2012/05/26

独断的映画感想文:一枚のハガキ

日記:2012年5月某日
映画「一枚のハガキ」を見る.12
2010年.監督:新藤兼人.
出演:豊川悦司(松山啓太),大竹しのぶ(森川友子),六平直政(森川定造),大杉漣(泉屋吉五郎),柄本明(森川勇吉),倍賞美津子(森川チヨ),津川雅彦(松山啓太の伯父・利ヱ門),川上麻衣子(松山美江),絵沢萠子(利ヱ門の女房),大地泰仁(森川三平),渡辺大(下士官),麿赤兒(和尚).
森川定造は小作で妻と両親を養う貧農.
戦争末期に招集され,松山啓太と出会う.
二人のいた部隊は次の任地をくじで決めることになり,100名の内60名はフィリピンへ,30名は潜水艦乗りへ,10名は国内に留まることになる.
定造はフィリピンのくじに当たった.13
その妻友子は定造の死後,義父の指示で定造の弟三平と結婚するが,その三平も招集され戦死する.義父は失意の内に病に倒れ死亡,その葬儀を済ませた後,義母は自殺する.
一方松山啓太は国内に留まるくじに当たり,終戦後無事復員するが,招集中に妻と実父は大阪に駆け落ちしていた.
啓太は暫く無為に時を過ごしていたが,故郷を捨てブラジルに行くつもりで家と船を売り払う.荷物整理のさなか啓太は定造から預かった妻友子からのハガキを見つけ,友子を訪ねることにする….
これが物語の前半,後半は啓太と友子が出会い,どのような結末にいたるか.11
新藤監督の映画作りは誠に自在なもの,前半のややこしい状況の無理のない説明も達者であるが,後半の啓太と友子の物語も実に融通無碍な展開.ユーモア有り,感情の爆発有り,そして感動有り.
観客は,大竹しのぶとトヨエツの芝居を存分に楽しむだろう.
ところでこの映画には如何にもという悪人は出てこない.友子と啓太の物語は,戦争の愚かしさ・酷さを訴えて余りあるが,それではその戦争は誰が起こしたのか.
何時か僕たちは,ああ戦争はこの様にして起きるのか,と愕然と悟る時があるかも知れない.
100歳の監督は,そんなことにならないようにと,せっせと映画を撮り続けているのではあるまいか.
その迫力を感じて★★★★(★5個が満点).
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2012/05/19

独断的映画感想文:阪急電車 片道15分の奇跡

日記:2012年5月某日
映画「阪急電車 片道15分の奇跡」を見る.5
監督:三宅喜重.
出演:中谷美紀(高瀬翔子),戸田恵梨香(森岡ミサ),南果歩(伊藤康江),谷村美月(権田原美帆),有村架純(門田悦子),芦田愛菜(萩原亜美),小柳友(カツヤ),勝地涼(小坂圭一),玉山鉄二(遠山竜太),宮本信子(萩原時江).
関西私鉄の雄・阪急電鉄の支線・今津線は,宝塚から西宮北口を結ぶ片道15分のローカル線.
この線を舞台に繰り広げられる人生模様の群像劇である.
登場するのは,婚約者を「寝取られ」復讐のため花嫁より派手な純白の衣装で披露宴に乗り込んだ翔子,恋人のDVに悩むミサ,傍若無人で厚かましいおばはんグループの誘いを断れない主婦康江,田舎出の関西学院学生美帆,軍事オタクの関西学院学生圭一,関西学院を目指す受験生悦子,孫とこの電車によく乗る老婦人時江,いじめに悩む小学生翔子である.4
それぞれの抱えた悩みを10月の時点で披瀝し,3月の時点でその解決編を描く,それに電車の上り・下りが対応しているというのが映画の構造.
阪急電車と関西学院がえらい好意的に扱われとるやンか,という点を除けば,そこそこ面白い群像劇.
文句をつければ,特に前半は演技派の女優のくさい芝居が鼻につく.
宮本信子は言うに及ばず,中谷美紀,南果歩の芝居も恥ずかしくて見ていられない.後者2名については設定に無理がありすぎる.3
如何に恋人に裏切られたからといって,花嫁以上の派手な純白衣装でしかも阪急電車に乗って更に車内で泣き出すという人がいるでしょうか.その異常な女に声をかけ座らせて話し込み,1駅間で問題を「解決」しちゃうという老婦人も普通いないだろう.
この映画は最初からファンタジーだと割り切っても,このあまりに異常な設定は観客として受け容れがたい.
逆に心温まるのは権田原美帆と小坂圭一のカップルのエピソードで,彼等がクリスマスの夜にどうなったかは是非知りたかった(この生真面目なカップルが部屋に二人きりで手にはコンドームを握り,ぎごちないキスを交わしているというところで画面は暗転).彼等二人の電車内の妄想シーンも実にステキ.
役者では一番うまかったのは言うまでもなく芦田愛菜.玉山鉄二も良かった.
優劣こき混ぜて全体としては★★★☆(★5個が満点)
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番外:独断的歌舞伎感想文:平成中村座 五月大歌舞伎 昼の部

日記:2012年5月某日
平成中村座で歌舞伎を見る.Nakamuraza201205b
「平成中村座 五月大歌舞伎」昼の部.
「一、本朝廿四孝(ほんちょうにじゅうしこう) 十種香(じゅっしゅこう)」
出演:八重垣姫(中村七之助),腰元濡衣(中村勘九郎),原小文治(片岡亀蔵),白須賀六郎(坂東橘太郎),長尾謙信(坂東彌十郎),武田勝頼(中村 扇雀).
本日も席は桜席.
開演前は舞台に焚かれたお香が桜席にはひとしお強烈である.
この幕の内側の2階席からは,普段見えないものが見える反面,普通見えて当然のものが見えない不都合もある.この十種香では,肝心の八重垣姫が前半殆ど見えず残念.
しかしこの八重垣姫はお姫様なのに大変な発展家,謙信が出てこなければ腰の引けている勝頼を濡衣の協力の下寝所に連れ込もうとしていた訳で,この狂言全体をじっくり見てみたいものである.
橘太郎が口跡良く元気な芝居で印象的.
「三社祭七百年記念 二、四変化 弥生の花浅草祭(やよいのはなあさくさまつり)」
出演:武内宿禰/悪玉/国侍/獅子の精(市川染五郎),神功皇后/善玉/通人/獅子の精(中村勘九郎).
本日の白眉と言うべき踊り,勘九郎・染五郎の踊りだが,4通りの扮装を早変わりで披露し,二人とも殆ど休みなく共に踊りっぱなしという体力勝負.
最後の獅子の精は浅葱幕の裏で全身の扮装と隈取りを変えるのが桜席からは丸見え,勘九郎の堂々たる体格が瞥見できる(染五郎は着ぶくれるための詰め物を着たまま).汗だくのご両人,高麗屋はうちわで,中村屋は扇風機で風を送っているのが何だかおかしい.
獅子の精の毛振りは誠に迫力有り.
「三、神明恵和合取組(かみのめぐみわごうとりくみ) め組の喧嘩(めぐみのけんか)」
出演:め組辰五郎(中村勘三郎),辰五郎女房お仲(中村扇雀),四ツ車大八(中村橋之助),露月町亀右衛門(中村錦之助),柴井町藤松(中村勘九郎),おもちゃの文次(中村萬太郎),島崎抱おさき(坂東新悟),ととまじりの栄次(中村虎之介),喜三郎女房おいの(中村歌女之丞),宇田川町長次郎(市川男女蔵),九竜山浪右衛門(片岡亀蔵),尾花屋女房おくら(市村萬次郎),江戸座喜太郎(坂東彦三郎),焚出し喜三郎(中村梅玉).
僕の嫌いな演し物である.嫌いなのは,喧嘩を止める正論があたかも「非国民」の様に嘲られ罵倒されて,声の大きいより喧嘩っ早い者の言いなりに集団が雪崩を打っていくところなのである.
粋でいなせで「火事と喧嘩は江戸の花」を体現している様な若い衆の芝居としては当然の展開であるが,こういう芝居で胸がすっとしないのが,我ながらやっかいな性分と言える.
とは言え,役者は皆生き生きとし,テンポよく良い芝居.特に錦之助が素敵だった.
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2012/05/18

独断的映画感想文:ステキな金縛り

日記:2012年5月某日
映画「ステキな金縛り」を見る.1
2010年.監督:三谷幸喜.
出演:深津絵里(宝生エミ),西田敏行(更科六兵衛),阿部寛(速水悠),竹内結子(日野風子/矢部鈴子),浅野忠信(木戸健一),草なぎ剛(宝生輝夫),中井貴一(小佐野徹),市村正親(阿倍つくつく),小日向文世(段田譲治),小林隆(管仁),KAN(矢部五郎),木下隆行(工藤万亀夫),山本亘(日村たまる),山本耕史(日野勉),戸田恵子(猪瀬夫人),浅野和之(猪瀬),生瀬勝久(占部薫),佐藤浩市(村田大樹),深田恭子(前田くま),篠原涼子(悲鳴の女).
やる仕事やる仕事うまくいかない崖っぷち弁護士のエミ,引き受けた殺人事件の被告はアリバイがあるというのでその現場,山奥の「しかばね荘」を訪れる.
宿泊したエミは金縛りに遭い,落ち武者の幽霊・六兵衛と出会う.六兵衛が被告を金縛りにしたアリバイの証人なのである.
エミは勇躍,六兵衛を法廷に引っ張り出そうとするが,幽霊は見えない人の方が圧倒的で….
その幽霊を法廷に引っ張り出し,お人好しの裁判官を説き伏せて証人採用させて,法廷シーンと犯人捜しが展開する映画.
きら星のごとき有名俳優が有象無象のちょい役で登場する.笑いあり涙ありの上質のエンタテインメント.
但し僕はこの映画をあまり楽しめなかった.2
これは結局この映画を見た時の僕の気分が,映画の方向と会っていなかったためと思われる.
僕はむしろ中井貴一が愛犬ラブと戯れるあのシーンで涙が溢れてしまって困った.死者達を扱う映画が僕の心を鷲掴みにするのは,「異人達との夏」で証明済みである.
もう少し心に余裕のある,コメディを充分に楽しめる時にもういちど見るのが良いかもしれない.
その時まで点数はお預け.まあ,見て損はない映画.
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2012/05/13

独断的映画感想文:マネーボール

日記:2012年5月某日
映画「マネーボール」を見る.2_2
2011年.監督:ベネット・ミラー.
出演:ブラッド・ピット(ビリー・ビーン),ジョナ・ヒル(ピーター・ブランド),フィリップ・シーモア・ホフマン(アート・ハウ監督),ロビン・ライト(シャロン),クリス・プラット(スコット・ハッテバーグ),ケリス・ドーシー(ケイシー・ビーン),スティーヴン・ビショップ(デヴィッド・ジャスティス).
2001年のシーズン,ヤンキースにプレイオフで惜敗した貧乏球団アスレチックス,おまけにこのシーズンオフに主力の3選手がことごとく他球団に引き抜かれる.
若きゼネラルマネジャー(GM)ビリーは花形高校球児,大学への奨学金も得ながらスカウトされてプロ入りしたものの,鳴かず飛ばずのまま引退した経歴を持つ.
オーナーから金は出せないと宣言されたビリーは,トレード交渉で訪れたインディアンズで働くピーターと出会う.
独自のデータ分析で選手を評価するピーターを,自分のチーム運営になくてはならない逸材と見たビリーは,彼を引き抜き二人で「マネーボール」理論に則った選手獲得を始める….
GMビリー・ビーンの成功物語.4_2
このプロとしての実績もなく,強引で独断的,しかも新理論をチームに適用しようというビリーが成功するには,ひとかたならぬ苦難の道がある.
これは従来の選手評価の視点の変更であり,ビリー自身が蹉跌を味わった直感的主観的スカウト方法の否定だったからだ.
映画では選手・監督の同意が得られず,連敗を重ねるアスレチックスの苦境が描かれる.
しかしビリーは一歩も引かない.
ビリーは選手達に優勝を目指すと宣言,個々の選手に自分の戦略を浸透させていく.一方,ビリーが獲得した選手を使わず,新人王候補の選手に固執する監督に対しては,その新人王候補を敢えて放出して対抗する.
監督との確執はなかなかにスリリングだ.5
ブラッド・ピットがこの個性あふれるGMを好演,時折訪れる愛娘との交流も微笑えましい(ケリス・ドーシーが買ってもらったギターで歌う自作の歌が可愛らしい).
見て損のない映画.
★★★★(★5個が満点)
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独断的映画感想文:ナイン・ソウルズ

日記:2012年5月某日
映画「ナイン・ソウルズ」を見る.2
2003年.監督:豊田利晃.
出演:原田芳雄(長谷川虎吉),松田龍平(金子未散),千原浩史(車一馬),鬼丸(宍戸ラン),板尾創路(亀井富士夫),KEE(猿渡清),マメ山田(白鳥ひでみ),鈴木卓爾(乾真一),大楽源太(牛山一郎),伊東美咲(ユリナ),京野ことみ(佳子),唯野未歩子(ミサオ),今宿麻美(希新),鈴木杏(ガン子),松たか子(ユキ),藤木悠(定食屋の主人),麿赤兒(駄菓子屋の主人),國村隼(元偽札王 山本),北村一輝(タモリ),瑛太(金子ノボル),井上順(中山).
刑務所で同房の長谷川虎吉ら9名はいずれも懲役10~15年のそうそうたる面々,偶然見つけた抜け穴から脱走する.
首尾良くキャンピングカーを奪取し,一同は仲間の偽札王・山本が金を埋めたという小学校のタイムカプセルを目指す.
結局金は埋まっておらず,彼らは強盗・かっぱらい等を繰り返しながら珍道中を続ける.
やがて自分の女や育った地元等,立ち寄ってはならないそれぞれの場所目指して彼らは個々に動き始めるのだが….3_2
9人の中では「息子殺し」の長谷川,「父親殺し」の金子未散の確執が前半の軸である.
長谷川は,リーダーシップがあるが絶対服従を求めるタイプ,金子はその長谷川をつけ狙う.原田と松田の絡みが印象的.
俳優は異色の面々が豪華にキャスティングされ,なかなかに見応え有り.
伊東美咲のストリップショー(ミュージックは何と浅川マキの「ちっちゃな時から」)も見てのお慰み.
後半ロードムービーの夢は終わり,それぞれが非業の最期を遂げたり捕まったり,人生の決着がついていく.
そのエピソードは悲哀に満ちているが,最後のシーンで観客は癒やされるだろう.
極悪人どもが演じる心温まるファンタジー.1_2
個人的には千原浩史,板尾創路,北村一輝が好き.
★★★☆
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独断的映画感想文:ツレがうつになりまして

日記:2012年5月某日
映画「ツレがうつになりまして」を見る.4
2011年.監督:佐々部清.
出演:宮崎あおい(髙崎晴子(ハルさん)),堺雅人(髙崎幹男(ツレ)),吹越満(杉浦),津田寛治(髙崎和夫),犬塚弘(川路),梅沢富美男(三上隆),田山涼成(加茂),山本浩司(君塚),中野裕太(小畑),田村三郎(津田),大杉漣(栗田保男),余貴美子(栗田里子).
漫画家・細川貂々の原作による映画化.
売れない漫画家ハルさんは唯一の連載を打ち切られ元気ない毎日.
夫のツレはコンピュータ会社の苦情相談係,リストラで人員不足のなか偏執的な苦情を指名されて受け続け,ついに鬱になる.1
ツレは会社を辞めハルは看病に心を砕きつつ,自分が漫画で稼がねばと決意を打ち固める….
鬱病のドキュメント映画という訳ではないから,紆余曲折は経つつもツレの鬱の症状は比較的早めに和らぎ,ハルも漫画家と成功して映画はハッピーエンド.
それよりこの映画は,鬱をきっかけに人生を考え直し,やり直す若い夫婦の物語として印象的である.
この映画の題名は,まさにハルのやり直しのターニングポイントになった言葉と言えよう.
その夫婦に堺雅人と宮崎あおいを配したというキャスティングが,この映画の成功の大きな要因である.両者のそれぞれの演技は,鬱患者と漫画家として,いかにもと納得させるものがある.
そして観客に対しても,自分の人生を振り返らせるものがある.3
見て良かった映画.
★★★★(★5個が満点)
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2012/05/01

独断的映画感想文:ラビット・ホール

日記:2012年4月某日
映画「ラビット・ホール」を見る.1_2
2010年.監督:ジョン・キャメロン・ミッチェル.
出演:ニコール・キッドマン(ベッカ・コーベット),アーロン・エッカート(ハウイー・コーベット),ダイアン・ウィースト(ナット),タミー・ブランチャード(イジー),マイルズ・テラー(ジェイソン),ジャンカルロ・エスポジート(オーギー),ジョン・テニー(リック),パトリシア・カレンバー(ペグ).ジュリー・ローレン(デビー),サンドラ・オー(ギャビー).
8ヶ月前に4才の一人息子を自動車事故で亡くしたコーベット夫妻.
その痛手から未だ立ち直ることは出来ない.
ベッカの妹が妊娠しそのお祝いをしなければとか,隣人から夕食誘われたりとか,日常の些細な出来事にも心は揺れ動く.2
ベッカとハウィーの夫妻間にも考えの違いがあり,その葛藤に諍いも起こる.
夫妻は共に子供を失った遺族の会にも参加するが,ベッカはその会を「神様ごっこ」と嫌って止めてしまう.止めずに通い続けるハウィーは,その会員の離婚女性ギャビーに安らぎを感じ接近していく.
そんなある日,ベッカは通学バスに加害者の学生・ジェイソンの姿を見つけ,思わずその後を追うが….
題名のラビット・ホールは不思議の国のアリスに出てくる,アリスが突然落ち込んだ不思議な世界に通じるうさぎの穴であり,またジェイソンが平行宇宙の概念に基づいて自作しているコミックの題名でもある.
この映画は,アメリカ映画とは思えない程淡々として静かに夫婦の再生を描いている.3
夫婦それぞれその悲しみは痛切であるにもかかわらず,一方は思い出に生き,一方は思い出を消し去ろうとする.
その両者の行く末を,映画は穏やかに提示していく.
ニコール・キッドマンが美しすぎることはある点でマイナスかも知れないが,共感を感じる映画.
★★★☆(★5個が満点)
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独断的映画感想文:ヌードの夜

日記:2012年4月某日
映画「ヌードの夜」を見る.1
1993年.監督:石井隆.
出演:竹中直人,余貴美子,根津甚八,椎名桔平,清水美子,岩松了,小林宏史,田口トモロヲ,室田日出男.
映画の冒頭,ホストクラブの支配人行方に金を届ける名美,そのまま行方の部下仙道の見る前で体を開く.
名美は行方に長年強請られており,広瀬との婚約を機に行方との仲を清算しようとしていた.
何でも代行屋の紅次郎(村木)にホテルの部屋を取らせた後,その部屋に行方を呼び出し遂には殺害してしまう.
翌日,名美の呼び出しに応じてホテルの部屋を訪れた村木は行方の死体を発見,しかし名美に一目惚れしていた村木は行方の死体をトランクに詰め,ホテルから持ち出す.
仙道は行方の後を追い村木にたどり着く.村木と名美への仙道の暴力的追及が始まるが….
石井隆監督の独特の雰囲気が貫徹されている映画.
但しあらすじを紹介した前半は,描写も雑で展開も荒削り.
村木がやたらと仙道やら街のやくざやらに暴行される(竹中直人をぶちのめしたいという石井監督の欲求は理解できる(?)が)のはちょいとやり過ぎ.
しかし終盤,村木と名美が追い詰められ,名美が車ごと海へ突っ込むシーンの辺りからにわかに緊張感が高まってくる.
そして題名の「ヌードの夜」である,最終場面の男女の別れの場の哀切さは,筆舌に尽くしがたい.
余貴美子がささやく様に歌うエンディングテーマ,「I’m a fool to want you」は観客の心に長く残るであろう.
この映画の真骨頂はまさにこの,ラスト30分にあると言える.
それ以外は正直言ってどうでも宜しい.
なお,この名美が車で海に突っ込むシーンでは,車と共に水没したのは余貴美子自身であり,また海中に幾度も潜って遂に名美を救い出す村木の長回しのシーンも竹中直人と余貴美子の吹き替え無しの演技である.
この撮影のために両名はスキューバダイビングの訓練を受けたそうな.
僕は竹中直人がだいっ嫌いなので,この映画の村木役はミスキャストだと確信するが,竹中直人のこの根性は評価します.恐れ入りました.
★★★★(★5個が満点)
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2012/04/23

独断的映画感想文:ツリー・オブ・ライフ

日記:2012年4月某日
映画「ツリー・オブ・ライフ」を見る.2_2
2011年.監督:テレンス・マリック.
出演:ブラッド・ピット(オブライエン),ショーン・ペン(ジャック),ジェシカ・チャステイン(オブライエン夫人),フィオナ・ショウ(祖母),ハンター・マクラケン(若きジャック(長男)),ララミー・エップラー(R.L.(次男)),タイ・シェリダン(スティーヴ(三男)).
映画の冒頭聖書の「ヨブ記」の引用.この「ヨブ」記は中盤の教会のシーンでも解説される.
次いでオブライエン夫人の少女時代とおぼしき映像と共に,修道女から聞いた「人生には世俗的な道と恩寵と共に歩む道がある」という言葉が語られる.1_2
不思議な光の揺らめく映像の後,オブライエン夫人が息子の死の報せを受け取るシーン,オブライエン氏がそれを聞く電話ボックスのシーン,葬儀のシーンが続き,やがて映画は宇宙の始まりから惑星の誕生,生命の始まりから恐竜の時代までを総括する長大な叙事詩に至る.
続いて現代のジャックが登場,彼は19才で失った弟のことが未だ頭から離れない.
彼の回想として始まる1950年代の彼等3兄弟の誕生へと映画は進む.
信仰深く深い愛情を持って子供達を育てるオブライエン夫人,一方オブライエンは息子達を愛しながらも,まさに世俗的な道を生きる人として,息子達に自分への絶対服従を強いながら強く生きることを求める.
思春期にいたり,ジャックは父を憎みながらも自分も弟に絶対服従を求め,その自分を持て余し苦しむ日々を送る….4
一筋縄ではいかない映画である.
ふんだんにちりばめられる宇宙,波,樹々の緑の映像と回想するジャック自身のイメージ,回想される両親と子供達の映像も,あるいは時を溯りあるいは特定のエピソードを差しはさむ.
この映画は物語がテーマを解決していくのではなく,映像の連なりがジャックの精神的浄化を暗示していく映画の様である.
観客は母親の愛情深い生き方も,父親の一方的な愛情表現が子供達には全く受け容れられない状況も,そのまま受け止めることになるだろう.
その蓄積の中でジャックが苦しんでいく過程は痛々しい.ブラッド・ピットに生き写しの次男役:ララミー・エップラーが愛らしい.3_2
この監督独特の表現がユニークな映画,一見の価値あり.
★★★☆(★5個が満点)
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独断的映画感想文:ゴーストライター

日記:2012年4月某日
映画「ゴーストライター」を見る.1
2010年.監督:ロマン・ポランスキー.
出演:ユアン・マクレガー(ゴースト),ピアース・ブロスナン(アダム・ラング),キム・キャトラル(アメリア・ブライ),オリヴィア・ウィリアムズ(ルース・ラング),トム・ウィルキンソン(ポール・エメット),ティモシー・ハットン(シドニー・クロール),ジョン・バーンサル(リック・リカルデッリ),デヴィッド・リントール(ストレンジャー),ロバート・パフ(リチャード・ライカールト),ジェームズ・ベルーシ(ジョン・マドックス),イーライ・ウォラック(老人).
元英国首相の自伝執筆を依頼された「ゴースト」,その元首相アダム・ラングはアメリカ東海岸の孤島の別荘に住む.
ゴーストはその別荘に缶詰になって自伝執筆に取り組む.
ところがラングは,首相在任中にイスラム過激派のテロ容疑者をCIAに引渡し,拷問をした疑惑が浮上,国際司法裁判所に告発されることに.2
自伝執筆の前任者はフェリーから転落し溺死したと言われているが,ゴーストの会った島の老人は,フェリーから落ちて死体発見現場に漂着することはあり得ないと言う.
次第に謎の深まるなか,ゴーストはラング夫人に誘われベッドを共にするが….
国家レベルの陰謀に巻き込まれたゴーストの運命や如何に,という映画.
ポランスキーは米国に入れないので,ロケ地は東海岸でなくドイツだとか.そういえば元首相の車はBMWであったな.3
映画は全体としては面白いが,謎の深さと解決の切れ味は今いち.
ユアン.マグレガーのゴースト役はあまりに淡々としていて,もう一つ納得できない.
最後の場面,何故ゴーストは解き明かした謎をあれほど性急に,言うべきでない人に言ってしまったのか.またその直後にもう暗殺者が彼を襲うのはどういう訳か.
謎の仕掛けもこれだけの映画にしては安っぽい感じがする.せっかくのクライマックスが拍子抜けで,評価はやや低い.
★★★(★5個が満点)
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2012/04/22

独断的映画感想文:アンフェア the answer

日記:2012年4月某日
映画「アンフェア the answer」を見る.1_2
2011年.監督:佐藤嗣麻子.
出演:篠原涼子(雪平夏見),佐藤浩市(一条道孝),山田孝之(村上克明),阿部サダヲ(小久保祐二),加藤雅也(三上薫),吹越満(武田信彦),大森南朋(結城脩),寺島進(山路哲夫),香川照之(佐藤和夫),横山めぐみ,モロ師岡.
初めて見る「アンフェア」,前回までの事情はとんと分かりません.3_2
ということで,映画の冒頭,一条とベッドで馴染み会う雪平夏美,ここは北海道で雪平は西紋別署刑事課に勤務,しかし職場では警視庁からの左遷組として孤立している.
一条は西紋別署の上司.
一方東京では釘打ち銃による連続殺人事件が発生,現場からは雪平の元夫・佐藤の指紋が見つかる.佐藤は雪平に会いに北海道まで来るが,雪平に重要な情報を伝えた後,釘打ち銃を撃ち込まれ死亡する.
その釘打ち銃からは雪平の指紋が検出され,雪平は逮捕連行されるが….
展開は面白いし役者はそれぞれちゃんと演技しているのだが,いまひとつなのは全体の構成がちゃちいことでしょうか.5
味方と思っていたら敵,敵と思っていたら味方で,と思っていたらやっぱり敵などと,こういう展開自体は面白いが,最終的に浮かび上がってくる警視庁や警察庁の構造的な悪の仕組みは中身すかすかで,ここに至ってああやっぱりフジTVドラマだったのねと不覚にも納得した次第.
★★★(★5個が満点)
良い役者をこういうテレビ映画で消費して欲しくないですね.
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独断的映画感想文:シャンハイ

日記:2012年4月某日
映画「シャンハイ」を見る.4
2010年.監督:ミカエル・ハフストローム.
出演:ジョン・キューザック(ポール・ソームズ),コン・リー(アンナ・ランティン),チョウ・ユンファ(アンソニー・ランティン),フランカ・ポテンテ(レニ),ジェフリー・ディーン・モーガン(コナー),菊地凛子(スミコ),ベネディクト・ウォン(キタ),ヒュー・ボネヴィル(ベン・サンガー),デヴィッド・モース(リチャード・アスター),渡辺謙(タナカ大佐).
欧米,日本が租界を確保し,各国の諜報員がうごめく1941年の上海.1
CIAのエージェント・ポールは,親友コナーの死の原因を探るべく,その後任として上海に記者を装い赴任する.
親独派の記者という触れ込みで独大使館に出入りしたポールは,そこで旧知の友人の奥方レ二と一緒になるが,同時に上海の暗黒街の大物ランティンとその夫人,更に日本の諜報責任者タナカ大佐との面識を得る.
コナー事件の調査を続ける一方,ランティン夫人アンナと親しくなるポールだが,アンナは日本軍に対するレジスタンス活動を行っているらしい….
日米開戦直前の上海における諜報戦を描く大作.2
この映画はコン・リー姐さん,チョウ・ユンファ,渡辺謙の存在感が圧倒的である.
主演のジョン・キューザックはそれに比べると如何にも格下.
そもそも,ポール・ソームズの役は何故ジョン・キューザックなのか.他にいくらでももうちょっと緊張感の高い顔をした役者が居るでしょうに.3
映画としては,諜報機関員の必死の活動にも関わらず,日米開戦という圧倒的な歴史的事実の展開がドラマを締めくくっていくところが印象的である.
戦争,ということの重さを改めて考えさせられた.
★★★☆(★5個が満点)
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2012/04/16

番外:独断的歌舞伎感想文:平成中村座 四月大歌舞伎

日記:2012年4月某日
歌舞伎「平成中村座 四月大歌舞伎」を見る.Nakamuraza201204b
演し物は,串田和美 演出・美術,「隅田川続俤 法界坊(ほうかいぼう) 序幕 深川宮本の場より 大喜利 隅田川の場まで」.
出演:聖天町法界坊(中村 勘三郎),道具屋甚三郎(中村 橋之助),永楽屋手代要助実は吉田松若(中村 勘九郎),花園息女野分姫(中村 七之助),仲居おかん(中村 歌女之丞),山崎屋勘十郎(笹野 高史),番頭正八(片岡 亀蔵),永楽屋権左衛門(坂東 彌十郎),永楽屋娘お組(中村 扇雀).
「法界坊」を見るのは,7年ぶりである.
今回の「法界坊」は,勘三郎の回復ぶりを推し量るバロメーターにもなろうかという訳だが,期待を上回る怪演ぶりは素直に嬉しいところ.
本日の席は桜席,舞台の義太夫席の上から見下ろす2階席だ.開幕前から彌十郎が上を見上げて挨拶してくれる.
幕が上がると勘三郎始め一同エンジン全開,黒衣まで演技する抱腹絶倒の舞台が続く.
中でも笹野高史,片岡亀蔵は秀逸.勘三郎を含めた3人の入り乱れてのお組・松若を巡る出入りには腹を抱える.
笹野高史がムーンウォークを演じれば亀蔵はスプリット(バレーの180度前後開脚)を披露するなど,肉体を酷使したギャグに客席からはオーという賛嘆の声.
このギャグの洪水にもかかわらず,決めるべきところでは歌舞伎本来の見得が必ず綺麗に決まるというのが,流石である.
大喜利では歌舞伎の様式通りの舞踊が繰り広げられ,最期の大立ち回りでは背景の扉が開けられ,舞台を覆い尽くす花吹雪の乱舞越しに本当の隅田川と満開の桜,その背後にスカイツリーが見え(た筈である.桜席からは想像するしかない),やんやの喝采.
終了後のカーテンコールには,劇場総立ちのスタンディングオベーションで応える.何とも素敵な舞台であった.
閉幕後も桜席では拍手が続き,勘三郎,橋之助他が手を振って楽屋に引き上げてゆく.中村座はこれだから止められない.
この串田演出の「法界坊」(の成功)には,勘三郎が単なる喜劇役者になってしまうのではないかという批評があるらしい.
しかし,この芝居が魅力的であることは否定できないし,勘三郎がこういう芝居が好きで本人の人柄とも良く合っていることも否定できまい.
一歌舞伎ファンとしては,それ以上のことを言うつもりはない.
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独断的映画感想文:モテキ

日記:2012年4月某日
映画「モテキ」を見る.2
2011年.監督:大根仁.
出演:森山未來(藤本幸世),長澤まさみ(松尾みゆき),麻生久美子(桝元るみ子),仲里依紗(愛),真木よう子(唐木素子),山田真歩(彩海),伊達暁(三浦),りりィ(愛の母),内田慈(千葉),東加奈子(カオリン),傳田うに(出入り業者),上田遥(ミキちゃん),信川清順(小宮山基樹),赤堀雅秋(吉野家の店員),丸尾丸一郎(フェスカップル),祖父江唯(フェスカップル),野波麻帆(土井亜紀),満島ひかり(中柴いつか),松本莉緒(小宮山夏樹),菊地凛子(林田尚子),新井浩文(島田雄一),金子ノブアキ(山下ダイスケ),リリー・フランキー(墨田卓也).
人気漫画が原作の映画.勿論漫画は読んでいない.6
30歳で定食のないおたく青年藤本は,これではいかんと音楽系サイトを運営するメディア会社に応募,ところが編集長墨田の女4名がかち合う騒ぎに巻き込まれ包丁で刺され,その結果見事正社員に採用される.
起死回生,仕事に女に張り切る藤本だが,ツイッターで反応してきたアイコンがゴリラという松尾とオフで会ってみたらこれが何と美少女みゆき.
その夜はみゆきの友人と3人で盛り上がった上藤本のアパートに全員が雑魚寝,夜明けにみゆきと濃厚なキスを味わう.7
その後はみゆきの友人るみ子と寝たり,バーの女・愛のベッドで目が覚めたり,これがモテキかっという濃厚な日々.その中で藤本は揺れ動いていくのだが….
30歳おたくのお馬鹿映画ではあるが,終わってみればこれが何と大純愛映画,普通こういう話の主人公はせいぜい22,3歳と思うのだが.
主人公が30でセカンド童貞で社会人としては1年生でってのは今の世の中しょうがないんですかね.日本は滅びますな.
こういうことはともかくとして,映画としては面白い.随所に挿入される音楽も悪くはない.リズムもテンポも良くて,あっという間に終局までいきました.8
但し,おたく主人公藤本を演じる森山未來はうまいが,長澤,仲のバストをもみしだいたのは許せない.
もっと許せないのは泣いてすがった麻生久美子を突き放したことで,ここでは殺意を覚えた(僕は麻生久美子ファンです).
でも後味は良いし見て損はない映画.
★★★★(★5個が満点)
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2012/04/03

独断的映画感想文:スリーデイズ

日記:2012年3月某日
映画「スリーデイズ」を見る.4
2010年.監督:ポール・ハギス.
出演:ラッセル・クロウ(ジョン・ブレナン),エリザベス・バンクス(ララ・ブレナン),ブライアン・デネヒー(ジョージ・ブレナン),レニー・ジェームズ(ナブルシ警部補),オリヴィア・ワイルド(ニコール),タイ・シンプキンス(ルーク),ヘレン・ケアリー(グレース・ブレナン),リーアム・ニーソン(デイモン・ペニントン).
親子3人で何不自由ない生活を送っていた大学教師ジョン,しかしある朝突然警察が踏み込み妻・ララが逮捕される.
容疑は殺人,ララは無実を主張するが裁判は有罪が確定する.
裁判費用に有り金をつぎ込んだジョンだが,弁護士は上告を諦める様示唆,絶望したララは自殺を図る.
ここに至りジョンはすべてをかけて「脱獄」を決意するが….
冒頭は妻の有罪が確定するまで,中盤は脱獄の構想と準備,最期は実行と,まさに序破急を描く映画の展開がスムース.3_2
特に後半ははらはらどきどきのサスペンス,仕込みに仕込んだ計画,その破綻,警察の動きとその対応が凄まじいテンポで展開され手に汗を握ること必定.
結果がハッピーエンドなのもこの映画の良いところだが,但しこれがハッピーエンドかどうかはよーく考えると微妙なところである.
この過程でララは無実としても,ジョンは正真正銘の強盗殺人犯・脱獄犯となっているからである.1_2
本当のハッピーエンドは真犯人の逮捕ということになろうが,この映画のエピローグでは,真犯人は確かに別にいるがそれは捕まらないということが示されていて,ある種の余韻ある終局となっている.
まあそれもしょうが無いか.
★★★☆(★5個が満点)
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独断的映画感想文:再会の食卓

日記:2012年3月某日
映画「再会の食卓」を見る.3
2010年.監督: ワン・チュアンアン.
出演: リサ・ルー(ユィアー(玉娥)),リン・フォン(リゥ・イェンション(劉燕生)),シュー・ツァイゲン(ルー・シャンミン(陸善民)),モニカ・モー(ナナ(娜娜)).
国民党軍兵士として1949年の台湾への撤退に巻き込まれた劉燕生は,新婚だった妻と別れ台湾で暮らす.
40年後,劉燕生は台湾から祖国への訪問ができる様になったのを機に,妻・玉娥に再会したい旨の手紙を送る.
玉娥は陸善民と再婚し,劉燕生の息子の他3人の娘達を育て,今は平穏に暮らしている.劉燕生の手紙に娘達は揃って反対の声を上げたが,玉娥の心は動き,また人の良い陸善民は劉燕生を歓迎すると言い出す.
かくて一家は上げて劉燕生を迎える食卓を準備するのだが….
40年の歴史を越え,劇的な変貌を遂げつつある上海を舞台に綴られる,男女・家族の物語.1
劉燕生はこの機会に玉娥を台湾に連れ帰りたいと考え,玉娥も遂にはそれに同調する.二人に打ち明けられた陸善民は妻のためにその申し出を受け容れようと即答するが,心の中には深い葛藤があった.
重ねられる食卓を囲む歓談の度に,変化していくシチュエーションと男女の心が,見事に描かれている.
3人の主役達はいずれも良い人たちで(陸善民は誠に名前通りの好人物である),歴史に翻弄され苦労を重ねながらも生きていこうとするそれぞれの立場に,涙を禁じ得ない.
また,この映画には多くの歌曲が採用され,主役達が食卓でそれぞれに歌う歌曲はなかなかに味があり,映画への彩りとなっている.2
これは蛇足であるが,台湾訪問団が見学する小学校で児童等が歌っていた歌曲は,原曲はジョン・P・オードウェイ(John P. Ordway)による“Dreaming of Home and Mother”とウィキペディアにある曲だが,日本では「旅愁」として知られる唱歌であり,中国では「送別」として知られる唱歌の様である.この歌の挿入も印象的.
物語の結末も心に残る.一見の価値ある映画.
★★★★(★5個が満点)
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2012/04/01

番外:独断的歌舞伎感想文:六代目中村勘九郎襲名披露平成中村座 三月大歌舞伎

日記:2012年3月某日
歌舞伎「六代目中村勘九郎襲名披露平成中村座 三月大歌舞伎」を見る.
夜の部:「一、片岡十二集の内 傾城反魂香(けいせいはんごんこう)  土Nakamuraza201203b
佐将監閑居の場」.
配役:   浮世又平後に土佐又平光起(仁左衛門),土佐将監光信(亀 蔵),土佐修理之助(新 悟),狩野雅楽之助(猿 弥),又平女房おとく(勘三郎).
仁左衛門の魂を込めた演技に胸が熱くなる.
この役は台詞も満足にしゃべれない吃りの役である上,白塗りではない素の仁左衛門が演ずるのだが,素直に感動した.
女房役の勘三郎との絡みがまた宜しい.師匠・土佐将監の亀蔵も好き.
「二、六代目中村勘九郎襲名披露 口上(こうじょう)」.
勘太郎改め勘九郎,幹部俳優出演.新勘九郎を励まし期待する声と共に,歌舞伎を守り育てようという熱意が伝わってくる,中村座の口上であった.
「三、曽我綉侠御所染(そがもようたてしのごしょぞめ)  御所五郎蔵」
配役:御所五郎蔵(勘太郎改め勘九郎),星影土右衛門(海老蔵),傾城逢州(七之助),梶原平蔵(亀 蔵),新貝荒蔵(男女蔵),秩父重介(国 生),二宮太郎次(猿 弥),花形屋吾助(笹野高史),傾城皐月(扇 雀),甲屋与五郎(我 當).
この芝居は1年ぶり,前回は五郎蔵が菊五郎,傾城逢州は菊之助だった.
何と言ってもこの芝居は傾城逢州が哀れである.
それで五郎蔵はというと,これは格好の良い親分の様でいて,実は素寒貧のうえ頭が悪い.
しかし勘九郎が若々しく演じると,その圧倒的な美しさで,悲劇的運命に翻弄される五郎蔵の姿に涙を禁じ得ない.芝居というのは不思議なものである.
「四、元禄花見踊(げんろくはなみおどり)」.
配役:元禄の衆(児太郎,虎之介,鶴 松,宜 生,国 生).宜生が愛らしく懸命に踊って可愛らしい.鶴松は達者,虎之助が女形らしくうまかった.なかなか見応えのある夜の部である.
さあ来月は「法界坊」だ.
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独断的映画感想文:大鹿村騒動記

日記:2012年3月某日
映画「大鹿村騒動記」を見る.2
2011年.監督: 阪本順治.
出演:原田芳雄,大楠道代,岸部一徳,松たか子,佐藤浩市,冨浦智嗣,瑛太,石橋蓮司,小野武彦,小倉一郎,でんでん,加藤虎ノ介,三國連太郎.
300年の伝統を引き継ぐ大鹿歌舞伎の主演・影清役を張る善ちゃんは,大鹿村で鹿肉を食べさせる食堂を営むが,久しぶりに雇ったバイトの雷音は何か訳ありの青年.
いよいよ大鹿歌舞伎の近づく日々,ところが村はリニアモーターカーの賛否を巡って揉めている上,何と18年前に駆け落ちした善ちゃんの女房・貴子と親友の治が,帰ってきた.
治の言うことには,貴子は頭の病気でまだらぼけになり,駆け落ちしたことさえ忘れてしまっているという.
「もうおまえに返す」という治.4
折しも台風の襲来で山崩れが起き,女形の一平が怪我をする.その役「みちしま」は貴子が昔得意とした役で,貴子は台詞を全部覚えていた.
起死回生,貴子と善ちゃんの共演で大鹿歌舞伎の幕は開くが….
という訳で,きら星の様な豪華配役で見せる村歌舞伎を巡る大騒動.
ベテラン俳優達の何とも言えない間での台詞のやりとり,青年の様に若々しい演技への情熱が楽しめる,希有な映画.程よい可笑しさと程よい哀しさのバランスが好ましい.
南アルプスの美しい自然も魅力的だが,何と言っても大鹿歌舞伎そのもの,演ずる俳優や囃子方,おひねりを投げて喝采する村の皆さん,その全てが印象に残る.
出てくる俳優は好きな人ばかりだが,皆年を取った.5
原田芳雄ちゃんがこの映画の完成直後に亡くなったのは実に残念.それを知って見る映画の感想は,「面白うてやがて哀しき…」というところか.
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