独断的映画感想文:嗤う伊右衛門
日記:2004年11月某日
映画「嗤う伊右衛門」を見る.
2003年.監督:蜷川幸雄.
唐沢寿明,小雪,香川照之,椎名桔平.
京極夏彦の原作は未読.
田宮家の一人娘岩は,美貌で気が強く激しい気性を持ちながら,病の為ふた目と見られぬ傷を顔に負う.
一方,ながの浪々の身で貧乏長屋に暮らす境野伊右衛門は,生真面目な性格だが浪人暮らしの辛酸を舐め尽くし,笑いを忘れた沈痛な男である.
偽願人坊主又市と按摩宅悦の計らいで田宮家の入り婿となった伊右衛門だが,二人は衝突しながらもやがて深く愛し合うようになる.
しかし病気前の岩に執心していた筆頭与力伊藤喜兵衛は,岩に偽りを吹き込んで身を引かせ,自分の妾を伊右衛門の妻に押しつけるのだが….
暗くおどろおどろしい画面,楽しいことうれしいことの全くないドラマの展開,何とも気の滅入る映画だが,伊右衛門と岩の心が通い出す辺りから引きつけられる.
真相を知った岩が狂乱して宅悦を打ち殺し長屋を走り出るシーンの迫力,隠亡堀で伊右衛門に出会った岩が「うらめしや,伊右衛門殿」と呟きながら二人抱き合うシーンの美しさ哀しさ.
見応えのある映画,一見の価値あり.★★★☆(★5個が満点)
コメント