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2004年12月に作成された記事

2004/12/21

独断的映画感想文:トロイ

日記:2004年12月某日
映画「トロイ」を見る.
2004年.監督:ウォルフガング・ペーターゼン.
ブラッド・ピット,オーランド・ブルーム,エリック・バナ,ピーター・オトゥール.
大味なスペクタクルかと思いきや,中身のしっかりした見応えのある映画.
ヘクトル・パリスの兄弟(この2人は「ブラックホーク・ダウン」でも競演しているのだと後で知る)とアキレス軍団の2つの軸が印象的.特にエリック・バナとブラッド・ピットが良い.この二人が(神話通りに)死ぬことで,ドラマの悲劇性が鮮明になる.
しかし戦闘シーンに馬というものがないと,絵にするのは難しいですな.
★★★☆(★5個が満点)

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独断的映画感想文:Take me out from this planet 僕は宇宙人

日記:2004年12月某日
映画「Take me out from this planet 僕は宇宙人」を見る.
2004年.監督:高橋明大.
柳沢茂樹,持山優美,飯田一弘,笠木 泉.
15分の短編映画.
僕は宇宙人,何時か迎えのUFOに乗って宇宙へ帰るんだと公言しているシゲユキ.彼の数少ない友人との交流,その本当の孤独の姿を,映画は優しい視点でしかし鮮明に描く.
最後に奇跡が起こり,シゲユキは新しい世界へと解放される.監督の映画らしい映画への数々の挑戦が素敵である.
最後の奇跡のシーンで,友人たちの映像に何か記号的な合図は必要なかっただろうか?
後で監督自身に聞いたら,これらのシーンにはちゃんとサインが隠されていたのだという.それは例えば片隅にあった一枚の野球チームのユニフォームであり,あるいは公園のケヤキの木の幹であったり.
監督!申し訳ない,気づきませんでした.
身内の映画のため点数はつけません(ココロは満点).

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独断的映画感想文:宮本武蔵 一乗寺の決闘

日記:2004年12月某日
映画「宮本武蔵-一乗寺の決闘」を見る.
1964年.監督:内田吐夢.
中村錦之助,入江若葉,高倉健,平幹次郎,佐藤慶.
吉川英治の名作の映画化だから兵法論等いろいろ出てくるが,そんなことは(今となっては)どうでも良い,決闘シーンの出来が問題なのだ.
吉岡伝七郎との一瞬の勝負も素晴らしいが,何と言っても一乗寺下り松の決闘シーンが秀逸.
よくこのようなロケ地があったものである.堂々たる下り松の周辺に広がる泥田,彼方まで朝霧の中に浮かぶ木立や丘.決闘シーンの冒頭のこの俯瞰図に圧倒される.
そういえばこの映画では,京都の街並みや,本阿弥光悦の屋敷周辺の作業場の様子等のセットにも感心する.日本映画黄金時代の力量というものだろうか?
その下り松のもとに置かれた吉岡道場の本陣を疾風の様に襲う武蔵,あっという間に7歳の名目人を含め幹部が倒されてしまう.その後野獣のように両刀を掲げて畦道を疾駆し,相手を次々に倒していく武蔵,最後には泥田を這いずりながら戦う両者.
この場面だけモノクロームで撮影された決闘シーンは,忘れることの出来ない迫力だった.
★★★★(★5個が満点)

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2004/12/08

独断的映画感想文:ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ

日記:2004年12月某日
映画「ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ」を見る.
1998年.監督:ガイ・リッチー.
ジェイソン・フレミング, デクスター・フレッチャー, スティング.
えー最初の20分くらいに以下の人たちが出てきます.
①.エディたち4人組,盗品売りでうだつが上がらず,エディの博才に一人2万5千ポンドを出して一稼ぎを目論む.
②ギャングのハリー.エディをいかさまで罠にかけ,賭博の借金50万ポンドの取り立てを迫る.
③大麻栽培グループの甘ちゃんたち.ギャング・ロリーに卸している.
④ギャング・ロリー.大麻をさばいている.
⑤隣のギャング.エディたちの隣部屋を根城とする強盗一家.大麻栽培グループを襲おうとする.
⑥間抜けな2人組.ハリーの指示である邸宅から銃を奪ってくるよう命じられている.
⑦子連れ取り立て屋クリス.律儀な取り立て屋でハリーの債権50万ポンドの回収を命じられている.
この他に酒場のマスター,スティングなんてのもいるが,とにかくこいつらが入り乱れ皆一仕事しようとするのがうまくいったり行かなかったりして狂騒的な結末までまっしぐら,というジェットコースター・ムービー.「パルプ・フィクション」にちょっと似ているが,イギリス的なひねりがきいている.
たとえばギャング同士が対決しようとするシーンで流れる「その男ゾルバ」の次第にアップテンポになっていく軽快なダンス曲.
ギャング同士の撃ち合い後流れるオルゴールの調べ(これは「夕日のガンマン」のリー・バン・クリーフとジャン・マリア・ボロンテの対決シーンのパロディかと思われるのだがどうだろう?).
最終シーンもなかなか余韻があって(?)良い感じ.面白い一見の価値ある映画.
★★★☆(★5個が満点)

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2004/12/05

独断的映画感想文:あの頃ペニー・レインと

日記:2004年12月某日
映画「あの頃ペニー・レインと」を見る.
2000年.監督:キャメロン・クロウ.
パトリック・フュジット.ケイト・ハドソン.
15歳でローリング・ストーン誌のライターとなる主人公(監督の実体験である)の,新進バンドのツアー同行記を書くロード・ムービー.
ペニー・レインはツアーに同行するグルーピーだが,彼女たち自身に言わせれば「自分たちはグルーピーじゃない.バンドに霊感を吹き込むバンド・エイドなのよ」と言うことになる.
ペニーが愛するギタリストと,ペニーを愛する主人公と,ペニーの3人の友情が軸になる.
70年代青春映画はそれだけで胸に来るものがあるが,それ以上にこの映画が魅力的なのは,音楽に対する愛情がシーンのそれぞれにちりばめられていることだ.
前夜,バンド分裂含みの喧嘩を演じ,ギタリストが薬と酒でぼろぼろになってツアーバスに戻ってきた朝,気まずい車中のシーン.エルトン・ジョンの「タイニー・ダンサー」が流れる.
優しさにあふれたこの歌がまた良いのだが,BGMと思っていたこの歌に会わせ,ベーシストが歌を口ずさみ始める.やがて一人また一人と歌に加わり,最後には仏頂面だったギタリストまでが歌い始める.
このシーンがどういう風に良いのかは口で説明しにくい.映画の作り手と映画を見る側が,ロックに対する共通の感情をこのシーンで確認しているとでも言えるだろうか?
随所に流れる70年代サウンドも心地よい.★★★☆(★5個が満点)

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独断的映画感想文:誰も知らない

日記:2004年11月某日
映画「誰も知らない」を見る.
2004年.監督:是枝祐和.
YOU,柳楽優弥.
引っ越してきた一家は,父が海外赴任中の母と長男(明)というふれこみだが,荷物の中からは茂とゆきが出てきて,近くの駅では京子が待っている.
彼らは実際はそれぞれ違う父親の4人兄妹,大家の目をかすめるため,明以外の3人は部屋の中から一切外に出ないで,皆学校にも行かず暮らす.
明が買い物と食事,京子が洗濯をして母と5人それなりに落ち着いた暮らしが続くが,ある日母は好きな人がいる,結婚できたら皆学校に行けるようになると打ち明け,しばらくして姿を消す.
時折送られてくる金を頼りに,4人だけの暮らしが続く.やがて送金も途絶えがちになり,母は帰ってこない.子供たちの生活は誰にも知られぬまま漂流していく.
友人に渇望している明,母が恋しい京子,まだ幼く遊び盛りの茂,天使のようなゆき.共通なのは4人で暮らしたいということ,その為に明は唯一の理解者,コンビニの女店員の薦めを拒否して,福祉事務所にも行こうとしない.
電気も水道も止められ,彼らは公園のトイレと水道を使って生活を続けていく.映画の冒頭に結末が暗示されていて,その悲劇に向かって息づまる緊張と時折挿入される街の四季の場面が,物語を作っていく.
しかし映画の本当の結末は,その悲劇を乗り越えて更に淡々と暮らしていく彼らの姿なのだ.
絶望的な状況下にほの見える薄明かりのような希望.後まで印象に残る映画である.
つぶらなゆきの瞳と,強い意志の光の宿る明の目が印象的,★★★★(★5個が満点).

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独断的映画感想文:海辺の家

日記:2004年11月某日
2001映画「海辺の家」を見る.
年.監督:アーウィン・ウィンクラー.
ケビン・クライン , クリスティン・スコット=トーマス , ヘイデン・クリステンセン(「スター・ウォーズ」) , ジェイミー・シェリダン.
20年勤めた建築会社を首になったジョージは,その日に倒れ自分が余命数ヶ月の癌と知る.ジョージはそのことを誰にも言わず,永年の夢だった家の建築に取りかかる.
別れた妻ロビンのもとにいた16歳の息子サムは,継父に愛されずクスリにふける日々だったがジョージに引き取られ,一夏父と過ごす羽目になる.
ジョージは葛藤のあった父が建てロビンと自分が6年過ごした家を打ち壊し,その後に自分の理想の家を建てようとする.この映画は家の再建を媒介に築き直される人間関係の物語と言える.中でも軸となるジョージとサムの父子関係の変遷は印象的である.この映画は見るものに自分自身の父子関係を問いかけるからだ.
僕の父は僕にどういう関係を求めていたのだろうか.
父にとって,技術系サラリーマンになる筈だった僕が選んだ道は,何とも落ち着きの悪いものだったに違いない.
僕は父が僕の就職先を見に来たときの様子を良く覚えている.
彼はその平屋建ての小さな事務所がそうだと知ってしばらくの間身じろぎもしなかった.呆然として動けなかったのだ.僕はさすがに父が気の毒になったが,どうしようもなかった.僕はチボー家のジャックのように,父親を喜ばすことのできない息子だった.
「海辺の家」は父子の相克の物語である.ジョージが自分の父親との関係を総括し,息子サムとの関係を再構築したように,僕も父との関係を総括したかった.
それは僕が父との関係において,満たされなかったと感じているからだ.この映画を見ていると自分のその思いに気づかされるからだ.
最後の方,ジョージの死期が迫った後は,物語はおとぎ話のように善意に包まれて昇華していく.これもある種のハッピーエンドだろうか?★★★★(★5個が満点)

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独断的映画感想文:デイ・アフター・トモロウ

日記:2004年11月某日
映画「デイ・アフター・トモロウ」を見る.
2004年.監督:ローランド・エメリッヒ.
デニス・クエイド , ジェイク・ギレンホール , イアン・ホルム , エミー・ロッサム.
もっとちゃちな,またアメリカが世界を救う式のSFアクションかと思っていたら,あに図らんや.映像の迫力は凄い.
N.Y.が滅びるシーンは身を乗り出してしまう.またその中で生存のため戦う人々も,ハイテクで助けられたりということなく,自然の猛威といわば素手で戦わざるを得ないという描写も説得力がある.
数日の内に地球が氷河期に突入するという設定自体は無理があるが,映画としては良くできている.
思いがけず映画らしい映画,★★★☆(★5個が満点).

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