独断的映画感想文:マルコムX
日記:2005年2月某日
映画「マルコムX」を見る.
1992年.監督:スパイク・リー.
デンゼル・.ワシントン,アンジェラ・バセット.
マルコムXの自伝に基づく3時間を超える大作.
冒頭のシーン,ボストンの町中が踊っているような軽快な雰囲気の中,原色のスーツ・羽根をつけた派手な帽子をかぶりマルコムがショーティ(スパイク・リー)とダンスホールで延々と踊る.黒人の男女の派手な振り付け,思わず一緒に踊りたくなるような激しい動き.
意表をつかれる展開だが,マイケル・チミノ監督の大作「天国の門」で,主人公達の卒業パーティーの華麗なダンスシーンから入っていったのを思い出す.
マルコムはヤクの売人,窃盗を重ねて重労働10年の刑でショーティと共に入獄,獄中でイスラムに改宗する.出獄後はイライジャ師のイスラム教団の伝道師として頭角を現し,過激な扇動家として有名になる.しかし教団の体質に疑問を持ち離脱,メッカ巡礼後新しい組織を立ち上げるが,1965年2月21日ハーレムでの講演中に射殺される.
映画は彼の死後,マーチン・ルーサー・キング師やマンデラ氏の実写を交えつつこの長い物語を閉じていく.生前は論敵であり,彼の死を悲しんだキング師も,この3年後に射殺されるのだ.
マルコムの波瀾万丈の生涯に圧倒される.
政治的には彼の理論も変遷しているし,公民権運動が勝利する以前の当時の社会状況も想像を絶するところだが,そんなことより何より,敵対的な差別社会で勇気を持って戦い抜き,壮絶な最期を遂げた彼の一生にとにかく圧倒されるのだ.
デンゼル・ワシントンは舞台でもマルコムX役の経験があると言うことで,入魂の演技.
演説場面での,速射砲のように畳みかけていく言葉のイメージの洪水,身振り,その繰り返されるリズム.引き込まれ拳を握りしめる.アジテーションとはこういうものか,と思う.一見の価値あり.
★★★★(★5個が満点)
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