独断的映画感想文:誰も知らない
日記:2004年11月某日
映画「誰も知らない」を見る.
2004年.監督:是枝祐和.
YOU,柳楽優弥.
引っ越してきた一家は,父が海外赴任中の母と長男(明)というふれこみだが,荷物の中からは茂とゆきが出てきて,近くの駅では京子が待っている.
彼らは実際はそれぞれ違う父親の4人兄妹,大家の目をかすめるため,明以外の3人は部屋の中から一切外に出ないで,皆学校にも行かず暮らす.
明が買い物と食事,京子が洗濯をして母と5人それなりに落ち着いた暮らしが続くが,ある日母は好きな人がいる,結婚できたら皆学校に行けるようになると打ち明け,しばらくして姿を消す.
時折送られてくる金を頼りに,4人だけの暮らしが続く.やがて送金も途絶えがちになり,母は帰ってこない.子供たちの生活は誰にも知られぬまま漂流していく.
友人に渇望している明,母が恋しい京子,まだ幼く遊び盛りの茂,天使のようなゆき.共通なのは4人で暮らしたいということ,その為に明は唯一の理解者,コンビニの女店員の薦めを拒否して,福祉事務所にも行こうとしない.
電気も水道も止められ,彼らは公園のトイレと水道を使って生活を続けていく.映画の冒頭に結末が暗示されていて,その悲劇に向かって息づまる緊張と時折挿入される街の四季の場面が,物語を作っていく.
しかし映画の本当の結末は,その悲劇を乗り越えて更に淡々と暮らしていく彼らの姿なのだ.
絶望的な状況下にほの見える薄明かりのような希望.後まで印象に残る映画である.
つぶらなゆきの瞳と,強い意志の光の宿る明の目が印象的,★★★★(★5個が満点).
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