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2005/03/12

独断的映画感想文:完全なる飼育

日記:2005年3月某日
映画「完全なる飼育」を見る.
1999年.監督:和田勉.脚本:新藤兼人.
竹中直人,小島聖,渡辺えり子,塚本晋也,北村一輝,泉谷しげる.
男が少女を誘拐して自室に監禁,完全なる愛と共に結ばれることを目指すと宣言する.少女は手錠をかけられ足を縛られ,口にはガムテープを貼られる監禁モードで男の留守を過ごす.監禁の間に二人の間には親近感が芽生え,やがて温泉旅行の帰り遂に二人は結ばれる….
と言う物語だが,いろんな点で変.
まず少女は何故逃げないのか(逃げるチャンスはいくらでもあるし,「監禁モード」で過ごす毎日は半端でなく辛いはず).逃げないのには何か事情があるのだろうがそんなことは全く説明されない.
男は誘拐罪は死刑と思いこんでいるのに(それだって変だけど),このかったるい態度は何だろう.「完全なる愛と共に結ばれる」前に捕まったら死んでも死にきれないだろうに,この緊張感のない日常は何だ.
また少女は何故男を愛するようになったのか,親近感を持つのと愛し合うようになるのとでは天地の違いがある.
温泉旅行の帰りに男に処女を奪われて以来,少女はまるで肉欲に溺れるように(いかん,顔が赤くなってきた)男と抱き合い続けるが,これが「完全なる愛と共に結ばれる」状態だとは思えない.
つまり竹中演じる男はいわば変質者なのに,ちっとも変質者らしくなく「完全なる愛」を求めたりする.
この辺がこの映画の物語がリアルでない原因だろうか?
この映画で比較的リアルさを感じたのは温泉旅館の場面である.
男は入浴中「久しぶりに」と言って少女に手錠をかける.変わって少女が入浴するとき,少女は「ごっこだから」と言って男に手錠をかけ風呂場に姿を消す.男が後ろ手錠に苦労して煙草をくわえ,ふと見上げると着替えた少女が立っている.はっとする男.
このシーンには緊張感があった.
アパートの住人は,上に記したような面々で,この配役だけで別に一本映画が撮れてしまいそうだが,そいつ等の取り扱いも中途半端.
監督・脚本家は押しも押されもせぬ巨匠.彼らが作ったこの映画が,老人の妄想だとはあまり思いたくないが,まあ,そうなのかも知れない.
竹中直人の扮する男の最後のシーン,弁護士に何事か聞き取れないことを呟き続ける表情のクローズアップは,竹中らしい芝居ではあるが意味不明,この映画最後の「変」な謎だった.
☆(★5個が満点)
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