5万で迎え撃つ劉備・孫権の連合軍.孫権の妹尚香は兵卒に身をやつして曹操軍に入り込みその陣構えを探る.
一方曹操軍には疫病が発生,曹操はその兵の死骸を船で対岸の劉備・孫権の陣へ送りつける.このため疫病は陣中に拡がり,堪りかねた劉備軍は撤兵を決意する.
孤立した孫権軍の大都督・周瑜は,残留した孔明と共に,10万の矢の調達と敵陣の水軍の指揮官の無力化に取り組む….Redcliff21
このあたりまでが前半で,後半は熟し切った戦機の中,決戦のタイミングを計る双方の駆け引きと,遂に切って落とされる赤壁の闘いを描く.
終盤の決戦のスペクタクルには,ただ身を任せて堪能するだけである.「ロード・オブ・ザ・リング」を思い起こさせる激しい戦闘スペクタクルだが,こちらの物語は人間対人間の闘いなので,敵味方間の人間のエピソードがまた印象的.
物語としては,決戦直前に孫権軍の将兵に尚香が雑煮を振る舞うシーン,その前夜に周瑜の愛妻小喬が単身敵陣に向かったことを知った将兵が大都督・周瑜を気遣い餅を一つずつ差し出す.その餅を一呑みに平らげて周瑜が勝利を誓う場面は感動的だ.Redcliff25
役者は皆それぞれに存在感があって見応えあり.長い映画を一気に見た.
エピローグも爽やかで,一見の価値あり.
★★★★☆(★5個が満点)
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May 14, 2009

独断的映画感想文:トラ・トラ・トラ!

日記:2009年5月某日
映画「トラ・トラ・トラ!」を見る.06
1970年.監督:リチャード・フライシャー,舛田利雄,深作欣二.
出演:マーティン・バルサム(キンメル太平洋艦隊司令長官),山村聡(山本五十六海軍中将),ジェイソン・ロバーズ(ショート将軍),ジョセフ・コットン(スチムソン陸軍長官),三橋達也(源田少佐),ジェームズ・ホイットモア(ハルゼイ中将),東野英治朗(南雲中将),E・G・マーシャル(ブラットン大佐),田村高廣(淵田少佐),千田是也(首相近衛公爵),内田朝雄(東条英機),安部徹(大西参謀),エドモン・ライアン(ベリンジャー中将),島田正吾(野村駐米大使),ジョージ・マクレディ(ハル国務長官),エドワード・アンドリュース(スターク海軍作戦部長),キース・アンデス(マーシャル大将).野々村潔(東郷外相).
1941年の真珠湾奇襲を日米合作で描いた戦争巨編.CGも合成も使わない戦争映画,本当の雷撃機・爆撃機編隊,軍艦(とそのセット),生身の人間が演ずる大スペクタクルである.02
物語は言わずと知れた太平洋戦争開戦前後,前半では野村大使の活動と山本五十六の聯合艦隊司令長官就任,開戦に向けた日米双方の動きと情報戦が描かれる.後半は1941年12月7日(現地時間)朝の真珠湾を描く.
この映画で感じたことは二つあって,その1は戦争映画の痛快さだ.
こんなことを言っては罰が当たると思いつつも,艱難辛苦を乗り越えオアフ島に奇襲を敢行,美しい島の岬を巡り真珠湾に突っ込んでいく,その痛快さはどうだ.
艦載機を搭載した空母を中心とする機動部隊は当時世界最新の圧倒的戦力である.空母機動艦隊を持ち実戦を戦った国は今に至るまで英,米,日の3カ国しかない.そもそも機動艦隊とは….
いかん,軍事少年に戻ってしまった.それほどこの映画の真珠湾攻撃シーンは印象的なのだ.
一方,この映画の驚くべき特徴は日米の描写の公平さである.むしろ日本に「好意的」に描いている様だ.00
日本海軍雷撃機の練度の高さに比べ,ろくに命中しない米軍機の描写.攻撃シーンで殆ど反撃らしい反撃も出来ずに次々と壊滅していく米海軍艦船と地上の航空機.士気高い日本海軍に比べ,将校は無責任であわてふためくだけの米海軍.
しかしこの映画の真骨頂は山本五十六の最後の言葉にある.04
すなわち,野村大使の宣戦布告通知が,真珠湾攻撃より1時間以上遅れたことで,「真珠湾攻撃はむしろアメリカ人の勇猛心に火をつけてしまった」と独白して,長官は慨嘆するのである.
ここに来て,日本海軍の最高の奇襲攻撃は,アメリカの対日戦争に最悪の影響を与えたと記述されたのだ.この結末の余韻も,この映画の素晴らしさの要因だろう.
一見の価値有り.
★★★★☆(★5個が満点)
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May 13, 2009

独断的映画感想文:サイドカーに犬

日記:2009年5月某日
映画「サイドカーに犬」を見る.2
2007年.監督:根岸吉太郎.
出演:竹内結子(ヨーコ),古田新太(近藤誠),松本花奈(近藤薫(20年前)),谷山毅(近藤透(20年前)),ミムラ(近藤薫(現在)),鈴木砂羽(近藤良子),トミーズ雅(浜口),山本浩司(渡辺寿男),寺田農(釣堀の主人),温水洋一(増田治五郎),伊勢谷友介(部屋の下見をする客),樹木希林(増田トメノ),椎名桔平(吉村).
ネタバレです,悪しからず.
不動産会社に勤める薫は30歳の独身.弟の結婚式に離婚した両親も出るという話を聞き,20年前,母が家出をした夏を思い出す.5
夏休みに入った朝母は家を出て行き,戻らなかった.
数日後,「晩ご飯を作りに」ヨーコさんという若い女が現れる.神経質な母に厳しく育てられた内気で真面目な薫にとり,アバウトで破天荒なヨーコさんの行動は吃驚することばかり.しかし自分を対等に扱い,自転車の練習も馬鹿にせず付き合ってくれるヨーコさんに,薫は次第に心を開いていく….
この映画は松本花奈の映画である.6
内気で真面目な女の子にとって,両親の不和→離婚は辛い.
母親がいなくなった後現れたヨーコさんとせっかく友達になったのに,夏の終わりに母親が現れ,ヨーコさんは去り,両親は結局離婚して薫は母方に引き取られてしまう.
薫が夢の様な幸せを味わった,父親のサイドカーに乗せてもらった夜のドライブ.
あの幸せを父親は何故駄目にしてしまったのか.自分は何故あのとき母方に引き取られてしまったのか.ヨーコさんのいる別の人生というものはあり得なかったのか.
そのことを数少ない台詞と顔つきや視線で演じきった松本花奈の演技(麦チョコを大人買いしてもらった時の瞬間的微笑み,大人達の話や動きを目で追い続ける緊張した動作等々)が素晴らしい.
最後の父親への「ワン」という抗議もいたいけで胸を打たれる.1
他に突っ込みたいところはいろいろあるが(竹内結子が古田新太の愛人だってのも,今ひとつ納得できない),松本花奈の演技ですべて許しちゃいます.
★★★☆
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