2010/02/07

独断的映画感想文:ドゥームズデイ

日記:2010年2月某日
映画「ドゥームズデイ」を見る.09
2008年.監督:ニール・マーシャル.
出演:ローナ・ミトラ(エデン・シンクレア),マルコム・マクダウェル(ケイン博士),ボブ・ホスキンス(ビル・ネルソン),アレクサンダー・シディグ(ハッチャー首相),エイドリアン・レスター(ノートン軍曹),デヴィッド・オハラ(マイケル・カナリス).
「アンダーワールド・ビギンズ」の主演,ローナ・ミトラがスーパーヒロインを演じるアクション映画.
2008年,スコットランドのグラスゴーで新種のウィルスが発生,イギリス政府はスコットランドを高い塀で封鎖しウィルスの拡大を阻止した.
27年後の2035年,ウィルスは突如ロンドンの貧民区で発生,一方人類は絶滅したと思われた塀の中で,人類の活動が衛星から観測される.
政府は塀の中で治療薬が開発された可能性があるとして,グラスゴー在住のウィルス学者,ケイン博士の研究所跡に向け,装甲車に乗せた兵士と学者を派遣する.10
そのリーダーは幼児の時に単身グラスゴーから脱出してきた,エデン・シンクレアだった….
まあ設定も大胆なら筋書きもかなり突っ込まれ放題と見える筋書きである.
塀の中は無政府状態,生き残った人々はあるグループは「マッドマックス」そのままの暴力集団を形成,あるグループは中世そのままの自給自足経済を展開するが,いずれも追い詰められ,殺し合いや人肉食いが横行する.
そこに進入した装甲車は「マッドマックス」グループに襲われ炎上,生き残った隊員は暴徒に追われて装備の大半を失って塀の中をさまよう羽目になる.11
しかしこの映画,なかなか面白いのです.
ローナ・ミトラのクールで逞しいスーパーヒロインぶりが魅力的だし,テンポ良く進行する物語の展開に息つく暇もなく最後まで持って行かれる.
最終シーンでの,彼女の意外な生き方の選択も,納得のいくものだった.その点で後味も宜しい.
まあ,マッドマックスそのままぱくりと言えばその通りだが,中世派グループから脱出してマッドマックスグループに行き会うあたりの不思議な感覚も,それなりに面白い.12
見て損は無し.ただし女性やカップルでという映画ではない(スプラッターな面もあるし).
★★★★(★5個が満点)
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独断的映画感想文:禅

日記:2010年1月某日
映画「」を見る.1_2
2008年.監督:高橋伴明.
出演:中村勘太郎(道元),内田有紀(おりん),藤原竜也(北条時頼(友情出演)),テイ龍進(寂円・源公暁),高良健吾(俊了),安居剣一郎(義介),村上淳(懐奘),勝村政信(波多野義重),鄭天庸(如浄),西村雅彦(浙翁),菅田俊 (公仁),哀川翔(松蔵),笹野高史(老僧),高橋惠子(伊子).
曹洞宗の開祖,道元の一生を描く宗教学者・大谷哲夫原作の映画化.
まあ原作があって監督が高橋伴明だから,あまり無茶なカドカワ映画ではない.
死後の極楽往生ではなく,現世で救われることはできないかとの問題意識を持った道元が宋に留学し,幾人もの僧を訪ねた挙げ句,ようやく求める指導者・如浄禅師に出会う.
ここで悟りを開き帰国,様々な既成仏教界の弾圧を受けながら,次第に賛同者を得て遂に越前永平寺に修行の場を開く,その活動に沿って物語は進行する.
淡々とした物語だが,道元の「全ての人に仏は内在する.その仏と出会うためにひたすら座禅せよ」との教えは印象に残る.
山場は,時の執権北条時頼の妄疾を癒やすため,命がけで教え諭すシーンであろう.俳優は全体として好演,中村勘太郎は適役と言える.
道元の一生を描くためには尺がやや足りず,如浄禅師に会ってから3分後にはもう悟りを開いていたり,波多野義重が何故道元を所領の越前に招いて寺を寄進したかの事情も明かされないなど,いささか説明不足のところ有り.
また,本物の永平寺を使ったシーンに比べ,宋を旅するシーンのロケ映像や,時頼の妄想シーンのCGが思いっきり安っぽいところも頂けない.
しかし全体としては見て損は無し.
★★★☆(★5個が満点)
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2010/01/31

独断的映画感想文:レイチェルの結婚

日記:2010年1月某日
映画「レイチェルの結婚」を見る.1
2008年.監督:ジョナサン・デミ.
出演:アン・ハサウェイ(キム),ローズマリー・デウィット(レイチェル),ビル・アーウィン(ポール),トゥンデ・アデビンペ(シドニー),マーサー・ジッケル(キーラン),アンナ・ディーヴァー・スミス(キャロル),アニサ・ジョージ(エマ),デブラ・ウィンガー(アビー).
薬物中毒の治療のため入院していた矯正施設から,姉レイチェルの結婚のため一時的に退院したキム.
自宅の庭にはテントが張られ,ミュージッシャンが演奏練習をする中,レイチェルは衣装合わせ,他の皆も式の支度に忙しい.
居場所のないキムはタバコをふかしてはあちこちをうろつく.キムを腫れ物に触る様に扱う家族,離婚した母も式のために訪れるが,キムにはよそよそしい.
エキセントリックな薬中に見えるキムだが,映画の進行と共に,キムがかって犯した大きな過ちと,その傷跡が家族の間に未だに大きく残っていることが判ってくる….2
その事件のためにキムは未だに自分を責め続け,家族もその事件を忘れることはできない.
自分を責め続けるキムを見る父のやりきれない悲しみ,自分の結婚式の喜びとキムへの複雑な思いに直面するレイチェル.
家族を祝福しに親しい人々が訪れる中で,衝突しあいまた和解を繰り返すキム達の描写が,胸を打つ.
手持ちカメラで撮り続ける映像はドキュメント風で,観客を画面の中に誘い込む様だ.
俳優ではアン・ハサウェイが文句なく素晴らしい.大きな十字架と大きな悲しみを背負って生きているキムの,何時壊れるかも知れない危うさを演じて,強い印象を受ける.3
個人的には父親を演じたビル・アーウィンに共感を持った.それは俳優が素晴らしいこともあるが,娘に複雑な感情を持ちながらも彼女を愛し続けるポールという人物の姿勢に,共感したということだろう.
結婚式に集まった,友人と思われるミュージシャン達の存在そのものや演奏にも,心が癒やされる.
ラストシーンはハッピーエンドではないが,納得のいくものだった.見て損はなし.
★★★★(★5個が満点)
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2010/01/23

追悼:浅川マキ

日記:2010年1月某日03
浅川マキのファンかというと,実際は69年から70年代前半にかけて彼女の音楽を愛聴していただけで,ライブに行ったこともない.
考えてみれば,テレビでも彼女を見たことはないので,動く彼女の映像は見たことがない.僕の知っているのは,その音楽と黒い服を着た浅川マキの写真だけである.
浅川マキを聴くということは,大学に入り先輩から教わって酒とタバコを覚えたことと,殆ど同じ系列の上にあった.その音楽の強烈な印象と独特な優しい声に僕は心を奪われた.
特に彼女を好きだった友人が持っていた擦り切れた「浅川マキⅡ」と「浅川マキ ライブ」のレコードをコピーして,そのコピーしたオープンリールのテープから更にカセットテープにコピーして,今手元にはそのぼろぼろになった音源があるだけだ.
彼女はその後実験的なジャズナンバーを近藤等則らとアルバムに吹き込んでいるが,それらのナンバーよりはやはり初期のブルース調のナンバーが僕は好きだ.
近藤さんといえば母校の先輩で,僕は入学直後の新歓で,軽音ジャズのエースだった近藤さんがトランペットで「ウォーターメロンマン」を吹いた姿を,今も鮮明に覚えている.講堂のステージの中央で青いスポットライトを浴び,スリムのGパンにTシャツ姿で熱演していた近藤さんは素晴らしかった.
その同じ講堂で後に,浅川マキが泉谷しげるをゲストに歌った「難破ブルース」が「ダークネスⅠ」に収録されているが,このライブ演奏のくつろいだ雰囲気は好きである.特にギターの下手な泉谷がとんでもない音を出して暖かい失笑を買っているところなど,かけがえのない値打ちがある.
そういうライブの雰囲気を伝えて,かつ音楽的にも最も素敵なのは,「浅川マキⅡ」のラスト,新宿花園神社収録の「朝日のあたる家」だろう.
冒頭の雑踏の騒音の中で,マキの声が「ひどいねぇ」と聞こえるところなど嬉しくなってしまう.
また「浅川マキ ライブ」の「ギャスリン・アレイ」終了直後のマキが「つのだひろ!」と共演者を次々に紹介していく高揚した声も懐かしい.05
1月19日の朝刊で,17日のライブ公演前に亡くなったことを知った.67歳だった.
浅川マキが元気でまだ歌い続けていたということは,凄いことではあるが,一方でそれは当然のような気もしていた.それは,動く彼女の映像を見たことがない僕の,一方的な思いこみではあったろうが.
ご冥福をお祈りします.

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独断的映画感想文:ウィル・ペニー

日記:2010年1月某日
映画「ウィル・ペニー」を見る.1
1967年。監督:トム・グライス.
出演: チャールトン・ヘストン(ウィル・ペニー),ジョーン・ハケット(キャサリン・アレン),ドナルド・プレザンス(クイント),ブルース・ダーン(レイフ),ベン・ジョンソン(アレックス),スリム・ピケンズ(アイク),アンソニー・ザーブ(ダッチー).
撮影は2年前に「エルダー兄弟」を撮っているルシアン・バラード.
ウィル・ペニーは50歳も間近というベテランのカウボーイ.テキサスから牛を運び終わり,雇い主から腕を見込まれカンザスに同行しないかと誘われるが,若いカウボーイがカンザスに行きたいと言い出すとあっさり譲ってしまうお人好し.
牛を追う仕事にかけては人に負けない根っからの牧童だが,自分の名前も書けない.
仕事を探しての道中で,仲間を救うための銃撃戦で狂信的説教師クイントの恨みを買ってしまう.
やがて仕事にありついた牧場で山番をすることになるが,その番小屋には,ガイドに逃げられたキャサリン母子が冬を越そうと身を寄せていた.3
山回りをしていたペニーは,クイント親子に襲撃され重傷を負う.辛うじて番小屋までたどり着いたペニーを,キャサリンは献身的に看病する….
映画はペニーとクイント親子の確執,キャサリンとのロマンスを描くのだが,観客にとって印象的なのはその物語よりもむしろ,ウィル・ペニーの人生そのものであろう.
子供の頃両親を亡くし,酒場の使い走りをして育った彼は,ずっと牧童をしてきた.牧童の成功者は,カウボーイをして稼いだ金を元手に牧場を始め,長い時間をかけて牛を増やしていくものらしい.2
既に初老のウィル・ペニーは,せっかくの腕がありながら,成功者となるタイミングを既に失ったものと考えられる.その事実の重さが,映画のラストシーンに描かれるのだ.
派手な銃撃戦よりは,人間の情愛と厳しい自然を描く,どちらかといえば地味な西部劇である.
チャールトン・ヘストンはこのとき43歳,「大いなる西部」の時(34歳)よりさすがに年を取った.
クイント役のドナルド・プレザンスが怪異な狂信者を演じて秀逸,この人は中学生の頃見た「大脱走」で神経質な偽造証明書作りの名人を演じていて,良く覚えている.4
★★★☆(★5個が満点)
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2010/01/17

独断的映画感想文:エルダー兄弟

日記:2010年1月某日
映画「エルダー兄弟」を見る.1
1965年.監督:ヘンリー・ハサウェイ.
出演:ジョン・ウェイン(ジョン・エルダー),ディーン・マーティン(トム・エルダー),マーサ・ハイヤー(メリー・ゴードン),アール・ホリマン(マット・エルダー),マイケル・アンダーソン・Jr(バド・エルダー),ジョージ・ケネディ(カーリー),デニス・ホッパー(ディヴ・ヘイスティング).
ジョン・ウェインの通俗西部劇.
母親ケイティの葬儀に集まる4人のエルダー家の兄弟,長男ジョンはガンマン,次男トムは博打打ちで兇状持ち,三男マットは何をしているか判らないが,末のバドは学生.
彼らが家をあけていたうちに,飲んだくれで博打好きな父親は牧場を乗っ取られ後ろから打たれて死んでいた.牧場を乗っ取ったヘイスティングは,先手を打って殺し屋カーリーを雇う.
母親は町の人に慕われ,老保安官ビリーも兄弟を気遣うが,保安官補ベンはガンマンのジョンに気を許さず,トムに殺人容疑の手配が出ていることを知って彼を逮捕しようとする.4
それを止めて一人エルダー家に向かったビリーが死体で発見されると,ベンは自警団を集めて兄弟を逮捕.ベンは彼らを連邦保安官のいるラレドに護送しようとするが,その途上,ヘイスティングは彼らを襲い,マットが死亡バドも重傷を負う….
この時点で主人公達は町中から敵視される犯罪者でしかも怪我人がいる,この状況をどう切り開くのか?というあたりがポイントで,それ以外には特に印象的なものはない.5
まあジョン・ウェインが主演する西部劇ということで全て許されるという映画.高倉健が主演するヤクザ映画だったら基本的にオッケーという感じに似ておりますな.
エルマー・バーンステインの音楽も,二番煎じ三番煎じの感じがするどっかで聞いた様なもので,今ひとつ.6
悪党ヘイスティングの気弱な息子でデニス・ホッパーが出ている.この人も息の長い役者さんだ.
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2010/01/13

独断的映画感想文:重力ピエロ

日記:2010年1月某日
映画「重力ピエロ」を見る.2
2009年.監督:森淳一.
出演:加瀬亮(奥野泉水),岡田将生(奥野春),小日向文世(奥野正志),吉高由里子(夏子),岡田義徳(山内),渡部篤郎(葛城由紀夫),鈴木京香(奥野梨江子).
伊坂幸太郎の原作は未読.ネタバレあります.
泉水と春は似たところのない仲良し兄弟.
泉水は引っ込みがちの院生でバイオサイエンスを研究している.春は行動力のありすぎるイケメンの高校生.
二人の住む街に,このところ連続放火事件が発生,バイトでグラフィティアートの落書き消しをしている春は,落書きアートの発生現場と放火現場が近いことに気付き,泉水を誘って夜の街に見張りに出た….5_2
映画は,落書きアートに描かれる言葉の頭文字がDNAを構成する4つのアミノ酸を示すAGCTであること等の謎解きを進める一方,彼らの事故で亡くなった母親が24年前にレイプ犯に襲われ,その後春が生まれたこと等を明らかにしていく.
極めて仲の良い彼ら家族の出生の秘密と,連続放火の謎はどこで交わるのか….
この映画の良いところは,如何にも映画らしい丁寧な画面作りとキャスティングであろう.
特に兄弟二人を演ずる加瀬亮・岡田将生の二人は,はまり役である.鈴木京香,渡部篤郎(この人物像は極めて異常で腹立たしいが,それなりに理解できる)も良い.1
小日向文世は,と言うより奥野正という人物は,いささか不思議な人物である.
この映画のテーマというべき家族の緊密な結びつきは,言わばこの人物が組織しているのである.その割には彼の観客から見える人物像は理解しがたい.
妻のレイプ後公務員を辞めて養蜂業を営むという,へんてこな設定は良しとしましょう(実際は養蜂業など仙台市に定住してできるとは思えないが).
レイプ後妊娠した妻に対し,その子を産み育てようと宣言するくだりは,どうも受け容れがたい.その是非以前に,余りに唐突でその論拠も何もないからだ.3
また,春が実際にしでかしたいろいろなことにも拘わらず,結末が「春が2階から落ちてきた」だけでほのぼのと終わっていくのも,理解しがたい.この映画は「と思ったら夢だった」というたぐいの映画なのだろうか?
それとも原作を読めばこの様々な疑問は解決するのだろうか?
放火事件と落書きアートを巡る謎解きの進行という前半の設定は,それなりに納得できたが,後半の構成にはついて行けなかった.というわけで★★☆(★5個が満点)
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2010/01/11

独断的映画感想文:チェイサー

日記:2010年1月某日
映画「チェイサー」を見る.1
2008年.監督:ナ・ホンジン.
出演:キム・ユンソク(ジュンホ),ハ・ジョンウ(ヨンミン),ソ・ヨンヒ(ミジン),チョン・インギ(イ刑事),パク・ヒョジュ(オ刑事),キム・ユジョン(ミジンの娘),ク・ヌボン(ジュンホの子分).
冒頭,街を流す若い女性の運転する外車.その車が乗り込んだ男の指示でとある住宅地に駐車,男女は姿を消す.
デリヘル嬢の元締めジュンホは,最近手持ちの女性の失踪に悩まされている.
売り飛ばされたのではないか,と疑うジュンホは,外車の女を呼び出した男の携帯番号をブラックリストに載せ待ち受ける.その番号からかかった電話に,ジュンホは子持ちの女ミジンを差し向け,バスルームから住所を知らせる様指示する.2
ミジンは男ヨンミンに古い住宅に連れ込まれ,バスルームから電話を試みるが携帯は通じない.ミジンは縛り上げられ,ヨンミンが金槌とのみを持ってミジンに迫る….
その後ジュンホの必死の捜索で補足されたヨンミンは警察に突き出され,ヨンミンは何と女を殺したとの自白をするが,その殺害場所はがんとして吐かず,証拠も無いまま検察の判断でヨンミンは釈放される.釈放後ヨンミンは更に尾行をまいて恐るべき犯罪に走る….
韓国で実際に起こった猟奇連続殺人事件を題材とした映画.
以前は刑事で今は冴えないデリヘル元締めのジュンホが,無能で腐敗した警察を尻目に身を挺してミジンの救出のため死力を尽くす.3
何故ジュンホがそこまで戦うのかは特に説明はないが,ミジンには7歳の娘がいて,それがまたいたいけで,ジュンホと行動を共にするのだ.
映画は緊張感が維持され,暗い色調やスピード感あふれる描写で観客の目を奪う.ジュンホの破天荒な活動も見るものの手に汗を握らせる.映画としては十分だ.
しかしこの映画,好きにはなれない.5
この映画の結末はあまりに悲惨で救いが無く,見終わった後のカタルシスは何もない.
その点では「ノー・カントリー」にやや似ているが,「ノー・カントリー」の場合は,殺し屋は使命によりあたかも運命そのものの様に殺人を実行したのだ.この映画では犯人は只の変質者だ.抵抗むなしくこの変質者に殺される被害者の無念は,想像するに余りある.
この悲惨な結末が映画にとって必要だという主張は理解はできるが,個人的には受け容れ難い,要するに好きになれない.
このような韓国映画に対する感想は,「オールド・ボーイ」の時にも書いた.こういうスタンスが,僕と韓国映画の関係の現状なのであろう.
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2010/01/06

独断的映画感想文:アンダーワールド ビギンズ

日記:2010年1月某日
映画「アンダーワールド ビギンズ」を見る.4
2009年.監督:パトリック・タトポロス.
出演:マイケル・シーン(ルシアン),ビル・ナイ(ビクター),ローナ・ミトラ(ソーニャ),スティーヴン・マッキントッシュ(タニス),ケヴィン・グレイヴォー(レイズ),シェーン・ブローリー(クレイヴン),ケイト・ベッキンセイル(セリーン).
ヴァンパイアとライカン(狼男族)の宿命の戦いを描くシリーズ3部作の完結編.と言ってもこの映画ではこの宿命の戦いの始まりを描く.
はじめは双子の兄弟から始まった両種族は,しかしヴァンパイア族がライカンを奴隷として支配し,強大な武力を背景に繁栄を誇っていた.7
しかしライカンの生まれのルシアンは,優れた知力に恵まれ,また自由にオオカミから人間へと変態を重ねることができた.ヴァンパイアの族長ビクターは,ルシアンを警戒しつつも彼を使ってライカンを統率できる可能性を考え,ルシアンを鍛冶職に就かせてその成長を見守る.
ビクターの一人娘ソーニャは何時しかルシアンと愛し合う仲になるが,そのことが大きな悲劇の発端となる….
この3部作に共通の雰囲気をこの映画も持っていて,そのことがまず魅力である.
最初から最後まで暗い色調の中で演じられる異人達の物語(ゴシックホラーと称せられる).そこで展開される激しいアクションシーンと殺戮のシーン.血なまぐさく,グロテスクでもあるこのシリーズの何処がこのように魅力的なのか.5
しかし見始めたら時の経つのを忘れて見入ってしまう不思議な力がこのシリーズにはある.
それは俳優達の魅力でもあり(ビル・ナイ,マイケル・シーン,ローナ・ミトラいずれも素晴らしい),また設定された古城や暗い牢獄の魅力でもある.その舞台を横糸に綴られるソーニャとルシアンの悲恋の物語は,両者の激しい性格も相まって強い印象を観客に与えるだろう.
見て損はない映画.2
なお前2作のヒロイン,ケイト・ベッキンセールは,最後のワンシーン,第1作のヒロインとしての姿を瞥見させるのみ.
余談だが,ケイト・ベッキンセールは実際にライカンの頭目マイケル・シーンのパートナーとなり子供を得た.しかしその関係は数年で破綻し,その後ケイトはこのシリーズ前2作の監督レン・ワイズマンと結婚したそうな.
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2010/01/04

独断的映画感想文:オーストラリア

日記:2010年1月某日
映画「オーストラリア」を見る.08_2
2008年.監督:バズ・ラーマン.
出演:ニコール・キッドマン(レディ・サラ・アシュレイ,ヒュー・ジャックマン(ドローヴァー),デヴィッド・ウェンハム(ニール・フレッチャー),ブライアン・ブラウン(キング・カーニー),ジャック・トンプソン(キプリング・フリン),デヴィッド・ガルピリル(キング・ジョージ),ブランドン・ウォルターズ(ナラ).
1939年のこと,英国の貴族レディ・サラ・アシュレイはオーストラリアの牧場に出かけたまま帰ってこない夫の元に行こうと現地に降り立つ.
迎えた男は牛追い(ドローヴァー)と称するカウボーイ.彼と共に2日かけて牧場に到着するが,夫は直前に暗殺されていた.
牧場を引き継ぐ覚悟をしたサラは,牧場の牛を盗んでは隣接する牧畜王カーニーに渡していたマネージャーのフレッチャーをクビにし,1500頭の牛の軍への納入に牧場の命運をかけるべく,ドローヴァーを雇い牧場を後にする….03
前半はカーニーに雇われ手段を選ばぬ妨害を仕掛けてくるフレッチャーと戦いつつ,如何に期日までに牛をダーウィンの港に届けるかを巡る展開,後半はカーニーまで殺し牧畜王として君臨するフレッチャー相手に,折しも日本軍の空襲下,サラとグローヴァーの挑む戦いを描く,3時間近い長編ドラマ.
02
その中心にいて物語の語り部であるのが,アボリジニと白人の混血である少年,ナラの存在である.
映画の冒頭に,この時期混血児を政府がアボリジニの親から強制的に引き離し,白人に奉仕する精神を叩き込むため隔離して育てた歴史があることが明らかにされる.そのことの正式な謝罪は2008年になって行われたという(このあたりのことについて個人的な独断をいえば,それ以前にハンティングによって(!!)タスマニア原住民を絶滅させ,今クジラを殺すなと日本漁船に攻撃を仕掛けてくる人々の無茶苦茶ぶりには,思うところあり.まあ,これも僕の差別と偏見かも知れませんが).
物語自体はかなり類型的で,最終局面ではサラ側の人は皆運良く助かるし,フレッチャー側は散々な目に遭うという,ご都合主義もある.10
しかしこの映画の構造はちょっと面白い.フレッチャーは3代にわたって牧場のマネージャーを務めた現場たたき上げ,これがサラにクビにされたのを機に牧畜王カーニーの腹心となり,その死後(フレッチャーが殺した後)はカーニーの娘と結婚してダーウィンの最高実力者となる.
一方れっきとした英国貴族であるサラは夫を亡くした後,かって黒人と結婚したことで白人仲間から爪弾きになっていたドローヴァーと愛人関係になり,更に白人とアボリジニのハーフ・ナラを引き取って子供同然に育てている.
1940年代の白豪主義と現代の人権意識の違いを考えても,この2人の位置関係は,白人から見てどういうことになるのだろうか.
その辺に思いをいたしつつ鑑賞.
類型的でご都合主義とは言っても,結末には感動したし感銘的なシーンも多数あった.ナラ役のブランドン・ウォルターズが素敵.見て損はない映画.
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2010/01/03

独断的映画感想文:僕の彼女はサイボーグ

日記:2010年1月某日
映画「僕の彼女はサイボーグ」を見る.5
2008年.監督:クァク・ジェヨン.
出演:綾瀬はるか, 小出恵介,桐谷健太,鈴之助,吉高由里子,阿井莉沙,佐藤めぐみ,斉藤歩,田口浩正,山口祥行,ドロンズ石本,松本莉緒,(スペシャルゲスト)六平直政,(スペシャルゲスト)蛭子能収,(スペシャルゲスト),手塚とおる, (スペシャルゲスト),納谷六朗,(スペシャルゲスト),伊武雅刀,(スペシャルゲスト),寺泉憲(スペシャルゲスト),遠藤憲一,小日向文世,竹中直人,吉行和子.
青年ジローは自分の誕生日に不思議な女性をデパートで目撃する.
宇宙服のようなものをまとった女性は衣服と靴を万引き,それに着替えて逃走する.その後パスタを食べていた店に彼女が現れ,彼と同席して誕生日を共に祝った挙げ句,食い逃げを敢行,二人は街中を逃げ回る羽目になる.3
その夜限りで彼女は姿を消すが,彼女を忘れられないジローは,翌年の誕生日にも彼女を待ってレストランで食事をする.その夜果たして彼女は現れたが,レストランでは思いもかけない大事件が起きるのだった….
タイムパラドックスを扱ったSF映画.
但し,この映画はSFとしては極めていい加減である.
まずヒロインはサイボーグではない.サイボーグとは人間の肉体を部分的に機械に置き換えたもので,最低限頭脳は人間のものだ.
この映画で言う「サイボーグ」は人間の形をしたロボットで,普通は「アンドロイド」と言う.監督が自分の映画をどう名付けようが勝手だが,例えば世間で「犬」と呼ばれているものを「猫」だと主張し,「僕の猫」という題で犬を描いた映画を作ったようなものである.4
タイムパラドックスの扱いもいい加減で,最後に明らかになる種明かしを考えると,矛盾点が幾つも出てくる.
誕生祝いのシーンのギャグは,基本的にあり得ない監督の勘違いではないか(ケーキに頭を突っ込むというシーンは「サイボーグ」は見ている筈のないシーンだからだ).
説明の付かない現象をタイムパラドックスとして種明かしするこの手のSFとしては,この映画は落第と言わざるを得ない.
中盤の,主人公の過去の故郷にタイムスリップするシーンも酷い.
①何故自在なタイムスリップが可能なのか説明がない.②お祖母ちゃんと思っていた人は実はお母さんでした,という話はどう決着がつけられたのか説明がない.③ほんの10年ほど前へのタイムスリップとは思えない時代描写で,何とも受け容れ難い.1
以上のような致命的な欠点の数々にも拘わらずこの映画が素敵なのは,綾瀬はるかの魅力に尽きる.
彼女の「サイボーグ」としての冷たい演技,そしてヒロインとしての心通う演技はそれぞれ観客の心を魅了して離さないであろう.この映画は彼女(だけ)を見る映画と言って過言ではない.
他の点については,主人公には魅力がなく,ヒロインが何故主人公のために遠い未来からやって来たのか全く理解しがたい.
山のように出てくるスペシャルゲスト他の俳優は,竹中直人を筆頭に見る価値なし(見て損した,金返せ).
SF映画として,目指したことは評価したいがSFを舐めるな,と言うべき映画.
まあ糞味噌に言いましたが,この監督とは元来相性が悪い.ヒラにご容赦いただきたい.
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2009/12/31

独断的映画感想文:十三人の刺客

日記:2009年12月某日
映画「十三人の刺客」を見る.6_2
1963年.監督:工藤栄一.
出演:片岡千恵蔵(島田新左衛門),里見浩太郎(島田新六郎),内田良平(鬼頭半兵衛),丹波哲郎(土井大炊頭利位),嵐寛寿郎(倉永左平太),西村晃(平山九十郎),月形龍之介(牧野靭負),丘さとみ(おえん),三島ゆり子(牧野千世),藤純子(加代),河原崎長一郎(牧野妥女),水島道太郎(佐原平蔵),山城新伍(木賀小弥太),汐路章(堀井弥八).
将軍の腹違いの弟で明石藩主松平斉韶は,好色暴虐の人物,江戸家老の間宮図書はその実情を訴え,老中土井大炊頭門前で割腹する.7
ところが将軍はこれを穏便に済ますよう計らった上,次期老中に松平斉韶の名を上げる.土井大炊頭はこれを正すべく,松平斉韶の暗殺をお目付役島田新左衛門に命令する.
島田は協力者を集め木曽落合の宿に罠を設け,参勤交代途上の松平斉韶一行をこの宿に誘い込む.かくて13人の刺客対松平斉韶一行53人の死闘が始まった….2_2
時代劇としての構成は類型的ではあるが(主人公対暴君,暴君の家臣で切れ者の側用人の存在,その側用人と主人公の交流等),ベテラン俳優の配置で登場人物の所作一つとっても安心してみていられる.
片岡千恵蔵,嵐寛寿郎等のベテランに混じり里見浩太朗が颯爽として活躍.西村晃が演じるニヒルな浪人ものも宜しい.
全体に人物の掘り下げは充分とは言えないが,映画のテンポが良いので気にならない.朝霧の中から騎乗の松平斉韶一行が現れて開始される,終盤20分の集団の死闘が何といっても息をのむ.
倒し倒されていくほどに殺気立っていき,激しく切り結ぶ侍達.鬼頭・倉永の対決,鬼頭・島田の対決が見応え充分.見て損はなし.4_2
まだ若く芋姉ちゃんの富司純子や,悪役になる前の汐路章の精悍な姿が見られるのも興味深い.
★★★☆(★5個が満点)
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独断的映画感想文:劔岳 点の記

日記:2009年12月某日
映画「劔岳 点の記」を見る.4
2008年.監督:木村大作.
出演:浅野忠信(柴崎芳太郎(陸軍参謀本部 陸地測量部測量手)),香川照之(宇治長次郎(測量隊案内人)),松田龍平(生田信(陸軍参謀本部 陸地測量部測夫)),モロ師岡(木山竹吉(陸軍参謀本部 陸地測量部測夫)),螢雪次朗(宮本金作(測量隊案内人)),仁科貴(岩本鶴次郎),蟹江一平(山口久右衛門),仲村トオル(小鳥烏水(日本山岳会)),小市慢太郎(岡野金治郎(日本山岳会)),安藤彰則(林雄一(日本山岳会)),橋本一郎(吉田清三郎(日本山岳会)),本田大輔(木内光明(日本山岳会)),宮崎あおい(柴崎葉津よ(柴崎芳太郎の妻)),小澤征悦(玉井要人(日本陸軍大尉)),新井浩文(牛山明(富山日報記者)),鈴木砂羽(宇治佐和(宇治長次郎の妻)),笹野高史(大久保徳昭(日本陸軍少将)),石橋蓮司(岡田佐吉(立山温泉の宿の主人)),冨岡弘,田中要次,國村隼(矢口誠一郎(日本陸軍中佐)),井川比佐志(佐伯永丸(芦峅寺の総代)),夏八木勲(行者),役所広司(古田盛作(元陸軍参謀本部 陸地測量部測量手)),大勢いますな.
新田次郎原作の小説を,CG等を使わず現地ロケで描き通した山岳映画.5
明治39年,ほぼ完成に近づいた日本地図に残った三角点の空白地域,劔岳の測量を命じられた柴崎は,引退した先輩・古田の助言により案内人宇治長次郎を採用し,劔岳の登頂・測量に取りかかる.
折しも発足したばかりの日本山岳会も劔岳登頂を目指して現地に入り,陸軍本部からは彼らに負けてはならぬという厳命を受け,柴崎は周辺の測量に奔走しながらも登頂ルートの見極めに苦慮するのだった….
原作を読んでから見た映画だったが,物語の展開は正直に言えば退屈だった.
この物語の本筋は登頂ルートがあるかないか,あるとすればどこか,というある意味ではミステリ小説のような展開にある(あくまでも独断と偏見であるが).
原作では冒頭に地形図を配し,どのルートではどう無理があるか,どのルートが結局可能性があるかを物語の展開の中で判るようにしてあった.次第にルートが絞り込まれ,その雪渓を上るルートがある気候の条件が満たされるときにしか可能性がないという,大詰めへの緊張感の高まりがあって登頂となる.2
一方映画はその間の事情の説明はほとんどなく,何となく周辺の測量を重ねていくうちにたまたま絞り込まれた登頂ルートをアタックしたら登頂できたというような印象を受ける.それでは何故それまで誰も登れなかったのか,が不明ではないだろうか?
最終局面で山岳会の一行が測量隊にエールを送ってくるシーンも如何にも嘘っぽく(原作にはない話だ),受け容れ難い.
これはあくまでも個人的見解で,物語の本筋は男の友情だとか,自然との闘いの中での人間の成長だとかいう話であればそれは充分に描けていると思う.
それはともかく,観客はこの山岳映画の素晴らしい景観を堪能することができるのは間違いない.6
俯瞰される尾根ルートをたどる主人公達の映像や,雪崩のシーンなど,上げれば枚挙にいとまがないが,どのシーンも俳優・スタッフによる大変な苦労によって得られたものであるのは疑いなく,この映画の値打ちはそれらのシーンを見るだけで充分あると言えるだろう.
★★★☆(★5個が満点)
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2009/12/28

独断的映画感想文:アバター

日記:2009年12月某日
映画「アバター」を見る.1
2009年.監督:ジェームズ・キャメロン.
出演:サム・ワーシントン(ジェイク・サリー),ゾーイ・サルダナ(ネイティリ),シガーニー・ウィーヴァー(グレース・オーガスティン),スティーヴン・ラング(マイルズ・クオリッチ大佐),ミシェル・ロドリゲス(トゥルーディ・チャコン),ジョヴァンニ・リビシ(パーカー・セルフリッジ),ジョエル・デヴィッド・ムーア(ノーム・スペルマン),CCH・パウンダー(モアト),ウェス・ステューディ(エイトゥカン).
海兵隊員ジェイクはベネズェラで負傷,下半身麻痺の車椅子生活者となる.
その双子の兄は,惑星パンドラのアバタープロジェクトに関わっていたが急死,同じDNAを持つジェイクがその後任に送り込まれる.
アバターは,パンドラの原住民ナヴィ族と人間のDNAを組み合わせ肉体化したもの,ジェイクは専用カプセルに入り仮眠することで,ナヴィと同じ肉体を持つアバターのジェイクを自分の肉体として使うことが出来る.
ジェイクのアバターはパンドラ駐在の科学者グレース博士のアバターと共に,戦士としてナヴィの生活を学び言語の習得に努める.グレース博士の研究によれば,パンドラの原住民や動植物は,共通のバイオネットワークで繋がれていた.5
一方ナヴィ族の本拠地の地下に存在する貴重金属アンオブテニウムの開発をもくろむ企業とその傭兵集団は,ジェイクのアバターを通じて得た現地の情報を分析し,資源獲得のため森林を焼き払いナヴィ族を追放する準備を進める.4
ジェイクはナヴィ族の族長の娘ネイティリと愛し合い結ばれるが,そのとき傭兵集団の一斉攻撃が始まった….
本格的に3D映像を駆使して作成された初の長編SF映画.
強欲をむき出しに,資源強奪のため武力で侵攻する人間とそれに対抗する原住民という物語は,極めて類型的ではあるがそれはまあ宜しい.3
企業や傭兵の典型的キャラクターを演じているジョヴァンニ・リビシ(「ヘブン」では美青年でした)やスティーヴン・ラングはそれぞれ如何にもそれらしく憎たらしい.
そんなことより,ジェームズ・キャメロンが作り上げたパンドラという星の美しさとナヴィ族の美しさに,観客は何よりも驚嘆するだろう.
特に夜の密林の,蛍光を放つ木々や虫たちの美しさ.そして翼竜イクランを捕らえ乗りこなす飛翔シーンの,目も眩むようなスピード感高揚感はどうだろう.6
3D映像の特性を最も効果的に引き出したこれらのシーンに,素直に賛辞を送りたい.40年以上前に読んだ古典SFやスペースオペラのイメージが,このような形で映像化されたことは嬉しい限りだ.
「スター・ウォーズ」シリーズで切り開かれたSF映像のレベルを,更に一段押し上げたものとして評価したい.
一見の価値あり.★★★★(★5個が満点)
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2009/12/23

独断的映画感想文:ブーリン家の姉妹

日記:2009年12月某日
映画「ブーリン家の姉妹」を見る.3
2008年.監督:ジャスティン・チャドウィック.
出演:ナタリー・ポートマン(アン・ブーリン),スカーレット・ヨハンソン(メアリー・ブーリン),エリック・バナ(ヘンリー8世),デヴィッド・モリッシー(トーマス・ハワード(ノーフォーク公爵)),クリスティン・スコット・トーマス(レディ・エリザベス・ブーリン),マーク・ライランス(トーマス・ブーリン卿),ジム・スタージェス(ジョージ・ブーリン),ベネディクト・カンバーバッチ(ウィリアム・ケアリー),オリヴァー・コールマン(ヘンリー・パーシー),アナ・トレント(キャサリン・オブ・アラゴン),エディ・レッドメイン(ウィリアム・スタフォード),ジュノー・テンプル(ジェーン・パーカー).
ヘンリー8世時代,王の愛人となったメアリ・アンの姉妹の物語.
王妃キャサリンが男児を死産したという知らせをいち早く知ったノーフォーク公爵は,出世のために王の愛人候補を物色する.
姉の嫁ぎ先ブーリン家に王が逗留することを知った公爵は,ブーリン家の娘アンをその候補に見立てる.
ところが王の心を捕えたのは,既に人妻となっていた慎ましい妹メアリーだった.
ブーリン家は宮廷に召し出されメアリーは王の寵愛を受けるが,アンは奔放な性格を押さえきれず許嫁のいる貴族と駆け落ちをし,激怒した父の命令でフランス王妃の侍女として国外に追放される.
まもなくメアリーは懐妊するが,流産を防ぐため安静を命じられる.王の心が離れるのを恐れたブーリンはアンを呼び戻し,アンはフランス仕込みの手管で王の心を翻弄するのだった….4
イギリスの歴史劇は何故か好きなジャンルの一つ.特にヘンリー8世のあたりは面白い.
アンとメアリーはどちらが姉かで歴史上の論争がある様だが,この映画ではアンが姉.そのアンがヘンリー8世を焦らしに焦らし,遂にローマ教皇と離別してまで自分を正規の王妃にさせることに成功する様が描かれるが,そうかなあという気もする.ヘンリー8世がそこまで女に操られる人物とも思えない.
それはともかく,アンとメアリーを演ずるナタリー・ポートマンとスカーレット・ヨハンソンは見応え有り.特にヨハンソンの演技には瞠目する.
その他ブーリン家の母,王妃キャサリン等の女優陣が出来が良い.
ヘンリー8世の時代は血なまぐさい時代だったが,この後アンの王女エリザベスが即位すると,以降45年にわたって彼女の時代が続く.ただし,エリザベスは結婚しなかったためアンの血脈は絶えた.
一方,王の子として認知されなかったメアリーの子孫には,現代に繋がる著名人(エセックス伯爵家,サマーセット公爵家)が数多く存在するのも驚きである.1
映画として見応え有り,歴史劇としても印象深い.
★★★★(★5個が満点)
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