独断的映画感想文:トニー滝谷
日記:2005年1月某日
映画「トニー滝谷」を見る.
2004年.監督:市川準.
イッセー尾形,宮沢りえ.
村上春樹の原作は未読.
父滝谷省三郎も天涯孤独のジャズマンだったが,その子トニー滝谷も生まれた直後に母を亡くし,孤独を友として成人する.
機械のイラストを黙々と描いて成功したトニーは,ある日編集部員としてきた小沼英子に一目惚れをする.15歳の年の差,既につき合っている人があるという英子を必死に口説くトニー.
結婚生活は幸せだった,また孤独に戻ったときの恐怖に震えるほど.
英子の一つの欠点はあまりに多くの洋服を買い続けることだった.それは止め処が無く,遂にトニーがそれを注意し彼女はブティックに服を返品に行く.その帰りの事故であっけなく彼女は死んだ.
暫くして,トニーは秘書を募集する.条件は亡き英子の洋服を制服として着ることだった.
応募した斉藤久子は,英子のクロゼットの洋服の中で訳も分からず涙を流す.その後トニーは久子に募集を止める旨の手紙を書く.そしてトニーは英子の服をすべて処分し,もとの孤独に帰る.
しかしトニーには只一つ忘れられないことがあって….
透明感の強い全体の色調,綿密に構成されたそれぞれの画面の美しさ.絶対的な孤独に直面する主人公の心情がこういう画面から伝わってくる.
恋に落ちることが判っている宮沢りえの登場する,望遠のショット.
遙かな景色がバックに見える高台への坂道を,宮沢りえ(小沼英子)が上ってくる.風になびく髪,その最新のファッション.別の画面でまた宮沢りえ(斉藤久子)が,ショートヘアで遅刻のため息せき切って同じ坂を駆け上がってくる,そのショット.
トニーの切ない心情が観客に伝わってくるようだ.
坂本龍一のソロピアノの音楽も素晴らしい.映画らしい映画である.
★★★★(★5個が満点)
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