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2005年4月に作成された記事

2005/04/25

独断的映画感想文:アイデン&ティティ

日記:2005年4月某日
映画「アイデン&ティティ」を見る.
2003年.監督:田口トモロヲ,脚本:宮藤官九郎,原作:三浦じゅん,音楽:遠藤憲司.
峯田和信,麻生久美子,中村獅童.
ロックバンド,高円寺,ボブ・ディランというのがこの映画のキーワードである.どうして見ないでいられようか?
バンドブームで躍り出たスピード・ウェイの4人組,だがブームはあっという間に去り,作詞作曲を担当する中島は,商業主義との狭間で苦闘する日々.付き合って4年目の恋人がいる一方でブームの時からグルーピーと寝る癖もつき,自己嫌悪にも陥る.
そんな彼の前にある夜ボブ・ディランが現れた(唐突なようですが,これはロックのおとぎ話,これでいいのだ).ブルース・ハープでしかコミュニケーションしないボブだが,その言っていることは中島には逐一分かる.
ロックとは,本当にやりたいこととは,そして自分とは?
ボブはその問いから逃げるなと言い続けているらしい.
しかしバンドの活動範囲は狭まり,公開生番組出演の依頼は,懐メロ扱いだった.このチャンスに中島はある決意をする….
どなたもそうでしょうが,不肖小生も人生のある時期にはロック魂こそがすべてだと思っていました.シンプルな縦乗りロックからバラードを経て本当の歌の追求(ただしそれは軟弱なものというわけではない)へと経過していく中島の唄作りもいちいち納得がいく.そしてそれが社会になかなか受け入れられないことも.
事務所をクビになりそれでもライブを重ねていく彼らの戦いに胸が熱くなる.
ライブ中の長いMCシーンに過去の映像が挿入されるあたりの整理が悪く混乱したりするが,それでも映画の魅力で最後まで一気に見る.
エンドタイトルでかかるボブ・ディランの名作を聴いたとき,思わず快哉を叫んでしまった.
★★★☆(★5個が満点)
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独断的映画感想文:LOVERS

日記:2005年4月某日
映画「LOVERS」を見る.
2004年.監督:チャン・イーモウ.
金城武,チャン・ツィイー,アンディ・ラウ.
同じスタッフの「HEROES」に続く武闘アクション映画.
唐の時代,朝廷に反旗を翻す飛刀門一味を取り締まる地方官吏リウ,その部下で友人の随風は一味の前首領の娘小妹が遊郭の芸妓だという情報をつかみ乗り込む.
小妹を捕らえた彼らは,小妹をわざと逃がし一味の本拠を探る作戦に出る.小妹を連れ逃げる随風だがやがて彼女に恋心を抱くようになる.
一方この逃亡を知った朝廷は軍を派遣し,一挙に一味の殲滅を図るのだった….
敵味方に分かれた3人の男女の愛と闘争,見応えのある映画である.
映像的には豪華絢爛,ズビン・メータ指揮する「トゥランドット」の舞台演出も務めた監督らしく,冒頭の遊郭での小妹の舞踏シーンは色彩鮮やか,夢のような美しさである.このシーンで踊りながら歌われる「北方の佳人」の歌も良い.
やがて随風と小妹の二人は馬を駆って林の中を逃亡する.全編の半分を占めるのではないかと思われるこの森林シーンの美しさはどうだろう.
幾たびも朝廷の追っ手に襲われる二人,矢尽き刀折れた最後の段階で現れる飛刀門,物語はここから意外な展開となる.
和田恵美のデザインになる,この森に住む飛刀門の衣装も息をのむほど美しい.
映画の展開全体はやや冗長に感じられるが,チャン・ツィイーの美しさと演技がそんなことを吹き飛ばしてくれる.この女優の恋人を見送るときにこぼれる哀しげな笑顔は,何とも言えない魅力であった.見て損はなし.
★★★★(★5個が満点)
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2005/04/19

独断的映画感想文:フレッシュ・アンド・ボーン

日記:2005年4月某日
映画「フレッシュ・アンド・ボーン」を見る.
劇場未公開映画,1993年.
監督:スティーブ・クローヴス.
デニス・クエイド,メグ・ライアン,ジェームズ・カーン,グウィネス・パルトロウ.
物語の展開も自然で映画全体悪い印象はないのだがどうして未公開で終わったのか?メグ・ライアンの役柄を巡る商業的な理由なのかも知れない.しかしまあ悪い作品ではない,面白かった.
冒頭に一家惨殺事件の描写.その犯人の手引きをした息子が主人公らしい.
店に置く自動販売機の保守と硬貨回収をしている寡黙な男.ふとしたきっかけで男はアル中気味のいかれた女と同行することになる.
何時かお互い惹かれ合いついに結ばれた夜,行く先々で見かけていた万引き女がドアを叩く….
これから先は因縁話となるのだが,男の父を演じるジェームズ・カーンの邪悪さの演技が良い.グウィネス・パルトロウってどうしてこんなに脱ぎたがるのかしら.
テンポは多少緩め,そうかもう少し音楽が良かったら「パリ,テキサス」みたいになったかも知れない,残念!
ところでこの当時主演の二人(デニス・クエイド,メグ・ライアン)は夫婦だったそうな.
それがいかんかったかな?
★★★(★5個が満点)
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2005/04/18

独断的映画感想文:海を飛ぶ夢

日記:2005年4月某日
映画「海を飛ぶ夢」を見る.
2004年.監督,制作,脚本,音楽:アレハンドロ・アメナバール.
ハビエル・バルデム,ベレン・ルエダ,マベル・リベラ,セルソ・ブガーリョ,タマル・ノバス.
これもスペイン映画,押さえられた色調と美しい音楽が印象的な佳作.
岩場からの飛び込み事故で四肢麻痺となったラモンは,事故後26年経って尊厳死を求め裁判を起こす.彼の家族,尊厳死を支援する組織の人たち,弁護士,ニュースで彼のことを知った市民等が彼のもとを訪れ,物語が展開する.
弁護士で自らも進行性の難病を抱えたフリアは,ラモンの書いた詩を読んで彼を深く愛するようになる.その詩が出版できたら共に死のうとまで思う彼女.
一方彼の優しさに元気を与えられるロサは,彼の世話をしようと訪れるが,彼の自死を受け入れることは困難だった.
ラモンの兄は弟を深く愛するが故に,彼が死を望むことを受け入れることが出来ない.一方兄嫁のマヌエラは,ラモンの望みを受け入れざるを得ないと心に決めている.
これらの人々の葛藤と彼を巡る愛情のドラマには,心を動かされる.
フリアが海岸に散歩に行ったと聞き,ラモンが空想の中で起きあがり,窓から飛翔して海岸に降り立ち彼女を抱きしめる場面の解放感と感動は,素晴らしい.邦題はこのシーンから取られているのだが,良いタイトルである(原題は”THE SEA INSIDE”).
ラモンの最後のシーンには違和感があったが,全体は素晴らしい.監督自身が担当する音楽も印象的.
「死」というものを「生」と同等に扱う考え方を,この映画から学ぶことが出来た.
★★★★(★5個が満点)
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独断的映画感想文:NARC ナーク

日記:2005年4月某日
映画「NARC ナーク」を見る.
2002年.監督:ジョー・カーナハン.
ジェイソン・パトリック,レイ・リオッタ.
麻薬潜入捜査官テリスは,犯人追跡中の銃撃戦で市民を巻き添えにし停職中.復職の条件に同じ潜入捜査官で射殺されたカルベスの捜査を命じられる.
カルベスの同僚で死体発見者のオーク警部補と組んで捜査を始めるテリス,捜査は幾度も壁に突き当たり,わずかな手がかりを拾っては進んでいく毎日だった.苦闘の末カルベスの射殺現場にいた売人2人をようやく捕らえた時,驚くべき真相が姿を現す….
蒼い色調の暗い画面で描く,緊張感ある展開が良い.
そして何と言っても主演の2人の迫真の演技が素晴らしい.
張り込み中の車の中で,テリスに自分の過去をオークが語る.殺人課を志望したのに風俗課に回され,胃潰瘍になるほど苦しんだ日々.その彼が帰宅すると膝枕で慰めてくれた妻,その愛撫の心地よさ.妻が病死した後殺人課に回され,吹っ切れたデカになったと語るオーク.
その言葉通りオークの捜査は荒っぽい.何故彼はこの件をこれほど執念を持って荒々しく捜査するのか.
テリスも捜査にかける執念は激しく,妻は彼を愛するが故にその執念で自分の命を粗末にする彼の元を離れていく.
そして最終局面,黒澤の「羅生門」のように矛盾し入り乱れる供述の中に最後に現れる真実は何か.息をもつかせぬ展開と非情な幕切れに圧倒される.
それにしてもアメリカの刑事とはかくも痛々しいものか.一見の価値あり.
★★★★☆(★5個が満点)
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独断的映画感想文:グッドフェローズ

日記:2005年3月某日
映画「グッドフェローズ」を見る.
1990年.監督:マーティン・スコセッシ.
レイ・リオッタ,ロバート・デ・ニーロ,ジョー・ペシ,ロレイン・ブラッコ.
これもマーティン・スコセッシとデ・ニーロの組んだマフィアもの.しかしゴッド・ファーザー等とは少し趣が違う.
アイルランド系の貧しい主人公ヘンリーは,少年の頃からギャングになりたくて(理由は皆に一目置かれる,店で行列しなくて済む,店の前に車を止めても違反にならないetc),近所のポーリーのもとでチンピラになる.彼は誠実でフットワーク良く,口が堅く愛想が良い(別にギャングでなくても成功しそうだ).
ポーリーに目をかけられ,兄貴分のジミー,同輩のトミーと組んで活躍する.
トミーはイタリア系で気が荒く,すぐ切れて殺人も辞さない.ヘンリーとジミーは脅迫した相手の妹がFBIであっさり捕まり刑務所へ.獄中で作った人脈で薬に手を出すようになる.
こうして3人組は次第に深みにはまっていく.少年時代夢見たようにギャングの世界は金になったが,しかしその為には,幹部でない彼らは懸命に働かなくてはならない.実際強盗,窃盗,脅迫とヘンリーたちは休みなく働く.
警官が買収してあったり,情報提供がしっかりしていたりして捕まる確率は相対的に低いようだが,それでも一生犯罪をやっていくのだから何時かは捕まる.特に薬の売買を,愛人を使って本格的にやり始めたヘンリーは,自身も荒廃していくが捜査の危険も迫ってくるのだった….
と言う訳でゴッド・ファーザーとは大分違うでしょう.
アイリッシュ系でマフィアの中では終生幹部にもなれない彼らは,どういう末路が待っているのだろう.
主演のレイ・リオッタは「ハンニバル」で自分の脳みそと変わったつきあい方をする男を演じて評判だったが,この映画では少年ぽいギャングを演じて快調.「ホーム・アローン」でさんざんな目に遭わされる泥棒の親分を演じて評判だったジョー・ペシは,彼にしか演じられないといった感じのイタリア系ギャングを見事にこなしている.
デ・ニーロはいささか影が薄い.テンポ良く最後まで一気に見た.
★★★☆(★5個が満点)
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2005/04/14

独断的映画感想文:沈黙のジェラシー

日記:2005年4月某日
映画「沈黙のジェラシー」を見る.
1998年.監督:ジョナサン・ダービー.
ジェシカ・ラング,グウィネス・パルトロー.
N.Y.でジャクソンと婚約したヘレンは,彼の母マーサが住む牧場を訪れる.マーサは息子を溺愛しているようだが,家族を持たないヘレンには悪い印象ではなかった.
妊娠を機に結婚した二人は,ヘレンが強盗に襲われたこともあってN.Y.を離れ,牧場を継ぐことになる.同居したマーサは次第にその本質を見せてくるのだった….
マザコンもののサイコスリラー,男にはこの題材そのものが楽しめないものである.
阿修羅の形相で嫁いびりをする母親像を見るのもいやだが,かといってこの映画のように最後に勝利した嫁が母親にびんたを喰わせて勝ち誇るのもなんだかなー.
最終局面,サイコスリラーでなくなって直接対決になってからの終わり方が唐突,こういう映画によくある余韻もなく単純すぎる.どうもあまり見たくないと言う予感があたったよなー.
邦題ももう一つだよなー,スティーブン・セガールものかと思ったよなー.
★★(★5個が満点)
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独断的映画感想文:フラットライナーズ

日記:2005年4月某日
映画「フラットライナーズ」を見る.
1990年.監督:ジョエル・シューマカー.
ジュリア・ロバーツ,キーファー・サザーランド,ケヴィン・ベーコン,ウィリアム・ボールドウィン.
それぞれに自信家の・あるいは好奇心旺盛な5人の医学生,彼らは故意に心停止状態を造り,蘇生するまでの数分間の臨死を体験する.
それぞれに意外な光景をかいま見た彼等は,蘇生後怪奇な現象に悩むことになる.それは,彼らが潜在意識下に罪悪感を持って記憶していた過去の出来事の,「顕在化」だった….
出だしと裏腹に,これは一種のホラー映画と考えた方が説明しやすい.
臨死体験した4人が4人ともこういう過去の体験を持っていたというのはちょっと無理がある.その過去の体験を宿題に例えれば,ケヴイン・ベーコンの宿題は比較的簡単だった.ジュリア・ロバーツの宿題もむしろ感動的.メインの物語となるキーファー・サザーランドの宿題は,しかしいささかありがちなものではないだろうか?
臨死・蘇生のパターンもちょっと繰り返しが鼻についた.エピソードを詰め込みすぎず,もっと叙情的な作品にしてくれたら良かったのに.
この作品は15年前のもの,公開当時は臨死体験をメインに宣伝していたような気がする.
皆若いが,ケヴィン・ベーコンはやはり魅力的.キーファー・サザーランドは伸び悩んだような気がする.
★★★(★5個が満点)
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2005/04/05

独断的映画感想文:昼下がりの決闘

日記:2005年4月某日
映画「昼下がりの決闘」を見る.
1962年.監督:サム・ペキンパー.
ランドルフ・スコット,ジョエル・マクリー.
年老いたガンマンが,金の輸送を銀行から請け負う.
彼は町で会った旧友と彼の相棒の若者を雇い,金鉱の町に向かう.途中の牧場には狂信的キリスト教徒の父とその娘がいて,娘はかって恋した金鉱で働く男のもとに出奔すべく,彼らについてきてしまう.
金鉱の町で娘は男と再会,結婚式を挙げるが,男の兄弟達は新妻を共有しようと言う荒くれ男達で,娘はガンマン一行と逃げることになる.一方旧友は鼻っからガンマンが運ぶ金を強奪しようと企んでいた….
最初の設定では,決闘相手はこの金輸送を襲う強盗かと思っていたら違いました.この辺から話は(僕にとっては)妙に捻れてくる.
つまりこの決闘で襲ってくるのは,合法的結婚をしたのに妻を奪われた男とその兄弟です.
しかもその妻たるや拉致したのでも駆け落ちしたのでもない,向こうから押し掛けてきた女房です.それが兄弟に共有されるのがいやだと言って(まあそりゃそうだろうが,金鉱町で女はちょっぴりしかいないそんなところに来る方が悪い),別の男と逃げてしまう.だから追っかけて女を取り返そうとした.
しかも相手の一行は銀行に雇われたと言っているが,その片割れは相棒を裏切って金を持って逃げようとしているらしい.金と言えば銀行のものではあるが元々は自分たちの掘ったものだ.相手を撃って金を取り戻す正義は,むしろ男と兄弟側にあるのではないか?
というわけで男と兄弟は延々とガンマン一行を追ってくる.
最後にガンマンを追いつめたと思ったら,ガンマンから決闘で決着をつけようと言われ,兄弟の長兄がそれを受けて立ってしまう.決闘の結果はまあ言わないけど,それにしてもこんな馬鹿な話がありますか?
僕はこのならず者ロートルガンマンに射殺される(しまった,言ってもうた),金鉱堀労働者兄弟にいたく同情してしまう.
こんな災難がこの世にあるものだろうか?
サム・ペキンパーの得意な,老いたガンマンの悲哀を描く西部劇として,カメラもいいし展開もスムース,映画の形としては良いと思うが物語はむちゃくちゃである.
主人公の側に感情移入はできない.悪役が気の毒と言うことだけが,見終わった後ふつふつと湧いてくる感情である.
同じ監督の「ビリー・ザ・キッド」は良かったのになー.
★☆(★5個が満点)
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