2018/11/18

独断的映画感想文:ザ・サークル

日記:2018年11月某日
映画「ザ・サークル」を見る.1
2017年.監督:ジェームズ・ポンソルト.
出演:エマ・ワトソン(メイ・ホランド),トム・ハンクス(イーモン・ベイリー),ジョン・ボイエガ(タイ・ラフィート),カレン・ギラン(アニー・アラートン),エラー・コルトレーン(マーサー),パットン・オズワルト(トム),グレン・ヘドリー(ボニー),ビル・パクストン(ビニー).2
難病の父を抱え,水道会社のコールセンター勤務でくすぶっていたメイは,友人アニーの誘いでSNSの大手会社「サークル」の面接を受ける.無事合格したメイは仕事は相変わらずコールセンター業務だが,完備した福利厚生や,フレンドリーな従業員関係に気分一新,溌剌と仕事に励む.3
一方サークルは従業員に自身の生活を週末も含め全面的にSNS上にアップする様求め,それに応えたメイは思わぬ事件で幼馴染みのマーサを傷つけてしまう.失意のメイはカヤックで夜の海にこぎ出し遭難するが,SNSユーザーの通報で救助される.
4
この件を社内集会で告白したメイは,新たに開発された超小型カメラ:シーチェインジを装着して自らの全生活を公開すると宣言する.この結果フォロワーは一千万を超え,メイは一躍寵児となりトップ会議にも出席できる様になるが….
5
個人が自ら望んで明るい監視社会に組み込まれていく現状を描く,風刺映画.
大物俳優が出ているが,内容にはB級感がある.政治社会との関係にはリアルさが感じられないし,物語のラストでメイの今後とサークルがどうなるかは曖昧で,いささか中途半端.良い素材を扱ったとは思うのだが.
★★★(★5個が満点)
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2018/11/08

独断的映画感想文:六月燈の三姉妹

日記:2018年10月某日
映画「六月燈の三姉妹」を見る.0
2013年.監督:佐々部清.
出演:吹石一恵(平川奈美江),吉田羊(中薗静江),徳永えり(中薗栄),津田寛治(平川徹),市毛良枝(中薗惠子),西田聖志郎(有馬眞平),井上順(阿久根紀夫).
1_2
鹿児島のとあるシャッター街になりかかりの商店街,和菓子屋「とら屋」では売り上げ回復のため,六月燈に新製品を売り出そうと躍起になっていた.
六月燈は旧薩摩藩領の寺社で旧暦6月に開催されるお祭りである.
とら屋は母・惠子が前夫と離婚後再婚した職人・眞平と,離婚しているが同居している.前夫との長女・静恵は出戻りで家業を手伝い,次女・奈美江は離婚届に判を押して東京から戻ってきている.
2
眞平との間に出来た三女・栄は結婚直前に婚約を破棄し,今は妻子ある男と不倫関係にある.
そこに東京から奈美江の夫・徹がやって来た.徹は奈美江と何とかよりを戻そうと懇願するが,一家はそれどころではなく,新製品「かるキャン」の仕上げに徹にも手伝わせ必死で立ち向かう….3
ちょっと極端な設定のラブコメといった本作,鹿児島の風情,人々の姿が良く描けていて楽しい.
とら屋の各メンバーも人生経験豊富(?)なだけあって会話のやり取りも面白く,シャッター街寸前と言いながらのんびりして穏やかな商店街の人々との交流も気持ちが良い.
徹が都城出身で方言が基本一緒なのに,前夫のもとで育った奈美江だけが東京弁だというギャグも有効に機能している.
4
ほのぼのしみじみしてハッピーエンドという,日本映画の王道を行く本作,お勧めです.
★★★☆(★5個が満点)
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独断的映画感想文:光 2017・河瀬直美監督

日記:2018年10月某日
映画「(2017・河瀬直美監督)」を見る.20171_2
2017年.監督:河瀬直美.
出演:永瀬正敏(中森雅哉),水崎綾女(尾崎美佐子),神野三鈴(智子/時枝),小市慢太郎(明俊),藤竜也(北林/重三).
20173_2
美佐子は,ある映画の音声ガイドの作成を担当している.
視覚障害者に試作を何度もモニターしてもらうが,その評価は厳しい.特にラストシーン,「重三」と「時枝」の海辺のシーンは,中森から辛辣な指摘を繰り返し受ける.
美佐子は感情的に反発するが,上司の智子は中森の言葉に向き合う様,美佐子を指導する.20174_2
中森は天才的カメラマンだったが視力が低下,現在は視野に残った僅かな視界を通じ,拡大読書器や読み上げソフトの助けで意思疎通を確保している.
美佐子は智子の指示で中森の自宅に届け物をし,次第に中森と交流を重ねる様になる.中森の写真集にあった夕日の写真が,自分の実家の近くから撮ったものと気づき,一度共にその現場に行こうと約束する.
しかしある日遂に中森は完全に失明する….
20175_2
中森の失明への過程,美佐子の音声ガイドへの取り組み,二人の交流の進展が織りなして語られる物語.映画は緊張感強く,淡々とした展開ながら一気に最後まで見通した.
河瀬監督特有の,風のざわめきを伴った樹々や,野山の風景が美しい.
永瀬正敏・水崎綾女が好演,神野三鈴も素晴らしかった.映画のラスト,新たな光を得て歩き出す中森・成長した美佐子の姿に感銘を受ける.20176
完成した音声ガイドの試写会で,ガイドを朗読する樹木希林の声も印象的だった.見て損はなし.
★★★★(★5個が満点)
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独断的映画感想文:光 2017年大森立嗣監督

日記:2018年10月某日
映画「」を見る.20171
2017年.監督:大森立嗣.
出演:井浦新(黒川信之),瑛太(輔(たすく)),長谷川京子(篠浦未喜),橋本マナミ(黒川南海子),梅沢昌代(山内),南果歩(小野),平田満(洋一).
20172
離島の中学生・信之は同級生・未喜と恋仲,父親のDVに苦しみ信之を兄のように慕う輔(たすく)等と暮らす.
ある日信之は山中で旅行者の男に抱かれていた未喜と遭遇,未喜にこの男を殺してと頼まれた信之は男を殺してしまうが,その場を輔も目撃する.その夜島を津波が襲い,島は殆ど壊滅,見晴台にいた彼等3名は助かったが以降散り散りとなる.
20173
25年後,妻子もあり平穏に暮らす信之,妻南海子は浮気をしているが相手は輔だった.
やがて輔は25年前の殺人現場を撮影した写真をネタに,信之と女優として活躍中の未喜から金を得ようと動き始める….
三浦しおんの小説の映画化だが原作は未読.
20174
井浦新・瑛太の演技はさすがと思わせ,終盤の二人のシーンは迫力があったし,助演の橋本マナミ・南果歩も見応えあった.
映画は特徴ある映像と音楽が印象的だが,全体的には冗長である.長回しが多用されるが,緊張感を欠いているため見て退屈.随所に打ち込まれてくるジェフ・ミルズの音楽も,映画に合っているとは思えない.
20175
島の堕落した暮らしや,人間の業のことを描きたいと推定されるのだが,そこまで物語が煮詰まっていかない.俳優の熱演にもかかわらず,いささか残念な鑑賞結果となった.
★★(★5個が満点)
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番外:独断的歌舞伎感想文 2018年10月大歌舞伎夜の部 宮島のだんまり/吉野山/助六

日記:2018年10月某日
歌舞伎座の「10月大歌舞伎」夜の部を見る.Img_20181006_104255_burst001_cover
平成30年度(第73回)文化庁芸術祭参加公演.「一、宮島のだんまり(みやじまのだんまり)」.出演:傾城浮舟太夫実は盗賊袈裟太郎(扇雀),大江広元(錦之助),典侍の局(高麗蔵),相模五郎(歌昇),本田景久(巳之助),白拍子祇王(種之助),奴団平(隼人),息女照姫(鶴松),浅野弾正(吉之丞),御守殿おたき(歌女之丞),悪七兵衛景清(片岡亀蔵),河津三郎(萬次郎),平相国清盛(彌十郎).「二、義経千本桜 吉野山(よしのやま)」.出演:佐藤忠信実は源九郎狐(勘九郎),早見藤太(巳之助),静御前(玉三郎).「三、助六曲輪初花桜(すけろくくるわのはつざくら) 三浦屋格子先の場」.出演:花川戸助六(仁左衛門),三浦屋揚巻(七之助),白酒売新兵衛(勘九郎),通人里暁(彌十郎),若衆艶之丞(片岡亀蔵),朝顔仙平(巳之助),三浦屋白玉(児太郎),福山かつぎ(千之助),男伊達(竹松),男伊達(廣太郎),男伊達(玉太郎),男伊達(吉之丞),文使い番新白菊(歌女之丞),傾城八重衣(宗之助),遣手お辰(竹三郎),くわんぺら門兵衛(又五郎),髭の意休(歌六),三浦屋女房(秀太郎),母満江(玉三郎),後見(松之助).
宮島のだんまりは,傾城実は盗賊が厳島神社の宝物を盗み出し,清盛はじめゆかりの面々がそれを取り返そうという趣旨のだんまり.きらびやかで古風な舞台である.
吉野山は玉三郎・勘九郎の踊りが美しく,特に勘九郎は大柄な身体を生かした切れの良いシャープな踊りで,素晴らしい.すっかり魅了された.
助六は仁左衛門の好演は無論のこと,七之助の美しさと勘九郎の剽軽さが魅力的.亡き勘三郎への思いが満ちた印象的な舞台となった.
3本全てに出演し,後の2本ではいずれも滑稽な役を熱演した巳之助が敢闘賞もの.終わってみれば見応えたっぷりの夜の部だった.
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番外:独断的歌舞伎感想文 2018年10月国立劇場「通し狂言 平家女護島」

日記:2018年10月某日
国立劇場で歌舞伎「通し狂言 平家女護島」を見る.H3010kabukihonomote
序幕 六波羅清盛館の場,二幕目 鬼界ヶ島の場,三幕目 敷名の浦磯辺の場,同 御座船の場.
主な配役:平相国入道清盛/俊寛僧都(中村芝翫),俊寛妻東屋(片岡孝太郎),瀬尾太郎兼康(中村亀鶴),能登守教経/丹左衛門尉基康(中村橋之助),俊寛郎等有王丸(中村福之助),上臈松ヶ枝(中村梅花),海女千鳥(坂東新悟),越中次郎兵衛盛次/丹波少将成経(中村松江),後白河法皇(中村東蔵).
初めて見る「俊寛」の通し狂言.1幕目清盛館の場は,俊寛の妻・東屋が操を守って非業の最期を遂げるが,動き少なく不覚の寝落ち.
2幕目はついこの9月にも見たいつもの「俊寛」,芝翫の熱演は勿論,千鳥の新悟,康頼の橋吾が好演して見応えがあった.
3幕目は清盛御座船のスペクタクル,千鳥が後白河法皇を救って清盛に討たれるという,初めて知る悲劇が演じられる.
ここに至って,実は女性が主軸になっているというこの狂言の構成が理解できた.吉右衛門の「俊寛」との見比べも面白く,勉強になった本日の観劇であった.
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番外:独断的歌舞伎感想文 2018年10月大歌舞伎昼の部 三人吉三/大江山/佐倉義民伝

日記:2018年10月某日
歌舞伎座で「芸術祭10月大歌舞伎 昼の部」を見る.Kabukiza_201810_ffl_30824df3a553e07
河竹黙阿弥 作:「一、三人吉三巴白浪(さんにんきちさともえのしらなみ) 大川端庚申塚の場」.出演:お嬢吉三(七之助),お坊吉三(巳之助),和尚吉三(獅童).萩原雪夫 作:「二、大江山酒呑童子(おおえやましゅてんどうじ)」.出演:酒呑童子(勘九郎),平井保昌(錦之助),源頼光(扇雀).三世瀬川如皐 作:「三、東山桜荘子 佐倉義民伝(さくらぎみんでん) 印旛沼渡し小屋の場 木内宗吾内の場 同裏手の場 東叡山直訴の場」.出演:木内宗吾(白鸚),おさん(七之助),徳川家綱(勘九郎),松平伊豆守(高麗蔵),幻の長吉(彌十郎),渡し守甚兵衛(歌六).
十八世勘三郎七回追善と銘打った10月歌舞伎.
三人吉三は七之助・鶴松の女形勢は良かったが,巳之助・獅童がもう一息で,いささか残念.この時代の不良青年等を,彼等なりに料理したところを期待したのだが.
大江山酒呑童子は,ユーモアを含んだ飄々とした酒呑童子を勘九郎らしく演じて面白かった.
佐倉義民伝は,白鸚が自家薬籠中の演技で見応えあり.但し物語の全体構成が判りにくく,幻の長吉の出現も意味不明で,この点は評価できない.
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2018/10/01

独断的映画感想文:わたしは、ダニエル・ブレイク

日記:2018年10月某日
映画「わたしは、ダニエル・ブレイク」を見る.
2016年.監督:ケン・ローチ.
出演:デイヴ・ジョーンズ(ダニエル・ブレイク),ヘイリー・スクワイアーズ(ケイティ),ディラン・フィリップ・マキアナン(ディラン),ブリアナ・シャン(デイジー),ケイト・ラッター(アン),シャロン・パーシー(シェイラ),ケマ・シカズウェ(チャイナ).1_2
大工として40年間生きてきたダニエル・ブレイク,しかし心臓病が見つかり医師からは仕事を止められる.
公的支援の手続に行くと,当初認められた支援は,役所が委託した民間会社の「医療専門家」スタッフとの面談で取り消されてしまう.その場で役所のスタッフに不当な取扱を受けていたケイティと知り合うが,彼女は未婚の2児の母だった.
3_2
ケイティ一家を支援しつつ不服審査申請の手続も進めるが,当面は就職活動をするようにとの役所の指示が出て,やむなく役所の指定した履歴書作成講習も受け,週35時間の就職活動を律儀にこなすダニエル.しかし根拠となるエビデンスがないという理由でその活動すら役所から認められず,かえって処罰を喰らう.
一方ケイティは自身を犠牲にしての育児に疲れ,万引きに手を出してしまう….4_2
ダニエルとケイティを傷めつける役所の頑迷な保身行動は,何も英国保守党政権に限ったことではなく,我が国の現政権でも同様であろう.
この役所の,自身のルールを押し通すためにはひとの尊厳を傷つけ惨めな目に遭わせることを意に介さない様は,G.オーウェルの「1984年」を彷彿とさせるものがある.

5
主人公等を演じるデイヴ・ジョーンズとヘイリー・スクワイアーズが好演.ケイティが子供に食事を回した結果,飢えのあまりフードバンクで貰った食材をその場で口にしてしまうシーンは,涙を禁じ得ない.
またダニエルの,自身の不服審査で読み上げるための原稿も感銘的.
人間にとって尊厳が如何に大切なものかを,改めて思い出させる映画,一見の価値あり.
★★★★(★5個が満点)
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独断的映画感想文:スペースウォーカー

日記:2018年9月某日
映画「スペースウォーカー」を見る.1
2016年.監督:ドミトリー・コンスタンチーノヴィチ・キセリョフ,監修:アレクセイ・レオーノフ.
出演:エフゲニー・ミローノフ/コンスタンチン・ハベンスキー/ヴラディミール・イリイン/アレクサンドラ・ウルスヤク.
2
1965年に打ち上げられた衛星宇宙船ボスホート2号で人類初の宇宙遊泳が行われた.この映画はその搭乗飛行士:アレクセイ・レオーノフとパーヴェル・ベリャーエフの活躍を描いたもの,アレクセイ・レオーノフ自身が監修し既に亡くなっているパーヴェル・ベリャーエフに捧げられている.
計画は冷戦下であり且つアメリカとの宇宙競争のまっただ中に企画され,2年前倒しで行われることになった.関係者の必死の努力にも拘わらず,無人実験機での飛行は帰還段階で失敗し,不安を残したままボスホート2号は打ち上げられる.
3
宇宙船は無事軌道に乗り,アレクセイの宇宙遊泳はTVカメラによる生中継で全世界に送信されたが….
その直後宇宙服の不調で,一時宇宙船に帰還できなくなったこと,宇宙船内のセンサー異常で酸素濃度が過度にに上がったこと,地表帰還のための自動点火が起動しなかったこと等,次々に起こる想定外の事態に必死に対応する両飛行士の苦闘が,スリリングに描かれる.
更に地球帰還後も,手動降下による着陸地点が不明だったため当局が把握できないまま,両飛行士はシベリアのタイガ地帯で凍死の危機にさらされる.
4
両飛行士が生還できたことは歴史的事実であるにもかかわらず,この展開は誠にサスペンスフルで,ヘリコプターが遂に二人を発見した時は涙が出た.全体として緊張感高く息もつかせない展開が印象的だ.
プロローグとエピローグに現れる幼少期のアレクセイのエピソードも合わせ,ドキュメンタリー的映画の枠を越えたロシア映画の表現力を味わえる良作,極めてアメリカ的だった「アポロ13」との対比も面白いだろう.
★★★★(★5個が満点)
蛇足:アレクセイの愛称はアリョーシャである.字幕でアレックスと表記され続けたのは違和感あり.
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2018/09/24

番外:独断的歌舞伎感想文 2018年秀山祭夜の部 操り三番叟/俊寛/幽玄

日記:2018年9月某日
歌舞伎座で秀山祭9月大歌舞伎夜の部を見る.Img_20180922_210812
「一、松寿操り三番叟(まつのことぶきあやつりさんばそう)」.出演:三番叟(幸四郎),後見(吉之丞).
近松門左衛門 作 平家女護島.「二、俊寛(しゅんかん) 鬼界ヶ島の場」.出演:俊寛僧都(吉右衛門),海女千鳥(雀右衛門),丹波少将成経(菊之助),平判官康頼(錦之助),瀬尾太郎兼康(又五郎),丹左衛門尉基康(歌六).
坂東玉三郎・花柳壽輔 演出・振付.「三、新作歌舞伎 幽玄(ゆうげん) 羽衣/石橋/道成寺」.出演:天女/白拍子花子(玉三郎),伯竜/獅子の精(歌昇),伯竜/獅子の精(萬太郎),伯竜/獅子の精(種之助).
操り三番叟は幸四郎,人形振りが素敵な踊り.
Kabukiza09_shunkan
俊寛は吉右衛門円熟の舞台,従来の幕切れは手を振り船を呼び続ける演出が多かったが,今回は只呆然と虚空を凝視し続ける.感動した.瀬尾の又五郎が朗々たる声で悪役を好演.
幽玄は鼓童の和太鼓を中心とした新作舞踊,踊りを見るより音楽を聴く要素が強い感あり.玉三郎は羽衣の踊りは良かったが,一般に踊りの方はあまり感心せず.中で石橋(歌昇等)は若々しく力強い踊りあり.
幽玄はやや長く感じたが,全体には見応えある良い舞台だった.この日の3階席には,花道に人が出ると平然と前のめり・中腰になる客が多く,殆ど花道は見えなかった.なんたることだ.
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独断的映画感想文:永い言い訳

日記:2018年9月某日
映画「永い言い訳」を見る.1_2
2016年.監督:西川美和.
出演:本木雅弘(衣笠幸夫(津村啓)),竹原ピストル(大宮陽一),藤田健心(大宮真平),白鳥玉季(大宮灯),堀内敬子(大宮ゆき),池松壮亮(岸本信介),黒木華(福永智尋),深津絵里(衣笠夏子).6
作家の衣笠幸夫はTVにモデル売れっ子作家だが,最近はまともな作品が書けない.妻の夏子はヘアスタジオを主催する美容師,映画の冒頭幸夫はその夏子に髪を刈ってもらっている.
やがて散髪は終わり,夏子は親友・大宮ゆきとバス旅行へ行く.入れ替わりに愛人の編集者福永を引き込んで情事にふける幸夫.ところが夏子の乗ったバスはその夜事故を起こし,夏子とゆきは帰らぬ人となる.
夏子の死後メディアの手前を取り繕いつつ,荒れた生活を送る幸夫.遺族会で初めて会ったゆきの夫・大宮陽一と思いがけないつき合いが始まり,長距離トラック運転手である陽一の子供・真平と灯の面倒を見ることになる.
ゆきを失った大宮一家の世話をしながら陽一と議論することを通じ,自分と夏子の関係を省みる幸夫だったが….2_2
ゆきに頼り切り,ゆきの喪失を嘆き悲しみながら暮らす陽一に対し,細々と助言し面倒を見る幸夫.しかしそのことを通じて幸夫は,逆に自分にとって夏子が如何に大切だったかを,長い時間をかけて教えられていくことになる.3_2
大宮一家の人々を通じて再生していく幸夫を演じる本木雅弘が,素晴らしい.
深津絵里は短い出演ながら圧倒的な存在感,特に真平・灯と共に登場する海辺の幻のシーンには,涙を禁じ得ない.5
竹原ピストルと子役達の大宮家も素敵な演技.見て損はなし.
★★★★(★5個が満点)
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独断的映画感想文:散歩する侵略者

日記:2018年9月某日
映画「散歩する侵略者」を見る.1
2017年.監督:黒沢清.出演:長澤まさみ(加瀬鳴海),松田龍平(加瀬真治),高杉真宙(天野),恒松祐里(立花あきら),前田敦子(鳴海の妹・明日美),満島真之介(丸尾),児嶋一哉(車田刑事),光石研(鈴木社長),東出昌大(牧師),小泉今日子(医者),笹野高史(品川),長谷川博己(ジャーナリスト・桜井).
2
或る日日本で宇宙人の侵略が始まる.
宇宙人は少年・天野と少女・あきらの肉体を侵略し,一家殺害事件を起こしたあきらの取材に来た記者・桜井を「ガイド」として,地球侵攻の準備を始める.桜井は彼等が宇宙人かどうか半信半疑ながら,記者根性で協力に応じる.
鳴海の夫・真治も侵略された一人.挙動がおかしくなった真治を病院に連れて行った鳴海は既に夫と破綻しかけていたが,侵略され一見以前の夫に近くなった真治への期待を持って,「ガイド」を勤めることになる.
侵略者は人間の持つ「概念」を情報収集のために奪うが,奪われた人間はその概念を失ってしまう.そこから巻き起きる騒動を交え,3人の侵略者が邂逅して進む宇宙人の侵攻の過程を描く….3
侵略者と「ガイド」の関係が,物語の進行に伴ってどんどん変転していく独特の視点が面白い.特に,侵略者となったが本来の夫らしい個性を取り戻す真治と,再び夫にたいする溢れるような愛情を取り戻す鳴海の関係が,魅力的.演じる松田龍平と長澤まさみに見応えあり.
4
侵略者と戦う日本政府側は,ウィルス感染として対応した厚労省の担当エージェントが,縦割り行政のお陰か為す術もなく全滅するのが情けない.
ちょっと変わった侵略もの,見終わった後の気分は良い.
★★★☆(★5個が満点).
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番外:独断的歌舞伎感想文 2018年秀山祭昼の部 金閣寺/鬼揃紅葉狩/河内山

日記:2018年9月某日
歌舞伎座で「秀山祭九月大歌舞伎 昼の部」を見る.Kabukiza_201809_f5_1a273a82c98ed7_2
「一、祇園祭礼信仰記 金閣寺(きんかくじ)」.出演:此下東吉実は真柴久吉(梅玉),雪姫(児太郎),狩野之介直信(幸四郎),松永鬼藤太(坂東亀蔵),此下家臣春川左近(橋之助,同 戸田隼人(男寅),同 内海三郎(福之助),同 山下主水(玉太郎),腰元(梅花),腰元(歌女之丞),十河軍平実は佐藤正清(彌十郎),松永大膳(松緑),慶寿院尼(福助).
萩原雪夫 作,今井豊茂 補綴.「二、鬼揃紅葉狩(おにぞろいもみじがり)」.出演:更科の前実は戸隠山の鬼女(幸四郎),平維茂(錦之助),侍女かえで(高麗蔵),侍女ぬるで(米吉),侍女かつら(児太郎),侍女もみじ(宗之助),従者月郎吾(隼人),従者雪郎太(廣太郎),男山八幡の末社(玉太郎),男山八幡の末社(東蔵).
河竹黙阿弥 作.「三、天衣紛上野初花 河内山(こうちやま) 上州屋質見世,松江邸広間,同 書院,同 玄関先」.出演:河内山宗俊(吉右衛門),松江出雲守(幸四郎),宮崎数馬(歌昇),大橋伊織(種之助),黒沢要(隼人),腰元浪路(米吉),北村大膳(吉之丞),高木小左衛門(又五郎),和泉屋清兵衛(歌六),後家おまき(魁春).Kabukiza09_kouchiyama
金閣寺は児太郎が美しく口跡良く見応えあり.特に立ち姿はお姫様らしくてきれい.贔屓の松緑も良い芝居で嬉しい.復帰の福助に拍手,福助は2013年8月に歌舞伎座で見て以来である.
鬼揃紅葉狩は音楽が素晴らしい.囃子方に竹本・常磐津が入れ替わり入れ替わり加わる他,中盤では大薩摩の演奏もあり,堪能した.踊りは,もうすぐ18になる玉太郎がお祖父さんの東蔵と踊った男山八幡の末社が,若々しくて素敵だった.
河内山は吉右衛門が魅力を存分に発揮,魁春がツボにはまったお内儀役で良かった.
それぞれ魅力ある演目で誠に見応えあり.
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