undercooled
表題の「Undercooled」は,坂本龍一の新曲のタイトルである.
意味は「冷やし足りない」と言うほどの意味だろうか.今日はこの曲のご紹介.
曲はシンセサイザーと胡弓(正確には二胡というらしい)が奏でる印象的な主題でスタート,曲の最後までこの主題は繰り返される.
続いてここにラップが重ねられるが,このラップはハングルで意味は聞いても(僕には)判らない.
歌詞カードを見ると和訳がのっていて,暴力の応酬が続く世界への怒りと嘆きが唄われてることが判る.
途中で主題もラップも中断し,エレキギターによるインプロヴィゼーションが繰り広げられるが,叫ぶ様に唄うこのギターを聞いているとジミ・ヘンドリックスを思い出した.
1969年8月17日(何とまあ遙か昔のことだろう !),40万人が集まったライブフェスティバル「ウッドストック」の最終日にジミ・ヘンドリックス率いるイクスピアリアンスにより演奏された「アメリカ国歌」は,伝説の名演として記憶に残っている.
演奏が素晴らしく感銘的だっただけでなく,このときのジミの「アメリカ国歌」はその唸るギター,叩きつける様なノイズィな演奏によってアメリカがその瞬間にベトナム戦争を戦っていることを,聞くものに強烈に印象づけただろうと思ったからだ.
最後にハウリングの洪水の中からようやくアメリカ国歌の最後のフレーズに戻り,それを弾いた後のエンディングがそのまま「紫の煙」の序奏に繋がっていくあたりは,今思い出しても鳥肌が立つほどの素晴らしさだった.
さて今9.11後の世界への怒りと嘆きを表明していると思われるこの曲のギターも,なかなかの熱演(CD版も良いが僕の見たTVライブ版の方がもっと良かった).曲はこの後また主題のメロディとラップのからみに戻る.
この曲の哀調に満ちた主題,淡々と繰り返されるラップ,ギターのインプロヴィゼーションは,今僕が感じているアメリカやイスラエル(の政策)に対する嫌悪感,世界に対する無力感,自分に対する居心地の悪い・苛立たしい・しかしどうしようもないという気持ちに微妙にフィットする様に思われる.それがこの曲が印象に残る理由だろうか?
坂本「教授」は世界が暴力でオーバーヒートしているという意味でこの曲にUndercooledというタイトルを付けたようだが,1969年に比べれば世界はOvercooledではないかというのが僕の感想.
それはさておきこの曲,一聴の価値ありとご推薦いたします.
(2004年3月29日)
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