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2005年1月に作成された記事

2005/01/29

独断的映画感想文:トニー滝谷

日記:2005年1月某日
映画「トニー滝谷」を見る.
2004年.監督:市川準.
イッセー尾形,宮沢りえ.
村上春樹の原作は未読.
父滝谷省三郎も天涯孤独のジャズマンだったが,その子トニー滝谷も生まれた直後に母を亡くし,孤独を友として成人する.
機械のイラストを黙々と描いて成功したトニーは,ある日編集部員としてきた小沼英子に一目惚れをする.15歳の年の差,既につき合っている人があるという英子を必死に口説くトニー.
結婚生活は幸せだった,また孤独に戻ったときの恐怖に震えるほど.
英子の一つの欠点はあまりに多くの洋服を買い続けることだった.それは止め処が無く,遂にトニーがそれを注意し彼女はブティックに服を返品に行く.その帰りの事故であっけなく彼女は死んだ.
暫くして,トニーは秘書を募集する.条件は亡き英子の洋服を制服として着ることだった.
応募した斉藤久子は,英子のクロゼットの洋服の中で訳も分からず涙を流す.その後トニーは久子に募集を止める旨の手紙を書く.そしてトニーは英子の服をすべて処分し,もとの孤独に帰る.
しかしトニーには只一つ忘れられないことがあって….
透明感の強い全体の色調,綿密に構成されたそれぞれの画面の美しさ.絶対的な孤独に直面する主人公の心情がこういう画面から伝わってくる.
恋に落ちることが判っている宮沢りえの登場する,望遠のショット.
遙かな景色がバックに見える高台への坂道を,宮沢りえ(小沼英子)が上ってくる.風になびく髪,その最新のファッション.別の画面でまた宮沢りえ(斉藤久子)が,ショートヘアで遅刻のため息せき切って同じ坂を駆け上がってくる,そのショット.
トニーの切ない心情が観客に伝わってくるようだ.
坂本龍一のソロピアノの音楽も素晴らしい.映画らしい映画である.
★★★★(★5個が満点)

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独断的映画感想文:スパルタカス

日記:2005年1月某日
映画「スパルタカス」を見る.
1960年.監督:スタンリー・キューブリック.
カーク・ダグラス,ローレンス・オリヴィエ,ジーン・シモンズ.
キューブリックはこの時32歳の若さである.
3時間を超える史劇の超大作.奴隷という身分の絶望感,自由を求めての戦い等,まだ楽天的で若々しいアメリカが生み出した映画のテーマは鮮明である.
生まれながらの奴隷スパルタカスは,奴隷商に拾われ剣闘士になるが,過酷な扱いに反乱を起こし,反乱軍のリーダーとなる.
映画の中盤は反乱軍の転戦を描くロードムービー風で,その中で観客は父子連れ,老人の夫婦,母子等様々な人物と「顔見知り」になる.追いつめられた最後の決戦で彼らもまた死んでいくのを,観客は見なければならない.
冒頭に近いシーンで奴隷商に拾われたとき,兵士に反抗し鎖に繋がれ死に瀕していたスパルタカスだが,最後のシーンもまたそれと重なり合う映像で終わる.
このような演出はいかにも映画らしく,物語の展開を飽きさせない.
元老員での勢力争いを巡るローレンス・オリヴィエ(名優)等の暗闘も面白いし,ジーン・シモンズとの恋の進展も素敵,原野を埋め尽くすエキストラたちの行進も圧巻.
その映画の楽しさは今になっても色褪せることはない.しかし映画のテーマは現代のアメリカにとっては何と皮肉なものになってしまったか.
★★★★(★5個が満点)

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独断的映画感想文:A

日記:2005年1月某日
映画「」を見る。
1996年から97年にかけてのオウム破防法裁判の行方とサティアンの撤退、その渦中にある荒木広報部長を追うドキュメント。
荒木始め残ったメンバーは皆誠実で真摯な宗教家、に見える。
どう言えばいいか、連合赤軍壊滅後の赤軍派スポークスマンと言ったところか。
彼等には非合法性や暴力性はほとんど残っていない(理論にはしっかり残っているにしてもだ)が、弾圧は極めて執拗であくどい。それに曝される彼等には同情してしまう。
しかし彼等の組織は、少なくともその「軍」は無差別殺人、計画的殺人、拉致誘拐死体損壊等、あらゆる悪事を冷酷にやってのけたのだ。そのことを彼等は想像もできない恐ろしいことと考えているのか、それとも本心ではよくぞやったりと快哉を叫んでいるのか?
それにしても修行三昧の生活を安心して送れる組織としてオウムが絶大な支持を受けていること自体は、強く印象づけられる。
ところでこのドキュメンタリーを見てこれらのことが次から次へと頭に浮かんで来るのは、このカメラのスタンスが適切だからだろう。カメラは荒木に密着してその行動を追い、ある時は彼の独白を見つめ、ある時は彼に質問して答えを引き出し、少なくとも彼から見たオウムは何だったかを描こうとしている。その立場は決してオウム寄りでもなければ権力寄りでもない.
オウムの闇は測り難く深いが、この映画の印象は暗くない。少なくとも上佑某とTVレポーターののぼせ上がったやりとりの状況とは比べものにならない。
★★★(★5個が満点)

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2005/01/25

独断的映画感想文:なごり雪

日記:2005年1月某日
映画「なごり雪」を見る.
2002年.監督:大林宣彦.
三浦友和,ベンガル,須藤温子,宝生舞.
故郷臼杵で親友水田,妹のような雪子と暮らしていた祐作.大学で東京に出てとし子と結婚,28年が過ぎた.
とし子に捨てられた日,水田から連絡があり,雪子が交通事故で人事不省だという.故郷に帰った彼は雪子との若い日々を思い出す….
名曲「なごり雪」と臼杵の街を中心とした美しい映画.
しかし大林映画の常で役者の不自然な台詞や演技が気になる.臼杵の街の人たちの直立不動のエキストラもいただけない.
そういう違和感にもかかわらず,須藤温子の雪子の演技には泣かされる.世の50男は皆,俺は若い時なんてひどいことをしてきたんだと,涙にかきくれるに違いない.
これが大林映画のマジックであろうか?
★★★☆(★5個が満点)

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独断的映画感想文:ネバーランド

日記:2005年1月某日
映画「ネバーランド」を見る.
2004年.監督:マーク・フォースター.
ジョニー・デップ,ケイト・ウィンスレット,ジュリー・クリスティー.
ピーター・パンの作者サー・ジェームス・バリが,ピーター・パンを如何に生み出したかのエピソード.
1903年ロンドンでの話.バリは公園でデイヴィズ家の4人兄弟と出会う.父を失ったその兄弟とバリは想像力の世界での遊びを楽しむようになるが,父の死にもっとも傷ついた3男のピーターだけは,なかなか心を開かない.
バリはピーター・パンの芝居を書く一方,デイヴィズ家の4人に想像の世界の大切さを教える.
やがてピーター・パンの初演は成功,重病に倒れたデイヴィズ家の母親と子供たちに,バリは素晴らしい贈り物をする….
バリと子供たちの遊びが想像の世界に入っていくその映像の楽しさ,舞台で空を飛ぶ子供たちに感嘆して喝采する劇場の人々の興奮,母を失っても母を想像力で取り戻せたと語るピーターのいじらしさ.
涙を一杯に湛えてバリを見つめるピーターのショットは,しばらく頭から離れないだろう.お薦めの佳作である.
★★★★(★5個が満点)

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独断的映画感想文:ドッグヴィル

日記:2005年1月某日
映画「ドッグヴィル」を見る.
2003年.監督:ラース・フォン・トリアー.
ニコール・キッドマン.
映画の舞台ドッグヴィルの村の街路や家屋はステージに描かれた線で表され,ステージには必要最小限の大道具小道具しか置いてない.
山間の廃坑の村ドッグヴィルは,ジョージタウンへ出る1本の道しか無く,この閉塞した村にギャングと警察に追われた若い娘グレースが逃げ込んでくるところから物語は始まる.
村の自称作家トムは折しも,村人に精神運動を訴えることで村の停滞を改善しようと企図していた.トムは現れたグレースを皆が助けるべきだと訴える.
グレースは人に優しく聡明で,次第に村人に受け入れられる.村に活気が出て一時は皆に感謝される存在となるグレースだが,警察とギャングに追われるという弱い立場の彼女に,次第に村人の感情は変化していく.
やがて男に陵辱され,その現場を見た女性に男を誘惑していると非難され追いつめられるグレース,最後には鎖につながれてこき使われ,夜は性の慰み者になる.
やがて彼女をギャングに売り渡そうという村人の発案が,映画の最終局面に繋がるのだが….
アメリカ社会の建前と現実,その双方に現れる人間の醜さを描いた寓話だが,楽しい映画ではない.ただし緊張感がみなぎって3時間を長いとは思わせない.ニコール・キッドマンが良く,美しい.
★★★☆(★5個が満点)

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2005/01/18

独断的映画感想文:愛は静けさの中に

日記:2005年1月某日
映画「愛は静けさの中に」を見る.
1986年.監督:ランダ・ヘインズ.
ウィリアム・ハート,マーリー・マトリン.
聾学校に赴任したジェームズは読唇と発声の専門家.自分のクラスの生徒にもこれを積極的に教える.
学校で雑役をしているサラは生まれながらの聾唖者,手話をすさまじい速度で使うが,決して発声しようとはしない.美しいサラに興味を持ったジェームズは彼女と接し,その誇り高くミステリアスな性格に惹かれていく.
二人がお互いの心の障壁をどう乗り越えていけるのかが物語の中心だが,映像は美しく,音楽も良い.何より主演の二人の演技が素晴らしい.
マーリー・マトリンは無言の演技だが,その手話から心の声が聞こえてくるかのようだ.
筋立ての細かいところには気になることもあるが(例えば読唇術は必ずしも成功率が高くないと聞いたことがある.先天的な聾唖者がこの映画のように見事にしゃべれるかどうかには疑問も感じる),この二人の恋が成就するのかどうかに引き込まれ,そして感動する.
★★★★(★5個が満点)

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独断的映画感想文:エイジ・オブ・イノセンス

日記:2005年1月某日
映画「エイジ・オブ・イノセンス」を見る.
1993年.監督:マーティン・スコセッシ.
ダニエル・ディ=ルイス,ミシェル・ファイファー,ウィノナ・ライダー.
1870年代N.Y.の社交界での恋愛を描く.
純真なメイと婚約していた弁護士ニューランドは,彼女の従兄弟で夫から逃れ帰国した伯爵夫人エレンと再会する.彼女に次第に心惹かれるニューランド,しかし彼らの人生は名家の跡取りたる彼らの自由にはならない.ニューランドの生涯はどうなるのか?
という映画だが,メイは世間知らずで権高な女,美しさ以外に魅力はない.さりとてエレンは奔放で自由な女だが,人間としての魅力は何かということは良く判らない.ニューランドの「苦悩」があまり伝わってこないのである.
そもそもN.Y.の社交界という馬鹿馬鹿しい存在自体に魅力を感じない(同時期鹿鳴館という馬鹿なことをやっていた国の人間として忸怩たるものはあるが).好きにしなさいという感じ.
しかしアメリカにも社交界があるぞ,金持ちがいるぞ,ゲージツも理解しているぞ,皆ダンスをして美しい家に住んで銀器を使って美味しいもの食べてるぞとの,マーティン・スコセッシのアピールは確かに伝わる.セット,衣装,小道具が豪華で美しい.
★★☆(★5個が満点)

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2005/01/11

独断的映画感想文:ホテルビーナス

日記:2005年1月某日
映画「ホテルビーナス」を見る.
2004年.監督:タカハタ秀太.
草薙剛,中谷美紀,香川照之,市村正親.
どこともしれぬ無国籍の街のホテルビーナス.カフェの後ろのホテルに滞在するのは訳ありの人々.
ある日少女を連れた男がやってきてから,物語は動き始める.
ウラジオストクでのロケ,モノクロームの映像(最後のみカラー化)に所々に青い色彩が点る凝った画面,韓国語で交わされる会話等,いろいろ仕掛けがあるようだがその意図は良く判らない.
ありがちな設定,ありがちな展開,すでに試された映像という感じがついて回って映画に入り込めない.
ラスト近くで市村正親のビーナスが草薙相手に説教を始め物語を総括するのも無用なことと思えるが,そのバックに「夜空のムコウ」が流れるに及んでついに切れた.
一生懸命つきあってきたこの映画は結局スマップのお遊びだったのね.映画をナメとるんか,と思ってしまいました.誤解したロシア人のおかげで賞を取ろうがそんなことは関係ない,最後の香取慎吾の登場でとどめ,馬鹿にするなと言いたい.
★(★5個が満点)

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独断的映画感想文:サード

日記:2005年1月某日
映画「サード」を見る.
ATG作品.1978.監督:東陽一.
永島敏行,森下愛子.
寺山修司の脚本で彼の臭いが濃い(パロディで引用される短歌は寺山修司のもの.着物姿で足が血にまみれている少女との出会い等).でも原作は軒上泊,こんな脚本化はルール違反じゃないのだろうか?
淀んだ町を出るのにお金がいるという理由で売春を始める高校生の2カップル.その客とのトラブルで殺人を犯し少年院にいる「サード」.
その少年院に来る途中見た町の豪快な祭りとその人混みが印象に残り,出所したらそこに行くのだと彼は思っている.
しかしそもそもそこを出るために売春までする,その生まれた町の淀みとは何なのか,と言う基本的なところが説明不足ではないか?
ATG映画に良くあるアフレコの台詞や,それをしゃべる俳優の台詞回しにも違和感がある.あまり楽しくなかった.寺山修司の映画は好きではない.
★★★(★5個が満点)

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独断的映画感想文:eiko

日記:2005年1月某日
映画「eiko」を見る.
2003年.監督:加門幾生.
麻生久美子,沢田研二,阿部サダヲ.
人を疑うことを知らないエイコは部屋は無駄な買い物だらけ,マチ金に借金の山.
ある日街頭で会った女に「人生の転機が来ている」と言われ96万の指輪を買わされるが,翌日会社は彼女一人おいて夜逃げ,部屋にはマチ金が張り付き,彼氏は女を引き込みながら彼女に金をせびる始末.
行き場を失ったエイコは社長の自宅に行くと,そこには江ノ本という惚け老人がいて「加世子」と彼女に呼びかける.彼女はそこに転がり込むが….
純粋と言うにはちょっとあほなエイコだが,今時珍しい純情なこの子を麻生久美子が優しく演じる.
主演の2人の持ち味もそうだし,あまり激しい起伏もなく淡々と物語は進むのだが,いつの間にか引き込まれる映画.
俳優がそれぞれに良い,阿部サダヲも素敵.★★★☆(★5個が満点)

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2005/01/03

独断的映画感想文:ゴッド・ファーザー・パートⅢ

日記:2005年1月某日
映画「ゴッド・ファーザー・パートⅢ」を見る.
1990年.監督:フランシス・フォード・コッポラ.
アル・パチーノ,ダイアン・キートン,アンディ・ガルシア,ソフィア・コッポラ.
前作の最後をそのまま引き継ぎそれから8年後のマイケル.
カトリック教会から栄誉賞を受けるのを機に,離婚した妻の元にいる息子アントニオと娘メアリに連絡を取る.
彼らはやって来て祝福してくれ,元妻との交流も復活する.
一方でマフィア各組織との命がけの死闘を制しつつ,元妻との約束である合法的ビジネスへの脱皮に全力を尽くすマイケル.その道に立ちはだかる全ての勢力を倒し,遂に平和なファミリーを獲得できたかに見えたそのときに最大の悲劇が訪れる.
長大なファミリ=家族を巡る3部作の叙事詩が,この様に悲しい結末を迎えるとは.映画の力に圧倒され,暫くこの3部作の各シーンは頭を離れそうもない.
訴える力の大きさに驚くばかりの映画である.★★★★(★5個が満点).

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独断的映画感想文:ゴッド・ファーザー・パートⅡ

日記:2005年1月某日
映画「ゴッド・ファーザー・パートⅡ」を見る.
1974年.監督:フランシス・フォード・コッポラ.
アル・パチーノ,ロバート・デュバル,ロバート・デ・ニーロ,ダイアン・キートン,ジョン・カザール.
重厚で重層的な希有な映画である.
前作最後で,対抗する5人のマフィアを暗殺してドン・コルレオーネとなったマイケルの,その後の苦難の道と,回想シーンでの父ビト・コルレオーネの苦闘が並行して語られる.
ビトは家族全員をシチリアのマフィアに殺され,少年の身で一人移民して一からドンの地位を築きファミリーを獲得したのだった.
一方,マイケルは彼の仕事を嫌悪する妻の離反と彼に不満を抱く次兄フレドとの関係に悩みつつ事業を拡大し,公聴会への証人喚問等の試練を乗り越え敵対勢力を制圧するが,同時にかけがえの無いファミリーを殆ど失うことになる.
この重層的な展開を描くレンブラントの絵のような暗い映像の魅力,ニーノ・ロータの哀切極まる音楽.このような映画はどのようにして作られるのだろうか?
★★★★☆(★5個が満点).

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独断的映画感想文:ゴッドファーザー

日記:2004年12月某日
映画「ゴッド・ファーザー」を見る.
とば口だけと思って見始めたが,映画の魅力で止められず遂に最後まで,寝たのは2時半.明日の仕事どうなるんだ?
1972年.監督:フランシス・フォード・コッポラ.マーロン・ブランド,アル・パチーノ,ロバート・デュバル.
実に中身の濃い映画.映像の丁寧さ,セットやクラシック・カー含めた小道具の念入りさ,音楽,演技,どれをとっても映画の醍醐味を充分味わわせてくれる傑作である.
テンポや間の取り方も申し分ない.
何と言っても若きアル・パチーノが魅力的.大学生時代のいかにも末っ子らしい雰囲気から,最後のシーンで「ドン・コルレオーネ」と呼ばれる威厳に満ちた存在に至るまでの変貌が,見事.
★★★★(★5個が満点).

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独断的映画感想文:ガタカ

日記:2004年12月31日
映画「ガタカ」を見る.
1997年.監督:アンドリュー・ニコル.ユマ・サーマン,イーサン・ホーク,ジュード・ロウ.
生まれる前からDNA検査により能力も寿命も健康もわかってしまう近未来,自然分娩で生まれたビンセントは不適合なDNAのため下級労働職にしか就けない.
宇宙を目指す彼は,すぐれたDNAを持ちながら事故のため落ちこぼれたジェロームと契約し,彼になりすまして土星を目指す.
毎日のチェック用の血液や尿の装備,コンタクトレンズ,自分の毛髪や垢を残さない細心の注意.しかし省内で起きた殺人事件の調査にビンセントの名前が浮上,実弟のアントンが刑事として乗り込んできて窮地に陥る.
結末はハッピーエンドだが結局彼を救うのは人間だった.考えてみれば彼と同じ立場の人間は想像以上に大勢いるのかも知れない.
センスといいストーリーといいSFとして十分の魅力を持った作品.
★★★☆(★5個が満点)

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独断的映画感想文:バトル・ロワイアルII鎮魂歌〈レクイエム〉

日記:2004年12月某日
映画「バトル・ロワイアルII鎮魂歌〈レクイエム〉」を見る.
2003年.監督:深作欣二.藤原竜也,前田愛.
前回の続きという趣向.
前回生き残った七原秋也率いる「ワイルドセブン」が世界中の大人たちに宣戦布告,政府は落ちこぼれ中学生を送り込み子供同士での殺し合いを行わせる.
筋はあちこちで辻褄が合わないし,死んでいく者の一人一人のエピソードの丁寧さでは前作に及ばないが,勢いのある映画.
同じく生き残りの中川典子と,今回参加の教師北野の娘北野しおりとのからみがあっても良かったのにと思う.
しおり役前田愛はなかなか良い出来,教師が最後に出てきたときの姿にはたまげましたな.
★★★(★5個が満点).

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独断的映画感想文:冷静と情熱のあいだ

日記:2004年12月某日
映画「冷静と情熱のあいだ」を見る.
2001年.監督:中江功.
竹野内豊,ケリー・チャン,ユースケ・サンタマリア(こう配役書いてくるとどこの映画だか).
前宣伝ではもっとちゃらちゃらした映画だと思っていたが,割にしっかりした映画.
原作は辻仁成と江國香織がそれぞれ男性と女性を分担したものらしいが,それは読んでいない.しかし脚本的にはそれをまとめるとき辻褄を合わせにくかったりしているようで,気になる点が.
本人も知らなかった恋人の妊娠をどうして父や友人が皆知っているのかとか,最後巡り会ったのに尚別れようとする女性の真意は何かとか.音楽も少しうるさい.
しかし映像は美しく(竹之内君もイタリアの絵の中で不自然さがなく良かった,○山×三だったら短足胴長で絵にならなかったろうに),恋愛というものの苦しさと喜びを丁寧に描いています.
初めての会話,喫茶店での初デート,初めてアパートに招く時,初めての口づけ.恋愛とはこういうものでした.
ここで観客は主人公の青春を共に生きてしまう.ケリー・チャンが美しい.
★★★☆(★5個が満点).

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独断的映画感想文:帰郷

日記:2004年12月某日
映画「帰郷」を見る.
1978年.監督:ハル・アシュビー.
ジェーン・フォンダ,ジョン・ヴォイト.
夫のベトナム出征中病院でボランティアをしている妻が,同級生だった傷病兵と恋に落ちる.彼は下半身麻痺でセックスは出来ないが,愛し合うようになる二人.
夫が負傷して帰国,彼は勲章をもらうことになるのだが,妻の行状はFBIを通じて(!)夫に知らされることになる.
その結果に対しそれぞれはどういう行動を取ったのか.
如何なる面からも正当化できないベトナム戦争がアメリカにもたらした余りにも深い傷を,淡々と描写した佳作.
過激な政治行動で知られるジェーン・フォンダがきっちりと俳優をやっている.夫役ブルース・ダーンが良い.
★★★☆(★5個が満点).

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