独断的映画感想文:遠い山なみの光
日記:2026年9月某日
映画「遠い山なみの光」を見る.
2025年.日本・イギリス・ポーランド.
監督・脚本:石川慶.原作・エグゼクティブプロデューサー:カズオ・イシグロ.
出演:広瀬すず(悦子),二階堂ふみ(佐知子),吉田羊(悦子(1980年代)),カミラ・アイコ(ニキ),松下洸平(二郎),三浦友和(緒方).
映画の冒頭は悦子の夢,夜の河川敷の茂みを疾走する女性,暗い川面を何かが流れてゆく.1980年代の英国,ロンドン郊外の一軒家に一人住む悦子のもとに,久しぶりにライターとして働いている娘のニキが帰ってくる.悦子は英国人の夫(シェリンガム氏)に先立たれ,また前夫との子・恵子は最近この家に帰ってきた直後に自殺した.景子とシェリンガム氏の仲も景子とニキの仲も良いものではなかった様だ.ニキの求めに応じ,悦子は1950年代の長崎の思い出を語り始める.
悦子は南方から復員した二郎と公団住宅で暮らしていた.景子を身ごもっていた.近くのバラックに住む佐知子と万里子という母子と知り合いになる.万里子は被爆児らしい.佐知子は米国人と付き合っていて,近く米国に移住する予定だと云う.佐知子と付き合い,万里子に対する被ばく差別や万里子の失踪に巻き込まれながら,一方で,夫の父でかって軍国教育の中心にいた元校長の緒方の逗留にも対応しながら暮らす,悦子の思い出が語られる….
違和感の多い映画である.その違和感は悦子の語る1950年代の長崎の,復興に向かいながら原爆という大きな悲劇の後遺症による不安や怖れにも,恵子を失った1980年代の悦子の不安や怖れにも起因するのだろう.悦子の物語にも詳細な記述もあれば欠落した部分もある.悦子のかっての上司でもある緒方の前で,被爆児童を救えなかったことに涙する悦子.しかし悦子の教員時代の暮らしは描かれないままだ.二郎との公団住宅での暮らしは詳細に描かれる.しかしその二郎といつ何故別れ,シェリンガム氏と英国に移住したのかは判らないままだ.
終盤に至って映画は思いがけぬ展開を見せ,悦子と佐知子,万里子と景子の関係が明らかになってゆく.その内容にも驚かされるが,ニキとの会話によって悦子の何かが解放されたのだろうか.大きな悲劇とそこに巻き込まれた人間の心理をめぐる,きわめて印象的な映画.
★★★★(★5個が満点).













































































































































































































































































































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