独断的映画感想文:狼たちの午後
日記:2004年11月某日
映画「狼たちの午後」を見る.
1975年.監督:シドニー・ルメット.
アル・パチーノ,ジョン・カザール.
原題は直訳すると「真夏の午後」ではないか(dog dayは真夏のことらしい).題名から暗殺ものかと思ったがだまされた.原題の方が良いと思うのだが….
閉店直後の銀行に押し入った3人組,ところが一人は銃を出した段階でびびって降りてしまう.金庫室は現金を運び出した後でカラ同然,締まらないことおびただしい.
おまけにいつの間にか警官隊に包囲されている(何故そうなったかは説明不足).
残された2人は人質を取って立てこもるが,包囲の中でいつの間にかストックホルム症候群が….
結局2人はジェット機での脱出を要求,空港に車が到着したところで結末を迎える.
ベトナム帰還兵の2人,アティカの刑務所暴動で囚人看守数十名が殺された事件の直後で警官への反感も多い,ある面で気の良い犯人は人質や野次馬に人気を得ていく.
途中の動きの少ない展開はちょっと辛いが,アル・パチーノとジョン・カザールの名演は素晴らしい.
サル(カザール)はほとんど口をきかず,能面のような無表情さ,ベトナムでは優秀な兵隊だったろうことが射撃姿勢からも見て取れる.帰還後は刑務所にも入ったらしいが,「刑務所には二度と戻らない」と訴える目つきが尋常ではない.
ソニー(アル・パチーノ)は妻子があり且つ男性とも結婚し,彼を女にしてやりたいというのが強盗の動機.彼の妻も母もゲイの妻も,皆自分のことを主張するだけで彼の話に耳を傾けない.犯行中,野次馬や人質の支持を得るも,それは束の間の栄光に過ぎない.彼が心を許せるのはこの世にサルしかいないのではないか.
最後のシーンで人質に去られ,サルを失い,警官に囲まれてあたりを不安げにきょろきょろと見回すソニーの姿が印象的である.
実際にあった事件の映画化とあるが,犯人像の描写が良くできていて面白かった.★★★☆(★5個が満点)
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