独断的映画感想文:国宝
日記:2025年6月某日
映画「国宝」を見る.
2025年.監督:李相日.撮影:ソフィアン・エル・ファニ.音楽:原摩利彦.
出演:吉沢亮(立花喜久雄),横浜流星(大垣俊介),高畑充希(福田春江),寺島しのぶ(大垣幸子),森七菜(彰子),三浦貴大(竹野),見上愛(藤駒),黒川想矢(喜久雄(少年時代)),越山敬達(俊介(少年時代)),永瀬正敏(立花権五郎),嶋田久作(梅木),宮澤エマ(立花マツ),中村鴈治郎(吾妻千五郎),田中泯(小野川万菊),渡辺謙 (花井半二郎).
長崎に珍しく雪が降った1964年元旦,立花組は料亭で盛大な新年会を開き,組長の息子で15歳の喜久雄は余興の舞踊「関の扉」を,招待客の歌舞伎役者・花井半二郎の前で見事に踊った.ところがその直後,ヤクザの抗争によって父は殺される.喜久雄は花井半二郎に引き取られ,同い年の半二郎の息子俊介と共に,歌舞伎の修行に明け暮れることになった.
仲も良く互いに切磋琢磨しながら成長していく二人,21歳の時,二人で踊った舞台を見た興業会社の社長の口利きで,二人は京都の歌舞伎の大舞台で,二人道成寺を踊ることになる.踊りは大成功,二人は一躍人気者となる.ある日半二郎は交通事故で,予定していた曽根崎心中の舞台に立てなくなった.代役に誰を立てるのか?半二郎が選んだのは喜久雄だった….
原作は吉田修一のベストセラー.数奇なめぐりあわせから生涯のライバルであり盟友となった,御曹司俊介と芸の天才喜久雄との,波瀾万丈の運命を描く3時間の大作.この作品の魅力は,なんといってもその構造にある.スクリーンの上で,俳優の演じる歌舞伎役者が,その個人の葛藤を孕みつつ役の性根を演じきって行く.観客は曽根崎心中のお初に感動しつつ,お初を演じる喜久雄の芸に(そしてそれを演じている吉沢亮の演技に)心を動かされている,そのメタ構造がスリリングで魅力的.
歌舞伎役者役を演じる吉沢亮,横浜流星,渡辺謙,田中泯がいずれも素晴らしい.その他の俳優たちもそれぞれに魅力的.宮澤エマの美しさ,寺島しのぶの存在感,またクレジットされていないが終盤に現れる瀧内公美も素敵.
そしてこの映画のもう一つの魅力は映像と音楽だ.「アデル、ブルーは熱い色」で見たソフィアン・エル・ファニの,ワンシーンワンカットをゆるがせにしないカメラは実に見事.また,原摩利彦の感情をゆすり上げるような音楽も,素晴らしい.映画としても物語としても重厚・骨太な作品,見応え充分.
★★★★☆(★5個が満点).
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