November 15, 2009

独断的映画感想文:スプリングフィールド銃

日記:2009年11月某日
映画「スプリングフィールド銃」を見る.3
1952年.監督:アンドレ・ド・トス.
出演:ゲイリー・クーパー,フィリス・サクスター,デヴィッド・ブライアン,ロン・チェイニー・Jr,ポール・ケリー,フィル・ケリー,グイン・ウィリアムズ,ジェームズ・ミリカン,アラン・ヘイル・Jr,マーティン・ミルナー.
南北戦争下の北軍の砦.
北軍の総攻撃に向け馬を集めては輸送を試みるが,ことごとく南軍に待ち伏せされ馬を奪われてしまう.陸軍省ではこの事態に頭を抱えている.
新任のカーニー少佐が新しい山越えのルートで輸送を試みるが,何故かこれも待ち伏せを食う.多勢に無勢カーニーは馬を放棄して撤退するが,部下から敵前逃亡で告発され軍事裁判で有罪を宣告されて軍から追放される.
カーニーは彼を告発した部下との確執から罠に落ちて逮捕され,絞首刑となる前夜,馬泥棒と共に脱走に成功,馬泥棒の一味に身を投じて活動を開始するのだった….1
とここまで話すと誰もが判る様にカーニーは逆スパイである(そのことは割に早く観客に知らされる).
そのカーニーが情報漏洩のもとを掴み告発しようという寸前,彼の正体がばれ,彼に逆スパイとしての指示を出していた陸軍省の将校が殺される.カーニーが逆スパイとして活動していたことを知る者はなくなり,彼は正真正銘の裏切り者として処刑されることになる.
さあこの絶体絶命の状況をカーニーはどうするか?
ということで筋書きは今時ならTVドラマ並み,人間ドラマとしてもそれほど深みはないが,まあゲーリー・クーパーがかっこ良いの一言に尽きる.2
ところでほとんど意味もなく登場して消えていった思わせぶりな「探偵」はナンだったのかしら?
★★★(★5個で満点)
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独断的映画感想文:容疑者Xの献身

日記:2009年11月某日
映画「容疑者Xの献身」を見る.X1
2008年.監督:西谷弘.
出演:福山雅治(湯川学),柴咲コウ(内海薫),北村一輝(草薙俊平),松雪泰子(花岡靖子),堤真一(石神哲哉),ダンカン(工藤邦明),長塚圭史(富樫慎二),金澤美穂(花岡美里),益岡徹(葛城修二郎),林泰文(柿本純一),渡辺いっけい(栗林宏美),品川祐(弓削志郎),真矢みき(城ノ内桜子).
顔は潰され指紋も消された男性死体が発見される.
本庁の内海・草薙のコンビも出動し捜査にあたる.程なく身元は判明し,その男の別れた妻花岡康子が容疑者として浮かぶが,彼女には鉄壁のアリバイがあった.
彼女のアパートの隣に住む石神は湯川の学生時代の旧友だった.
内海・草薙に協力を依頼された湯川は石神がこの事件に関与しているとの疑いを深める….
実はこの映画の冒頭は花岡靖子による殺人シーンである.観客は彼女が犯人であることを知ってるのだ.
しかし彼女には鉄壁のアリバイがあるという.いったい何故なのか?
隣室に住み彼女に憧れている石神がどのようなトリックを使ったのか,湯川はそれを暴けるのか,という物語が進行する.X3
その物語は,湯川・石神が実はかっては互いに心を開いた無二の親友だったという設定のもとに興味深く進展する.堤真一の演技は秀逸.俳優では他に松雪泰子と長塚圭史が素敵.
問題はこの映画に,連続ドラマの常連メンバーとしてたいした意味もなく出入りする湯川,内海をはじめとする大勢の人物が,全く整理されていない点ではないだろうか.
それが映画の緊張感を著しく損なっている.
TVドラマのシリーズの1作として作らず,単独の映画としてこの原作を映画化するべきではなかったか,という気がしてならない.X2
この映画はトリックの性格上観客にわざとある種の情報を知らせないでいる.その点も気になったし,花岡と石神のアパートとして設定されている住居が,どう考えても人目に付かずに死体を始末することが不可能な設定にあることも気になった(部屋の唯一のドアは深夜でも交通の途絶えない大通りに直接面しているのだ).
それやこれやで★★★☆(★5個で満点).
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November 02, 2009

独断的映画感想文:ウォーリー

日記:2009年11月某日
映画「ウォーリー」を見る.Walle1
2008年.監督:アンドリュー・スタントン.
アニメーション.
荒涼とした未来の地球.林立する廃墟のビルの中にはゴミで出来たビルがあるのが判る.
700年間働いているゴミ処理ロボット・ウォーリー.
同僚は皆錆び付き故障して,今や現役なのは彼一人である.毎日ゴミを拾っては体内で圧縮して圧し固め,その固まりを積み上げていく.
夜になるとコンテナの自宅に戻り,キャタピラを脱いでくつろいで,古い人間の映画を見る.仕事の合間に集めた気に入ったコレクションが自宅には満載である.
ところがある日宇宙船がやってきて,ぴかぴかの白いロボットを残して去っていった.
最新式のそのロボットはあちこちを調査している様だが,怪しいものには容赦なく発砲する気の強い面もある.しかしウォーリーはその「イブ」というロボットに憧れ,遂に友達になることに成功するのだが….Walle2
地球をゴミの山にして去っていった人類の宇宙船は,実は少し先の宇宙空間にあり,人類は機械にかしずかれ安穏な日々を送っていた.イブが地球から採集して戻った植物は,地球の生命復活の印と見られたのだが,人類は700年に及ぶカウチポテト生活のためすっかり変貌して,今や満足に歩くことも出来なかった….
前半では孤独なウォーリーがイブに出会い恋に落ち,後半はウォーリーとイブの活躍による人類の帰還を描くこのアニメ,物語の展開のテンポが良く,最後まで一気に見た.
ウォーリーとイブの性格付けとその描き方が秀逸である.
ウォーリーのゴキブリを唯一の友とするその寂しい生活,ささやかな趣味を楽しみに毎日を元気に働くそのけなげな生き方,臆病なくせに好奇心いっぱいのその性格が可愛い.Walle3
一方のイブも高ビーな女と見えて実は結構純情なのが気に入った.
それに比べると描かれている人間には全く共感できない.地球をゴミの山にしたあと700年間ただデブになっていただけとは.
地球に帰ってきても1世代や2世代では立てる様にならず,滅びてしまうかもしれない.
宇宙船の中では潔癖お掃除ロボットのモー君が大好きでした.一応名前と自意識や個性があるってのが可笑しいね.
★★★☆(★5個が満点)
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November 01, 2009

独断的映画感想文:イキガミ

日記:2009年10月某日
映画「イキガミ」を見る.1
2008年.監督:瀧本智行.
出演:松田翔太(藤本賢吾),塚本高史(森尾秀和),成海璃子(飯塚さくら),山田孝之(飯塚さとし),柄本明(参事官),劇団ひとり(島田),金井勇太(田辺翼),佐野和真(滝沢直樹),井川遥(近藤医師),笹野高史(石井課長),塩見三省,風吹ジュン(滝沢和子).
「国家繁栄維持法」という法律が施行されている架空社会.
全国民は小学校入学時に1000人に1人の割合でカプセルを埋め込まれる.
該当者は18歳から24歳までの間に自動的に死を迎える.そのことで全国民は死を実感し,生の充実のために活動し国家は繁栄するというのだ.3
藤本賢吾は該当者の死の24時間前に,死亡予告証(通称イキガミ)を送達する厚生保健省の担当者.彼の葛藤と死者のために出来るだけのことをしようという活動を絡め,3人の若者の死のエピソードを描く.
翼はストリートミュージッシャン出身,遂にテレビデビューを迎えるその日に死を迎える.
滝沢直樹は引きこもり,母の和子は国家繁栄維持法を推進する右派の政治家で,息子の死を自分の選挙に利用しようとする.
飯塚さとしは幼い時に両親を事故で失い,その時失明した妹に自分の角膜を送ろうと考えている.
3者それぞれのドラマが淡々としかし丁寧に描かれ,最後まで間然するところがない.映画はしっかりと作られ,3つのエピソードの配置も納得できる.2
俳優は,かなり行き届いた配役だが,それぞれの俳優が期待にきっちり応える演技を見せてこれも素晴らしい.
母子家庭の息子を奪われる冒頭のりりぃの演技や,飯塚さくらとさとしの兄妹愛には泣かされた.
しかしこの映画には大きな欠陥がある.
1000人に一人の若者が自動的に殺されることが国家の繁栄をもたらすという虚構が,論理的にも感覚的にも受け容れ難いのだ.
この体制の維持のため思想犯と見なされた者が酷い目に遭うらしいことも示唆されるが,それもリアルさに欠ける話だ.5
この前提としての枠組みが受け容れ難いので,松田翔太の好演(無口な狂言回しと思っていたが,その存在感は印象的)にもかかわらず,その葛藤はいまいち胸に響かない.
これは原作の問題かも知れないが,惜しい欠陥である.
★★★☆(★5個が満点)
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番外・独断的歌舞伎感想文:京乱噂鉤爪

日記:2009年10月某日
歌舞伎「京乱噂鉤爪(きょうをみだすうわさのかぎづめ)二幕十二場― 人間豹の最期 ―市川染五郎宙乗り相勤め申し候」を見る.Photo
(出演)松本幸四郎,中村翫雀,市川高麗蔵,松本錦吾,澤村鐵之助,中村歌江,中村松江,市川染五郎,中村梅玉.
昨年11月に見た「江戸宵闇妖鉤爪えどのやみあやしのかぎづめ― 明智小五郎と人間豹 ―」の続編である.
幕末の京都,えーじゃないかが流行る都に人間豹が出現,と言う設定で幕が開く.
舞台は元人形師で今は雑貨を商う「きはもの屋」.主人甲兵衛は名人とうたわれた先代の作った人形を売りつないで店を持たせている.
その妹大子は本名みすずだが大女なので通称大子,彼女が愛して止まぬ先代の名作人形花がたみを,甲兵衛は最近羽振りの良い陰陽師鏑木幻斎に売りつけようとしている.
実は鏑木幻斎は天下をうかがう野心家で,その手先に江戸から流れてきた人間豹を使おうという魂胆.一方先代のもとで修行した一番弟子が実は明智小五郎という設定で,鏑木幻斎と人間豹,大子と明智,美貌の人形が織りなす不思議の物語.
前作と違う点は,竹本や義太夫を多用して少しでも歌舞伎らしさをにじませようという演出上の苦心か.
もうひとつ大きく違うのは,人間豹が行きずりの殺人は犯すが物語に絡む人を誰も殺さない点だ.殺人はもっぱら鏑木幻斎やその手下の女隠密,浪士によって行われる.
巨悪は鏑木幻斎であって人間豹は所詮不幸な殺人鬼に過ぎない.終局での幸四郎=明智の思い入れたっぷりの人間豹への呼びかけも,それを踏まえていればこその哀悼であろう.
染五郎は大子が面白かったが,肝心の人間豹は,扮装と早変わりが災いして,果たして本人が演じているのかどうかよく分からず.
特筆すべきは花がたみを演じた中村梅丸君と「きはもの屋」の丁稚を演じた松本錦成君であろう.両名とも子役よりは年かさながら立派な芝居.先行きが楽しみである.
6月には松本金太郎君初お目見えの介添えで脂汗を流していた松本錦吾が,のびのびと小悪党甲兵衛役を演じていたのも印象的.
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October 21, 2009

帰れない二人

「帰れない二人」は井上陽水のヒットアルバム「氷の世界」の3曲目である.51d1ou7ihdl__ss500_
「氷の世界」は1973年のリリース,100万枚を超える大ヒットとなり井上陽水は一気にポップス界のカリスマスターとなった.それまでギター1本で弾き語るイメージのあった陽水は,このアルバムでそれまでになかった豪華絢爛な楽曲の世界を切り開いた感じがしたものだ.
特に冒頭の「開かずの踏切(氷の世界バージョン)」「はじまり」,そして「帰れない二人」の3曲はまさに,井上陽水の華麗な世界のはじまりを告げる様に思えた.
ところで「帰れない二人」は極めて豪華なメンバーで制作されている曲だ.
作詞・作曲は陽水と忌野清志郎の合作で,編曲はモップスのギタリスト星勝である.ベースが細野晴臣,ピアノ深町純,リードギターが高中正義.そうそうたるメンバーだが皆まだ若かった.
ギターの前奏に続いて始まる歌は実に伸びやかで,2番の歌唱からピアノがそれに絡む.2番が終わるとリードギターの間奏,ピアノの間奏,そして両者の絡みでエンディングにいたる.その印象は,それまで馴染んでいた四畳半フォークやブルース系のフォークとは全く異なる世界が開けた感じがして,それまで拘りを持っていた何かから抜け出せた様な開放感があった.
先日NHKで放映された井上陽水特集で本人がこの詩を作った時のことを語っていた.
当時陽水が住んでいた三鷹のアパートに清志郎が来て,夜,二人で詩を作ったそうである.作詞は難航して清志郎は遅くに帰り,結局1番の歌詞を陽水がまとめ2番の歌詞はそれを電話で聞いて清志郎が作ったという.
ところで僕はその三鷹のアパートに,実は星勝もいたのではないかと,それを聴いて思ったのだ.
詩が出来ずにあーだこーだと夜遅くまでご託を並べ続ける二人に呆れて,彼は先に帰ったのではないか?
だってそれは歌詞にはっきり書いてあるじゃないですか.「もう星は帰ろうとしている.帰れない二人を残して(1番の最後)」ってね.
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October 20, 2009

独断的映画感想文:罪とか罰とか

日記:2009年10月某日
映画「罪とか罰とか」を見る.5
2008年.監督:ケラリーノ・サンドロヴィッチ.
出演:成海璃子(円城寺アヤメ),永山絢斗(恩田春樹),段田安則(加藤吾郎),犬山イヌコ(風間涼子),山崎一(常住),奥菜恵(マリィ),大倉孝二(立木),安藤サクラ(耳川モモ),市川由衣,徳井優,佐藤江梨子,田中要次,高橋ひとみ,麻生久美子,石田卓也,串田和美(海藤副署長).
売れないアイドル・円城寺アヤメは自分の載ったグラビア雑誌を見ようとコンビニへ.ところが自分の載ったページは何故か逆さまに印刷され鼻の下には黒い汚れが.1
その雑誌を買おうとするが何故か財布を忘れていたアヤメは,万引きしようとしてあっさり捕まる.
駆けつけたマネージャーと一緒に平身低頭していると,来合わせた警官の口利きで何故か一日署長をすることに.
そのコンビニで変な買い物をする羽目になった加藤五郎は,目の前にスリップ一枚の女性がマンションから落ちてきて吃驚,飛び出した路上でダンプにはねられ瀕死の重傷を負う.
何故か目の前にあったスケッチブックに何ごとかメモして,必死でそれを渡した相手は傷心のアヤメであった.
一方そのマンションの一室では良からぬ相談に熱中する男女3人組がいて….3
最初はばらばらで脈絡もないと見えるいくつかのシークエンスが,映画の進行と共に次々と結びついて,意外な大団円を迎えるという,「ショート・カッツ」とか「パルプ・フィクション」等を想起させる,但ししっかり脱力系のコメディ.
完全な負け組アイドルアヤメが,「一日署長」という偶然を軸に大団円にいたる過程が面白い.
この映画の肝は何と言ってもキャスティングで,まあ個人的には辛酸ナメ子状態の成海璃子チャンが理屈抜きに素敵だが,段田安則を2度も跳ねとばすダンプの助手席で自己中かつアンニュイに構えている麻生久美子,半裸の転落死体を演じる佐藤江梨子(他には考えられない-失礼!)等,豪華な配役に呆然とする.4
切れまくる奥菜恵も新鮮でした.
偶然,一日署長アヤメの世話役になった刑事がアヤメの元彼でしかも連続殺人犯なのだが(そのことはアヤメだけが知っている),それを演じる永山絢斗の不思議な爽やかさも素敵.
彼が去っていくラストシーンもこの映画らしく,印象的でした.2
予想とは大分違ったが,見て損は無し.あと少しテンポが良ければ,「映画ってこうでなくっちゃ」と言えるだろう.
★★★★(★5個が満点)
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独断的映画感想文:パンドラの匣

日記:2009年10月某日
映画「パンドラの匣」を見る.003_2
2009年.監督:冨永昌敬.
出演:染谷将太(ひばり),川上未映子(竹さん),仲里依紗(マア坊),窪塚洋介(つくし),ふかわりょう(固パン),小田豊(越後獅子),杉山彦々(かっぽれ),KIKI(大月キヨ子),洞口依子(ひばりの母),ミッキー・カーチス(場長).
敗戦直前,結核にかかっていた青年利助は,玉音放送を聞いて新しい人間に目覚めようと決心.結核を治すため,山奥の健康道場に入院する.002
ここはちょっと変わった施設,患者はそれぞれ道場内でのあだ名で呼ばれ,看護助手達の介護を受けながら独特の体操やマッサージをする.利助も「ヒバリ」とあだ名をつけられ療養に励む.
詩人の「つくし」が退院すると入れ替わりに,新しい婦長の「竹さん」が赴任.「つくし」に憧れていた助手の「まあ坊」は「ヒバリ」にもなついているが,「ヒバリ」は「竹さん」が気になっている.
「ヒバリ」はそのような道場の様子を「つくし」に手紙で書きつづるのだった….001
絶望的な戦争が終わり,死と直面しながらも希望をもって療養する患者達の,未だ戦争を色濃く引きずった生活を描く.映画は独特の雰囲気を持ち,象徴的な動きで登場する郵便配達夫や,夜の道場の夢の中の様な映像が印象的だ.菊池成孔の音楽も素晴らしい.
俳優では川上未映子,仲里依紗,KIKIらの女優陣が魅力的だった.
染谷将太はやや年齢不詳で,中学生とも青年ともとれるところが少し不満.
窪塚は相変わらず存在感がある.004
映画らしい魅力に富んだ作品.
★★★☆(★5個が満点)
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October 18, 2009

独断的映画感想文:ウォンテッド

日記:2009年10月某日
映画「ウォンテッド」を見る.Wanted1
2008年.監督:ティムール・ベクマンベトフ.
出演:アンジェリーナ・ジョリー(フォックス),ジェームズ・マカヴォイ(ウェスリー・ギブソン),モーガン・フリーマン(スローン),テレンス・スタンプ(ペクワースキー),トーマス・クレッチマン(クロス),コモン(ザ・ガンスミス).
仕事ではデブの女性上司にいじめられ,恋人は同僚と寝ているのに文句も言えず,口から出るのはアイム・ソーリーという気弱な駄目男ウェスリー.
しかしある晩,コンビニで美女と出会うや謎の男の銃弾に襲われる.
美女はそれに応戦,店内の撃ち合い後カーチェイスとなり,ウェスリーは美女に指示されるまま車を運転.凄まじいカーチェイス後男は追跡を諦め,美女フォックスはウェスリーをアジトに案内する.
現れたスローンという男は,その組織がフラタニティという暗殺組織だとあかし,ウェスリーの行方不明の父がその組織員でウエスリー自身も暗殺者の素質があると言う.ウエスリーはその男の勧めで組織に入り,フォックスの指導を受けることになるのだが….Wanted2
凄まじいカーアクションと銃弾の特殊撮影の予告編が有名なこの映画,アクション的には充分楽しめます.
特に冒頭のカーチェイスは凄まじい.
でもそのアクションをつなぐ物語は少し薄め.
僕が納得がいかないのはフラタニティに降りてくる暗殺指令の仕組みだ.織物の断片として示されるその指令は,いったい誰が出しているのか.それを何故信じて暗殺が出来るのだろうか.Wanted3_2
もう一つ理解できないのは,最終局面でのフォックスの行動である.その時までに解き明かされた謎に照らして,何故あの行動があり得るのか.全く意外であり受け入れがたいものだ.
そんなこんなで★★★(★5個が満点)
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October 03, 2009

独断的映画感想文:トウキョウソナタ

日記:2009年9月某日
映画「トウキョウソナタ」を見る.Tokyosonata1
2008年.監督:黒沢清.
出演:香川照之(佐々木竜平),小泉今日子(佐々木恵),小柳友(佐々木貴),井之脇海(佐々木健二),井川遥(金子先生),津田寛治(黒須),児嶋一哉(小林先生),役所広司(泥棒).
佐々木竜平は大会社の総務課長,しかしあっけなくリストラの憂き目にあう.
父親の権威を大事に思う彼は失業が言い出せず,出勤のふりをしてハローワークに通うが,彼に相応しい就職口はなかなか見つからない.
給食施設で高校の同級生黒須と出会ったが,彼も失業者だった.黒須も家族を欺いていたが,ある日あっけなく妻と無理心中してしまう.
竜平の家では長男・貴が突然米軍に入隊したいと言いだし,次男健二はピアノを習いたいと言い出す.竜平の反対にも拘わらず二人ともその意を通そうとするのだった….Tokyosonata2
崩壊していく家族のそれぞれの死と再生を巡る現代の寓話.
普通にはあり得ない出来事が次から次へと起こる.
そもそも竜平のリストラがそうだ.総務部門が中国に移るに伴いリストラがあるとして,そのことを当の総務課長が知らないということはあり得まい.
貴の米軍志願も如何にも唐突だ.健二がピアノの天才だとしても,小学校高学年まで何の訓練もしなかった少年が,数ヶ月で人を感動させるほどのピアノを弾くことはあり得ない.
つまりこの映画は寓話なのだが,それでも寓話の持つリアリティが観客を映画に引きずり込む.
冒頭のリストラ劇は,脛に傷持つ中高年にとっては見辛いところだ.見ていて心が痛い.
しかしところどころに仕掛けられたユーモアや,俳優達の好演によって最後まであっという間に見た.
印象的なのは小泉今日子だ.Tokyosonata4
家族のそれぞれが直面する死と再生の中で,彼女の直面するものが最もドラマチックなものであろう.海浜のボート小屋の一夜とその夜明けのシーンは印象的.
音楽の使い方が効果的で,最後のピアノ演奏のシーンとそこでの竜平の涙は感動的だ.
後に残る映画らしい映画.
★★★★(★5個が満点)
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September 27, 2009

独断的映画感想文:カムイ外伝

日記:2009年9月某日
映画「カムイ外伝」を見る.07
2009年.監督:崔洋一.
出演: 松山ケンイチ(カムイ),小雪(スガル(お鹿)),伊藤英明(不動),大後寿々花(サヤカ),イーキン・チェン(大頭),金井勇太(吉人),芦名星(ミクモ),土屋アンナ(アユ),イ・ハソン(カムイ(少年時代)),山本浩司,PANTA(絵師),佐藤浩市(水谷軍兵衛),小林薫(半兵衛).
白戸三平の劇画の映画化.
非人としての階級社会の最下層の苦しみから抜けるため忍びとなったカムイ,しかしその忍びの組織も命じられるまま人殺しを重ねるためのものだった.03
その組織を脱出し,抜け忍としてかっての仲間に追われるカムイ,自ら編み出した秘術で追っ手の追忍を倒す.
ある日領主の馬の足を切り落として逃亡する漁師半兵衛を救った縁で,カムイは半兵衛の村の漁師として働く様になる.
その村にはかってカムイも追忍として戦ったことのある抜け忍スガルが,半兵衛の妻お鹿として暮らしていた.カムイに油断せず隙あらば倒そうと狙うスガル,一方その子サヤカはカムイを慕い恋心を抱く様になる.
密告により捕らえられ磔になろうとした半兵衛を,カムイとスガルは刑場を襲い奪い返す.01
船で逃亡し先島にたどり着いた半兵衛一家が鮫に襲われたとき,忽然と現れた大帆船に乗る渡り衆に救われたのだが….
この映画のネット上での評判は惨憺たるものである.
中には「カムイ伝」と「カムイ外伝」の区別も判らず突っ込んでいるレビューも見受けられるが,それにしても悪評だ.
しかし見る限りこの映画はそこまで言われるほどのことはない.
個人的にはこの映画は好きである.時間を忘れて引き込まれた.
何より松山ケンイチの胸のすく様なアクションが良い.軽快な身のこなしやテンポ良く疾走する動きは,僕の「忍び」のイメージに限りなく近い.
小雪のスガルをはじめとする半兵衛一家の面々も共感できる.伊藤英明の不動はちょっと豪傑笑いが過ぎるが,まずまずの出来.02
私見ではこの映画,カムイの絶対的な孤独感や猜疑心がもっと突っ込んで描けていれば良かった.そのためにはユーモアある場面(例えば唯一あったのは,渡り衆に先島の老婆達が媚びを含んで迫り,渡り衆の猛者が思わず引くシーン)や悲哀の感情をより豊かに織り込んで欲しかった.
CGやワイヤー・ワークの出来は良いに越したことはないが,本質的な問題ではない.
エンドロールでの幸田未來の唄は最悪である.一応時代劇なのだから,それに合う音楽で締めるべきだろう.
僕にとって「カムイ外伝」体験は「カムイ伝」に先行して始まった(「ガロ」など読まない年代の僕にとって,少年サンデーに連載された「外伝」がカムイとのファーストコンタクトだった).
この連作は強烈な印象を僕に残している.09
特に「九の一」における哀切な幕切れは,未だに記憶に鮮やかだ.
白戸三平のこのシリーズは,リズムや音楽さえ画面から感じられるほどで,作者の力量を改めて感じさせられたものである.それに比べればこの映画はまだまだ.
★★★☆(★5個が満点)
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«独断的映画感想文:007/慰めの報酬