独断的映画感想文:アビエイター
日記:2005年3月某日
映画「アビエイター」を見る.
2004年.監督:マーティン・スコセッシ.
レオナルド・デカプリオ,ケイト・ブランシェット,ケイト・ベッキンセール.
ハワード・ヒューズの半生記だが,この人はアメリカでは子供でも知っているらしい.
何の説明も無しに映画は「地獄の天使」の撮影シーンに入るが,ヒューズが若くして親の遺産を継いで映画界に乗り込んだなんてことはアメリカの常識なのだろう.
狂騒的な1930年代を背景に,天才肌のテンションの高いヒューズが強引に映画を作りながら女優と浮き名を流し,一方で飛行機制作にのめり込んでいく導入部は,いささか騒々しすぎる.
しかし映画がこのヒューズという人の,何をするにもけた外れの行動と,その背後にある強迫神経症との苦難に満ちた闘争を追っていくとき,それに引き込まれずに入られない.
デカプリオはうまい.
若々しい童顔で怖いもの無しで映画を撮っていた青年時代,飛行機に本格的にのめり込み,パンナムとその政商との戦いに全精力を使いおでこに縦じわを刻む時代,強迫神経症との戦い等,画面から目を離すことができない.
特にパンナムの陰謀でFBIの捜索を受け,公聴会に呼び出しを受ける下りが圧巻.
この公聴会の直前には会社の試写室に閉じこもり,ほとんど精神が破綻したかと思えるほどの憔悴ぶりだったヒューズが,国家が仕掛けた逃げ場のない罠とも言える公聴会に身一つで乗り込み,敢然と戦いを挑む.
その結果は映画を見ていただきたいが,僕は心を動かされた.
キャサリン・ヘプバーンを演じるケイト・ブランシェットも出来がよい.最初はどこが似ているんだと思って見ていたが,いつしかキャサリン・ヘプバーンってこうだったんだろうなと納得してしまっているのがおかしい.
ケイト・ベッキンセール演じるエヴァ・ガードナーも美しい.この人もエヴァ・ガードナーってこうだったんだろうなと思わせる説得力がある.
「ギルバート・グレイプ」でデカプリオと共演しているジョン.C.ライリーが,彼に終生つき合う秘書役で好演.
ハワード・ヒューズはある種のオタクだったのだろうが,並のオタクとは訳が違うことは,彼が世界規模の企業を創生し成功させたことでも明らかだ.
僕が感動したのは,彼が自分の夢のためにすべてを注ぎ込み,国家にさえ戦いを挑むその潔さだ.そしてそれに勝利するその天才に敬意を表すると同時に,その為に昂進する病についには滅ぼされていったことの悲哀に心を動かされるのだ.
これはあくまでも映画でハワード・ヒューズの実像とは別物だが,それを物語としてこのように描ききったスコセッシに脱帽.
★★★★(★5個が満点)
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