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2005年2月に作成された記事

2005/02/27

独断的映画感想文:イノセンス

日記:2005年2月某日
映画「イノセンス」を見る.
2004年.監督:押井守.
「攻殻機動隊-ゴースト・イン・ザ・シェル」の続編.
今回は前作ほど展開が複雑ではない.予備知識もあるので,展開はずっと理解しやすい.相変わらずどこの国とも思えない不思議な映像と音楽,これが最も印象的.
それに比べると物語にはそれほど魅力はない.登場人物の引用豊富な衒学的長台詞にも退屈.
せっかく得難いキャラクターなのに「少佐」が登場するのも遅すぎるし,活躍の程度もささやか過ぎる.
大体少佐が出てこなかったら,物語はじじいとタフガイと優男による犯人追跡アクションものに過ぎないではないか?
もったいなかったなと思うが,こういう印象を持つのは僕がこの年代だからで,別の世代は全く違う評価をするのかも知れない.
★★☆(★5個が満点)
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2005/02/24

独断的映画感想文:ビッグ・フィッシュ

日記:2005年2月某日
映画「ビッグ・フィッシュ」を見る.
2003年.監督:ティム・バートン.
ユアン・マクレガー,アルバート・フィニー.
これも「海辺の家」「みなさん,さようなら」に続く父子もの.父親の最後が近づき,息子が妻と帰省するところも「みなさん,さようなら」とよく似ている.
この父親はとんでもないほら吹きで,息子の結婚式でもほらを吹き,それを忌み嫌う息子と疎遠になってしまう.
息子は死の床で相変わらずほらを吹く父に付き合っている内に,そのほらの中にある真実(といえばいいのかしら,事実ではないが真実)を受け入れるようになる,そういう和解の物語.
父アルバート・フィニーの青年時代をユアン・マクレガーが演じる.
そのほら話が映像化されるのが楽しい,将にこれこそ映画という感じがする.全く架空のものとしか思えなかったほら話中のスペクターという街が実在していたり,物語の展開も面白い.
キャスティングの妙も味わえる.
★★★☆(★5個が満点)
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独断的映画感想文:アイ,ロボット

日記:2005年2月某日
映画「アイ,ロボット」を見る.
2004年.監督:アレックス・プロヤス.
ウィル・スミス,ブリジット・モイナハン.
この映画は以前にも書いたが「我はロボット」の映画化と称している.
「我はロボット」はアイザック・アシモフ作のSF最高傑作の一つで,しかも書かれたのは1940年代,内容は論理的かつ心理的,時には哲学的なものを備えている.
映画もこうした内容に触れていない訳ではないのだが,結局マッチョなウィル・スミスのアクション映画というハリウッドものでしかない内容になってしまった.
映画ってのはこうしないと作れないものだろうか?
ロボット心理学者スーザン・キャルヴィン役のブリジット・モイナハンにも失望,表情が数種類しかないしアクションも中途半端.
映画の中でシカゴのミシガン湖は干上がり,巨大な吊り橋の廃墟が見えるのだが,これは何か核戦争的なものを暗示しているのだろうか?その辺も全然説明不足.
それにしても原作であれば,何故ロボット工学3原則があるのにロボットはこういう行動を取るのか?というのが最大のミステリになるのに,この映画ではそういうように作ったからというのが正解なので(言ってもうた),なにをか言わんやである.スーザン・キャルビンがいる意味がない.
それと,ロボットのすり替えネタはおよそSF的でない.制御コンピュータをだませるわけがないではないか?まさか制御コンピュータはロボットを顔で識別しているわけではあるまいに.
原作を,しかし,ではどうやって映画にしたものか?
★★(★5個が満点)
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2005/02/19

独断的映画感想文:告白

日記:2005年2月某日
映画「告白」を見る.
1981年.監督:ウール・グロスバード.
ロバート・デニーロ,ロバート・デュバル,チャールス・ダニング.
1950年代のL.A.刑事の兄と牧師の弟の物語.
牧師と言っても弟はいわば教会資金のディーラーという仕事をしていて,建設業界の親玉達と親交を結びつつ手玉に取る.
しかしある殺人事件が起こって彼らが巻き込まれ,兄刑事は驚くべき真相を知ることになる.
L.A.の刑事の中では人情家の兄デュバル,ホテルで朝食・レストランでランチの生活を送る弟デニーロ.しかし二人共にその生活は荒涼たるものだった.
追いつめられた後半,デニーロがデュバルとカフェで話している.
「兄貴だろ.話を聞いてくれ」
「……」
「他に誰も話せる相手はいないんだ」
弟を巻き込む犯罪の告発で,弟は失脚する.ずっと長い年月の後の和解.これもある種のハッピーエンドだろうか.
二人が砂漠に面した自分たちの墓を見るラストシーンが印象的.そして聞こえるか聞こえないか程度にコントロールされた音楽も良い.悪玉のチャールズ・ダニングが魅力的.
しかし人生とはこれほどまでに荒涼としたものなのだろうか?
展開に中だるみがあって途中眠りかけたが,両ロバートの演技に最後まで引き込まれた.
★★★☆(★5個が満点)
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2005/02/18

独断的映画感想文:みなさん、さようなら

日記:2005年2月某日
映画「みなさん,さようなら」を見る.
2003年.監督:ドゥニ・アルカン.仏/カナダ.
レミ・ジラール,ステファン・ルソー,マリ=ジョゼ・クローズ.
享楽的な社会主義者を自称するレミが病気のため死期が近い.
別居状態の妻はロンドンの息子ゼバスチャンに連絡,やり手のトレーダーの彼は,ほとんど口を利いたこともない父の病床に現れる.
レミが亡くなるまでの数日間を描いたこの作品は,同じ俳優で作製された「アメリカ帝国の滅亡」(1986年)の続編らしい.前作でアメリカを批判し倒した(らしい)登場人物が,再度死期を迎えたレミのもとに集まりその最期を見とる.
相変わらずレミは現代文明(特にアメリカ)を罵倒し(原題の「野蛮人の侵略」は西欧人の新大陸への侵略を指しているようだ),一方息子のセバスチャンは父の最後の環境を整えるため働き出す.
個室獲得のため病院理事長と組合に金を掴ませ,別病院で検査をして結果を友人に診断させ,麻薬で鎮痛が必要となるとヤク中の女の子を手配してヘロインを入手するその手際の良さ.そのヤク中のナタリーは彼の幼なじみで,「アララトの聖母」のシリア役,宝生舞を渋くしたようなマリ=ジョゼ・クローズ.
社会主義者の父とその旧友,腕利きの資本主義者のセバスチャンとヤク中のナタリー,彼らがレミの最後の日々を過ごす湖畔の別荘のシーンは何ともいえず心に残る.
現代文明を罵倒する一方で死が怖い,未だ覚悟ができていないと言うレミ.しかし最後の時を迎え彼の決断が示される.
登場人物それぞれの特徴がうまく示され,大きな起伏のない会話中心のドラマを飽きさせない.
最後のナタリーとセバスチャンの別れも印象的.
レミは1950年生まれという設定で僕と一つ違いというのも親近感を覚えること.実はこのドラマもある点で父と子の関係の再構築の物語で,その意味では「海辺の家」と似ている.
ただ,「海辺の家」を見ていたときの僕の視点はかなり一般的で,父の立場でも息子の立場でもなかった.この「みなさん、さようなら」の場合ははっきりレミの立場で映画を見ている.それはなんと言っても彼が僕と同年代だと言っているからだ.
死というものといずれは向き合うという意味で,レミの悩みは我が悩みでもある.
この年になれば,何時かは人のであれ自分のであれ,死について決断を下すときが来る.そのことをこの映画は教えてくれる.

その力を与え給え
勇気を与え給え
(オフ・コース:生まれくる子供たちのために)

★★★★(★5個が満点)
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2005/02/06

独断的映画感想文:マルコムX

日記:2005年2月某日
映画「マルコムX」を見る.
1992年.監督:スパイク・リー.
デンゼル・.ワシントン,アンジェラ・バセット.
マルコムXの自伝に基づく3時間を超える大作.
冒頭のシーン,ボストンの町中が踊っているような軽快な雰囲気の中,原色のスーツ・羽根をつけた派手な帽子をかぶりマルコムがショーティ(スパイク・リー)とダンスホールで延々と踊る.黒人の男女の派手な振り付け,思わず一緒に踊りたくなるような激しい動き.
意表をつかれる展開だが,マイケル・チミノ監督の大作「天国の門」で,主人公達の卒業パーティーの華麗なダンスシーンから入っていったのを思い出す.
マルコムはヤクの売人,窃盗を重ねて重労働10年の刑でショーティと共に入獄,獄中でイスラムに改宗する.出獄後はイライジャ師のイスラム教団の伝道師として頭角を現し,過激な扇動家として有名になる.しかし教団の体質に疑問を持ち離脱,メッカ巡礼後新しい組織を立ち上げるが,1965年2月21日ハーレムでの講演中に射殺される.
映画は彼の死後,マーチン・ルーサー・キング師やマンデラ氏の実写を交えつつこの長い物語を閉じていく.生前は論敵であり,彼の死を悲しんだキング師も,この3年後に射殺されるのだ.
マルコムの波瀾万丈の生涯に圧倒される.
政治的には彼の理論も変遷しているし,公民権運動が勝利する以前の当時の社会状況も想像を絶するところだが,そんなことより何より,敵対的な差別社会で勇気を持って戦い抜き,壮絶な最期を遂げた彼の一生にとにかく圧倒されるのだ.
デンゼル・ワシントンは舞台でもマルコムX役の経験があると言うことで,入魂の演技.
演説場面での,速射砲のように畳みかけていく言葉のイメージの洪水,身振り,その繰り返されるリズム.引き込まれ拳を握りしめる.アジテーションとはこういうものか,と思う.一見の価値あり.
★★★★(★5個が満点)
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2005/02/05

独断的映画感想文:レジェンド・オブ・メキシコ/デスペラード

日記:2005年1月某日
映画「レジェンド・オブ・メキシコ/デスペラード」を見る.
2003年.監督:ロバート・ロドリゲス.
ジョニー・デップ,アントニオ・バンデラス,ウィレム・デフォー,ミッキー・ローク.
『デスペラード』の続編.
愛する女性を失い,失意の中に身を置いていたマリアッチは,街の片隅でひっそりと暮らしていた.そんな彼の下に,CIAの悪徳捜査官・サンズから,メキシコ大統領暗殺阻止の依頼が舞い込む.
とまあWebには紹介してあるからコピーしたが,そんなことは映画を見てもさっぱり判らない.
複数の登場人物の話とマリアッチの回想とがこき混ぜて進行するが,その相互の関係が判らないのだ.前作(と言っても8年前の作品)を見てない観客には何がなんだか判りません.
きら星のような俳優が出ているが,只の撃ち合いシーン以外は何も判らぬまま終わってしまう.監督の自己満足のみの時間の無駄作品.
ジョニー・デップの左手2本ネタは,昔手塚治虫の「キャプテン-Ken」で使っていましたね.
☆(★5個が満点)

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