2019/11/12

独断的歌舞伎感想文:歓びのトスカーナ

日記:2019年11月某日
映画「歓びのトスカーナ」を見る.0_20191112211401
2016年.監督:パオロ・ヴィルズィ.
出演:ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ(ベアトリーチェ),ミカエラ・ラマッツォッティ(ドナテッラ),ヴァレンティーナ・カルネルッティ(ザッパ医師),アンナ・ガリエナ(ルチアーナ),マルコ・メッセーリ(モレッリ).1_20191112211401
イタリア・トスカーナ地方の自然に恵まれた司法精神療養施設.ここで女王のように君臨するベアトリーチェは猛烈なおしゃべり,上流階級出身で「伯爵夫人」を名乗るが,極端な虚言癖の持ち主.詐欺罪で有罪判決を受けここに収用されている.
新参のドナテッラは息子と無理心中を図ったシングルマザー,重い鬱に苦しむ無口な女性.
何故かドナテッラに興味を持ったベアトリーチェは彼女と同室になり,ベアトリーチェの凄まじいおしゃべりに辟易しながらドナテッラもベアトリーチェと行動を共にする.ひょんなことから所外作業の帰路まんまと脱走することができた二人,破天荒な逃走を重ねるが,ドナテッラの望みは養子に出された息子に会うこと只そのことのみだった….3_20191112211401
一風変わった取り合わせのコンビのドタバタ風逃走劇だが,抱える問題は相当重い.その問題は映画の後半にいたって次第に詳らかになる(ドナテッラが重い口を開いて自分の起こした事件を訥々と語るのに対し,奔流のように喋り続けるベアトリーチェの巻き起こした事件は,彼女ではなくその母から語られる対比も印象的だ).4_20191112211401
ベアトリーチェの奮闘にもかかわらず,彼女とは全く関係のない偶然から映画の最後でドナテッラが息子と邂逅する展開も,皮肉だが感動的だ.彼女たちの苦しみの原因は人間の悪意だが,彼女たちの再生のきっかけも人間の善意であることが,この映画の見どころか.
見て損はなし.でもこの邦題はいまいち分からない.
★★★★(★5個が満点)
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2019/11/10

番外:独断的歌舞伎感想文 吉例顔見世大歌舞伎昼の部 研辰の討たれ/関三奴/髪結新三

日記:2019年11月某日
歌舞伎座で「吉例顔見世大歌舞伎 昼の部」を見る.Kabukiza_1911_h_dc6790dd8b970d84313f4531 木村錦花 作・平田兼三郎 脚色・大場正昭 演出.「一、研辰の討たれ(とぎたつのうたれ)」.出演:守山辰次(幸四郎),平井九市郎(彦三郎),平井才次郎(坂東亀蔵),八見伝介(亀鶴),小平権十郎(廣太郎),猿廻し光吉(市村光),高橋三左衛門(寿治郎),吾妻屋亭主清兵衛(橘太郎),中間市助(松之助),湯崎幸一郎(錦吾),粟津の奥方(高麗蔵),宮田新左衛門(竹三郎),平井市郎右衛門(友右衛門),僧良観(鴈治郎).「二、関三奴(せきさんやっこ)」.出演:奴(芝翫),奴(松緑).河竹黙阿弥 作.「三、梅雨小袖昔八丈(つゆこそでむかしはちじょう) 髪結新三 白子屋見世先より閻魔堂橋まで」.出演:髪結新三(菊五郎),手代忠七(時蔵),弥太五郎源七(團蔵),下剃勝奴(権十郎),お熊(梅枝),紙屋丁稚長松(丑之助),肴売新吉(橘太郎),車力善八(秀調),加賀屋藤兵衛(家橘),家主女房おかく(萬次郎),後家お常(魁春),家主長兵衛(左團次).
研辰の討たれは,2001年の野田版を勘三郎(当時は勘九郎)で見て以来.武士世界に紛れ込んだ研辰の,卑怯未練な武士ぶりの最後を描く異色のドタバタ狂言.Kabukiza_201911_tokubetsu_m1572337149531 幸四郎は研辰にぴったり,一報の平井兄弟を演ずる彦三郎・亀蔵兄弟も役柄にぴったり.面白かったが,武士世界での出世に執着していた研辰が,何故家老を闇討ちして逐電したか等すっきりしな部分もあり.
関三奴は短い踊りだが,折り目正しく美しい松緑の奴と飲んだくれた芝翫の奴の対比が面白く,楽しかった.
髪結新三はまだまだ元気な菊五郎の新三,左團次の家主,團蔵の弥太五郎源七等いずれも役柄にピタリとはまった好演,安心して楽しめた.橘太郎のカツオ売りの手捌きが出色.梅枝のお熊も素敵だった.
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2019/11/04

番外 独断的歌舞伎感想文:通し狂言 孤高勇士嬢景清

日記:2019年11月某日
国立劇場で「通し狂言 孤高勇士嬢景清(ここうのゆうしむすめかげきよ) 四幕五場.―日向嶋(ひゅうがじま)―」を見る.2019_11kabuki_hon2_omote
西沢一風・田中千柳=作『大仏殿万代石楚』,若竹笛躬・黒蔵主・中邑阿契=作『嬢景清八嶋日記』より.国立劇場文芸研究会=補綴.国立劇場美術係=美術.序幕 鎌倉大倉御所の場,二幕目 南都東大寺大仏供養の場,三幕目 手越宿花菱屋の場,四幕目 日向嶋浜辺の場・日向灘海上の場.主な配役:悪七兵衛景清(中村吉右衛門),源頼朝/花菱屋長(中村歌六),肝煎左治太夫(中村又五郎),仁田四郎忠常(中村松江),三保谷四郎国時(中村歌昇),里人実ハ天野四郎(中村種之助),玉衣姫(中村米吉),里人実ハ土屋郡内(中村鷹之資),和田左衛門義盛(中村吉之丞),俊乗坊重源/花菱屋遣手おたつ(嵐橘三郎),梶原平三景時(大谷桂三),秩父庄司重忠(中村錦之助),景清娘糸滝(中村雀右衛門),花菱屋女房おくま(中村東蔵).
平家の侍大将・悪七兵衛景清は,平家滅亡後も頼朝の命を狙う.大仏落慶供養の東大寺に頼朝を狙い切り込むが,道理を説かれ断念,二度と復讐をしない誓いとして両目を自ら刺し貫く.
景清の娘・糸滝は,3歳の時別れた父が日向国に流されていると知り,花菱屋に遊女として身を売った金を携え父のもとを訪ねるが,景清はなお頼朝からの仕官の誘いを頑なに拒絶して,貧窮の暮らしを続けていた….
男性の意地が女性の無償の愛に覆るという点では,昨晩見たオグリと共通するところもある通し狂言.吉右衛門の熱演に何と言っても引き込まれる.
これに歌六,又五郎,錦之助,雀右衛門,東蔵等が過不足なく一座として好演し,味わいのある舞台.また若手の歌昇,種之助,鷹之資も動き良く好印象だった.
スーパー歌舞伎と対照すると如何にも地味な舞台だが,楽しかった.竹本の出来も素晴らしい.
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2019/11/03

番外 独断的歌舞伎感想文:スーパー歌舞伎II 新版 オグリ

日記:2019年11月某日
新橋演舞場で「スーパー歌舞伎II(セカンド) 新版 オグリ」を見る.Enbujo20191011kkkk2_88f798330d2660989c84
出演:藤原正清後に小栗判官(市川猿之助),遊行上人(中村隼人),照手姫(坂東新悟),小栗一郎(市村竹松),小栗二郎(市川男寅),小栗三郎/山賊(市川笑也),小栗四郎(中村福之助),小栗五郎/山賊(市川猿弥),小栗六郎(中村玉太郎),鬼次/銀鬼少将/商人(市川弘太郎),カメ婆(市川寿猿),金坊(市川右近),大納言の妻/閻魔夫人(市川笑三郎),横山修理太夫/長殿(市川男女蔵),鷹乃/薬師如来(市川門之助),翁(石橋正次),フグ婆/女郎屋女将(下村青),鬼王/赤鬼大将/女郎千早(石黒英雄),横山家継/鬼頭長官(髙橋洋),高倉久麿/黒姫/女郎蒲公英(嘉島典俊),閻魔大王(浅野和之).
2011年に亀治郎の小栗判官を,同じ劇場で早替わり/宙乗りで見たが,今回は小栗判官をかなり大幅に脚色したスーパー歌舞伎II.
1幕目,2幕目は,音響と映像の技術を駆使し鏡を多用した斬新な演出,派手な立ち回りと豪華な群舞によるテンポ速い展開が印象的.3幕目は一転してオグリの苦難と内省の道,照手姫との愛をじっくり描く落ち着いた進行後,遂に大団円がやって来る.
猿之助の圧倒的な存在感と,新悟との心情溢れる演技に感動した.猿之助と遊行上人隼人との二人宙乗りも見事.
閻魔大王を演じた浅野和之も良かった.まことに見応えある舞台だった.
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2019/10/26

阿佐ヶ谷ジャズストリート2019観戦記#2

日記:2019年10月某日
阿佐谷ジャズストリート観戦2日目.73194230_10206634008045586_4858587440413 13時過ぎから杉並第一小学校体育館で小林陽一&JJMwith飯田さつきを聞く.小林陽一(ds),マイク・ザッチャーナック(tp),原川誠司(as),治田七海(tb),リン・ヘイテツ(p),鈴木堅登(b).ジャズ・メッセンジャー路線のバンド,派手なドラムと3管構成のブラスはなかなか魅力的.治田七海は札幌の現役高校生,卒業したらN.Y.に行くとのこと.世の中は進んでいる.
続いて14:15から久遠キリスト教会でRe-trick with青山佳代を聞く.菅原敏(p),渡辺雅之(ds),井上亮(b).例年楽しみなRe-trick,向こうから阿佐谷に来てくれるこのチャンスは大変有り難い.大音量とカーチェイスのような3者の疾走感はこのグループの魅力.透明感あるヴォーカルの青山佳代とのバランスも,ようやく耳に慣れてきた.1,2曲目が新アルバムからで2曲目の短調のバラードが美しく魅力的.青山佳代が入って「人魚」「ムーン・リバー」「巡る」を歌った後,3人で「ラプソディ」を演奏し終了,聴き応え充分.
次は16:30から河北総合病院西館地下講堂でSOON KIMカルテットを聴く.SOON KIM(as),北川陽一郎(tp),カイドーユタカ(b),冨川まさし(ds).フリージャズ系としては親しみやすいSOON KIMさん,人柄と音色に暖かさを感じるのが魅力的.僕が聴くのは今年で3回目だが,必ず聴きたいバンドとなっている.
最後は,阿佐谷聖ペテロ教会で鈴木良雄BASSTALKを聴く.鈴木良雄(b),野力奏一(p),井上信平(fl),岡部洋一(per).曲目は木曽福島出身の杉並高校卒・鈴木良雄作曲,野力奏一アレンジの曲中心.鈴木良雄はベースの弦の響きをしっかりと伸びやかに聞かせる人.教会の空間の特徴と相俟ってアコースティックな音の魅力が素晴らしい.更に鈴木良雄の人柄やこのバンドのファミリアーな雰囲気が素敵で,ジャズを聴いていて何とも言えない幸福感がこみ上げてくる.このバンドも2010年以来4回目だが,聴いて損はないお勧めバンド.ここで本日のミッションは終了.
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2019/10/25

阿佐ヶ谷ジャズストリート2019観戦記#1

日記:2019年10月某日
恒例の阿佐ヶ谷ジャズストリートに参戦.しかしこの時点で結構な雨.72848687_2568221829912503_63481197655291
先ずは阿佐谷地域区民センターで立石一海トリオ.立石一海(p),佐藤忍(b),鈴木麻緒(ds).ジブリや童謡,クラシックの名曲をアレンジした親しみやすい楽曲.しかし阿佐谷地域区民センターはピアノもアップライト,いかんせん音が悪い.
続いて阿佐谷教会の中山育子with野力奏一トリオを聴く.中山育子(vo),野力奏一(p),香川裕史(b),安藤正則(ds).こちらはさすがに阿佐谷教会,ピアノもグランドピアノでアコースティックな音が全く違う.中山育子のヴォーカルは伸びやかで,バックのプレイヤーも実力者揃い.香川は大竹まこととロバート・デ・ニーロを足して2で割った様な風貌で表情豊か,顔で弾くベーシストという感じ.中山が野力の伴奏で歌った「虹のかなたに」が印象的.ここは傘を傘立てに強制的に置かせるが,案の定ここで傘を紛失.雨は止みかけている.
神明宮に行くと未だ入れるというので,神明宮能舞台の山下洋輔の1回目に首尾良く参入.山下洋輔(p),坂井紅介(b),本田珠也(ds),寺久保エレナ(as).奇跡のように雨は止み,1曲目は寺久保エレナの曲.その後の曲目は「ノース・バード」「メモリー・イズ・ア・ファニー・シング」「キアズマ」「グルーヴィング・パレード」.キアズマの冒頭から雨が再び降り,傘の林立でその隙間から舞台を瞥見する羽目になった.最初の2曲はエレナの曲,エレナを愛娘を見る様な表情で見つつ,やや猫背で演奏する山下洋輔.すっかりお爺ちゃんになったと思ったら,キアズマでは本性を現し,肘打ち掌底打ちを連発しての狂乱ぶりは未だ衰えずの印象あり.最後はグルーヴィング・パレードでご機嫌良く終了.
ここからちょっと歩いて阿佐谷聖ペテロ教会へ.増尾好秋MAGATAMAwith海老原淳子を聞く.増尾好秋(g),永武幹子(p),落合康介(b),永井誉人(ds).ギターの増尾好秋以外は若手のこのバンド,前半は増尾のオリジナルの演奏.皆腕は達者だが一本調子で,2曲目以降は(バンドの方は楽しいだろうが)飽きてしまう.海老原淳子がヴォーカルで入ると一変,胸に迫る演奏で感動した.同じプロでも力量はこれ程に差があるものか.本日はこれにて終了,久しぶりのジャズライブで,心がほぐされたようだ.
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2019/10/20

番外:独断的歌舞伎感想文 芸術祭十月大歌舞伎・夜の部 三人吉三巴白浪/二人静

日記:2019年10月某日
歌舞伎座で「芸術祭十月大歌舞伎 夜の部」を見る.Kabukiza_1910_hh_b194599c004e31f3e97bc74
令和元年度(第74回)文化庁芸術祭参加公演.河竹黙阿弥 作.通し狂言.「一、三人吉三巴白浪(さんにんきちさともえのしらなみ) 序幕:大川端庚申塚の場.二幕目:割下水伝吉内の場,本所お竹蔵の場.三幕目:巣鴨吉祥院本堂の場,裏手墓地の場,元の本堂の場.大詰:本郷火の見櫓の場 浄瑠璃「初櫓噂高音」」.出演:和尚吉三(松緑),お坊吉三(愛之助),お嬢吉三(松也),手代十三郎(巳之助),伝吉娘おとせ(尾上右近),釜屋武兵衛(橘太郎),八百屋久兵衛(橘三郎),堂守源次坊(坂東亀蔵),土左衛門伝吉(歌六).世阿彌元淸 原作・坂東玉三郎 補綴.「二、二人静(ふたりしずか)」.出演:静御前の霊(玉三郎),若菜摘(児太郎),神職(彦三郎).Kabukiza_1910poster_kitisa1569578708124
三人吉三は通しの上演で,この様に見るとあやなす因果の網目,100両の金の変転が鮮やかに浮かび上がり,物語全体の運命的な構成を強く印象づけられる.松緑,愛之助,松也が期待通りの活躍で素晴らしい.吉祥院本堂の場のお嬢・お坊の互いの求め方は,追い詰められた若い悪党の心細さが真に迫って,哀切である.右近・巳之助も好演,堂守源次坊の亀蔵も力の抜けた演技で好印象だった.Kabukiza_1910poster_shizuka1569578743966
二人静は極めて緊張度の高い美しい舞台,玉三郎・児太郎の連れ舞に息をするのも忘れるほど.長唄囃子連中,竹本連中,箏曲連中の豪華な囃子方も素晴らしかった.見応えある舞台.
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2019/10/15

独断的映画感想文:終わった人

日記:2019年10月某日
映画「終わった人」を見る.1_20191108201401
2017年.監督:中田秀夫.
出演:舘ひろし(田代壮介),黒木瞳(田代千草),広末涼子(浜田久里),臼田あさ美(山崎道子),今井翼(鈴木直人),野澤しおり(山崎麻衣),ベンガル(工藤元一),高畑淳子(桜田美雪),岩崎加根子(田代ミネ),渡辺哲(川上喜太郎),田口トモロヲ(青山俊彦),笹野高史(二宮勇).4_20191108201401
田代壮介は東大出の大手銀行マンながら,出世競争に敗れ出向先の専務でそのまま定年.翌日からやることもなく無為に日々を過ごす.
周りから叱咤激励されカルチャースクールに通うと,そこの受付・久里となかなか良い雰囲気に,またスポーツジムで知り合った鈴木からは経歴を見込まれ,鈴木経営のITベンチャーに顧問就任を懇請される.顧問として仕事を再開し,久里とも付き合うようになって大いに気をよくした壮亮だったが….3_20191108201401
映画自体はコメディだと主張しているようだ.しかし久里との顛末はともかく,話の全体はコメディといった感じではない.
そもそも物語は引退後の濡れ落ち葉現象や熟年離婚から,壮介の経営能力不足で発生する重大な事態まで,エピソードが多岐に亘りすぎて話の芯が見えにくい.終いには壮介はそれまで殆ど帰らなかった故郷岩手に舞い戻ることになるのだが,そこに至る過程も成り行き任せで,なかなかこの主人公に共感するところまでは行かない.2_20191108201401
定年あるある物語のコメディの線と,一人の男の人生再出発の話が,最終的にかみ合わないまま映画は終了してしまった感じである.
★★★(★5個が満点).
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2019/10/14

番外:独断的歌舞伎感想文 天竺徳兵衛韓噺

日記:2019年10月某日
国立劇場で「通し狂言 天竺徳兵衛韓噺(てんじくとくべえいこくばなし) 三幕六場」を見る.201910
四世鶴屋南北=作.国立劇場文芸研究会=補綴.国立劇場美術係=美術.序幕:北野天満宮鳥居前の場,同 別当所広間の場.二幕目:吉岡宗観邸の場,同 裏手水門の場.大 詰:梅津掃部館の場,同 奥座敷庭先の場.主な配役:天竺徳兵衛/座頭徳市/斯波左衛門(中村芝翫),梅津掃部(中村又五郎),梅津奥方葛城(市川高麗蔵),山名時五郎/奴鹿蔵(中村歌昇),下部磯平(大谷廣太郎),銀杏の前(中村米吉),佐々木桂之介(中村橋之助),侍女袖垣(中村梅花),石割源吾/笹野才造(中村松江),吉岡宗観/細川政元(坂東彌十郎),宗観妻夕浪(中村東蔵).
緊張感低く,爆睡に次ぐ爆睡で,筋もあやふやなまま終了.ここはという見せ場もこれはという熱演もさほど印象に残らず,全く面白くなかった.悪党役で中村橋吾が出ていた.
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2019/10/08

独断的映画感想文:孤狼の血

日記:2019年10月某日
映画「孤狼の血」を見る.1_20191012134001 2017年.監督:白石和彌.
出演:役所広司(大上章吾),松坂桃李(日岡秀一),真木よう子(高木里佳子),滝藤賢一(嵯峨大輔),中村獅童(高坂隆文),竹野内豊(野崎康介),伊吹吾郎(尾谷憲次),ピエール瀧(瀧井銀次),田口トモロヲ(土井秀雄),石橋蓮司(五十子正平),江口洋介(一之瀬守孝).2_20191012134001 広島の地方都市呉原,地元の暴力団・尾谷組と広島の右翼系暴力団・五十子会の下部組織加古村組が,激しくしのぎを削っている.呉原東署の○暴刑事・大上は法を無視し暴力団との癒着も噂される暴れん坊,そこに広大卒の新人刑事・日岡が配属される.
日岡は大上に激しく反発しながらも○暴担当として厳しく鍛えられるが,日岡は実は大上を監査するために派遣されていた.大上は加古村組の組織犯罪の捜査を進める一方,加古村組への尾谷組の暴発を押さえるために奔走するが….4_20191012134001 凄惨な映像を伴う実録系やくざ映画.その映像が,テンポ良く進む物語の強烈なアクセントとなる.
映画の進展に伴い,観客は大上や日岡の人となりや,ヤクザ組織と警察の関係,特に五十子会と警察首脳の醜悪な癒着を知るようになる.その中で,やくざや刑事達の一瞬見せる侠気や勇気,信念が感銘的だ.5_20191012134001 何と言っても役所広司が圧倒的な力量,その大上を追って日岡が見せる日岡らしい行動を,松阪桃李が好演している.ピエール瀧が良い味,石橋蓮司が相変わらず元気,その他きら星の俳優達がそれぞれ見応えあり.3_20191012134001 力の入った映画.★★★☆(★5個が満点).
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2019/10/06

独断的映画感想文:ジョーカー(2019)

日記:2019年10月某日
ユナイテッドシネマ・としまえんで映画「ジョーカー」を見る.1_20191007170801
2019年.監督:トッド・フィリップス.
出演:ホアキン・フェニックス(アーサー・フレック),ロバート・デ・ニーロ(マレー・フランクリン),ザジー・ビーツ(ソフィー・デュモンド),フランセス・コンロイ(ペニー・フレック),ブレット・カレン(トーマス・ウェイン).5_20191007170801
アーサー・フレックは,ピエロの扮装をしたパフォーマンスや街頭宣伝で,母2人と細々と暮らしている.不意に起こる笑いの発作で医療保護を受けているが,まともな職には就けない.
本人はコメディアンとして舞台に立ちたい希望があり,マレー・フランクリン司会のトークショーが好きで,いつかマレーと共にTVに出たいと思っている.母親は昔勤めたことのある富豪・ウェイン家に窮状を訴える手紙を度々書くが,返事は来ない.
アーサーは街頭宣伝中にチンピラに襲われ袋だたきに遭った上,壊された看板代を給料からさっ引かれる.同僚が身を守れと拳銃と銃弾を譲ってくれるが,その拳銃にアーサーは激しく魅了される.2_20191007170801
しかし小児科病棟でのピエロの仕事の最中に誤って拳銃を落としたアーサーは,即刻プロダクションをクビになる.傷心のアーサーはその扮装のまま,地下鉄で酔ったウェイン社のサラリーマンに絡まれ暴行を受ける.反射的に拳銃で3人を射殺し逃げおおせたアーサー,しかしウェイン社長が射殺犯を非難したコメントは下層階級の反感を呼び,謎のピエロはあたかも英雄のようにもてはやされた….
バットマンの宿敵:ジョーカーの誕生を描く物語.4_20191007170801
この映画のジョーカーは,ナイーブで優しくしかし激情に駆られる人物だ.後にバットマン映画に登場する,奸智に長けたジョーカーには未だほど遠いところにいる.
しかしこのジョーカーの魅力的なことはどうだろう.妄想に駆られ,妄想の中にしか慰めを見いだせないジョーカー,演じるホアキン・フェニックスの痩せさらばえた肉体も含め,その存在感は圧倒的だ.映画の色調,音響もこれに同調して素晴らしい.この映画は「ホアキン・フェニックスが演じるジョーカー」を見る映画といって過言ではない.6_20191007170801
クライマックスのアーサーとマレー・フランクリンの応酬が,やや迫力を欠いたのは残念.マレーの対応は,暴力と犯罪に対しあまりに紋切り型過ぎたのではないか.3_20191007170801
★★★★(★5個が満点).
蛇足:終盤,暴動の町を車の中から眺めるアーサーのシーンに流れる,クリームの「ホワイト・ルーム」が秀逸.ジンジャー・ベーカー(クリームのドラマー)の訃報は映画を見た後知った.
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2019/10/05

独断的映画感想文:ガンジスに還る

日記:2019年10月某日
映画「ガンジスに還る」を見る.1_20191012110801
2016年.監督:シュバシシュ・ブティアニ.
出演:アディル・フセイン(ラジーヴ),ラリット・ベヘル(ダヤ),ギータンジャリ・クルカルニー(ラタ),パロミ・ゴーシュ(スニタ),ナヴニンドラ・ベヘル(ヴィムラ),アニル・ラストーギー(ミシュラ).4_20191012110801
教師を引退して77歳になったダヤは,ある日少年時代の夢を見る.死期を悟ったダヤは,ガンジス河畔の聖地バラナシに行く決意を固める.息子ラジーヴは寝る間も携帯を離せない猛烈サラリーマンだが,止むなく父の付添を務めることになる.
二人はバラナシの「解脱の家」に下宿し,ダヤはすぐに同宿の人々とうち解けるが,ラジーヴは父に料理が不味いと叱られ,顧客からの電話に翻弄され途方に暮れる….2_20191012110801
長回しを多用し,テンポの緩やかな穏やかな映画だが,退屈することはない.ラジーヴと妻の些細な口論や愛の語らい,ダヤと孫娘の情愛溢れるやり取り等が面白く,また映像に沿ったインド音楽が美しい.5_20191012110801
ぶつぶつ言いながらも父に仕える,ラジーヴとダヤのインド的父子関係も印象的だ.映画で語られるインド人の死生観も興味深い.一見の価値ある映画.★★★☆(★5個が満点)
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2019/10/03

独断的映画感想文:羊と鋼の森

日記:2019年10月某日
映画「羊と鋼の森」を見る.1_20191007173901
2018年.監督:橋本光二郎.
出演:山崎賢人(外村直樹),鈴木亮平(柳伸二),上白石萌音(佐倉和音),上白石萌歌(佐倉由仁),三浦友和(板鳥宗一郎),堀内敬子(北川みずき),仲里依紗(濱野絵里),光石研(秋野匡史),吉行和子(外村キヨ).4_20191007173901
北海道の森の中で育った外村直樹は,高校の時にピアノ調律の現場に立ち会いその仕事に魅了される.調律師の学校を出た外村は,憧れの調律師・板鳥のいる楽器店に採用が決まり,先輩の柳の指導で調律師としてスタートする.2_20191007173901
柳が担当している佐倉家の姉妹は対照的なピアノを弾く二人,姉の和音は柔らかなピアノを,妹の由仁は華々しいピアノを弾く.この二人の注文を受けながら調律する柳,やがて外村は佐倉家の担当を任されるのだが….5_20191007173801
一人の調律師が生まれ育っていく過程を描く,本屋大賞ベストセラーの映画化,原作は未読.羊とはフェルト,鋼鉄はピアノの弦を表す.調律師の成長過程という題材をしっかり描いており,映像も緑の森,ダイアモンドダスト等北海道らしい自然の描写が素晴らしい.
佐倉姉妹を演じる上白石姉妹も良かった.特にこの二人を始め,ピアノの演奏シーンの演奏の演技が丁寧で,好印象を持った.三浦友和,鈴木亮平,光石研も好演.3_20191007173801
主演の山崎賢人は物足りない.そもそも外村が何故調律師を目指したのか,弟や両親との関係にどういう問題があったのか等は説明不足で,中途半端.
★★★☆(★5個が満点)
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2019/09/23

番外:独断的歌舞伎感想文 秀山祭九月大歌舞伎昼の部 極付幡随長兵衛/お祭り/沼津

日記:2019年9月某日
歌舞伎座で秀山祭九月大歌舞伎 昼の部を見る.Kabukiza_1909_h_6a5eab113e35d5e99ca09f43
「河竹黙阿弥作 一、極付幡随長兵衛(きわめつきばんずいちょうべえ) 「公平法問諍」」.出演:幡随院長兵衛(幸四郎),水野十郎左衛門(松緑),唐犬権兵衛(錦之助),長兵衛女房お時(雀右衛門).「二、お祭り(おまつり)」.出演:鳶頭(梅玉),芸者(魁春),芸者(梅枝).「三世中村歌六 百回忌追善狂言:伊賀越道中双六 三、沼津(ぬまづ)」.出演:呉服屋十兵衛(吉右衛門),平作娘お米(雀右衛門),池添孫八(錦之助),旅人夫(歌昇),旅人女房(種之助),初お目見得:旅人倅(小川綜真(歌昇長男)),茶屋娘おくる(米吉),荷持安兵衛(又五郎),雲助平作(歌六).
「極付幡随長兵衛」は,劇中劇「公平法問諍」が面白い.こっちの配役も結構豪華.幸四郎の幡随長兵衛はやや貫禄不足.ある日突然に水野の屋敷に死にに行くと言う幡随長兵衛の言葉を周囲が受け入れるのも,とにかくこの人のカリスマ的偉さがあるからで,そこが足りないと,みすみす水野の屋敷に行くのを何故止めないのか,不思議な感じになる.Numazu
最後は無事吉右衛門が病休から復帰した「沼津」.この芝居は,通し狂言「伊賀越道中双六」全体の複雑な構成が頭に入っていないと,理解し難い.最近は同じ狂言の岡崎を共通する配役で何度か見ているので,話がこんがらかって困った.吉右衛門,雀右衛門,歌六の芝居はさすがに隙がなく,高い緊張感で終始する.実に見応えあり.
あいだの「お祭り」は息抜きにぴったりのくだけた踊り.
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2019/09/22

独断的映画感想文:女王陛下のお気に入り

日記:2019年9月某日
映画「女王陛下のお気に入り」をみる.1_20190925181501 2018年.監督:ヨルゴス・ランティモス.
出演:オリヴィア・コールマン(アン女王),エマ・ストーン(アビゲイル・ヒル),レイチェル・ワイズ(レディ・サラ),ニコラス・ホルト(ロバート・ハーリー),ジョー・アルウィン(サミュエル・マシャム),マーク・ゲイティス(モールバラ公(ジョン・チャーチル)),ジェームズ・スミス(ゴドルフィン).5_20190925181501 18世紀初頭・アン女王の治世,イギリスがフランスとの戦争状態にあった時代.実父に賭博のかたでドイツ人に売られたアビゲイルは,従姉妹のレディ・サラのもとに転げ込み女中として採用される.レディ・サラ・モールバラはアン女王の同窓生,頭脳明晰で判断力抜群,アン女王の信頼厚くイングランドの政策は実質彼女が背負っていた.夫のモールバラ公はフランス遠征軍の指揮官である.
アビゲイルはレディ・サラの侍女として薬草の知識で女王の痛風の治療に貢献,女王の信頼を得る.更にアビゲイルは,本を探しに忍び込んだレディ・サラの自室で,サラと女王の愛を交わす現場を目撃してしまう….3_20190925181501 女王とその寵愛を争う女性2人の息詰まるやり取りを描く英国時代劇.といっても描写は極めて現代的で,女王へのアプローチに失敗したアビゲイルが「くそっ(FUCK)」と連呼しながら王宮の廊下を歩いて行くシーンには笑ってしまう.
サラとアビゲイルの確執には,スペイン継承戦争の行方とホイッグ党・トーリー党の政権争いも絡み,絶対君主・アン女王のむら気と病勢も影響して,その決着は予断を許さない.2_20190925181501 映画は冷静沈着なサラと,激しい感情と強気を前面に押し出すアビゲイルの,対照的な描写が面白い.一方で生まれた全ての子(17人)を失った女王の哀しみと,そこにアビゲイルがつけ込むシーンも心に残る.また,個性的な音楽と暗鬱なイングランドの自然描写も印象的.
まあ,日本では天皇や将軍の性生活や欠点を描く映画を作る自由は事実上ないことを考えると,こういう映画にはことさら魅力を感じるのだろうか.★★★★(★5個が満点).
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2019/09/17

独断的映画感想文:ドッグマン

日記:2019年9月某日
ヒューマントラストシネマ渋谷で映画「ドッグマン」をみる.1_20190917201501
2018年.監督:マッテオ・ガローネ.
出演:マルチェロ・フォンテ(マルチェロ),エドアルド・ペッシェ(シモーネ),アダモ・ディオニージ(フランコ),アリダ・カラブリア(アリダ),ラウラ・ピッツィラーニ(元妻).2_20190917201501
イタリアのうらぶれた海辺の町で,犬のトリミングサロンを営んでいるマルチェロ.別れた妻との関係はまずまずで,一人娘のアリダをこよなく愛している.腕も良く,町の人とも良好な関係だが,町のごろつきシモネとは腐れ縁が続いている.小柄で気弱なマルチェロは,圧倒的なシモネの暴力に屈服して,たびたび悪事を手伝わされていた.
ある日シモネが,マルチェロの店から壁越しに隣の貴金属商・フランコの店に押し込もうと言い出す.全てを失うことになると必死で反対するマルチェロ,しかしシモネの暴力に止むなく店の鍵を渡してしまう.フランコの店は襲われマルチェロは逮捕されるが….4_20190917201501
何とも不条理でやるせない男の物語.シモネは町中の嫌われ者,彼にひどい目に会わされたスロットマシン屋の親父は殺し屋を雇おうとまで言い出すのだが,マルチェロは賛否も明らかにせず黙ったまま.
如何に圧倒的な暴力性があろうと,相手はマフィア組織ではなく一人のごろつきに過ぎない,自身と家族を守るためにはもうちょっと何とかならないのだろうか.そういう観客の思いとは裏腹に,マルチェロは只ひたすら屈従する.6_20190917201501
物語の進行と共に,マルチェロはシモネの幼馴染みでは?という感じもしてくるのだ.マルチェロはシモネにヤクを融通しているが,自分だって勿論ヤクをやる.シモネに無理矢理泥棒の手助けを強要されるが,その分け前も(少ないが)しっかりもらっている.シモネと付き合っているといいこともある,そういう関係が少年の頃からできているのではないか.そこにマルチェロの狡さも感じられ,話はますます救いがない.5_20190917201501
映画は演出,カメラ,音楽,そして主演:マルチェロ・フォンテの演技を挙げて,この救いの無さを見事に描いている.予告編を見てスカッとするエンディングを予想していたが,果たしてそうなるかどうか,それもお楽しみ.印象に残る映画.★★★★(★5個が満点).
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2019/09/15

番外:独断的歌舞伎感想文 秀山祭九月大歌舞伎夜の部 寺子屋/勧進帳/松浦の太鼓

日記:2019年9月某日
歌舞伎座で秀山祭九月大歌舞伎 夜の部を見る.Img_20190915_211142
「菅原伝授手習鑑 一、寺子屋(てらこや)」.出演:松王丸(吉右衛門),園生の前(福助),千代(菊之助),菅秀才(丑之助),戸浪(児太郎),春藤玄蕃(又五郎),武部源蔵(幸四郎).「二、歌舞伎十八番の内 勧進帳(かんじんちょう)」.出演:武蔵坊弁慶(仁左衛門),源義経(孝太郎),富樫左衛門(幸四郎).三世中村歌六 百回忌追善狂言「三、秀山十種の内 松浦の太鼓(まつうらのたいこ)」.出演:松浦鎮信(歌六),大高源吾(又五郎),お縫(米吉),宝井其角(東蔵).Terakoya
寺子屋は,吉右衛門の圧倒的迫力と緩急泣き笑いの自在な芝居が,まことに印象的.菊之助も子を失った母の悲哀が胸に迫る素晴らしい演技.又五郎も良かった(どうも又五郎が玄蕃をやるとあまり悪人に見えないが).
仁左衛門の勧進帳は2008年4月以来である(この時は富樫:勘三郎,義経:玉三郎).本日もメリハリがあって丁寧な芝居,しかし眼力は凄い.孝太郎の義経が対照的な動かぬ演技で良かった.Kanjincho
この後が松浦の太鼓で,ここは歌六の松浦公がおかしみのある余裕の演技で素敵だった.1時間越えの芝居が3本続くとさすがに見ている方も疲れるが,さすがに見応えある秀山祭.
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2019/09/08

独断的映画感想文:ガーンジー島の読書会の秘密

日記:2019年9月某日
TOHO日比谷シャンテで「ガーンジー島の読書会の秘密」を見る.1_20190908212601 2018年.監督:マイク・ニューウェル.
出演:リリー・ジェームズ(ジュリエット・アシュトン),ミキール・ハースマン(ドーシー・アダムズ),グレン・パウエル(マーク・レイノルズ),ジェシカ・ブラウン・フィンドレイ(エリザベス・マッケンナ),キャサリン・パーキンソン(アイソラ・プリビー),マシュー・グード(シドニー・スターク),トム・コートネイ(エベ・ラムジー),ペネロープ・ウィルトン(アメリア・モーグリー).2_20190908212601 1946年,大戦の傷跡も未だ癒えないロンドン.作家ジュリエットは或る日,英国王室属領・ガーンジー島で読書会をしているダーシーという男から手紙を受け取る.手紙は,ガーンジー島には本屋が無く,彼が手に入れた古本の見返しに住所・氏名をサインしていたジュリエットに,ロンドンの本屋の紹介を依頼してきたものだった.3_20190908212601 興味を引かれたジュリエットはダーシーと文通を始める.ガーンジー島は大戦中ナチに占領され,島民は苦しい生活を強いられた.「ガーンジー読書とポテトピールパイの会」は貴重な憩いの場だったという.作品の方向性に悩んでいたジュリエットは,この読書会に取材して記事をタイムズに発表しようと考え,ガーンジー島に向かう.
ジュリエットは島のモーグリー宅で開かれた読書会に迎えられ,皆とうち解けるが,取材結果をタイムズに掲載したいという希望は,断固拒否される.またメンバーの内エリザベスという若い女性は不在で,ダーシーをパパと呼ぶモーグリー宅の少女キットは,エリザベスの子だとジュリエットは知ることになる.4_20190908212601 ジュリエットはエリザベス不在の理由を調べるため滞在を続け,島の新聞社のアーカイブを調べ島民に質問をする.その結果戦争末期にエリザベスはドイツ軍に逮捕され,大陸に連行されたと分かる.ジュリエットは婚約者で米軍将校のマークに,エリザベスの行方を調査依頼するが….
映画の舞台ガーンジー島はイギリス海峡サン・マロ湾にあり,フランス本土から50km足らずのところにある美しい島.また背景となる読書会は,本を朗読したり,感想を発表したり,それを巡る議論を交わしたりという会で,「ガーンジー読書とポテトピールパイの会」でも5名の年齢性別様々な参加者が熱い議論を交わす様子が描かれる.5_20190908212601 物語はジュリエットの調査を通じ,大戦中の災厄と人々が味わった辛酸を一つまた一つと明らかにしてゆき,自らも大戦で両親を亡くしているジュリエットがそのことに心を動かされていく経過が印象的だ.俳優ではジュリエット役のリリー・ジェームズが美しく魅力的,またアメリア・モーグリー役のペネロープ・ウィルトンの演技が素晴らしい.6_20190908212601 戦争の傷跡を描いたこの映画は,また一つの恋の物語でもある.舞台・背景含めて映画としての魅力充分,見応えあり.★★★★(★5個が満点).
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2019/08/29

独断的映画感想文:ロケットマン

日記:2019年8月某日
TOHOシネマズ新宿へ.映画「ロケットマン」を見る.1_20190830140501 2019年.監督:デクスター・フレッチャー.
出演:タロン・エガートン(エルトン・ジョン),ジェイミー・ベル(バーニー・トーピン),ブライス・ダラス・ハワード(シーラ・フェアブラザー),リチャード・マッデン(ジョン・リード).3_20190830140501 本人が製作総指揮を執るエルトン・ジョンの自伝的物語.ミュージカル仕立てだが,楽曲は殆どがエルトン・ジョンのヒット曲で歌うのはエルトン・ジョンである.
映画の冒頭,奇抜な衣装のまま依存症の会合に参加するエルトン・ジョン,自身の薬物・アルコールへの依存を明かし,愛に恵まれなかった少年時代を語り始める.4_20190830140501 父と母は不仲で,両者ともその不満を息子にぶつけていた.祖母アイヴィはエルトンの音楽の才能に気付き,ピアノの教育を受けさせる.エルトンは国立音楽院の奨学金を受け入学,やがてロックに傾倒しバンド活動を開始,レコード会社の公募に応募して作詞家バーニー・トーピンと巡り会う.
作品が会社に認められ,アルバムリリースが決定,二人はアメリカデビューのため,ハリウッドのライブハウス:トルバドールに行く.ここでのライブ成功で人気が爆発したエルトン・ジョン,のちにマネジャーになるジョン・リードとも恋に落ちるが….
世界的なスターになりチケット完売のツアーを続けるエルトン・ジョン,しかし愛に満たされずジョン・リードには冷たくあしらわれ,薬と酒に身を滅ぼしていく.遂には依存症更生施設へ入所し,自身と他人との関係を見直す経過を辿る.後半はエルトン・ジョンの自身の解体・再生の物語だろう.2_20190830140501 音楽映画として魅力的な場面に満ちあふれた映画.自宅のピアノで,バーニーの詞を見ながら「Your Song」を創り出して行く瞬間のスリリングなシーン,トルバドールで「Crocodile Rock」のパフォーマンスが成功する爆発的な歓喜のシーン….これらのシーンは観客を映画に引き込んで離さないだろう.
中盤の両親それぞれとの葛藤や,幼かった自分との和解のシーンには胸を打たれる.終盤バーニーと再び曲作りを始めようとするシーンも素晴らしい.5_20190830140501 主演のタロン・エガートンは,演技も歌も文句なし.母親役のブライス・ダラス・ハワードは,つい先日見た「ジュラシック・ワールド/炎の王国」のクレア役だったとは信じられない面変わり,達者なものです.
元来僕はミュージカルは嫌いなのだが,この映画の魅力には抗し難い.★★★★(★5個が満点)
蛇足:愛人だったジョン・リードは,「ボヘミアン・ラプソディ」でクィーンのマネジャーとしても登場した敏腕マネジャー.この映画ではかなり悪役に描かれているが(実際エルトン・ジョンから横領の疑いで解雇され,数億円を返済して和解),本人はオーストラリアで健在とのこと.
★★★★(★5個が満点)
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2019/08/28

独断的映画感想文:馬を放つ

日記:2019年8月某日
映画「馬を放つ」を見る.1_20190830135301 2017年.監督:アクタン・アリム・クバト.
出演: アクタン・アリム・クバト,ヌラリー・トゥルサンコジョフ,ザレマ・アサナリヴァ,タアライカン・アバゾバ.
3_20190830135301 キルギスの田舎町に住むケンタウロスと呼ばれる男,聾唖の妻マリンパと口をきかない5歳の息子ヌルベルディと共に穏やかに暮らしている.男は元映写技師だったが町の映画館が潰れた後は日雇い仕事で暮らしているのだ.
ケンタウロスはキルギスの神の伝説を深く信奉しており,夜になると厩舎の馬を野に放つという行為をしばしば行っていた.高価な馬を盗まれた有力者のカラバイは,他の牧場主と語らって,罠を仕掛けて犯人を捕らえようとする….4_20190830135301
「馬は人の翼だ」というキルギスの言い伝えが映画の冒頭に掲げられるが,そのキルギスの心情に生きるケンタウロスを描く寓話的映画.
5_20190830135301 伝統的な立場の村の長老達,新興の有力者達,強引な布教を進めるイスラム教の指導者,馬を食用に売買する業者等が物語に登場するが,ケンタウロスの妻子への愛情や純朴な思いが翻弄されていく様子が,印象的だ.2_20190830135301
映画は悲劇的な結末を迎えるが,最後に起こる小さな奇跡が心に残る.映画らしい映画.
★★★☆(★5個が満点)
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2019/08/24

独断的映画感想文:ビル・エヴァンス タイム・リメンバード

日記:2019年8月某日
ユジク阿佐谷で映画「ビル・エヴァンス タイム・リメンバード」を見る.1_20190825220201 2015年.監督:ブルース・スピーゲル.4_20190825220201 出演:ポール・モチアン,ジャック・ディジョネット,ジョー・ラバーベラ,チャック・イスラエルズ,ゲイリー・ピーコック,マーク・ジョンソン,トニー・ベネット,ジム・ホール,ジョン・ヘンドリックス. モダンジャズに大きな足跡を残したピアニスト:ビル・エヴァンスの評伝ドキュメンタリー.
生い立ちからジャズとの関わり,大きな影響を受けたマイルス・デイビスグループへの参加,ジャズを変えた最初のスコット・ラファロ,ポール・モチアンとのトリオ,そのベーシスト:スコット・ラファロの突然の事故死….これらの経過を,ビル・エヴァンスの美しいジャズをバックに,きら星の様なジャス界の巨匠達が証言していく.
痛ましいのは,そのキャリアのごく初期からビル・エヴァンスがドラッグに蝕まれていたことだ.6_20190825220201
彼の女性遍歴も詳しく描かれる.その中で,彼が新しい恋人との子どもが欲しかったために別れた愛人エレンの自殺は,最愛の兄ハリーの自殺と共に,哀切極まりない.ビル・エヴァンスや関連のジャズメン達の美しい音楽を重ねながら,彼の様々な人生の格闘を語る本編は,まことに見応えあり.なお,出演者の中でポール・モチアンとジム・ホールは,この映画の製作中に死去した.5_20190825220201
雑感1:インター・プレイという素晴らしい演奏スタイルを生み出したが故に,その緊張に晒されたビル・エヴァンスがドラッグに耽溺したのだとすれば,これほどの皮肉はない.
雑感2:スコット・ラファロ,チャック・イスラエル,エディ・ゴメス等の歴代ベーシストの映像を見ても,そのテクニックは凄まじい.ビル・エヴァンスと付き合ったベーシスト達の力量を,改めて思い知ることになった.2_20190825220201
ジャズとビル・エヴァンスが好きな方は必見.★★★★(★5個が満点)
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2019/08/19

独断的映画感想文:トレイン・ミッション

日記:2019年8月某日
映画「トレイン・ミッション」を見る.1_20190827103201 2018年.監督:ジャウマ・コレット=セラ.
出演:リーアム・ニーソン(マイケル・マコーリー),ヴェラ・ファーミガ(ジョアンナ),パトリック・ウィルソン(マーフィー),ジョナサン・バンクス(ウォルト),エリザベス・マクガヴァン(カレン・マコーリー),フローレンス・ピュー(グウェン),サム・ニール(ホーソーン警部).3_20190827103201 マイケルは保険会社の社員で元警察官,10年間ずっと通勤列車を利用している.息子は難関私立大学に合格,その学費を振り込むと貯金は殆どなくなってしまう.
ところがその日出勤するとマイケルは上司に呼ばれ,突然のクビを申し渡される.退職金もなく,失意のマイケルは帰路の通勤列車に乗り込むが,その直前携帯を掏られてしまう.2_20190827103201 車内でマイケルは奇妙な女ジョアンナに話しかけられる.彼女の言うには,列車内には常連客でない通称「プリン」という人物が乗っており終点で下車する.その人物を特定し,鞄にGPSを仕掛けてくれれば,10万ドルを進呈する.手付けの2万5千ドルはトイレに隠してあると.ジョアンナは下車し,マイケルはトイレで2万5千ドルを手に入れた.しかしなお実行に踏ん切りがつかないマイケル,しかし別の女性が近寄ってきてマイケルに妻の結婚指輪を渡し下車していく.マイケルは妻が人質に取られたことを知った.
マイケルは知り合いの常連客トニーの携帯を借りてかっての部下マーフィー警部補に救援を依頼,また常連客ウォルトの新聞に,警察への通報を依頼したメモを書き込んだ.ところが下車したウォルトはマイケルの目の前で交差点に押し出され,トラックにひかれてしまう.疾走する車内,彼を見張っているのは誰か,プリンとは誰か,また何故彼がこのミッションに巻き込まれたのか…?5_20190827103201 突然事件に巻き込まれたマイケルの,謎解きとアクションの連続で見せるエンタテインメント映画.列車という特性と乗客という介在者を,うまく使ったプロットが面白い.4_20190827103201 但し黒幕は誰かという点は,冷静に考えればすぐ判りそうなもの(トニーの携帯をマイケルが使ったという事実を知るものは,一人しかいない).設定にも無理がいろいろあり,全体としてはB級感が強い.リーアム・ニーソンもいささかくたびれてきた.
★★★(★5個が満点)
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2019/08/17

独断的映画感想文:復讐のドレスコード

日記:2019年8月某日
映画「復讐のドレスコード」を見る.1_20190818220401 2015年.監督:ジョスリン・ムーアハウス.
出演:ケイト・ウィンスレット(ティリー(マートル)・ダネージ),リアム・ヘムズワース(テディ),ジュディ・デイヴィス(モリー・ダネージ),ヒューゴ・ウィーヴィング(ファレット巡査部長),キャロライン・グッドオール(エルスベス),サラ・スヌーク(ガート).2_20190818220401 1950年代初め,オーストラリアの田舎町ダンガターにティリーがミシン一つを手に帰ってきた.
ティリーは25年前10歳の時に起こった,市長の息子の事故死の現場にいた娘.市長の手で町を追い出され,その後洋裁を学んでヨーロッパの有名店で修行をしてきた.ティリーは,自身にも分からない市長の息子の死の真相を知るべく,一人暮らす母の元に帰ってきたのだ. ティリーはその美貌と目を見張るような洋裁の腕で町の人々を魅了する.町のラグビーチームのエースでティリーの幼馴染み・テディはティリーに恋心を抱く.ところが,息子の死の目撃調書を知った市長の妻はティリーへの敵意を露わにし,ティリーは町で孤立する.事件の真相は何か,ティリーの復讐はどうなるのか….6_20190818220401 ちょっと寓話的な復讐譚.ここぞというところではぐらかされる感じのある物語がいまいちだが,映画全体の雰囲気は良い.
ティリーが腕一つで創り出すドレスが,町の女性達の態度も気持も一変させたり,復讐の切り札となったりという展開が面白いし,母モリーの活躍とその同年代の老人達のそれぞれの顛末も可笑しい.3_20190818220401 B級感に満ちているが,こういう雰囲気の映画は久しぶりなので楽しかった.但し邦題は意味不明.原題は“The Dressmaker” . ★★★☆(★5個が満点)5_20190818220401
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2019/08/16

独断的映画感想文:ジュラシック・ワールド/炎の王国

日記:2019年8月某日
映画「ジュラシック・ワールド/炎の王国」を見る.1_20190818214801

2018年.監督:J・A・バヨナ.
出演:クリス・プラット(オーウェン・グレイディ),ブライス・ダラス・ハワード(クレア・ディアリング),ジャスティス・スミス(フランクリン・ウェブ),ダニエラ・ピネダ(ジア・ロドリゲス),ジェフ・ゴールドブラム(イアン・マルコム),B・D・ウォン(ヘンリー・ウー博士),ジェームズ・クロムウェル(ベンジャミン・ロックウッド),テッド・レヴィン(ケン・ウィートリー),イザベラ・サーモン(メイジー・ロックウッド),ジェラルディン・チャップリン(アイリス).5_20190818214801

前作「ジュラシック・ワールド」の舞台イスラ・ヌブラル島では,恐竜たちが全島に棲息し人間の手を離れて暮らしていた.ところが島の火山活動が活発化し,恐竜たちに全滅の危機が迫る.
米国議会が恐竜保護は行わないという結論を出す中,元ジュラシックワールド経営者のクレアの元に,ロックウッド財団から恐竜救出の依頼が届く.ロックウッドは「ジュラシックパーク」の設立者ジョン・ハモンドの盟友だった.2_20190818214801
財団の運営管理者・ミルズは,予算の都合上11種の恐竜しか救えないが,その中に「ブルー」と呼ばれる知能の高いヴェロキラプトルを必ず入れるようにと指示を出す.クレアはブルーの育ての親・動物行動学者のオーウェンを伴い,部下ののエンジニア・フランクリンと獣医のジアと共に,イスラ・ヌブラル島の財団の救出チームに合流する.
ブルーを発見しオーウェンが接近すると,彼を思い出したのか警戒を解くブルー.しかしその瞬間ブルーに麻酔弾が撃ち込まれ,抗議したオーウェンも麻酔弾で撃たれる.チームは救出チームではなく恐竜売買チームだった.
チームが傷ついたブルーを生かすためジアだけを拘束して島を出ようとする一方,激しくなる噴火の中オーウェン,クレア,フランクリンの必死の脱出行が始まる….4_20190818214801
スペクタクルシーンとアクションシーンの連続,明快な勧善懲悪ストーリーが楽しめる映画.
何と言っても恐竜たちの映像が魅力的,特にブルーの造形が素晴らしい.また,火山島に取り残され,夕日を浴びながら咆吼を続ける首長竜・ブラキオサウルスのシーンが印象的だった(レイ・ブラッドベリの短編「霧笛」を思い出した).3_20190818214801
これに比べると人間の演技はやや類型的.久しぶりに見たジェラルディン・チャップリンに吃驚.
★★★☆(★5個が満点)
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2019/08/13

独断的映画感想文:ニッポニアニッポン フクシマ狂詩曲(ラプソディ)

日記:2019年8月某日
ユジク阿佐谷で映画「ニッポニアニッポン フクシマ狂詩曲(ラプソディ)」を見る.0_20190815171201
2019年.監督:才谷遼.
出演:隆大介,寺田農,デコウトミリ,宝田明,慶徳優菜,柳沢なな,関口晴雄,伊嵜充則,飯田孝男,原知佐子,田村奈巳,桜井浩子,外波山文明,山谷初男.2_20190815171201
3.11から8年経った春.会津若松市役所職員・楠穀平は,原発に隣接する楢穂町役場の特別震災広報課に出向を命じられる.着任した楠は,助役・村井の案内で震災の後や原発事故後の村の様子を視察して廻る.
一方,看護師として小児病棟に勤める楠の娘ハルカは,見えない相手との会話を続ける男の子が気になっている.楠は,村井から近々開催される「原子力研究所副所長就任を祝う会」を成功させるよう指示されるが,その祝う会の大宴会はとんでもない騒ぎとなる….
映画はミュージカル仕立て,合間にアニメ小品が挿入されつつ進行する.4_20190815171201
視察して廻る楠の前には,村の放射能汚染を訴える住民や,シジミチョウの奇形頻度を調べて被爆が世代を超えて遺伝すると主張する学者が現れる一方,震災で滅びた村の祭りの幻影や,挙げ句には村から出征してシベリア抑留で死んだ兵士3人組の亡霊が現れたりする.これらの映像や楠の娘達の近況,突如挿入されるアニメが,脈絡のないスラップスティックコメディとして延々と続くが,特に最後の大宴会のシーンは狂騒的で迫力あり.1_20190815171201
映像を通じて監督が言いたいことは良く分かる.それがストレートに出た大宴会シーンには感動もした.しかし映画の出来全体には共感できない.だいたい自分はミュージカルが嫌いだ.
但し,中盤で楠とハルカが交互に歌う沖縄民謡風のバラードは美しかった.3_20190815171201
ニッポニア・ニッポンはご承知の通り絶滅したニホントキの学名である.なお,本作のトキのアニメキャラクターは,のん(能年玲奈)が作成している.★★★(★5個が満点)
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2019/08/12

番外:独断的歌舞伎感想文 8月納涼歌舞伎1部・2部 伽羅先代萩/闇梅百物語/東海道中膝栗毛

日記:2019年8月某日
「8月納涼歌舞伎 1部・2部」を通しで見る.Kabukiza_201908_hh_67e16dc61932ac1d2447c
第一部:「一、伽羅先代萩(めいぼくせんだいはぎ) 御殿/床下」.出演:乳人政岡(七之助),仁木弾正/八汐(幸四郎),沖の井(児太郎),一子千松(勘太郎),鶴千代(長三郎),小槙(歌女之丞),荒獅子男之助(巳之助),栄御前(扇雀).三世河竹新七 作.「二、闇梅百物語(やみのうめひゃくものがたり)」.出演:骸骨/読売(幸四郎),傘一本足(歌昇),小姓白梅(新悟),河童(種之助),新造(虎之介),籬姫(鶴松),狸/大内義弘(彌十郎),雪女郎(扇雀).
第二部:十返舎一九 原作より.杉原邦生 構成,戸部和久 脚本,石川耕士 脚本・演出,市川猿之助 脚本・演出.「東海道中膝栗毛(とうかいどうちゅうひざくりげ) 松本幸四郎・市川猿之助 宙乗り相勤め申し候」.出演:喜多八/黒船風珍(猿之助),七化けお七(七之助),鎌川霧蔵(中車),貝蔵(巳之助),お富(新悟),兼松(廣太郎),河内屋与三郎(隼人),娘お千代(児太郎),熊木虎右衛門(橋之助),博労安蔵(福之助),猫爪艶之丞(虎之介),森の石松(鷹之資),追分の三五郎(千之助),雲助染松実は伊月梵太郎(染五郎),雲助團市実は五代政之助(團子),飯盛女郎お蔦(鶴松),藪玄磧(弘太郎),船頭寿吉(寿猿),女房おふつ(宗之助),荒海の鰐蔵(錦吾),登喜和屋おかめ(笑三郎),天照大神(笑也),猿田彦/娘義太夫豊竹円昇(猿弥),帆下田の久六(片岡亀蔵),乳母奥の井(門之助),弥次郎兵衛/獅子戸乱武(幸四郎).Senndaihagi
伽羅先代萩は若手中心の配役.七之助初役の政岡をまま炊きの場面から演じるのと,千松と鶴千代を勘九郎の息子兄弟が演じるのが話題.4年前の玉三郎の政岡・菊之助の沖の井が何と言っても良かった.七之助はその玉三郎に比べれば動きはちょっと早い印象はあったが,政岡の情感が伝わってくるすばらしい芝居.
闇梅百物語は妖怪お化けの舞踊芝居.
2部の膝栗毛は,猿之助・幸四郎のシリーズ物.今年は昨年までの荒唐無稽な設定とひと味違い,一応東海道を進む中で歌舞伎定番の舞台のパロディを繰り広げるという趣向.お富・与三郎(与話情浮名横櫛)がとろろ汁まみれの台所で大喧嘩になり(女殺し油地獄)弥次喜多が巻き込まれるシーンや,弥次喜多が雲助に襲われる(鈴ヶ森)シーンなど,抱腹絶倒.七化けお七の七之助が5役しかやっていないじゃないかと弥次喜多に突っ込まれ,1部の政岡と3部の秋空星三郎も勘定に入れるんですとやり返す楽屋落ちもおかしい.歌舞伎らしいコメディで楽しかった.Img_20190812_174847
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2019/07/28

独断的映画感想文:新聞記者

日記:2019年7月某日
UPLINK吉祥寺で映画「新聞記者」を見る.1_20190728203501
2019年.監督:藤井道人.製作:河村光庸.
出演:シム・ウンギョン(吉岡エリカ),松坂桃李(杉原拓海),本田翼(杉原奈津実),岡山天音(倉持大輔),郭智博(関戸保),長田成哉(河合真人),宮野陽名(神崎千佳),高橋努(都築亮一),西田尚美(神崎伸子),高橋和也(神崎俊尚),北村有起哉(陣野和正),田中哲司(多田智也).3_20190728203401
韓国人の母と日本人の父の間に生まれ,アメリカで育った東都新聞記者:吉岡エリカ.父も新聞記者だったが,誤報の責任を取って自殺したとされている.
新聞社に送られてきた匿名の資料は,特区制度を利用して内閣府主導で医療大学を作るという計画.エリカはキャップの陣野の指示で取材を開始する.2_20190728203401
一方内閣調査室に勤める杉原拓海は,外務省出身.上司・神崎は公文書改竄の責任を負って左遷,部下の杉原も内調に異動となった.日々の仕事は,政府に都合の悪い案件へのフェイク情報の素材を作製したり,それをSNS上に流したりする汚れ仕事.
杉原が久しぶりに神崎の誘いで会食した直後,神崎は自殺する.神崎が匿名資料の送り主ではないかとみていたエリカは,葬儀の会場で杉原と出会うが….
東京新聞の望月記者の著作を原案とした映画,原著作は未読.4_20190728203401
キャッチには「内閣官房VS女性記者」「官邸とメディアの裏側を描く」などとあるが,実際には政権の動きは描かれず,その意を酌んだ内調と新聞記者の闘いが主題である.
資料の送り主が誰かという謎解きや,杉原の協力を得て最新資料を取得する場面のサスペンス,自身のキャリアや家族という弱点を突かれ個々に潰されていく官僚の悲哀等は,それなりに見応えあり.
主演の二人は好演,脇を固めた北村有起哉,田中哲司等も良い.エンディングテーマのの「Where have you gone」も美しかった.5_20190728203401
しかし政権への批判的切り口としては,内調レベルの物語ではいささか物足りない.むしろ半世紀程昔の事件でも良いから,(アメリカで)公開された資料に基づき実名を挙げた政治ドラマをしっかり製作した方が,面白いのではないか.
★★★☆(★5個が満点)

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2019/07/21

番外:独断的歌舞伎感想文 7月大歌舞伎夜の部 通し狂言星合世十三團

日記:2019年7月某日
歌舞伎座で「7月大歌舞伎 夜の部」を見る.July_special_poster
竹田出雲 作,三好松洛 作,並木千柳 作,織田紘二 補綴・演出,石川耕士 補綴・演出,川崎哲男 補綴・演出,藤間勘十郎 補綴・演出:「通し狂言星合世十三團(ほしあわせじゅうさんだん). 成田千本桜. 市川海老蔵十三役早替り宙乗り相勤め申し候. 発端 福原平家御殿跡の場.序幕 第一場 大内の場,第二場 堀川御所の場,第三場 同 塀外の場.二幕目 第一場 伏見稲荷鳥居前の場,第二場 渡海屋の場,第三場 同 奥座敷の場,第四場 大物浦の場.三幕目 第一場 北嵯峨庵室の場,第二場 下市村椎の木の場,第三場 同 竹薮小金吾討死の場,第四場 同 釣瓶鮨屋の場.大詰 第一場 吉野山の場 第二場 川連法眼館の場」.
出演:左大臣藤原朝方,卿の君,川越太郎,武蔵坊弁慶,渡海屋銀平実は新中納言知盛,入江丹蔵,主馬小金吾,いがみの権太,鮨屋弥左衛門,弥助実は三位中将維盛,佐藤忠信,佐藤忠信実は源九郎狐 ,横川覚範実は能登守教,以上13役 海老蔵),静御前(雀右衛門),相模五郎(右團次),若葉の内侍/小せん(児太郎),伊勢三郎(男寅),亀井六郎(鷹之資),お里(梅丸),鷲尾十郎(市川福太郎),土佐坊昌俊(新十郎),逸見藤太(猿四郎),横川覚範(新蔵),片岡八郎(廣松),駿河次郎(九團次),猪熊大之進(市蔵),お米(齊入),百姓吾作(家橘),尼妙林(萬次郎),お柳実は典侍の局(魁春),梶原平三景時(左團次),源義経(梅玉).
義経千本桜を通しでやってその間に海老蔵が13役の早替わりをやろうという,海老蔵奮闘の通し狂言.13役の早替わりはめまぐるしく,時には舞台上に3~4人の海老蔵がいることになったりして,なかなか面白い.
通しを夜の部の実質四時間でやるので内容はダイジェスト版,そこかしこに無理もあるのだが,それでも碇知盛の悲劇性や,狐忠信の愛らしさは素敵だった.
特に碇知盛が海に没した後,早替わりの弁慶が六方を踏んで花道を引っ込み,更に再度知盛の亡霊が現れて宙乗りで消えていく場面は秀逸.
鮓屋の権太手負いの場面,大詰め川連法眼館の場での動き回る金襖をかいくぐって4役が争闘するスペクタクルは,共に早替わりの妙味を堪能できる.
最後は劇場を埋め尽くす桜吹雪に圧倒されて劇場を出た.見応え充分である.
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2019/07/15

番外:独断的歌舞伎感想文 国立劇場歌舞伎鑑賞教室 車引/棒しばり

日記:2019年7月某日
国立劇場歌舞伎鑑賞教室「菅原伝授手習鑑 車引」「棒しばり」を見る.20197kabukiomote2-1
竹田出雲・三好松洛・並木千柳=作.「菅原伝授手習鑑 (すがわらでんじゅてならいかがみ) 一幕」.出演:舎人松王丸(尾上松緑),舎人梅王丸(坂東亀蔵),舎人桜丸(坂東新悟),舎人杉王丸(尾上左近),藤原時平(中村松江).岡村柿紅=作.「棒しばり(ぼうしばり) 長唄囃子連中)」.出演:次郎冠者(尾上松緑),太郎冠者(坂東亀蔵),曽根松兵衛(中村松江).
車引は,この様式的荒事が若い出演者では舞台が支配できないのか,いささか退屈,何度か爆睡した.一方棒しばりは松緑・亀蔵の踊りが達者で伸びやか,間断することなく最後まで踊りきって,まことに見応えあり.
公演後のアフタートークもなかなか良い雰囲気で実に楽しかった.終演17時半頃.Img_20190715_172723 Img_20190715_170213

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2019/07/14

番外:独断的歌舞伎感想文 七月大歌舞伎 昼の部 高時/西郷と豚姫/素襖落/外郎売り

日記:2019年7月某日
歌舞伎座で「七月大歌舞伎 昼の部」を見る.Kabukiza201907h_517d6d1345c796d525d57e36
河竹黙阿弥 作.「一、新歌舞伎十八番の内 高時(たかとき)」.出演:北条高時(右團次),愛妾衣笠(児太郎),安達三郎(九團次),渚(梅花),秋田入道(寿猿),大佛陸奥守(市蔵).池田大伍 作,久保田万太郎 演出,今井豊茂 演出.「二、西郷と豚姫(さいごうとぶたひめ)」.出演:お玉(獅童),大久保市助(権十郎),芸妓岸野(児太郎),舞妓雛勇(梅丸),同心新蔵(國矢),同心兵馬(左升),仲居頭おふく(歌女之丞),廻しの男留吉(橘三郎),中村半次郎(歌昇),西郷吉之助(錦之助).福地桜痴 作.「三、新歌舞伎十八番の内 素襖落(すおうおとし)」.出演:太郎冠者(海老蔵),次郎冠者(友右衛門),姫御寮(児太郎),鈍太郎(市蔵),三郎吾(権十郎),大名某(獅童).野口達二 改訂.「四、歌舞伎十八番の内 外郎売(ういろううり) 堀越勸玄早口言立て相勤め申し候」.出演:外郎売実は曽我五郎(海老蔵),貴甘坊(堀越勸玄),小林朝比奈(獅童),小林妹舞鶴(児太郎),遊君亀菊(梅丸),遊君喜瀬川(廣松),梶原平次景高(九團次),茶道珍斎(市蔵),梶原平三景時(家橘),化粧坂少将(雀右衛門),大磯の虎(魁春),工藤祐経(梅玉).
高時は鎌倉幕府最後の執権・高時の物語.高時が,右團次の特有の台詞回しでなかなか似合っているのと,天狗の群舞が舞台を圧するスペクタクルで,面白く見た.
「西郷と豚姫」は,獅童の豚姫が好演.西郷が共に死のうと言ってくれる場面では涙を禁じ得ない.久光公の勘気がとけ西郷が勇躍立っていく別れのシーンも良い.この2編は初見だが印象に残った.
素襖落は海老蔵の踊りで判り易い.
外郎売りは堀越勸玄の独壇場で,この年で本格的な台詞回しで早口言い立てをやってのけるのだから大手柄.1907kabukiza_tokubetsu_uirou_abz 1907kabukiza_tokubetsu_uirou_kag
出ずっぱりの児太郎(愛妾,芸者,姫御寮,舞鶴)もそれぞれに美しく素敵.演目の組み合わせも面白く,楽しい昼の部だった.

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2019/07/10

独断的映画感想文:カメラを止めるな

日記:2019年7月某日
映画「カメラを止めるな」を見る.
2017年.監督・脚本:上田慎一郎.1_20190710220501
出演:濱津隆之(日暮隆之),真魚(日暮真央),しゅはまはるみ(日暮晴美),長屋和彰(神谷和明),秋山ゆずき(松本逢花).
映画の冒頭から始まる37分間のノンストップノーカットの映像.山奥の廃墟でゾンビ映画を撮っている撮影隊,撮影中本物のゾンビが現れてスタッフは次々にゾンビ化,現場は大混乱に陥るが,監督は本当の映像が撮れるとばかりに撮影を続行する.やがて殆どのスタッフが死に絶え,呪いの五芒星の中央で立ちすくむヒロインの姿で映像は終わる….3_20190710220501
この後から始まる1ヶ月前の出来事,日暮は「早い,安い,そこそこ」を売りとする映像作家.新しく立ち上がったゾンビ専門チャンネルから,開局記念にノーカット生放送のゾンビドラマの作成を依頼される.この無茶苦茶な依頼を引き受けた日暮だが,集まってきたのは癖のあるキャスト・スタッフばかり,元女優の妻・監督志望の娘が心配するなか,遂に撮影当日が来る….2_20190710220501
この映画はゾンビ映画の形態を取っているが,実際はミステリーである.
3部構成となっていて,第1部最初の37分間はミステリで言えば「犯罪」の提示である.第2部は展開部で,登場人物それぞれの紹介がここで行われる.第3部は放映当日の現場の状況を描く映像で,第1部で提示された「犯罪」の解決編にあたる.
即ち,第1部で示されたいささか変な構成や違和感ある展開と,全体としてはB級映画のチープ感あふれる映像が,第3部ではどのようなスタッフの離れ業で提供されたかが明らかにされる.
この様に観客の期待を裏切る映画も希有であろう.5_20190710220501
つまりチープなB級作品と思えた映像は,最終的には提示された伏線を全て解決し,しかも映画というものの本来の魅力を観客の心にしっかり焼き付けるからだ.大笑いしながら解決編を見ていた観客は,ラストシーンで折り重なったキャスト・スタッフの一群のシーンを見たとき,大きな感動を覚えるであろう.4_20190710220501
映画への熱い想いを共有できるという点でも希有な映画,一見の価値あり.
★★★★(★5個が満点)
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2019/07/05

独断的映画感想文:ミッション:インポッシブル/フォールアウト

日記:2019年7月某日
映画「ミッション:インポッシブル/フォールアウト」を見る.1_20190709164401
2018年.監督:クリストファー・マッカリー.
出演:トム・クルーズ(イーサン・ハント),ヘンリー・カヴィル(オーガスト・ウォーカー),ヴィング・レイムス(ルーサー・スティッケル),サイモン・ペッグ(ベンジー・ダン),レベッカ・ファーガソン(イルサ・ファウスト),ショーン・ハリス(ソロモン・レーン),アンジェラ・バセット(エリカ・スローン),ヴァネッサ・カービー(ホワイト・ウィドウ),ミシェル・モナハン(ジュリア),アレック・ボールドウィン(アラン・ハンリー),ウェス・ベントリー(パトリック),フレデリック・シュミット(ゾラ).2_20190709164401
人気シリーズの第6作.
愛妻ジュリアとの結婚式に犯罪組織「シンジケート」のボス:レーンが現れる悪夢から目覚めたIMFエージェントのイーサン・ハント,盗まれた3個のプルトニウム爆弾奪回のためベルリンに飛ぶ.マフィアからこの爆弾を買い取る受け渡し現場で,「シンジケート」の残党アポストルに襲われたハントは,同僚ルーサーを救っている間に爆弾を奪われてしまう.
IMFに不信感を持ったCIA長官は介入し,部下のウォーカーにハントと共同行動を取るように命じる.2人はパリのパーティー会場で謎の男ラークがホワイト・ウィドウと名乗るブローカーから爆弾を買い取るとの情報を得,その会場に潜入,ラークを補足するが逆襲される.間一髪MI6のルイサがハントを救うが,ラークは射殺される.5_20190709164401
止むなくラークになりすましたハントはウィドウと接触し契約に成功,手付けに爆弾1個を回収するが,あと2個の引き渡しは捕縛されているレーンを脱獄させることが条件となる.ハントは奇策を使って誰も殺さずにレーンの奪取に成功するが,合流してきたIMF長官ハンリーから,CIAはハントこそがジョン・ラークであると疑い証拠も掴んでいるという話を聞く….3_20190709164401
アクションに次ぐアクション,謀略に次ぐ謀略,どんでん返しの連続と,147分の長尺終わる頃には最初のエピソードはもう飛んでいる.
後から考えるとこのエピソードは伏線として生きていないんじゃないかとか,何故このアクションをする必然があったのかとかいう話だらけだが,映画見ている間はもう夢中,そんなことに気付くどころじゃありません.最後までトム・クルーズに持って行かれます.とにかく映画とアクションに賭けるトム・クルーズの執念にはひれ伏すしかない.
でも脚本はもうちょっと整理できなかったかな.最後には誰が敵か味方かすら分からなくなった.エピローグでのジュリアとルイサのエピソードが良かったけど.7_20190709164401 6_20190709164401
★★★☆(★5個が満点).
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2019/07/02

番外:独断的歌舞伎感想文 巡業東コース松竹大歌舞伎 引き窓/かさね

日記:2019年7月某日
北とぴあで巡業東コース松竹大歌舞伎を見る.Jungyo_h_f537663a062c478a4711ec18e708c00
「一、二代目松本白鸚,十代目松本幸四郎 襲名披露 口上(こうじょう)」.幸四郎改め松本白鸚,染五郎改め松本四郎,幹部俳優出演.「二、双蝶々曲輪日記 引窓(ひきまど)」.出演:南与兵衛後に南方十次兵衛(染五郎改め松本幸四郎),女房お早(市川高麗蔵),三原伝造(大谷廣太郎),母お幸(松本幸雀),平岡丹平(松本錦吾),濡髪長五郎(幸四郎改め松本白鸚).「三、色彩間苅豆(いろもようちょっとかりまめ)かさね」.出演:かさね(市川猿之助),与右衛門(染五郎改め松本幸四郎).
白鸚・幸四郎の襲名興行もこれが最終か.口上もすっかりくつろいだ調子で,「ご当地王子の皆様」を持ち上げ楽しい雰囲気.引き窓は親子共演,かさねは同世代共演で,どちらも見応えあり.特に猿之助・幸四郎のかさねは,美しい男女の色模様から凄惨な殺しのシーンまで,息のあった踊りで素敵だった.
ところで両狂言とも,花道からむしろにくるまって主人公が出てくるという出だしで始まる.片方は白鸚(濡髪)で,片方は幸四郎(与右衛門).これもなんだか可笑しい.
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2019/06/25

独断的映画感想文:友罪

日記:2019年6月25日
映画「友罪」を見る.
2018年.監督・脚本:瀬々敬久.0_20190626215401
1_20190626215401
出演:益田純一(生田斗真),鈴木秀人 / 青柳健太郎(瑛太),藤沢美代子(夏帆),杉本清美(山本美月),白石弥生(富田靖子),清水(奥野瑛太),内海(飯田芳),川島社長(小市慢太郎),村上院長(矢島健一),バーテン・小杉(青木崇高),唐木達也(忍成修吾),山内智子(西田尚美),飯島武士(村上淳),飯島麻奈美(片岡礼子),山内正人(石田法嗣),千尋(北浦愛),桜井さちこ(坂井真紀),須藤編集長(古舘寛治),白石唯(蒔田彩珠),篠塚朝子(渡辺真起子),篠塚(光石研(特別出演)),山内修司(佐藤浩市).2_20190626215401
埼玉県のとある町工場,鈴木と益田が見習採用される.二人とも先輩の清水と内海の住む独身寮に住むことになる.
益田は工場勤務は初めて,元は週刊誌の記者だった.鈴木は資格も持ち工場勤めには馴れている風だったが,殆ど誰とも話さず心も開かない.折りしも近くの街で小学生が殺される事件が起こる.ネットには,犯人はかって小学生連続殺人事件を起こした青柳ではないかとの噂が載り,益田は元妻で週刊誌記者の清美からその情報を得る.3_20190626215401
益田はかって自身が担当した青柳の事件の資料から,青柳は鈴木ではないかとの疑いを抱く.一方鈴木は,男に絡まれていた美代子を助け,付き合うようになる.同じ街のタクシー運転手・山内は,息子がかって無免許運転で3人を死亡させる事故を起こした事件の重荷を背負って生きている.かって少年院で青柳を担当していた白石弥生は,退院以来行方が分からなかった青柳から,会いたいとの連絡を受ける….
益田,鈴木(青柳),美代子,山内,白石がそれぞれ抱える問題を交錯させながら,贖罪・更正・家族というキーワードに沿って展開する群像劇.シリアスなテーマを扱っている力作,緊張感高く間断することのない展開は見応え充分.
但し群像劇としてはバランスが偏っていて,白石弥生と娘のエピソードは全体のテーマに沿ってはいるが蛇足の感を免れ得ない.またエピローグで各エピソードがそれなりの落着となる予兆が示されるが,それまでの悲惨で救いのない物語は,なかなか辛いものがある.4_20190626215401
俳優では瑛太がこの人にしかできない怪演,生田斗真も熱演している.脇を固める俳優達もベテラン揃いで,安心してドラマを追うことができる.
★★★☆(★5個が満点)
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2019/06/23

番外:独断的歌舞伎感想文:6月大歌舞伎 昼の部 壽式三番叟/女車引/石切梶原/封印切り

日記:2019年6月某日
歌舞伎座で「6月大歌舞伎 昼の部」を見る.Kabukiza_1906_h_078892e47b8b1d9b7fb605e2
「一、寿式三番叟(ことぶきしきさんばそう) 松本幸四郎・尾上松也 三番叟相勤め申し候」.出演:三番叟(幸四郎),三番叟(松也),千歳(松江),翁(東蔵).「二、女車引(おんなくるまびき)」.出演:千代(魁春),八重(児太郎),春(雀右衛門).「三、梶原平三誉石切(かじわらへいぞうほまれのいしきり) 鶴ヶ岡八幡社頭の場」.出演:梶原平三景時(吉右衛門),大庭三郎(又五郎),俣野五郎(歌昇),梢(米吉),大名山口十郎(桂三),同 川島八平(松江),同 岡崎将監(種之助),同 森村兵衛(鷹之資),囚人剣菱呑助(吉之丞),奴萬平(錦之助),青貝師六郎太夫(歌六).「四、恋飛脚大和往来(こいびきゃくやまとおうらい) 封印切」.出演:亀屋忠兵衛(仁左衛門),傾城梅川(孝太郎),丹波屋八右衛門(愛之助),阿波の大尽(由次郎),槌屋治右衛門(彌十郎),井筒屋おえん(秀太郎).
式三番叟は男性の,女車引は女性のそれぞれ短い踊り.松也・幸四郎の三番叟が豪快で素晴らしい.
石切梶原は吉右衛門の定番を堪能,俣野五郎をピシッと決めつける貫禄や,六郎太夫・梢親子に対する情愛など,いちいち決まるべきところが決まって気持ちが良い.
仁左衛門の封印義理は東京では30年ぶりの出演だそうで,無論見るのは初めて.忠兵衛のおかしみに満ちた登場シーンから,八右衛門の執拗な挑発に耐えかねて封印切りに至る場面まで,目が離せない.静まりかえった場内に忠兵衛の懐から落ちる小判の音が響く,緊張感に溢れたシーンが素敵.見応えある昼の部だった.

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2019/06/18

独断的映画感想文:ちはやふる 結び

日記:2019年6月某日
映画「ちはやふる 結び」を見る.1_20190625115901
2018年.監督:小泉徳宏.
出演:広瀬すず(綾瀬千早),野村周平(真島太一),真剣佑(綿谷新),上白石萌音(大江奏),矢本悠馬(西田優征),森永悠希(駒野勉),清水尋也(須藤暁人),優希美青(花野菫),佐野勇斗(筑波秋博),清原果耶(我妻伊織),松岡茉優(若宮詩暢),賀来賢人(周防久志),松田美由紀(宮内妙子),國村隼(原田秀雄).4_20190625115901
瑞澤高校カルタ部は強豪校ながら部員は高3のみ,千早,太一等は新入生獲得に奔走する.しかし入部した筑波は実力ありながら人と折り合えない性格,菫は周平に憧れただけの経験ゼロ.
新入生指導に悪戦苦闘しながら辛くも都大会を突破した瑞澤高校.しかし太一は進学のため部を辞める.一方太一,千早の幼馴染み新は,千早達と戦うべくカルタ部を立ち上げ,全国大会に乗り込んできた.太一を魅了する名人・周防と最年少クィーン・詩暢も絡みながら始まる全国大会….5_20190625115901
カルタという分野の部活青春映画.部活青春映画は侮れない.3_20190625115901
しかも汗臭い男子だらけの野球なんぞと違って,カルタ部は男女混合.幼馴染み,高校,カルタ部,闘い,恋心というキーワードが映画を飛び交って,目が眩むようだ.原作が良く出来ているのだろうが,百人一首に関する知識の注入や,カルタ競技の紹介,カルタ部の練習風景等がバランス良く描かれ,その中で進行する千早達のドラマが程よい緊張感で進行する.
最終局面,全国大会での戦いの結末には感動した.エンタテインメントとして上質な映画,俳優では広瀬すず,松岡茉優が素晴らしい.2_20190625115901
★★★☆(★5個が満点)
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2019/06/16

番外:独断的歌舞伎感想文 歌舞伎鑑賞教室「神霊矢口渡」

日記:2019年6月某日
歌舞伎鑑賞教室「神霊矢口渡」を見る.201906kabukikanshoukyoushituomote
福内鬼外(平賀源内)作.「神霊矢口渡 (しんれいやぐちのわたし)  一幕 国立劇場美術係=美術 頓兵衛住家の場」.主な配役:渡し守頓兵衛(中村鴈治郎),娘お舟(中村壱太郎),船頭八助(中村寿治郎),傾城うてな(上村吉太朗),新田義峰(中村虎之介),下男六蔵(中村亀鶴).
神霊矢口渡の頓兵衛・お舟は,以前歌六・芝雀,橋吾・柴のぶで見た.今回は鴈治郎・壱太郎.
今回の趣向である人形振りは,無表情にきっと正面を向いた壱太郎の顔が情念を湛え,まことに魅力的.ここからクライマックスまで魅了された.
解説・歌舞伎のみかたは中村虎之助担当.Img_20190616_145429_burst001_cover

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2019/06/11

独断的映画感想文:誰もがそれを知っている

日記:2019年6月某日
ヒューマントラストシネマ有楽町で映画「誰もがそれを知っている」を見る.1_20
2018年.監督:アスガー・ファルハディ.
出演:ハビエル・バルデム(パコ),ペネロペ・クルス(ラウラ),リカルド・ダリン(アレハンドロ),エドゥアルド・フェルナンデス(フェルナンド),バルバラ・レニー(ベア),インマ・クエスタ(アナ),エルビラ・ミンゲス(マリアナ),ラモン・バレア(アントニオ),カルラ・カンプラ(イレーネ),サラ・サラモ(ロシオ).4_17
妹アナの結婚式に,アルゼンチンに住んでいる姉ラウラが娘・イレーネ,その弟・ディアゴと共にスペインの実家に帰ってくる.かっての恋人パコと再会するが,パコはラウラから買い取った土地を立派なワイン農場に育て上げ,美しい妻と共に暮らしている.
結婚式の晩,16歳のイレーネは奔放にはしゃぎ廻っていたが,急に眠くなったと言って寝室で休むことに.その後雨の中停電が起こるが,パコが自家発電装置を担ぎ込んで披露宴は無事終わる.ところがそのさなかにイレーネは寝室から忽然と姿を消す.更にラウラの携帯に犯人からの脅迫が届き,ベッドには近年の少女誘拐殺人事件の切り抜きが置かれていた.6_8
ラウラは警察に通報する決断がつかず,アルゼンチンから急遽夫・アレハンドロがやって来る.犯人からは続いて巨額の身代金の要求が届く.パコは時間稼ぎのため,自身の農場を売る商談を共同経営者に持ちかけるが,ラウラは現実にパコ以外に金を出せる者はいない状況に,ある決意をする….5_13  
思いがけない誘拐事件に直面した家族の状況.
父アントニオは博打で失敗し,土地をかっての使用人に売る羽目になったらしい.パコも元来はアントニオの使用人の息子だった.兄フェルナンドは店を開いているが,ローンを抱えて苦しい家計.アレハンドロは実業家と称しているが,この2年間失業している.何故同じ部屋にいた幼児ディアゴではなく,イレーネが誘拐されたのか.映画はこの様な事情を次々に明らかにし,物語は重苦しい緊張感の中進行する.3_17  
俳優はいずれも良いが,ハビエル・バルデム,ペネロペ・クルス,リカルド・ダリンの3名が圧倒的な存在感.ハビエル・バルデムは思わぬ運命に直面した男の苦悩を淡々と演じる.映画の題名は,登場人物の最大の秘密を,当事者以外のみんなが知っているという皮肉な状況を指している.ラストシーンで,かすかに微笑んで横たわるパコのシーンが印象的だ.
映像も美しい重厚なドラマ,一見の価値あり.
★★★★(★5個が満点)
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2019/06/07

独断的映画感想文:ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男

日記:2019年6月某日
映画「ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男」を見る.1_19
2017年.監督:ジョー・ライト.
出演:ゲイリー・オールドマン(ウィンストン・チャーチル),クリスティン・スコット・トーマス(クレメンティーン・チャーチル),リリー・ジェームズ(エリザベス・レイトン),スティーヴン・ディレイン(ハリファックス子爵),ロナルド・ピックアップ(ネヴィル・チェンバレン),ベン・メンデルソーン(国王ジョージ6世).3_16
多少ネタバレがあります,注意.
1940年5月10日,ナチスドイツに対する北欧での闘いで劣勢となり支持を失った英首相・チェンバレンは,後任の首相にチャーチルを指名する.チャーチルは労働党も参加する5名からなる戦時内閣を組織,しかし保守党から参加のチェンバレン,ハリファクスはいずれも,対独徹底抗戦を主張するチャーチルに反対していた.
この日ドイツはオランダ・ベルギーに侵攻,ついでフランス国境を突破する.チャーチルは国会とラジオ演説で,対仏支援を行い勝利を目指すことを強調するが,日を追って戦況は悪化,フランス派遣の英国部隊40万はダンケルクに追い詰められる.チャーチルはダンケルクを支援するため,カレーの守備隊4000人に徹底抗戦を命令すると同時に,ダンケルクの将兵の撤退を模索するが,ドイツ制空権下の救出作戦の目途は立たない.2_18
ここに至ってドイツの英国侵攻の怖れが強まり,国王のカナダ亡命が計画される事態となる.ハリファクスは対独和平交渉の採用をチャーチルに迫り,遂にチャーチルはハリファクスに交渉仲介国イタリアとの接触を認めるが….4_16  
1940年5月9日から5月27日に至る,チャーチルの活動を追った伝記ドラマ.英国とチャーチルがぎりぎりまで追い詰められたこの時(原題はDARKEST HOUR),チャーチルが如何に勇気を奮い起こし自信を回復することができたか,を記述する.
チャーチルを演じたゲイリー・オールドマンが素晴らしい.辻一弘がアカデミー賞を獲得した特殊メイクで全く相貌の変わったオールドマンが,チャーチルの変転する心理を演じて見応えあり.またチャーチルを叱咤激励する夫人・クレメンティンを演じたクリスティン・スコット・トーマスも存在感があって素敵.5_12
チャーチルの矛盾に満ちた人物像は面白いが,彼が地下鉄で人々と意見を交わすという筋書は,いささか嘘くさかった.但し,戦時内閣で孤立したチャーチルが,閣外閣僚と議会を相手に熱弁をふるい圧倒的支持を獲得するラストシーンは迫力あり.見て損はない.
★★★★(★5個が満点)
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2019/06/04

独断的映画感想文:主戦場

日記:2019年6月某日
渋谷のシアター・イメージフォーラムで映画「主戦場」を見る.1_18

2018年.監督・製作・脚本・撮影・編集・ナレーション:ミキ・デザキ.製作:モモコ・ハタ.音楽:マサタカ・オダカ.
ユーチューバー出身の監督が,日韓のみならずアメリカをも巻き込んで進む慰安婦問題の論争を描く,長編ドキュメンタリー.登場人物は日本の右派・左派(こういう言い方は好きではないが,この映画の扱いに沿って便宜的にこう呼ぶ)の各論客・運動家・元日本軍兵士,韓国の元慰安婦の娘・支援者・学者,アメリカの元慰安婦支援者・その反対派等々.
こういう人々へのインタビューと街頭インタビューやニュース映像,新聞や公文書のコピーが軽快なテンポで次々に画面に映し出される.映画は監督が当初抱いた疑問に沿って,元在特会の山本優美子氏のインタビューからスタート,その主張の展開や反対派側からの反論という具合に,次はそこが知りたいというポイントが小気味良く映像として現れる.
監督は最終的にはこの問題が,安倍政権とその背後にある日本会議に関わることを示唆して映画を終え,自身の懸念するところを明らかにする.そういう意味ではこの映画は「公平な立場」という立ち位置にないことはあきらかだ.3_15

この映画については,5月30日に右派論客7名(櫻井よしこ氏,ケント・ギルバート氏,トニー・マラーノ氏,加瀬英明氏,山本優美子氏,藤岡信勝氏,藤木俊一氏)が抗議声明を出すといった「場外乱闘」の状況が発生しているが,右派論客の主張のみが揶揄されたり切り取りされたりといった印象は基本的にない.4_15
慰安婦問題は重大な問題であると同時に,極めて政治的であり,感情を伴うものであり,倫理と差別とに関わる問題である.そのことはこの映画のインタビューを通じ自ずから明らかになる.この映画の魅力は,そういう力を持ったドキュメントであることに尽きるであろう.単調だが力強い音楽も素晴らしい.ドキュメント映画として充分な見応えあり. 
★★★★(★5個が満点).
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2019/05/25

独断的映画感想文:のみとり侍

日記:2019年5月某日
映画「のみとり侍」を見る.1_17
2018年.監督:鶴橋康夫.
出演:阿部寛(小林寛之進),寺島しのぶ(おみね/千鶴),豊川悦司(清兵衛),斎藤工(佐伯友之介),前田敦子(おちえ),風間杜夫(甚兵衛),大竹しのぶ(お鈴),松重豊(牧野備前守忠精),桂文枝(田沼意次).2_16
徳川家治の治世,田沼意次が老中を務めた時代.長岡藩の勘定方吟味役・寛之進は,和歌の会で藩主・牧野備前守忠精の作が良寛の和歌とそっくりと指摘したため逆鱗に触れ,禄を失いのみとり侍に左遷されてしまう.
止むなく猫の蚤とりの親方・甚兵衛のもとに転げ込むが,曰くありげな寛之進を仇討ちのため身をやつす浪人と勝手に勘違いした甚兵衛夫妻は,のみとりの初歩から手ほどきし長屋の世話もしてくれる.3_14
のみとりの実態は女性に買われる“添寝業”だった.初日に声をかけてきた女性おみねは,亡妻・千鶴に瓜二つの囲われもの,しかしおみねに「下手くそ」と罵倒された寛之進はすっかり自信を失ってしまう.4_14
一方街で寛之進に助けられた清兵衛は,恐妻家の浮気者.清兵衛が浮気の手助けを頼んできたのに対し,寛之進は愛の手管を教えてもらおうとするが….
何とも奇妙な設定の時代劇コメディ.実力派の俳優達が真面目に取り組んでいる前半は見応えあり.清兵衛と愛人や寛之進とおみねの濡れ場も,おおらかで美しい.まあ寛之進がこの稼業に真面目に取り組んで,成果を出してしまう辺りがおかしいし,寛之進を買う山村紅葉のシーン等面白い場面もあった.5_11
ただ,終盤に向けて大団円に雪崩れ込んでいく筋書は,何とも御都合主義の平凡な展開で,いささかがっかり.後半はやや腰砕けの感がありました.
★★★(★5個が満点)
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2019/05/21

独断的映画感想文:パターソン

日記:2019年5月某日
映画「パターソン」を見る.1_16
2016年.監督:ジム・ジャームッシュ.
出演:アダム・ドライヴァー(パターソン),ゴルシフテ・ファラハニ(ローラ),バリー・シャバカ・ヘンリー (ドク),クリフ・スミス(メソッド・マン),チェイセン・ハーモン(マリー),ウィリアム・ジャクソン・ハーパー(エヴェレット),永瀬正敏(日本の詩人),ネリ(マーヴィン).2_15
ニュージャージー州パターソン市に住む市と同名のパターソンは,市バスの運転手.小さな家に恋人ローラと愛犬マーヴィンと暮らしている.
目覚ましが無くても6時過ぎには起きるパターソン,ローラはその朝見た夢を呟いてまた寝てしまう.パターソンは一人でシリアルの朝食を食べ,ローラの作っておいた弁当を持って出勤し,一日中バスを運転する.今朝はローラが双子を授かった夢を見たと言ったので,街は双子だらけの様に見える.仕事が終わって帰宅後は,マーヴィンを連れて散歩に出るが,途中でマーヴィンを待たせ,バーでビールを飲むのが日課.3_13
一方ローラは白と黒を基調としたアートで家中を飾る.ローラの夢は白と黒に塗ったギターを持って歌手デビューすることだ.一方パターソンは秘密のノートに毎日できた詩を書き付けている.ローラは詩のコピーを取り,詩人としてデビューする様説得するのだが….5_10
映画は特にドラマチックなことが起きる訳でもなく,控えめなユーモアと日常的な事件の積み重ねで進行する.主人公ら3人に加え,バーの常連の双子サムとデイブや,バーを仕切っているが奥さんには全く頭の上がらないドク,バーでしょっちゅう別れ話で喧嘩しているマリーとエヴェレット等,登場人物が面白い.
詩人パターソンが書き付ける詩もなかなかに素敵.
特筆すべきはブルドッグのマーヴィンを演じたネリで,達者な演技で2016年のカンヌ映画祭パルムドッグ賞を受賞した.惜しくも彼女は同年癌で死去し,映画は彼女に捧げられている.4_13
映画はパターソンの日常を描写していくが,パターソンの詩の朗読によって,描かれる街が様々な断面を示していく点が,この映画の面白さ.映画らしい映画である.
★★★☆(★5個が満点).
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2019/05/18

独断的映画感想文:女神の見えざる手

日記:2019年5月某日
映画「女神の見えざる手」を見る.1_15
2016年.監督:ジョン・マッデン.
出演:ジェシカ・チャステイン(エリザベス・スローン),マーク・ストロング(ロドルフォ・シュミット),ググ・ンバータ=ロー(エズメ・マヌチャリアン),アリソン・ピル(ジェーン・モロイ),マイケル・スタールバーグ(パット・コナーズ),ジェイク・レイシー(フォード),サム・ウォーターストン(ジョージ・デュポン),ジョン・リスゴー(スパーリング上院議員),デヴィッド・ウィルソン・バーンズ(ダニエル・ポスナー).5_9
大手ロビー会社「コール=クラヴィッツ&W」に働くスローンは,数々の実績を挙げてきた凄腕のロビイスト.ある日銃擁護団体から,新しい銃規制法案成立阻止の依頼を受ける.
ところがスローンはこれを拒否,自分の部下を率いて新興ロビー会社のシュミットのもとに移籍する.しかし彼女の右腕ジェーンだけは移籍に加わらなかった.
スローンは戦略的な活動を実施,劣勢だった銃規制派は急速に盛り返す.更にスローンはこれまで議論の圏外に居た女性票を狙い,女性ボランティア団体を組織して膨大な献金を確保すると共に,スタッフのエズメが銃による殺人の遺児であることを公にしてキャンペーンを張る.3_12
ところがエズメが暴漢の襲撃を受け,銃を正規に所持していた市民に暴漢が射殺されると,銃擁護団体は一気に反撃に出る.更に彼等はスローン個人を焦点に,スローンの過去のロビー活動の違法性を公聴会で審問する準備を整えた….4_12
法案成立か阻止かを巡るロビイスト達の,合法非合法織り交ぜた熾烈な闘いを描くポリティカルサスペンス.終盤,スローンの個人攻撃に焦点を絞った銃擁護派は,スローンの過去の活動の違法行為の証拠をジェーンの協力で押さえ,いよいよ公聴会の最終日となる.2_14
スローンの公聴会に衆目が集まり,銃規制法案の行方には既に誰も関心を持たない.この状況からスローンは如何に脱出し,更に巻き返しを図ることが可能か?このあとのスローンの捨て身の反撃がこの映画の醍醐味.
ポリティカルサスペンスとは言え,殆ど正統派ミステリーに近いどんでん返しである.映像も青に偏った色調で緊張感ある画面を維持し,まことに魅力的.出演者の早口の情報のやり取りについていくのは大変だが,見応えある映画.
★★★★(★5個が満点)
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2019/05/17

独断的映画感想文:ガルヴェストン

日記:2019年5月某日
新宿のシネマカリテで映画「ガルヴェストン」を見る.1_14
2018年.監督:メラニー・ロラン.
出演:ベン・フォスター(ロイ),エル・ファニング(ロッキー),ロバート・アラマヨ(トレイ),マリア・バルベルデ(カルメン),CK・マクファーランド(ナンシー),ボー・ブリッジス(スタン).5_8
故郷を捨て裏社会で生きてきたロイがその日,ボスの勧めで行った病院で見せられたのは,まるで雪が舞うように白くモヤがかかった自分の肺のレントゲン写真だった.命の終りが近いことを悟った彼は「どうせクソみたいな人生だ.死ぬならそれも仕方ない」そう自分に言い聞かせる.だが死への恐怖は彼を追い込み,苛立たせてゆく.
その夜いつものようにボスに命じられるまま向かった“仕事先”で,ロイは突然何者かに襲われる.組織に切り捨てられたことを知った彼は,とっさに相手を撃ち殺し,その場に囚われていた若い女を連れて逃亡する.彼女の名前はロッキー.家をとびだし,行くあてもなく身体を売って生活していたという.組織は確実に2人を追ってくるだろう.全てを失い孤独な平穏を願いながらも女を見捨てることのできないロイと,他に頼る者もなく孤独な未来を恐れるロッキー.傷だらけの2人の,果てなき逃避行が幕を開ける(公式サイトのストーリー).4_11
映画の冒頭は1988年ハリケーン下のニューオーリンズ.逃亡先に選んだのはそこから西へ600キロ程離れたガルヴェストン,ヒューストンの沖に浮かぶ島の街だ.
ところがロッキーはその手前のオレンジ郡で自宅に立ち寄る様ロイに依頼,継父を撃って幼い妹を連れ飛び出してくる.いずれも追われる身となった2人は,ガルヴェストンのモーテルでようやく落ち着いた日々を迎えるが….
希望と絶望,諦念に彩られた2人の僅かなやすらぎの日々.観客はしかしこの物語の結末がどうなるか,息を呑んで見守っている.
悲劇的な展開は予想通り,しかし2つのどんでん返しが映画の最後に控えていた.20年後再びハリケーンに見舞われるニューオーリンズ,哀切だが癒されるエピローグが印象に残る.6_5
主演二人が素晴らしい.ベン・フォスターはいかにもやくざな暮らしをしてきた男らしく,しかし死を前に悪ぶらないロイを好演.エル・ファニングは希望と絶望に翻弄される若いロッキーを,透明感ある美貌で演じる.モーテルの女主人のCK・マクファーランドも素敵.
監督は「イングロリアス・バスターズ」,「オーケストラ!」のヒロインを演じたメラニー・ロラン.才女ですな.
★★★★(★5個が満点)

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2019/05/11

番外:独断的歌舞伎感想文 團菊祭5月大歌舞伎 夜の部 鶴寿千歳/絵本牛若丸/京鹿子娘道成寺/御所五郎蔵

日記:2019年5月某日
歌舞伎座で「團菊祭5月大歌舞伎 夜の部」を見る.Img_2895
岡鬼太郎 作.「一、鶴寿千歳(かくじゅせんざい)」.出演:雌鶴(時蔵),雄鶴(松緑).
村上元三 脚本,今井豊茂 補綴.「二、絵本牛若丸(えほんうしわかまる) 七代目尾上丑之助初舞台」.出演:牛若丸(初舞台丑之助),御厩鬼三太(菊之助),鬼一法眼(吉右衛門),吉岡鬼次郎(菊五郎),左團次,片岡亀蔵,時蔵,雀右衛門,松緑,海老蔵,菊五郎劇団出演.
「三、京鹿子娘道成寺(きょうがのこむすめどうじょうじ) 道行より鐘入りまで」.出演:白拍子花子(菊之助).
河竹黙阿弥作.「四、曽我綉俠御所染(そがもようたてしのごしょぞめ) 御所五郎蔵」.出演:御所五郎蔵(松也),傾城皐月(梅枝),傾城逢州(尾上右近),星影土右衛門(彦三郎).
鶴寿千歳は昭和天皇即位を祝った舞踊の再演.
絵本牛若丸は,菊五郎劇団の御曹司の襲名初舞台とあって,父親はもとより祖父2名もにこやかに出張って,微笑ましい舞台.丑之助は5歳ながら殺陣や六方をこなして将来が楽しみ.といってもこの子が成人したときはこちらは83,4だもんな.Img_2894
娘道成寺は菊之助が大曲を艶やかに美しく踊り,満喫した.所化が若手御曹司達で,こちらの品定めも面白い.
御所五郎蔵は,若手中心.五郎蔵の松也が役に合って共感できる.仁左衛門で以前見たときはそのあまりの格好良さに引き込まれたが,松也は悲愴美が前面に出て印象的だった.梅枝の皐月,右近の逢州も素敵.見応えある狂言であった.

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2019/05/05

番外:独断的歌舞伎感想文 團菊祭5月大歌舞伎 昼の部 寿曽我対面/勧進帳/め組の喧嘩

日記:2019年5月5日
「團菊祭5月大歌舞伎 昼の部」を見る.Kabukiza1905h_3eef5efbd78ed4c7e2b90f585b
「一、寿曽我対面(ことぶきそがのたいめん)」.出演:工藤祐経(松緑),曽我十郎(梅枝),曽我五郎(萬太郎),大磯の虎(尾上右近),化粧坂少将(米吉),小林朝比奈(歌昇),鬼王新左衛門(坂東亀蔵).
「二、歌舞伎十八番の内 勧進帳(かんじんちょう)」.出演:武蔵坊弁慶(海老蔵),源義経(菊之助),亀井六郎(右團次),片岡八郎(九團次),駿河次郎(廣松),常陸坊海尊(市蔵),富樫左衛門(松緑).竹柴其水 作.
「三、神明恵和合取組(かみのめぐみわごうのとりくみ) め組の喧嘩:品川島崎楼より 神明末社裏まで」.出演:め組辰五郎(菊五郎),女房お仲(時蔵),尾花屋女房おくら(雀右衛門),柴井町藤松(菊之助),おもちゃの文次(彦三郎),御輿岳芳五郎(片岡亀蔵),宇田川町長次郎(権十郎),島崎楼女将おなみ(萬次郎),露月町亀右衛門(團蔵),九竜山浪右衛門(又五郎),焚出し喜三郎(歌六),江戸座喜太郎(楽善),四ツ車大八(左團次).
寿曽我対面は若々しい配役で,梅枝・萬太郎の萬屋兄弟が十郎・五郎.右近・米吉の女形も美しい.
勧進帳は海老蔵・菊之助の弁慶・義経で幕見は立ち見が出る人気,松緑の富樫も良かった.
め組の喧嘩は自分の苦手な演目である.そもそも当の喧嘩が,仕返しをしなけりゃ男が廃るという程の事情は全く見当たらない.それを組中でいきり立って女房・息子までが煽り立て,私事の喧嘩に鳶口や果ては纏まで持ち出し,挙げ句に半鐘まで鳴らす.沙汰の限りである.要するに作者も観客も喧嘩が死ぬ程好きだったというだけのこと.しかしいざ喧嘩ということになって,皆で水杯を交わし押し出すとなると,つい舞台に引き込まれてしまう.右近・左近が生きの良い演技を見せて印象的.亀三郎の子役が達者で感心した.

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2019/05/04

独断的映画感想文:ふきげんな過去

日記:2019年5月某日
映画「ふきげんな過去」を見る.2_12
2016年.監督:前田司郎.
出演:小泉今日子(未来子),二階堂ふみ(果子),高良健吾(康則),山田望叶(カナ),兵藤公美(サトエ),梅沢昌代(サチ),板尾創路(タイチ).
果子は不機嫌な日常を過ごす高校生.今日も「海苔の本田屋の嫁」が子供をワニに喰われたと主張する運河を眺め暮らす.母サトエは年の離れた新生児の妹を育てているが,未だ名前すらつけていない.父は右手の指2本が欠損していて,無為な生活を過ごしている.1_13
一家は「エジプト風マメ料理」の飲み屋を営んでいる.ところがそこへ18年前に死んだ筈の伯母・未来子が突然姿を現す.爆弾作りに精を出し,爆破事件を起こして姿をくらました伯母は既に死んだ筈で戸籍もない.父の指も爆弾で失ったものらしい.
未来子はその日から果子の部屋に同居して暮らし始め,果子の苛々は頂点に達するが,未来子はある晩,爆弾に必要な硝石を取りに行こうと果子を誘う….3_10
退屈な現在に苛立つ果子に訪れた,突然の新しい未来が巻き起こす一夏の出来事.この一家のマメの皮を剥きながらの会話がとにかく違和感だらけで,そこに苛々で弾けそうな果子が加わる画面が基本的に面白い.
死んだ筈でしかもなお爆弾作りを続ける(殆ど楽しんでいると言って良い)未来子の登場で,映画は更に突き抜ける(こういうシチュエーションの小泉今日子ははまり役である).未来子,果子,カナ(果子の従姉妹)が,硝石取りに夜の運河を漕ぎ下っていくシーンはなかなか美しい.
映画の最後,「海苔の本田屋の嫁」が子供をワニに喰われた件の思いがけない展開が秀逸,そのシーンの果子の表情が印象的だ.未来の上から目線と過去の不機嫌が映画のテーマらしいが,面白い映画.
★★★☆(★5個が満点)4_10

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2019/05/02

独断的映画感想文:しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス

日記:2019年5月某日
映画「しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス」を見る.1_11 2016年.監督:アシュリング・ウォルシュ.
出演:サリー・ホーキンス(モード・ルイス),イーサン・ホーク(エベレット・ルイス),カリ・マチェット(サンドラ),ガブリエル・ローズ(アイダ).3_8 実在のカナダ東部ノバスコシア州の画家:モード・ルイスの生涯を描く.
モードは若年性リューマチを患い若くして両親を亡くす.叔母のもとに身を寄せていたが,束縛が厳しく厄介者扱いするアイダ叔母さんからの独立を願っていた. たまたま或る日住み込み家政婦募集の掲示を見たモードは,雇い主エベレットのもとで働くことを決意する.
エベレットは孤児院育ちで学問もなく,町外れの小さな家に住む乱暴者.まるでタイプの違う二人はことある毎に衝突するが,やがて落ち着いてくると,モードは僅かな給金で絵の具を買い家に絵を書き始める.また,魚の卸をするエベレットの為に伝票を記録し始めるが,その伝票カードの裏にも絵を書く.2_10 やがてその絵は近隣の評判を呼び,その絵を金を出して買いたいというお客が現れ始めた….
身体が弱くリュウマチのため手足の動きが不自由なモードは,しかし自由を愛する聡明な女性.女性に支配的であろうとするが,実は善良で絵を好みモードを心から愛する様になるエベレット.両者を演じるサリー・ホーキンスとイーサン・ホークが素晴らしい.6_3 遂に二人が結婚式を挙げたとき,恥ずかしそうに微笑むモードと,居心地悪そうにしているが二人きりになるとモードを抱きしめるエベレットのこのシーンは忘れがたい.特にサリー・ホーキンスの極めて丁寧なモードの演じ方は感銘的.8 身体が不自由なモードと口下手なエベレット,しかし彼等の魂の深さは誰よりも優っていただろうと思われる.そのことを表現し得た映画,ギターを主としたマイケル・ティミンズの音楽も素晴らしい.一見の価値あり.

★★★★(★5個が満点).

7

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2019/04/18

番外・独断的歌舞伎感想文:4月大歌舞伎夜の部 黒塚

日記:2019年4月某日57503272_3481878361932809_18918386003125

歌舞伎座で「4月大歌舞伎夜の部 黒塚」を幕見で見る.

猿翁十種の内.「黒塚(くろづか)」.出演:老女岩手実は安達原の鬼女(猿之助),山伏大和坊(種之助),山伏讃岐坊(鷹之資),強力太郎吾(猿弥),阿闍梨祐慶(錦之助).

安達ヶ原の鬼女伝説による能の「黒塚」が原曲,昭和14年初代市川猿翁初演の新舞踊劇.安達ヶ原に住む老女岩手は実は鬼女.一夜の宿を貸した阿闍梨に仏に帰依すれば救われると聞き,心の闇が晴れたとススキの原で踊る岩手.しかし禁を犯して奥の部屋を覗いた強力は死骸の山を見つけ,正体を悟られた岩手は鬼女の正体を現す.

猿之助始め出演者充実の舞台.猿之助の踊りはまことに美しい.ぎごちない老女の踊りがいつしか童女の様なやわらかな踊りとなる.月の影を踏みながら踊る場面は,月下の薄の原の舞台装置も美しく,魅了された.そして強力と出会って鬼女の正体を覗かせる瞬間の恐ろしさ・哀しさ,息をつくのも忘れて舞台に引き込まれる.

音楽も琴を交えた長唄連中が素晴らしく,終盤の大薩摩の連れ弾きも魅力的.1時間15分の踊りだが,一気に見た感じだ.

 

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2019/04/17

独断的映画感想文:ブラック・クランズマン

日記:2019年4月某日

映画「ブラック・クランズマン」を見る.1_12

2018年.監督:スパイク・リー.

出演:ジョン・デヴィッド・ワシントン(ロン・ストールワース),アダム・ドライヴァー(フリップ・ジマーマン),ローラ・ハリアー(パトリス・デュマス),トファー・グレイス(デビッド・デューク),コーリー・ホーキンズ(クワメ・トゥーレ),ライアン・エッゴールド(ウォルター・ブリーチウェイ),ヤスペル・ペーコネン(フェリックス),アシュリー・アトキンソン(コニー),ポール・ウォルター・ハウザー(アイヴァンホー).2_11

1970年代前半,コロラド州コロラドスプリングス警察署初の黒人警官となったロンは,潜入捜査担当を命じられる.黒人大学生組織が開催したブラックパンサー党の演説会に潜入したロンは,主催者のローラと知り合う.

他方,ロンは新聞広告に掲載されていた過激な白人至上主義団体KKK<クー・クラックス・クラン>のメンバー募集に電話をかけ黒人差別をアピール,幹部から採用面接に来る様誘われる.ロンは同僚のユダヤ人刑事・フリップを説き伏せ,フリップが面接を受けまんまと会員になることに成功する.3_9

かくてロンは電話で,フリップは参加して,黒人とユダヤ人排撃のKKKの内部捜査を進めることになる.KKK内部の過激派フェリックス夫妻はローラ等黒人活動家への爆弾テロを計画,一方ロンはコロラドにやって来るKKKの幹部デュークの警護担当を命じられるが….

コメディと称しているが,スパイク・リー監督らしい尖った作品.終盤のスリリングな展開は結構面白いし,ロンとローラの今後が予断を許さないものであることを暗示するラストシーンも印象的.エピローグもアメリカの現状を反映したイタい映像で締めくくられ,スパイク・リー監督の現代を見る眼差しを感じる.5_6

ジョン・デヴィッド・ワシントンの父デンゼル・ワシントンは26年前,この監督で「マルコムX」を撮ったが,本作冒頭のブラックパンサー党・ストークリー・カーマイケルのアジテーションに,「マルコムX」のそれを思い出した.

本作は設定が奇想天外でそれ自体がコメディと思えるが,後味はいささか苦い映画,見て損はなし.

★★★☆(★5個が満点).

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2019/04/07

番外:独断的歌舞伎感想文 4月大歌舞伎 昼の部 平成代名残絵巻/新版歌祭文 座摩社・野崎村/寿栄藤末廣/御存 鈴ヶ森

日記:2019年4月某日
歌舞伎「4月大歌舞伎 昼の部 平成代名残絵巻/新版歌祭文 座摩社・野崎村/寿栄藤末廣/御存 鈴ヶ森」を見る.Kabukiza_201904_fff_1a1f449660a35dde674d
今井豊茂 作,藤間勘十郎 演出・振付.「一、平成代名残絵巻(おさまるみよなごりのえまき)」.出演:常盤御前(福助),藤原基房(権十郎),平宗盛(男女蔵),平知盛(巳之助),平徳子(壱太郎),遮那王(児太郎),左源太(男寅),平重衡(吉之丞),右源太(竹松),平時子(笑三郎),建春門院滋子(笑也),鎌田正近(市蔵),平宗清(彌十郎).「二、新版歌祭文(しんぱんうたざいもん) 座摩社 野崎村」.出演:〈座摩社〉油屋娘お染(雀右衛門),丁稚久松(錦之助),弥忠太(家橘),勘六(寿治郎),山伏法印(松之助),山家屋佐四郎(門之助),手代小助(又五郎).〈野崎村〉久作娘お光(時蔵),油屋娘お染(雀右衛門),丁稚久松(錦之助),手代小助(又五郎),百姓久作(歌六),後家お常(秀太郎).坂田藤十郎米寿記念.「三、寿栄藤末廣(さかえことほぐふじのすえひろ) 鶴亀」.出演:女帝(藤十郎),亀(猿之助),従者(歌昇),従者(壱太郎),従者(種之助),従者(米吉),従者(児太郎),従者(亀鶴),鶴(鴈治郎).四世鶴屋南北 作.「四、御存 鈴ヶ森 (ごぞんじすずがもり)」.出演:白井権八(菊五郎),東海の勘蔵(左團次),飛脚早助(又五郎),北海の熊六(楽善),幡随院長兵衛(吉右衛門).Tokubetsu1904_kichiemon
4月らしい豪華な顔合わせ.平成代名残絵巻と寿栄藤末廣は華麗な舞踊劇,それぞれ福助と藤十郎が元気で顔を出しているのが嬉しい.若手の踊りも綺麗で華やか.前者では巳之助・壱太郎の両花道での踊りが素敵,久しぶりに柴のぶちゃんも見られた.Tokubetsu1904_kikugoro
座摩社・野崎村はベテランの芝居,この2幕を通すことでお染・久松の野崎村に至る経過が分かる.また野崎村では,両花道に別れたお染の船・久松の駕籠が,駕籠かきの棒杖の拍子・竹本の連れ弾きに合わせ去って行く場面は面白い.
鈴ヶ森は大ベテランの芝居.菊五郎・吉右衛門の名台詞で昼の部を締める形となって,なかなかの見応え.
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2019/04/05

独断的映画感想文:娼年

日記:2019年4月某日
映画「娼年」を見る.1_9
2017年.監督:三浦大輔.
出演:松坂桃李(森中領),真飛聖(御堂静香),冨手麻妙(咲良),猪塚健太(平戸東),小柳友(田島進也),西岡徳馬(泉川),江波杏子(老女).
森中領は一流大学に入りながら大学生活に興味が持てず,バーテンダーのバイトに精を出す虚無的な生活を送っている.ふとしたことで知り合った御堂靜香に娼夫としてスカウトされ,セックステストを受けることになるが,相手は靜香の娘・咲良だった.2_8
咲良相手のセックスで辛うじて合格した領は,意外にも年上の顧客に好評で,様々な相手とのセックスに思わぬ興味を惹かれる様になる….
自分のアイデンティティを娼夫という場で見出す青年の物語.全編ほぼセックスシーンというポルノグラフと言って良い映画だが,松阪桃李の演技はそれなりに筋が通っていて映画を成立させている.真飛聖も魅力的.4_6
★★★(★5個が満点)

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独断的映画感想文:ナラタージュ

日記:2019年4月3日
映画「ナラタージュ」を見る.1_8 2017年.監督:行定勲.
出演:松本潤(葉山貴司),有村架純(工藤泉),坂口健太郎(小野怜二),瀬戸康史(宮沢慶太),市川実日子(葉山美雪),大西礼芳(山田志緒),古舘佑太郎(黒川博文),神岡実希(塚本柚子),駒木根隆介(金田伊織),金子大地(新藤慶).2_7 映画の冒頭は夜のオフィスで一人残業中の泉,外は雨である.雨を眺めて追憶にふける泉.
大学生時代の泉は,高校時代の恩師葉山の呼び出しを受け,所属していた演劇部の学園祭上演の助っ人に入ることになる.そこでやはり助っ人の一人小野怜二と出会うが,泉には葉山への断ちがたい思いがあった.大学生の泉は高校時代の葉山と自分の関係を追憶する….3_6 という訳で追憶されている本人が追憶にふけるというややこしい映画.高校卒業時に自分の思いを葉山に伝えた泉だが,葉山には別居中の妻があり泉の思いは受け止められなかった.泉はその思いを抱えたまま一旦小野怜二と付き合うが,やはり葉山のことを諦めきれない.学園祭劇の稽古が続く中泉の思いは揺れ動く….
なかなか結論の出ないぐだぐだの恋愛劇が延々と続く.140分はなんぼ何でも長すぎる.俳優は松潤の葉山先生がひどすぎて映画にならない.
舞台はどうも富山県のようだが,誰も富山弁らしい人がいないのでどこか架空の国の映画の様だ(その割にはクレジットに方言指導という人が書いてある.誰に何を指導したのか?).4_5 葉山先生が突然自分の私生活を生徒(泉)相手にしゃべったり,小野怜二の実家が突然舞台となったりするのに,泉の生い立ち・家庭状況は一切分からず,このバランスにも違和感を感じる.
共感できず映画に入り込めない.
★☆(★5個が満点)

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独断的映画感想文:ラ・ラ・ランド

日記:2019年4月某日
映画「ラ・ラ・ランド」を見る.1_10
2016年.監督:デイミアン・チャゼル.2_9
出演:ライアン・ゴズリング(セバスチャン(セブ)),エマ・ストーン(ミア),ジョン・レジェンド(キース),ローズマリー・デウィット(ローラ),ソノヤ・ミズノ(ケイトリン),J・K・シモンズ(ビル),フィン・ウィットロック(グレッグ).4_7
女優を目指すミアは,毎日オーディションを受けながらなかなか芽が出ない.或る日ピアノの音に惹かれて訪れた酒場で出会ったセブ,彼は自分の思い通りのジャズを客に聴かせる店を作る為,悪戦苦闘していた.
やがて恋に落ちた二人,ミアは一人芝居の自作自演に挑み,一方セブは不本意ながら商業主義的バンドのキーボードとして売れ始める.それぞれに挫折と将来への不安を抱く二人だったが….3_7
この映画は冒頭の,渋滞するハイウェイで見渡す限りの車のボンネット上で踊り狂う人々の,群舞のシーンにまず圧倒される.その後も狂騒的な群舞シーンが繰り返され,自分などはすっかり嫌気が差してくる頃に,ミアとセブの出会いと恋の物語がようやく始まるのだ.
ところが一旦ミアとセブの物語になると,映画はすっかり落ち着いて,歌はバラードになり,これにセブの美しいピアノ,ジャズコンボの演奏が寄り添っていく.この後は安心してドラマを楽しむことが出来る.しかもそのドラマはハッピーエンドではないほろ苦い人生のドラマだ.どうして感動しないでいられよう.5_4
楽曲としてはミアの歌う「オーディション」,ミアとセブが繰り返し歌う「シティ・オブ・スター」が素晴らしい.主演の二人は魅力充分,監督の前作「セッション」でジャズマンとしての圧倒的存在感を見せつけたJ・K・シモンズが,セブのジャズを否定する店主の役で顔を出すのはご愛敬.6_2
最後に出会った二人が,もしこうであったら別な人生が開けていただろうかという一瞬の夢を見るエピローグが,切なくて哀しい.見て損はなし.
★★★★(★5個が満点)
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2019/04/02

独断的映画感想文:天国でまた会おう

渋谷ユーロスペースで映画「天国でまた会おう」を見る.1_7 2017年.監督:アルベール・デュポンテル.原作:ピエール・ルメートル.
出演:ナウエル・ペレス・ビスカヤール(エドゥアール・ペリクール),アルベール・デュポンテル(アルベール・マイヤール),ロラン・ラフィット(プラデル),ニエル・アレストリュプ(マルセル・ペリクール),メラニー・ティエリー(ポリーヌ),エロイーズ・バルステ(ルイーズ),ジル・ガストン=ドレフュス(市長),フィリップ・ウシャン(区長),アンドレ・マルコン(憲兵),ミシェル・ヴュイエルモーズ(ジョゼフ・メルラン),キヤン・コジャンディ(デュプレ).4_4 1920年モロッコのフランス軍憲兵隊.逮捕されたアルベールの長い陳述が始まる.
1918年第1次大戦の西部戦線,休戦の指示を握りつぶしたプラデル中尉は部下に突撃を命令,アルベールはプラデルの悪事の証拠を目撃したため砲弾の穴に突き落とされ生き埋めになる.年若い戦友のエドゥアールに命を救われるが,エドゥアールは顔に重傷を負う.
野戦病院で意識を取り戻したエドゥアールは自身の顔の損傷を知り,また厳格な父に自分の画才を認められず確執があったため,自分は戦死したことにしてくれるようアルベールに懇願する.アルベールは書類をすり替え,エドゥアールは別人として生きることになる.3_5 二人はパリに戻ったが世間は復員者に冷たく,アルベールは経理係の仕事に復職できずサンドイッチマンとして糊口をしのぐ.エドゥアールは自らデザインした仮面をかぶることで自信を取り戻し,戦死者記念塔設立のデザインを請け負い,制作はしないで逃げるという詐欺で,国家に仕返しすることを考える.一方政界の実力者でもあるエドゥアールの父は,息子の死を悼み自分の街に戦死者記念塔を設立しようとするが,その娘婿にプラデル中尉が潜り込んでいた….
日本でも人気の推理小説作家ルメートル原作の映画,なかなか複雑なプロットだがテンポ良く映画は進む.
二人の戦争への思い,エドゥアールの父との確執,アルベールのプラデルへの復讐がもつれ合って進行するが,エドゥアールのバラエティ豊かな仮面の着用や,只一人エドゥアールの発する音声を言語に通訳できる少女ルイーズの登場など,物語は豊かな展開を見せる.2_6 敵役のプラデルが詐欺師としての二人を次第に追い詰めていく過程や,終盤の悲劇的な経過は見応えあり.最後のどんでん返しは,ルメートルならではと思わせる.見て損はなし.
★★★☆(★5個が満点)
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2019/03/31

独断的映画感想文:ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書

日記:2019年3月某日
映画「ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書」を見る.1_6 2017年.監督:スティーヴン・スピルバーグ.
出演:メリル・ストリープ(キャサリン・グラハム),トム・ハンクス(ベン・ブラッドリー),サラ・ポールソン(トニー・ブラッドリー),ボブ・オデンカーク(ベン・バグディキアン),トレイシー・レッツ(フリッツ・ビーブ),ブラッドリー・ウィットフォード(アーサー・パーソンズ),アリソン・ブリー(ラリー・グラハム・ウェイマウス),ブルース・グリーンウッド(ロバート・マクナマラ),マシュー・リス(ダニエル・エルズバーグ).5_3 1966年.ベトナムの前線を視察したダニエル・エルスバーグは,自身の米軍不利のレポートを上司マクナマラ国防長官が採用したにもかかわらず,対外的には米軍有利と発表したことに失望,秘密文書の外部持ち出しとコピーを始める.
一方ワシントンポストの女性社主キャサリン・グラハムは,父の死後同社を引き継いだ夫フィリップが自殺したのち1969年に同社主に就任した.1971年,彼女は役員の勧めによりポスト紙の株公開に打って出る.
この頃ニューヨーク・タイムスはベトナム秘密文書(ペンタゴン・ペーパーズ)の内容暴露の記事を発表,アイゼンハワー大統領時代から引き続いて国民を偽ってベトナム戦争を拡大してきたその内容はセンセーションを巻き起こす.ニクソン政権は直ちに機密保護法違反で記事の差し止めを命じる.
一方ポスト記者のベン・バグディキアンは旧友ダニエル・エルズバーグとの連絡に成功,ペンタゴン・ペーパーズの全文を入手,ポスト紙はその資料に基づく記事を作成し,掲載紙の発行許可をキャサリンに求める.株式公開直後のこの状況にキャサリンは決断に苦しむが….6_1 本作は報道の自由と国家のつく嘘を巡る極めてスリリングな政治ドラマである.その一方で,父と夫へのコンプレックスに苦しむ一女性の自己の確立と決意の物語でもある.
それを演じるメリル・ストリープの演技はどうだ.彼女が電話会議で掲載の最後の決断を下す場面,キャサリンの胸の動悸とあえぎが観客に聞こえてくる様である.メリル・ストリープの名演に敬礼するばかり.映画はラストシーンをニクソン政権の命運にかかわる別の事件のプロローグに繋げて終わるが,この演出も心憎い.4_3 この映画を現代の日本の新聞社は正視する勇気があるだろうか?某大新聞社の映画コラムで本作を取り上げているが,まるでエンタテインメント映画一般の取り上げ方で,我が身を省みる気配は皆無.さすがと寒心した次第であった.
★★★★☆(★5個が満点)
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独断的映画感想文:探偵はBARにいる3

日記:2019年3月某日
映画「探偵はBARにいる3」を見る.1_5
2017年.監督:吉田照幸.
出演:大泉洋(探偵),松田龍平(高田),北川景子(マリ),前田敦子(諏訪麗子),鈴木砂羽(モンロー),リリー・フランキー(北城仁也),田口トモロヲ(松尾),志尊淳(波留),マギー(源),安藤玉恵(峰子),正名僕蔵(教頭先生),篠井英介(フローラ),松重豊(相田).2_4
探偵の相棒・高田から,後輩の彼女・麗子が行方不明になったので探して欲しい旨の依頼が来る.麗子のバイト先を突き止めた探偵は,そのモデル事務所実は風俗店を訪れ麗子の名前を出す.
事務所はシラを切り,翌日探偵と高田はやくざに袋だたきにされるが,事務所の女所長マリに救われる.事件はやくざ2グループ間での覚醒剤争奪と絡む殺人事件に関連し,麗子はその目撃者であることが分かる.事務所のオーナー北城が一方のやくざの頭目であることが分かるが,探偵はマリに昔会った記憶があった….5_2
札幌を舞台とする人気シリーズ3作目.全2作に比べるとB級感が弱くなり薄味になった感じが否めない本作.探偵はバーにいると言ってもそのバーの映画における存在感もまた薄い.4_2
話は一応なるほどと思ったけれど,今までのやんちゃ感は何処に行ったのか.前田敦子や志尊淳が出ている割には話への絡み方がさほどでもない.マリの犯罪動機も(あれ?これはネタバレかな?)到底通用しない話で,受け容れ難い.
その場限りの娯楽作品という感じ.3_3
★☆(★5個が満点)
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2019/03/24

番外:独断的歌舞伎感想文 国立劇場小劇場「元禄忠臣蔵 御浜御殿綱豊卿/積恋雪関扉」

日記:2019年3月某日
国立劇場小場で劇歌舞伎「元禄忠臣蔵 御浜御殿綱豊卿/積恋雪関扉」を見る.20190317page1
真山青果=作/真山美保=演出.「元禄忠臣蔵 (げんろくちゅうしんぐら) 二幕五場 御浜御殿綱豊卿 (おはまごてんつなとよきょう)」.伊藤熹朔=美術,中嶋八郎=美術.第一幕 御浜御殿松の茶屋 第二幕 御浜御殿綱豊卿御座の間,同 入側お廊下,同 元の御座の間,同 御能舞台の背面」.宝田寿来=作.「積恋雪関扉 (つもるこいゆきのせきのと) 常磐津連中 国立劇場美術係=美術」 .『元禄忠臣蔵』.出演:徳川綱豊卿(中村扇雀),富森助右衛門(中村歌昇),中臈お喜世(中村虎之介),新井勘解由(中村又五郎),他.『積恋雪関扉』.出演:関守関兵衛実ハ大伴黒主(尾上菊之助),良峯少将宗貞(中村萬太郎),小野小町姫/傾城墨染実ハ小町桜の精(中村梅枝).
真山青果ものは苦手である.登場人物が互いの台詞に感動してテンションが高まっていく辺りは,あまり感心しない.更に,激昂した場面で台詞が聴き取り難くなるのは残念.とは言え扇雀はさすがの落ち着きと品位で見応えあり.息子の虎之助の中臈お喜世が美しい.
積恋雪関扉は菊之助初演の関守/黒主.この日の扮装は驚く程菊五郎の若い時に似ている(様な気がする).梅枝の小町/墨染は色気があって風情があって魅力的.この二人の踊りが面白く,長丁場をだれることなく鑑賞できた.
小劇場は2回目だが,この広さの方が歌舞伎を見るのには具合が良い.
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独断的映画感想文:運び屋

日記:2019年3月某日
TOHOシネマズ新宿で映画「運び屋」を見る.6
2018年.監督:クリント・イーストウッド.出演:クリント・イーストウッド(アール・ストーン),ブラッドリー・クーパー(コリン・ベイツ),ローレンス・フィッシュバーン(DEAエージェント),マイケル・ペーニャ(トレヴィノ),ダイアン・ウィースト(メアリー),タイッサ・ファーミガ(ジニー),アリソン・イーストウッド(アイリス),アンディ・ガルシア(レイトン).
アールは退役軍人,ユリの栽培に没頭し品評会でも賞を取るが家族は顧みず,妻メアリーとは離婚し結婚式をすっぽかした娘アイリスは12年間口をきいてくれない.2_3
ところがインターネット販売に押され彼のユリ園は破産,アールは孫ジニーの婚約式で出会った若者に誘われ,荷物の運搬を引き受ける.当初はその中身を知らなかったが,ドラッグと知っても臆さず運び続けるアール.ジニーの結婚式の2次会費用をプレゼントしたり,焼失した退役軍人会館の厨房の再建費用を負担したりする.
交通違反の履歴一つなく高齢の退役軍人であるアールは,ノーマークで大量のドラッグを陸送し続けるが,やがて麻薬取締局DEAのベイツ捜査官の手が迫ってくる….
アールという人物が元気で茶目っ気たっぷり,言いたいことを言い度胸もあるというその魅力がまず楽しい.親分のレイトンは,アールが好き勝手に道を変えたり寄り道したりすることを,却って足が付かないから良いと支持するが,現場の見張り役は気が気ではない.その見張り役も,アールの車につけた盗聴器を通じて流れてくるラジオ音楽とそれに合わせて鼻歌を歌うアールの機嫌良さに,思わず一緒に歌い出すというシーンが可笑しい.3_2
アールの最大の関心事は,DEAの追及でもなければ組織の締め付けでもなく,家族の絆の再構築にある.アールがベイツ捜査官と朝の珈琲を飲みながら話すシーン(ベイツはアールが目指すホシだとはまだ気付いていない),ベイツが家族の記念日を失念していたらしいのを知ったアールが,「家族が何よりも大切だ,自分はそれに失敗した」と説教する場面は印象的.メアリーとアールの和解のシーンも感銘的だ.4_1
ドラッグが犯罪という概念をある種飛び越えたところで,アールの人生・家族との絆のドラマが展開することが面白い.イーストウッド映画らしく音楽も相変わらず良い.エンドロールで流れる「年を忘れよう」という内容の唄も魅力的.とにかくイーストウッドを見るのが楽しい,見て損はなし.1_4
★★★★☆.
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番外:独断的歌舞伎感想文 3月大歌舞伎夜の部 盛綱陣屋/雷船頭/弁天娘女男白浪

日記:2019年3月某日
3月大歌舞伎夜の部を見る.Moritsuna
「一、近江源氏先陣館 盛綱陣屋(もりつなじんや)」.出演:佐々木盛綱(仁左衛門),篝火(雀右衛門),信楽太郎(錦之助),早瀬(孝太郎),四天王(廣太郎),四天王(種之助),四天王(米吉),四天王(千之助),高綱一子小四郎(勘太郎),盛綱一子小三郎(寺嶋眞秀),竹下孫八(錦吾),伊吹藤太(猿弥),古郡新左衛門(秀調),北條時政(歌六),微妙(秀太郎),和田兵衛秀盛(左團次).「二、雷船頭(かみなりせんどう)」.出演:女船頭(猿之助),雷(弘太郎).河竹黙阿弥 作.「三、弁天娘女男白浪(べんてんむすめめおのしらなみ) 浜松屋見世先より 稲瀬川勢揃いまで」.出演:弁天小僧菊之助(幸四郎),南郷力丸(猿弥),鳶頭清次(猿之助),忠信利平(亀鶴),赤星十三郎(笑也),浜松屋伜宗之助(鷹之資),番頭与九郎(橘三郎),狼の悪次郎(錦吾),浜松屋幸兵衛(友右衛門),日本駄右衛門(白鸚).Benten
盛綱陣屋は役者が揃った中で,仁左衛門が堂々として美しく,なおかつ心理描写が判り易く印象的だ.特に偽首を見てからの自身への決意と,小四郎・篝火に対する情けが素晴らしい.この仁左衛門に応答する切腹して手負いの小四郎を演じる勘太郎が,立派な芝居.役の小四郎も演ずる勘太郎もいたいけで感動する.Img_20190323_160238
雷船頭は軽妙な踊り,猿之助の色っぽい踊りと弘太郎の愛嬌ある踊りが楽しかった.
弁天娘女男白浪は幸四郎版で.名台詞の連続で軽快な展開.

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2019/03/22

独断的映画感想文:グリーンブック

日記:2019年3月某日
TOHOシネマズ新宿で映画「グリーンブック」を見る.0
2018年.監督:ピーター・ファレリー.
出演:ヴィゴ・モーテンセン(トニー・“リップ”・バレロンガ),マハーシャラ・アリ(ドクター・ドナルド・シャーリー),リンダ・カーデリーニ(ドロレス・バレロンガ),ディミテル・D・マリノフ(オレグ),マイク・ハットン(ジョージ).
1962年のアメリカ,トニーは腕の立つ用心棒兼運転手.勤めていたN.Y.のコパカバーナが改装閉店したため,新しい職を探す.紹介されたのは黒人ジャズ演奏家ドクター・シャーリーのツアー運転手,8週間かけて南部を演奏旅行するという.渋るトニーをシャーリーは好条件で説き伏せ,2人のロードムービー・友情物語が始まる.3_1
シャーリーは幼くして才能を見出され留学したピアニスト,しかしクラシック界では黒人は受け入れられないとジャズに転身し,今はカーネギー・ホールの階上に住む成功者だ.しかし彼には南部ツアーを成功させたい理由があった.2_2
旅は様々な軋轢を含みながら始まるが,二人は次第に理解し合いうち解けて行く.トニーが車の中でのお喋りや煙草をシャーリーに押さえ込まれるシーンや,シャーリーがトニーの勧めで初めてケンタッキーフライドチキンを食べるやり取りは傑作.トニーは粗野で下品なイタリア系だが,妻を愛し仕事を選ぶしっかり者だ(失業中にマフィア系の仕事を断るシーンがある).4
何より素晴らしいのは,トニーが音楽を理解し(さすがイタリア人)アーティストに敬意を抱くことだ.最初にシャーリーのトリオの演奏を聴いた時のトニーの表情はどうだろう.トニーはアーチストにとって契約がどういうものかを理解しているし,その為に自分がするべきことも心得ている.必ずスタンウェイピアノを確保するという契約を守らせるために,トニーは身体を張るのだ.こういうことが2人の信頼を育んでいく過程を,観客は確認することが出来る.5
音楽も素晴らしい.この時代のヒット曲が矢継ぎ早に流れる一方で,ツアーの公演ではシャーリー・トリオの素晴らしいジャズを聴くことが出来る.終盤のブルースハウスで,シャーリーがショパンのエチュードイ短調をド迫力で弾いた後,ブルースマン達と繰り広げるセッションは圧巻.映画の面白さ,感動を充分味わうことの出来る好編,お勧めです.1_3
★★★★☆.
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番外:独断的歌舞伎感想文 3月大歌舞伎昼の部 女鳴神/傀儡師/傾城反魂香

日記:2019年3月某日
3月大歌舞伎昼の部を見る.Onnanarukamimin-1
「一、女鳴神(おんななるかみ)龍王ヶ峰岩屋の場」.出演:鳴神尼(孝太郎),雲野絶間之助/佐久間玄蕃盛政(鴈治郎).「二、傀儡師(かいらいし)」.出演:傀儡師(幸四郎).近松門左衛門 作.「三、傾城反魂香(けいせいはんごんこう) 近江国高嶋館の場より土佐将監閑居の場まで〈高嶋館・竹藪〉」.出演:狩野四郎二郎元信(幸四郎),不破入道道犬(猿弥),銀杏の前(米吉),長谷部雲谷(松之助),不破伴左衛門(廣太郎),宮内卿の局(笑三郎),狩野雅楽之助(鴈治郎).「同 〈土佐将監閑居〉」.出演:浮世又平後に土佐又平光起(白鸚),女房おとく(猿之助),土佐修理之助(高麗蔵),百姓庄右衛門(寿猿),将監北の方(門之助),土佐将監光信(彌十郎),狩野雅楽之助(鴈治郎).
鳴神と逆転の女鳴神は,孝太郎の程よい色気と凄みが相俟って,なかなか面白かった.特に最後の鴈治郎の押し戻しが,狂言のバランスをまさに押し戻して素晴らしい.劇場に轟き渡る鴈治郎の大音声が印象的.
傾城反魂香は,初めて見た〈高嶋館・竹藪〉の場が,虎の活躍もあって印象に残ったが,結局姫君がどうなるのかは判らず終い.〈土佐将監閑居〉の場との繋がりも腑に落ちず.
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2019/03/08

独断的映画感想文:ショーシャンクの空に

日記:2019年3月某日
映画「ショーシャンクの空に」を見る.1_3
1994年.監督:フランク・ダラボン.
出演:ティム・ロビンス(アンディ),モーガン・フリーマン(レッド (エリス・ボイド)),ウィリアム・サドラー(ヘイウッド),ボブ・ガントン(ウォーデン・サミュエル・ノートン),ジェームズ・ホイットモア(ブルックス・ヘイトレン),クランシー・ブラウン(バイロン・ハドリー),ギル・ベローズ(トミー・ウィリアムズ),マーク・ロルストン(ボッグス・ダイアモンド).5_3
銀行副頭取だった青年:アンディは妻とその愛人殺しの容疑で逮捕され,無実を主張するが終身刑の判決を受け服役する.当初は人を寄せ付けなかったアンディだが,「調達屋」のレッドとはうち解け,やがて穏やかな人柄と税務会計能力を発揮して,囚人のみならず看守からも一目置かれる存在となる.3_3
その能力を認められ図書係となるが,所長は自分の汚職の会計係として彼を使う様になる….
不条理な状況下でも自分を見失わず,希望を持ち続けたアンディの物語.
自分の能力を発揮して洗濯係から図書係,所長の会計係と処遇を改善していったアンディだが,自分の無実を証明する手掛かりが見えた時,最も残酷な運命が待っていた.それを彼は如何に突破し得たのか.
6
「希望」とは何を礎とするのかを,改めて考えさせる映画である.
ティム・ロビンス・モーガン・フリーマンの演技が素晴らしい.刑務所暮らしの彼等の日常と時折訪れる希望と絶望が間断することなく表現されて,全体のテンポも良く最後まで一気に見ることが出来る.
所長役のボブ・ガントン,看守役のクランシー・ブラウン,老懲役囚のジェームズ・ホイットモアも印象に残った.
2_3
終盤,レッドが仮釈放後バクストンで樫の木を目指すシーンでの音楽が,心に染み入って美しい.映画らしい映画,文句なし.
★★★★☆(★5個が満点)
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番外:独断的歌舞伎感想文 2019年2月歌舞伎座昼の部 すし屋/暗闇の丑松/団子売

日記:2019年2月某日
二月大歌舞伎昼の部を見る.Kabukiza_1poster201902
「一、義経千本桜(よしつねせんぼんざくら) すし屋」.初世尾上辰之助三十三回忌追善狂言.出演:いがみの権太(松緑),弥助実は三位中将維盛(菊之助),娘お里(梅枝),若葉の内侍(新悟),梶原の臣(吉之丞),梶原の臣(男寅),梶原の臣(玉太郎),六代君(亀三郎),弥左衛門女房おくら(橘太郎),鮓屋弥左衛門(團蔵),梶原平三景時(芝翫).「二、暗闇の丑松(くらやみのうしまつ)」.初世尾上辰之助三十三回忌追善狂言.長谷川 伸 作,村上元三 演出.出演:暗闇の丑松(菊五郎),丑松女房お米(時蔵),浪人潮止当四郎(團蔵),料理人作公(男女蔵),料理人伝公(彦三郎),料理人巳之吉(坂東亀蔵),料理人祐次(松也),建具職人熊吉(萬太郎),建具職人八五郎(巳之助),杉屋遣手おくの(梅花),湯屋番頭甚太郎(橘太郎),お米の母お熊(橘三郎),杉屋妓夫三吉(片岡亀蔵),岡っ引常松(権十郎).四郎兵衛女房お今(東蔵),四郎兵衛(左團次).「三、団子売(だんごうり)」.出演:杵造(芝翫),お臼(孝太郎).Kabukiza_2poster201902
すし屋は時代歌舞伎を演じることの難しさ(特にいがみの権太が手負いとなってから幕となるまで)をつくづく感じた.松緑は渾身の芝居で,見応えあり.
暗闇の丑松は優れた狂言だが,菊五郎の丑松は暗さや尖ったところがあまりない丑松に見えた.いつか松緑がやる丑松を見てみたい.湯屋番の橘太郎が出色の出来で面白い.
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番外:独断的歌舞伎感想文 2019年2月歌舞伎座夜の部 熊谷陣屋/當年祝春駒/名月八幡祭

日記:2019年2月某日
二月大歌舞伎夜の部を見る.Kabukiza_201902_fff_f330feebf46a183
一、一谷嫩軍記-熊谷陣屋(くまがいじんや)」.出演:熊谷直実(吉右衛門),藤の方(雀右衛門),源義経(菊之助),亀井六郎(歌昇),片岡八郎(種之助),伊勢三郎(菊市郎),駿河次郎(菊史郎),梶原平次景高(吉之丞),堤軍次(又五郎),白毫弥陀六(歌六),相模(魁春).「二、當年祝春駒(あたるとしいわうはるこま)」.出演:工藤祐経(梅玉),曽我五郎(左近),大磯の虎(米吉),化粧坂少将(梅丸),曽我十郎(錦之助),小林朝比奈(又五郎).「三、名月八幡祭(めいげつはちまんまつり)」.初世尾上辰之助三十三回忌追善狂言.池田大伍 作,池田弥三郎 演出.出演:縮屋新助(松緑),芸者美代吉(玉三郎),魚惣(歌六),船頭長吉(松江),魚惣女房お竹(梅花),美代吉母およし(歌女之丞),藤岡慶十郎(梅玉),船頭三次(仁左衛門).
熊谷陣屋は当代吉右衛門の当たり役,その素晴らしい演技を堪能した.
特に最後の場面,我が子の首を凝視した後花道を去って行く,何とも言えない哀しさ・寂しさの中にやるべきことをしたという微かな笑みを含んだ姿が,感銘的.
名月八幡祭は仁左衛門と玉三郎のお似合いの好演,松緑の狂気にいたる律儀な田舎者の追い詰められ様が,共にはまり役で見応えあり.両方の芝居で歌六の演技がこの人ならではで印象に残った.
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独断的映画感想文:金子文子と朴烈

日記:2019年2月某日
映画「金子文子と朴烈」を見る.00_2
2017年.監督:イ・ジュンイク.
出演:イ・ジェフン(朴烈(パクヨル)),チェ・ヒソ(金子文子),キム・インウ(水野錬太郎),山野内扶(布施辰治),キム・ジュンハン(立松懐清),金守珍(牧野菊之助).1_2
東京で人力車夫として生計を立てる朴烈は無政府主義者,朝鮮人を中心とした無政府主義者の結社「不逞社」の一員である.彼等が根城にする岩崎おでん屋の女給・金子文子は,朴烈の詩「犬ころ」に共感,朴烈と同棲をする.
この頃朴烈は上海から爆裂弾の購入を企図,また自作の爆裂弾も試作するが,いずれも失敗に終わる.3_2
関東大震災が起こると,朝鮮人による井戸への毒薬投入・暴動の噂が流れ,自警団による朝鮮人殺しが横行,また警察による予防検束が行われる.
朴烈・金子文子も逮捕されるが,爆裂弾購入に関与した一員が朴烈の名前を出し,また二人が「やるなら皇太子(昭和天皇裕仁)である」との考えを示したため,両名は大逆罪で起訴されることになる.これは朝鮮人虐殺の批判をかわすための,内大臣の方針でもあった.

4_2
二人は死を賭して,大逆罪裁判での弁論にその主張を訴えることを選択する….
骨太の歴史映画である.
根拠も脆弱な大逆罪起訴にあえて身を投げ入れる両名,無為な死としか見えない行為は,彼等としては命をかけた闘いである.若いアナーキスト二人の,その闘いでの生命力溢れる描写が誠に印象的だ.5_2
特にイ・ジェフン演じる朴烈,チェ・ヒソ演じる,金子文子の魅力はどうだろう.文子は裁判判決時に未だ23歳,その政治主張はいかにも生硬だが,朴烈に対する愛情のひたむきさには心を打たれる.イ・ジェフンの朴烈も素晴らしい存在感.他にキム・ジュンハン演じる立松懐清等が印象的だった.
コンチネンタルタンゴを思わせる主題歌を始め音楽も素晴らしい.映画として見応え充分,お勧めである.
★★★★☆(★5個が満点)
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独断的映画感想文:夜明け(2019)

日記:2019年2月某日
映画「夜明け(2019)」を見る.1
2019.監督:広瀬奈々子.
出演:柳楽優弥(シンイチ/芦沢光),YOUNG DAIS(庄司大介),鈴木常吉(米山源太),堀内敬子(成田宏美),小林薫(涌井哲郎).3
映画の冒頭,夜明け前の鉄橋から花束を投げる青年.
翌朝,釣に行く途中の哲郎は川辺で倒れている青年を発見する.やもめ暮らしの哲郎はそのまま青年を連れて帰る.青年はシンイチと名乗るが,それは哲郎の8年前に交通事故死した一人息子と同じ名前だった.
哲郎は訳あり風のシンイチを家に引き取り,自分の木工所で木工を仕込むことにする.徐々に周囲に溶け込んでいくシンイチだが,シンイチには名前を偽らねばならない彼なりの事情があった.
哲郎は近々従業員の宏美と再婚同士の結婚式を控えている.哲郎はシンイチを息子同様に扱おうとするが,哲郎にも死んだ妻と息子との辛い過去があった….4
過去にトラウマを抱えた同士の疑似親子の試みがどうなるのかというヒューマンドラマ.
プロット自体には思いがけないものはない.予想される困難が出来し,予想される結末がやって来る.ラストシーンのシンイチのアップは,これから彼がどうするのか,観客に問いかけるかの様だ.
気弱で優しいシンイチを演じる柳楽優弥が見応えあり.表情も乏しく,常に囁くような声で喋るシンイチを演じて,次第にシンイチがどういう人間なのか,シンイチの苦しみは何なのかを観客に滲み込ませて行く.小林薫も矛盾ある哲郎を過不足無く演じ素敵.2
木工所の従業員が出入りする酒場のマスターのパワハラエピソードなど,描き方はもう一つ納得出来ないが,監督の今後に期待する.
★★★(★5個が満点)
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2019/02/04

独断的映画感想文:セブン・シスターズ

日記:2019年2月某日
映画「セブン・シスターズ」を見る.1_4
2016年.監督:トミー・ウィルコラ.
出演:ノオミ・ラパス(セットマン家の7姉妹),マーワン・ケンザリ(エイドリアン・ノレス),ウィレム・デフォー(テレンス・セットマン),クリスティアン・ルーベク(ジョー),グレン・クローズ(ニコレット・ケイマン).2_4
2073年,地球は干ばつと資源の枯渇で危機的状況に.遺伝子組み換え作物の開発で食糧危機は脱したものの,その副作用で多胎が増加する.
欧州連邦は児童分配局を創設,強権的な一人っ子政策を実施する.2人目以降の児童は分配局に収容され,危機が去るまでの間冷凍保存されることになる.3_4
誕生時に両親を失ったセットマン家の7人姉妹は,祖父テレンスの意向で7人が日替わりで一人の人格カレンを演じることで成長する.各人が曜日の名前をつけられた7人姉妹は,性格も才能もそれぞれだったが,協力して30歳まで生き延びてきた.
しかし或る日「月曜日」が夜になっても帰らず,翌日不安の中出かけた「火曜日」は児童分配局長官ケイマンに逮捕される….5_4
この時点で芋づる式に7人全員が逮捕されておかしくないのだが,襲撃してきたエージェントを残された5人姉妹が犠牲を払いながら撃退,武闘派の「水曜日」がコンピュータの天才「金曜日」の指示のもと,「月曜日」行方不明の手掛かりを捜しに街頭に忍び出る….
4_4
7人が1人として30年暮らすという設定自体が無茶苦茶であり,戦闘が始まった後も,何故自宅に公権力が雪崩れ込んでこないのか不思議とか,観客にとってミステリが多い映画.しかし映画のテンポは良く,アクションの連続と入れ替わりに活躍する7人の組み合わせが魅力的で映画に引き込まれる.
上に述べたミステリも映画の進行の中で次第に謎が解けてきて(かなり無理はありますが),ややB級映画的だが最後まで面白く見た.
★★★☆(★5個が満点)
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独断的映画感想文:斬、

2019年1月某日
渋谷ユーロスペースで映画「斬、」を見る.1_3
2018年.監督,脚本,製作,撮影:塚本晋也.
出演:池松壮亮(都筑杢之進),蒼井優(ゆう),中村達也(源田源左衛門),前田隆成(市助),塚本晋也(澤村次郎左衛門).
2_3
杢之進はいずれ江戸に出ようという剣客,今はこの村で農作業の手伝いをする居候である.農家の少年市助に剣術の稽古をつけている.
その姉ゆうは杢之進を好いているが杢之進は行動に出ることがない.
3_3
或る日村に現れた凄腕の浪人澤村,浪士隊を組織して公儀に奉公したいと言い,杢之進と市助を勧誘する.二人は澤村と共に出立することになるが,その朝杢之進は病に倒れる.
市助は出立できない鬱憤のまま村外れに逗留していた浪人達と衝突し,袋だたきにされる.澤村は手下となった市助への危害には報復しなければならないと言い,杢之進の止めるのに耳を貸さず浪人達を切ってしまう.しかし逃れた2名の浪人が仲間を連れゆうの家を襲撃した….
池松壮亮の殺陣の動きは素晴らしく,寡黙な演技も印象的.蒼井優も期待通りの好演だ.映画は緊張感高く,並々ならぬ力量を傾けて製作されたものであることは間違いない.4_3
しかし認めがたい点も多々ある.「野火」に続く塚本晋也監督の作品だが,本作には「野火」にあった戦争という大前提に匹敵するものが見出しがたい.キャッチコピーの「なぜ人は人を斬るのか」という言葉は,戦争に比べれば全然普遍的な命題ではない.
また,殺陣のシーンは映像が暗く手持ちカメラのぶれが激しく,何が起こっているのか判らない.誰が誰を斬ったのか,負傷の程度はどれほどか,ドラマの根幹に関わる点が判らぬまま映画が進行する.5_3
こういう点が消化不良なまま,映画は終わってしまった.圧倒されたが何か釈然としない映画.
★★(★5個が満点)
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独断的映画感想文:ヴィクトリア女王 最期の秘密

日記:2019年1月某日
Bunkamuraル・シネマ1で映画「ヴィクトリア女王 最期の秘密」を見る.1_2
2017年.監督:スティーヴン・フリアーズ.
出演:ジュディ・デンチ(ヴィクトリア女王),アリ・ファザール(アブドゥル・カリム),エディ・イザード(バーティー),アディール・アクタル(モハメド),ティム・ピゴット=スミス(ヘンリー・ポンソンビー),マイケル・ガンボン(ソールズベリー).2_2
1887年,英領インドのアグラに住むアブドゥルは,献上品の絨毯の目利きを認められ,ヴィクトリア女王即位50周年記念式典で記念金貨“モハール”を献上する役目に抜擢される.
はるばるロンドンに派遣されたアブドゥルは式典で女王の目に止まり,式典期間の間女王の従僕に採用される.
3_2
臆することなく親しみを込めてインドの風物などを語りかけるアブドゥルに,女王も心を開き,親しい人達を失った後の苦しい心中を打ち明けるまでになる.一方,有色人種であるアブドゥルへの寵愛に対し,皇太子アルバート(バーティー)以下王室職員の多くは激しい敵意を抱くが….


4_2
大英帝国及びインドの絶対的君主である一方,一人の寂しい女性として希有な存在でもあるヴィクトリア女王を,ジュディ・ディンチが圧倒的な存在感で演じる.フィレンツェで,プッチーニの前でギルバートとサリバンの歌曲を歌ってみせる(伴奏は皇太子バーティー)シーンは圧巻.
映画の終盤,アブドゥルにナイトの称号を授けようとして周囲の猛反発を受けた時の,皇太子・首相に対し,また王室職員一同に対し,女王が示した君主としての威厳も印象的だ.
5_2
このアブドゥルとの交流が,女王の晩年にとってかけがえのないものだったことは想像に難くない.英国女王の意外な一面という以上に,インド青年との心を開いた交流が感銘的な映画.見て損はなし.
★★★★(★5個が満点)
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独断的映画感想文:焼肉ドラゴン

日記:2019年1月某日
映画「焼肉ドラゴン」を見る.1
2018年.監督:鄭義信.
出演:真木よう子(長女・静花),井上真央(次女・梨花),大泉洋(哲男),桜庭ななみ(三女・美花),大谷亮平(長谷川さん),ハン・ドンギュ(尹大樹),イム・ヒチョル(呉日白),大江晋平(末っ子・時生),宇野祥平(呉信吉),根岸季衣(美根子),イ・ジョンウン(母・英順),キム・サンホ(父・龍吉).2
万博間近の1969年,空港に隣接する大阪の下町にある在日コリアンの焼き肉屋「ドラゴン」.
父・龍吉は済州島の出身で、戦争で左腕を失った.先妻との間の二女と後妻・英順の連れ子美花,英順との間の子・時生と暮らしている.3
今日は次女・梨花と同じ在日の哲夫の結婚式だというのに,役所の差別的言辞に怒った哲夫が結婚届を破ってしまい,梨花と哲夫が大げんかをしながら戻って来る.長女の静花が二人を仲直りさせるが,哲夫は以前は静花の恋人だったらしい.静花は店の客・尹に好意を持たれている.三女・美花は歌手を目指しクラブのマスター長谷川と恋仲だが,長谷川には妻がいる.5
中学生の時生は父の計らいで進学校に通っているが,いじめに遭って失語症に陥っている.この一家の,時代に翻弄されながら生きていく姿を描く映画.
物語は家族の生い立ちや男女の確執の変転を追ってテンポ良く展開し,間断するところがない.4
俳優達それぞれが達者な演技を示すが,特に両親を演じるイ・ジョンウンとキム・サンホの存在感は圧倒的.終盤,美花に長谷川が求婚する場面での龍吉の訥々とした日本語の台詞には,涙を禁じ得なかった.
登場人物達は個々の事情で最後には別れ別れになっていくが,それぞれが逞しく生きていくことを示唆するラストシーンは感銘的である.映画らしい映画,見て損はなし.
★★★★☆(★5個が満点)
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2019/01/27

番外:独断的歌舞伎感想文 2019年1月壽 初春大歌舞伎 夜の部 絵本太功記/勢獅子/松竹梅湯島掛額

日記:2019年1月某日
歌舞伎座で「壽 初春大歌舞伎 夜の部 絵本太功記/勢獅子/松竹梅湯島掛額」を見る.Kabukiza_201901_fff_e9ef5e56968372e
「一、絵本太功記(えほんたいこうき) 尼ヶ崎閑居の場」.出演:武智光秀(吉右衛門),操(雀右衛門),初菊(米吉),武智十次郎(幸四郎),佐藤正清(又五郎),真柴久吉(歌六),皐月(東蔵).「二、勢獅子(きおいじし)」.出演:鳶頭(梅玉),鳶頭(芝翫),芸者(雀右衛門),芸者(魁春).福森久助 作「三、松竹梅湯島掛額(しょうちくばいゆしまのかけがく) 吉祥院お土砂の場 四ツ木戸火の見櫓の場・浄瑠璃『伊達娘恋緋鹿子』」.出演:紅屋長兵衛(猿之助),八百屋お七(七之助),小姓吉三郎(幸四郎).
絵本太功記は配役は5年前に見た時とほぼ同じ,母の死と息子の討ち死にを眺めながら微動だにせず舞台を支配する,吉右衛門の存在感が素晴らしい.幸四郎と米吉の情愛も心に残る.
勢獅子はお正月らしく明るく楽しい.若手で中村鷹之資が獅子舞で出ている.もう19歳なのだ.小柄なのは富十郎に似たのだろうか.
松竹梅湯島掛額は1幕目がドタバタ喜劇で,猿之助その他のギャグがテンポ良く抱腹絶倒.2幕目はお七の悲劇,七之助の人形振りの踊りが素晴らしい.
見応えある夜の部だった.
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番外:独断的歌舞伎感想文 2019年1月 新春浅草歌舞伎 1部2部

日記:2019年1月某日
「新春浅草歌舞伎 1部2部」を見る.Asakusa_2019f4_9d0f304853b1d7c8f260
第1部 お年玉〈年始ご挨拶〉.「一、戻駕色相肩(もどりかごいろにあいかた)」.出演:浪花の次郎作実は石川五右衛門(中村歌昇),禿たより(中村梅丸).吾妻の与四郎実は真柴久吉(中村 種之助).「源平布引滝二、義賢最期(よしかたさいご)」.出演:木曽先生義賢(尾上松也),下部折平実は多田蔵人行綱(中村隼人),進野次郎宗政(中村橋之助),御台葵御前(中村鶴松),待宵姫(中村梅丸),矢走兵内(中村種之助),小万(坂東新悟).岡村柿紅 作.「三、芋掘長者(いもほりちょうじゃ)」.出演:芋掘藤五郎(坂東巳之助),友達治六郎(中村橋之助),息女緑御前(坂東新悟),腰元松葉(中村鶴松),菟原左内(中村歌昇),魁兵馬(尾上松也).
第2部.お年玉〈年始ご挨拶〉.「一、寿曽我対面(ことぶきそがのたいめん)」.出演:曽我五郎時致(尾上松也),曽我十郎祐成(中村歌昇),小林朝比奈(坂東巳之助),大磯の虎(坂東新悟),鬼王新左衛門(中村隼人),化粧坂少将(中村梅丸),工藤左衛門祐経(中村錦之助).岡本綺堂 作.「二、番町皿屋敷(ばんちょうさらやしき)」.出演:青山播磨(中村隼人),腰元お菊(中村種之助),腰元お仙(中村鶴松),放駒四郎兵衛(中村橋之助),後室真弓(中村錦之助).「三、乗合船惠方萬歳(のりあいぶねえほうまんざい)」.出演:萬歳(坂東巳之助),才造(中村種之助),白酒売(坂東新悟),大工(中村隼人),女船頭(中村橋之助),芸者(中村鶴松),子守(中村梅丸),若旦那(中村歌昇),通人(尾上松也).
今回の浅草は踊りが楽しかった.踊りのことなど何も知らない小生がいうので当てにはならぬが,芋掘り長者のラストシーンの楽しさ(芋掘り踊りを,お姫様や腰元からライバルの若殿達までラインダンスで踊り始める),乗合船惠方萬歳の充実感(全員が短い踊りを披露しあうのだがいずれ劣らぬ手練れ揃い)はなかなかのものだ.
一方番長皿屋敷の緊張感はどうだろう.これはやはり岡本綺堂の戯曲が余程良いのだ.幸せの絶頂から絶望に引き落とされるお菊,一片の曇りも無い潔白を菊に疑われた青山播磨の無念さ.これを演じる隼人と種之助の芝居が素晴らしく見応えあり.
新悟,橋之助も充実感あり,鶴松が美しく今後への期待が大.
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2019/01/18

独断的映画感想文:アウトレイジ 最終章

日記:2019年1月某日
映画「アウトレイジ 最終章」を見る.1
2017年.監督:北野武.
出演:ビートたけし(大友),西田敏行(西野),大森南朋(市川),ピエール瀧(花田),松重豊(繁田),大杉漣(野村),塩見三省(中田),白竜(李),名高達男(白山),光石研(五味),原田泰造(丸山),池内博之(吉岡),津田寛治(崔),金田時男(張),中村育二(平山),岸部一徳(森島).3
済州島に遊びに来ていた日本のやくざ花菱会の花田は,ホテルに呼んだ女とトラブった挙げ句,地元のやくざの若い者を殺してしまう.日本に逃げ帰った花田は,済州島を仕切っている韓国のやくざ・張に詫びを入れに行くが相手にもされない.
2
花菱会会長の野村は,これを奇貨として張への攻撃を花田に命じる一方,花田のカシラ・西野を処分する様,西田の手下・中田に命じる.中田は野村の指示を受けると見せて西野と通じ,野村への反撃の機会を待つ.
一方済州島で張の庇護下にあった大友は,花田に若い者を殺された復讐に,日本に潜入し花菱会殲滅の機会を窺う….
4
このシリーズの最終章,武闘派やくざ・大友の最後の活躍を描く.北野監督得意のやくざ抗争ものだが,前回作に比べれば緊張度は低く,プロットの構成もいまいち.
老ヤクザ大友の暴力性の魅力は相変わらずだが,相手となる花田や野村が存在が軽すぎて面白くない.以前には暴力性の裏には悲哀が見て取れたが,今回はそういう陰も感じられない.

5
俳優で見応えがあったのは,西田敏行と白竜,金田時男くらいか.
★★★(★5個が満点)
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