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2005年5月に作成された記事

2005/05/31

独断的映画感想文:キング・アーサー

日記:2005年5月某日
映画「キング・アーサー」を見る.
2004年.監督:アントワーン・フークア.
クライブ・オーウェン,キーラ・ナイトレイ,ヨアン・グリフィズ.
東ヨーロッパのサルマートの騎士団がローマの命令でブリテンに駐留,現地の指揮官アーサーと伝説的な騎士団を形成する.
ローマが撤退しサクソン人が攻め入る中,一般人を守ろうと独自に踏みとどまり戦う姿を描く.
あまり知った俳優は居ないが,アーサーを演じるクライブ・オーウェンは役所広司に似たいい男,彼がサクソンと戦う大儀は今ひとつわかりにくいが「自由」「自由」と言い過ぎるのはちょっと鼻につく.
この時代に「自由」等という概念はあったのか?湾岸戦争・イラク戦争のプロパガンダ臭がぷんぷんするじゃないか?
騎士物語としては面白いし,いわゆるアーサー王伝説と違う話をオリジナルで作ったのも興味深いが,「自由のために」というアピールは生々し過ぎやしませんか?
ウォード族の姫グイネヴィアは美しいが,どう見てもヴァンパイア女優.野性味ありすぎという感じ.
★★☆(★5個が満点)
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2005/05/30

独断的映画感想文:ミリオンダラー・ベイビー

日記:2005年5月某日
映画「ミリオンダラー・ベイビー」を見る.
歌舞伎町に着いて延々長蛇の列にびっくり,なんとこれは「機動戦士ガンダム」の列であった.しかし「ミリオンダラー・ベイビー」も館内は満席.
2004年.監督:クリント・イーストウッド.
名トレーナーだが選手に恵まれないフランキーのもとへ,既に30を超えた女性ボクサー志願のマギーが押しかけてくる.最初断っていたフランキーだがついに引き受けることに.
1年後マギーはデビューするや,連勝街道をばく進,ついにタイトル戦に挑むことになる.しかしチャンピオンは名うてのダーティ・ファイターだった….
この映画の二重構造にはびっくりさせられる.
その一つは公式戦のリンクのエキサイトするまばゆいほど光り輝く画面と,もう一つは,主人公たちが心の内を開くときのレンブラントの絵のような,闇の中に淡く照らされる画面.
一つはアメリカンドリームに向かってまっしぐらに進んでいくリズム感あふれる画面,もう一つはそれが達成された瞬間に始まるもう一つの思いもかけない物語の静謐な画面.
一つはフランキーの過去の実の娘との葛藤の暗示と,もう一つはマギーとの疑似父娘関係の物語.
当初の予想と違って,この映画は人間の尊厳と生と死に立ち向かう勇気についての映画だった.
クリント・イーストウッド,ヒラリー・スワンク,モーガン・フリーマンの3人がいずれも良い.ヒラリーの鍛え抜かれた動きと肉体の見事さ,一方後半の表情だけの難しい演技のできもすばらしい.
マギーのガウンに刺繍されていた「モ・クシュラ」はアイルランド語で,至る所で彼女は「モ・クシュラ」と歓声を浴びることになる.この言葉の意味が最後に明かされ,彼女が微笑んで納得するシーンは印象的.
音楽は今回も監督自身,これもすばらしい.
★★★★☆(★5個が満点)
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2005/05/28

独断的映画感想文:ジャッカルの日

日記:2005年5月某日
映画「ジャッカルの日」を見る.
1973年.監督:フレッド・ジンネマン.
エドワード・フォックス,ミシェル・ロンズデール.
緊張感あふれる傑作.殺し屋ジャッカルと警視ルベールの死闘が息つく間もなく展開される.
アルジェリア独立直後,これに不満を持つ右翼軍事組織OASはド・ゴール大統領暗殺のため,殺し屋ジャッカルを送り込む.これを察知した仏政府は名警視ルベールに命じジャッカルを追わせる.
わずかな手がかりからジャッカルを特定し追跡に移るルベール,一方ジャッカルは内通者の情報を得て車を変え名前を変え髪の色を変えながら,パリに肉薄する.
双方の密告者内通者の情報が錯綜し,これに偶然のアクシデントが重なり,物語の行方は予断を許さない.
解放記念日,式典直近のアパートにジャッカルは潜入し,ド・ゴール狙撃に成功するが….
数々のパロディを生んだ傑作映画をようやく見た.
幾重にも底の割れない仕掛けと,快調に進むドラマの進行が心地よい.
フランスが舞台らしいロマンチックな要素もなかなか素敵.最後の哀愁漂う墓場のシーンが印象深かった.
ジャッカルが変装用品を隠す小道具に使っているオールド・スパイスの小瓶.これは日本でも数十年前まで売られていた懐かしい品だ.1本マストのヨットをトレードマークとしたこの男性化粧品は,ちょっと変わった香りが好きで30代頃まで使っていたが,20年前頃に販売元がつぶれて市場から姿を消したと記憶している.今ネットで探すと直輸入品を最近また売り出しているようだ.探して買わなければ.
★★★★(★5個で満点)
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2005/05/27

独断的映画感想文:大逆転

日記:2005年5月某日
映画「大逆転」を見る.
1983年.監督:ジョン・ランディス.
ダン・エイクロイド,エディ・マーフィ,ジェイミー・リー・カーティス.
フィラデルフィアで先物取引会社に勤める辣腕のルイス,高給を取り執事付きの豪邸住まい,婚約者とはもうすぐ結婚という順風満帆の日々.
ところが会長兄弟は賭をして,ルイスと詐欺まがいのおもらい路上生活をしているビリーを取り替え,ルイスが犯罪に走るかどうか見てみようというとんでもない企画を立てる.
罠にはまって仕事も豪邸も婚約者も全て失うルイス,一方ビリーは意外にも先物取引の勘が冴え会社に利益をもたらす.ルイスはただ一人彼を拾ってくれた売春婦オフェーリアのおかげで露の命をつなぐ.
テンポ快調なコメディ,あれよあれよという間に最後まで持っていかれます.よく考えるとビリーが先物取引で成功するなんてあり得ないし,賭のために婚約者を失うなんてひどいけど,そこが映画の良いところ,気にしない気にしないと話はどんどん進む.
オフェーリアのキャラクターも良い.邦題はこれ自体がネタばらしだよね(原題はTRADING PLACES).
結局この題名通りのハッピーエンドに.楽しめる映画.
★★★☆(★5個が満点)
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2005/05/23

独断的映画感想文:変態家族 兄貴の嫁さん

日記:2005年5月某日
映画「変態家族 兄貴の嫁さん」を見る(やっぱりちょっと恥ずかしいですね,こう堂々と言うのって).
1984年.周防正行監督.
大杉漣,風かおる.
周防正行監督デビュー作の新東宝ポルノ.
ポルノとしてはともかく監督が監督なので,小津映画のまね(パロディではなくまねですと本人がインタビューで言っている.このインタビューが結構面白い)というのが最大のポイント.
冒頭大杉漣(笠智衆のまね)他若い娘息子が,お茶の間でちゃぶ台を囲むローアングルの画面.彼らが時々上を見るのは,2階で今日結婚式を挙げた兄が初夜に及んでいるからである.
この兄が新婚だというのに,父が亡妻に似ていると言って通っているスナックのママ(彼にとっては母に似ている)とSMプレイで出来ていたり,妹は平凡な生活がいやだと言ってトルコに転職したりという,変態家族.
嫁いできた嫁さんは(周防正行によれば原節子にあたる),夫の出奔にも耐えその弟の性的ムラムラを解消してあげたりと,活躍.しかし台詞も動きも小津映画だから,間延びすることおびただしい.
メモリアル的な映画と思って,監督インタビューと一緒に見れば結構面白いが,ポルノだと思ってみるとあまり満足できないかもしれません.
★★★(★5個が満点)
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2005/05/21

独断的映画感想文:アンダーワールド

日記:2005年5月某日
映画「アンダーワールド」を見る.
2003年.監督:レン・ワイズマン.
ケイト・ベッキンセール,スコット・スピードマン.
ヴァンパイアと狼男族の宿命の戦いの中での,ヴァンパイア戦士セリーンと人間マイケルの恋.全編強烈なアクションで,少なくとも退屈する暇はありません.
またヴァンパイアと狼男族の戦いもその中に裏切りあり,三つ巴四つ巴の戦いありと,なかなか面白い.
しかし最後の決闘シーンなど見ると結局彼らは野獣ですな.それまでのガンファイトアクションが,牙を剥いての掴み合いになってしまって興ざめなことおびただしい.
その点,ケイト・ベッキンセールのアクションはそういうシーンはないので安心してください.彼女は美しくアクションも見事,この映画は彼女ともう一人狼男族のリーダーでもっている.
★★★(★5個で満点)
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2005/05/15

独断的映画感想文:ミラーズ・クロッシング

日記:2005年5月某日
映画「ミラーズ・クロッシング」を見る.
1990年.監督:ジョエル・コーエン.
ガブリエル・バーン,マーシャ・ゲイ・ハーデン,アルバート・フィニー.
主人公トムは寡黙なインテリギャング.元来はアイルランド系のボス・レオの懐刀だが,ボスの女ヴァーナと出来てしまい対立するギャング・キャスパー傘下に入るかという状況.
ヴァーナの弟バーニーは両ギャングの対立の原因だし,バーニーとキャスパーの片腕デインは共通の男の愛人ミンクを抱えている間柄だし,その間を口先一つで泳ぎ回っていくトム.
嘘がばれ絶体絶命になること一度ならずというのに,そのたびに奇跡的な状況が現れる.コーエン兄弟の映画らしく,思いもかけない偶然の出来事がドラマを展開していく.最終的なハッピーエンドを誰が予測できるだろうか?
それにしてもトムのハードボイルドぶりが,この映画の魅力である.
トムの抱える状況は難しい.レオとは親友だがその情婦ヴァーナと出来てしまった.ヴァーナの弟バーニーは両組のもめ事の種,レオとの友情,その中でそのどれにもひっつかない独自の立場に固執するトム.更にばくちの勘も冴えず,ノミ屋に借金の山をこしらえる.
おかげでトムはやたら襲われる.
自分の家のドアを出た瞬間待ち伏せされたり,街で襲われたり,人を襲おうとしてあっさり逆襲されたり.トムは腕っ節はそれほどでもないからいずれもこてんぱんの目に遭わされるが,やられた後のトムの陰謀は冴え渡る.
(それに比べてレオの強いこと!襲ってきたマシンガン武装の4人組を拳銃1丁で返り討ちにしてしまうし,トムを叩き出すときの腕まくりしたパンチの迫力!)
しかしトムが命がけで守るその行動の原理とは,何なのか?この映画でたびたび強調される「帽子」が,何かを象徴しているようだ.
ガブリエル・バーンの渋い演技にはまってしまった.彼を見るだけでこの映画を見る価値あり.コーエン映画らしいとぼけたユーモアの映像が,随所に挿まれるのも魅力.
★★★☆(★5個で満点)
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独断的映画感想文:弱虫(チンピラ)

日記:2005年5月某日
映画「弱虫(チンピラ)」を見る.
2000年.監督:望月六郎.
北村一輝,星遥子,田口トモロヲ,長門浩之,宮前希依,ガダルカナル・タカ.
やくざ映画だが出てくる人に悪い人(やくざだから良い人なわけはないが,邪悪でないという意味)がいない,不思議な映画.
チンピラの修はジゴロのような仕事をしている.
修はやくざの女と愛し合いその女のために人を刺し,女は修のために指を噛み切った.女は今キャバレーに勤め修と同棲しているが,必要があれば客と寝ている.修も必要に応じ女と寝て金を稼いでいる.
修は極めて優しいやくざで,女とのもめ事を裁いてくれた船水に付き従っている.船水もインテリ系のエキセントリックなやくざで,親分のめちゃくちゃな女あさりを冷たく突き放す一方で親分との情を切れない面もある.
船水の同輩浅岡は権力欲のある馬鹿で(無論ガダルカナル・タカ),浅はかに他の組と通じてはマッチポンプに精を出す.
ある日親分の情婦景子を修が匿ったことから物語は動き始める.
景子は親分を嫌って修に接触してくる.親分はそんな景子をシャブ漬けにして自分のものにしようとする.たびたび携帯に連絡してくる景子を無視している修,しかしある日親分がたたない(すみませんね,直截的表現で)自分の代わりに,修に景子を抱くよう命じる.
シャブ漬けで魂の抜け殻になった景子,しかし彼に抱かれて景子は一回だけ「修」と呼びかける.この人形のような景子を修が抱くシーンは印象的.
組同士の抗争に体を張って立ち向かった修・船水だが,結局景子に恋した修は同棲相手も船水も棄て景子と旅立つ.
男と女,やくざの人間関係(と言ってもほとんど親子関係と思った方が良い)の哀しさを描き,情感溢れる望月六郎の世界.田口トモロヲがあり得ないやくざを演じ存在感あり.
★★★☆(★5個が満点)
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2005/05/05

独断的映画感想文:タカダワタル的

日記:2005年5月某日
映画「タカダワタル的」を見る.
2003年.監督:タナダユキ.
高田渡,柄本明.
映画は1970年中津川フォークジャンボリーでの若々しい高田渡から始まり,2003年の下北沢スズナリ劇場,京都拾得,大阪春一番コンサートでのライブ,吉祥寺での彼の生活を紹介していくドキュメントである.
この映画は柄本明が高田渡にはまって企画したものらしいが,柄本明は時々画面に出てきて頭をかくだけ,映画の最後で「高田渡のように芝居しようって思ったってできないもんね」と笑う.
結局この言葉通りなのであって,映画は曰く言い難い,説明しちゃうと嘘っぽくなってしまう,高田渡の希有な人柄と音楽をただ画面に映して行くのみ.
ライブの雰囲気が良く伝わり,大阪・京都・東京のそれぞれのライブがその土地の状況をそのまま反映しているのも面白い.その中をひょうひょうと歌い歩く酒仙フォークシンガー.思い詰めた世の中にこんな時空間があったんだということをしみじみと感じさせる.
スズナリ劇場での「ブラザー軒」,この唄は亡き父と妹の幽霊が,七夕の夜ブラザー軒で氷水を飲んでいるところに行き会うという唄.歌っている高田渡が泣いている.涙は流していないが白いヒゲの間から鼻水が光っている.淡々とした良い曲で,こちらもじんと来てしまう.
★★★★(★5個で満点)
p.s.追悼上映中の吉祥寺バウスシアターのP.A.装置は,映画館とは思えない程すばらしい.その装置で聴くライブの音は一段とすてきだった.
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2005/05/02

独断的映画感想文:リオ・ブラボー

日記:2005年5月某日
映画「リオ・ブラボー」を見る.
1959年.監督:ハワード・ホークス.
ジョン・ウェイン,ディーン・マーチン,リッキー・ネルソン,アンジー・ディキンソン,ウォルター・ブレナン.
135分の西部劇大作.人気俳優とアイドル俳優が出た恋あり唄ありの娯楽巨編.
時代が映画の黄金時代だからこそ作られた,ゆったりした作品.いささか展開がゆったりしすぎて途中寝てしまったが,ここぞという見せ場はツボにはまっている.
俳優ではアンジー・ディキンソンが良い.
ジョン・ウェインに惚れて,何とかこの不器用な男から求愛の言葉を引き出そうとあれこれ仕掛けるのが,おかしくて切ない.まして相手は今悪党一味と対決中で,いつ死ぬか分からないのだから大変である.
もう一人,老保安官助手のウォルター・ブレナンも絶品.
歯の抜けた顔でひーひーと笑いながら,ここというところで決然と銃をぶっ放すのが爽快.最後にジョン・ウェインが女のところに行ったと聞いてディーン・マーチンを捕まえ,「保安官のことだから女に(声色を使って言う)『俺の檻に入れ』なんて言うに違いない.自分が檻に入るのにな」と言ってひーひーと笑う.このシーンでは思わず腹を抱えてしまう.
音楽は有名な「皆殺しのトランペット」「リオ・ブラボー」「シンディ」等が劇中で聞ける.いかにもという古き良きアメリカ映画の秀作.
★★★☆(★5個が満点)
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