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2005年6月に作成された記事

2005/06/29

独断的映画感想文:宇宙戦争

日記:2005年6月某日
映画「宇宙戦争」を見る.
2005年.監督:スティーヴン・スピルバーグ.
トム・クルーズ,ダコタ・ファニング,ティム・ロビンス.
言わずとしれた古典的SFの傑作を原作としたリメイク.
しかし前作(1953)に比べ時代の反映なのだろうか,すさんだ絶望的な印象を与える映画となってしまった.
宇宙侵略の恐ろしさは確かにひしひしと感じられるが,エンタテインメントである以上人間の側の物語が欲しいと思う.侵略され反撃する側の連帯は,アメリカ映画のお得意ではないか?
しかしこの映画にはそういう場面は皆無,市民は絶望的な難民として,時には殺し合う存在としてしか描かれない.
主人公の家庭の複雑な状況も説明不足で,監督にはCGを駆使してアメリカが廃墟になる過程を描く気はあっても,人間の側の物語を描く気は最初から無かったのではないかという印象を受ける.
ダコタ・ファニングの絶叫が悪い意味で印象的.
今のアメリカは自分たちこそが世界に災いをもたらす悪の枢軸だと言うことを,潜在意識下に感じているのではないか.それがこの映画が与えるすさんだ絶望的な印象の,原因ではないのかと思ってしまう.
★☆(★5個が満点)
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独断的映画感想文:スナッチ

日記:2005年6月某日
映画「スナッチ」を見る.
2000年.監督:ガイ・リッチー.
ジェイソン・ステイサム,ベネチオ・デル・トロ,アラン・フォード,ブラッド・ピット.
ロンドンを舞台に,以下の人たちが出てきます.
①宝石泥棒のフランキー一味
②そのダイヤ横取りをたくらむギャング「弾をくぐる」ボリス
③ボリスからそれを請け負った間抜けな黒人3人組とその飼い犬
④裏ボクシングプロモーターのターキッシュ・トミーのコンビ
⑤宝石故買屋のデニスとその従兄弟のN.Y.のギャング
⑥裏ボクシングと故買屋をやっているギャング,ブリック
⑦ひょんなことから裏ボクシング選手となるむちゃくちゃ強いパイキー
⑧「弾を噛む」殺し屋トニー
それぞれがいずれも個性豊かな(というよりめちゃくちゃな)面々で,彼らが別々に動きながら最後にはすべての話が交錯して大団円に至る,監督の前作「ロック・ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ」と同じである.
今回は前作よりキャストがパワー・アップ,話の展開もスピード・アップ,1回見ただけでは何がなにやら分からないというのが,この映画の最大の欠点であろう.しかし随所に挟まれる何とも言えぬユーモア,各人の並はずれた個性の魅力で,最後まで持って行かれてしまう,そしてもう一度見たくなる.
昔赤塚不二夫の漫画で「おそ松くん」というのがあった.
あるスキー場に来たおそ松くん6人兄弟とチビ太,イヤミ等の各キャラクターが,スキー場の別々の場所で全く別個に騒ぎに巻き込まれ,紆余曲折を経て最後にスキー場の真ん中の空中で全員が鉢合わせをするという,大傑作があったが,ガイ・リッチー監督の2作品は,この「おそ松くん」を思い出させる.
「スナッチ」でも中盤の,それまで見ず知らずの関係だった3台の車に乗ったギャングたちが,同一地点での連続事故に巻き込まれるあたりは,何とも言えぬ面白さで,一見の価値あり.
テンポ良く話が複雑な割にそれが気にならない.狂言回し役のターキッシュを演じるジェイソン・ステイサムが,なかなか素敵.
★★★★(★5個で満点)
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2005/06/20

独断的映画感想文:ステレオ・フューチャー

日記:2005年6月某日
映画「ステレオ・フューチャー」を見る.
2002年.監督:中野裕之.
永瀬正敏,桃生亜希子,緒川たまき,麻生久美子,竹中直人.
圭介は売れない俳優,ところがある映画のオーディションでヒロインの美香に惚れられ抜擢される.主演の竜太郎は行き当たりばったりの演技で人の調子を狂わす怪優で,圭介は毎日苦闘の連続.
一方圭介の恋人エリは圭介にプロポーズされたのだが,彼が俳優の夢を捨ててコンビニの店長になるというのに失望し二人の関係は最悪に.悪いことにエリは妊娠の診断を受け,ショックで彼女は言葉を失う(失語症という意味です).
姉の薫が担当している環境番組の取材を通じ樹医のダニーと知り合ったエリは,次第に心を癒されていく….
とまあストーリーを追ってみたが,書いている内に監督にとって物語はどうでも良いのではないかという気がしてきた.
この映画は,監督が日頃から温めていた4つの“SF”エピソード(“StereoFuture”“Silent Female”“Samurai Fighter”“Sounds Funky”)を盛り込んだものらしい.確かにそう言われりゃそうなのだが.
どこまでも続くレールを疾走していくカメラ.風に揺れ日を浴びて騒ぐ森の木々.そういう映像がふんだんに挿入され,その中に「4つのSF」がちりばめられていくこの映画は,中野監督のいわば散文詩のような作品なのかもしれない.
最後にはごく穏やかなハッピーエンドが来るこの作品は,従って良い悪いと言うより好き嫌いという観点で評価されるものなのだろう.僕にとってはいささか苦手な範疇の映画である.何だかなあと言うのが正直なところ.
★★★(★5個が満点)
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2005/06/12

独断的映画感想文:ザ・エージェント

日記:2005年6月某日
映画「ザ・エージェント」を見る.
1996年.監督:キャメロン・クロウ.
トム・クルーズ,キューバ・グッディング・Jr,レニ・ゼルウィガー.
プロスポーツ選手のエージェントとして大企業SMIに勤める腕利きのジェリー・マグワイア.しかし選手の年棒をつりあげる一方で選手を馬車馬のように働かせるやり方に疑問を持ち,ある夜インスピレーションのままに「もっと良心的なやり方」を提案した文書を配る.
翌朝それを読んだ社員は拍手で彼を迎えるが,後輩のエージェントが彼にクビを宣告,彼は独立を強いられる.
「僕についてくるものは?」と叫ぶがついてきたのはレニ・ゼルウィガーと金魚1匹のみ.抱えていたクライアントはすべてSMIに奪われ,婚約者には慰めてほしいと言うと拒否され,分かれようと宣告すると殴り倒される.
彼に残されたのは,わがままで扱い辛いフットボーラー・ロッドのみ.彼がけがでもしたら万事休すである.というどん底から彼はいかに這い上がるのか….
この映画は要領よくすごいテンポで進んでいくが,前半は彼が打ちのめされていく過程なので見るのは辛い.しかし途中から待てよと思う.
この映画は魅力的な恋愛映画であり,また一人の人間がいかに奪うだけの人間から与える人間に成長するのかを描く映画でもあるのだ.
この映画のトム・クルーズが魅力的なのは,打ちのめされた上に更に奪うだけの人間と自覚し苦悩する過程を,きちんと演じているからだ.また,レニ・ゼルウィガーが魅力的なのは,トムとの対比で与える母性の人間としてのドロシーを(そしてそれに悩む姿を),きちんと演じているからだ.
あの困ったような、今にも泣き出しそうな顔を見ていると,それが感じられる.
ドロシーの息子レニーがとんでもなく魅力的.こまっしゃくれた子供なのだが,それが演技と思えないところが可愛い.邦題のイメージとは違った佳作であった.
★★★★(★5個が満点)
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2005/06/08

独断的映画感想文:刑務所の中

日記:2005年6月某日
映画「刑務所の中」を見る.
2002年.監督:崔洋一.
山崎努,香川照之,田口トモロヲ.
漫画家花輪の自己の経験に基づくベストセラーの映画化だそうである.
そもそも花輪の罪状は戦争ごっこが昂じて改造銃を作ってしまった銃刀法違反.これで十分浮世離れしているが,彼が入った刑務所の服役囚がまたいい人ばかりである.
罪状は何かがいっさい分からないのだが人畜無害風な人ばかりで,刑務所の中は暴力や陰謀もなく平穏に過ぎてゆく.
花輪の雑居房の人たちは規律違反のため全員懲罰房に入れられるのだが,これもただの独房で,花輪自身はこんなに居心地が良いのなら時々懲罰を受けようかと思うほどである.
少なくとも登場人物は皆犯罪者ではないか?日本の刑務所に暴力やいじめがないのはご同慶の至りだが,本当にこんな刑務所だったらみんな入りたがるじゃないか.少なくとも外国の犯罪者を呼ぶようなものではないか?
山崎努を軸に,刑務所内エピソードを淡々と描くまあおもろい映画だが,こんなに刑務所を美化していいのかね.と心配する僕だった.
★★★(★5個で満点)
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2005/06/06

独断的映画感想文:ラヴェンダーの咲く庭で

日記:2005年6月某日
映画「ラヴェンダーの咲く庭で」を見る.
2004年.監督:チャールズ・ダンス.
ジュディ・デンチ,マギー・スミス,ダニエル・ブリュール,ナターシャ・マケルホーン.
1936年コンウォールの漁村でのこと.岬の上に住む老姉妹,ジャネットとアーシュラは嵐の翌朝浜に打ち上げられていたアンドレアを救う.
彼はポーランド人でドイツ語を話す.姉妹はコミュニケーションに苦労しながらも,看護する内にアンドレアに対する親身な愛情がわいてくる.
アンドレアはヴァイオリンの名手であることが分かり,村の「ヴァイオリニスト」アダムにもらったヴァイオリンで,アンドレアは演奏を披露するようになる.その音色に魅せられた村に逗留中の画家オルガは,世界的名ヴァイオリニスト,ボリス・ダニロフの妹だった….
映画の進行に伴って分かってくるが,しっかり者で学問も家事万端も遺漏のない未亡人である姉ジャネットに比べ,アーシュラはナイーブなまま老嬢となったような女性である.そのアーシュラがアンドレアに恋心を抱く.姉に対抗して自分も必死にドイツ語を学ぶ(チキンの丸焼きを子犬の丸焼きと言ったりするが).
その妹(ジュディ)と見守る姉(マギー)の演技はともにすばらしい.
両名ともに男性で言えばナイトに相当するデイムの称号を持つ名優,片や「ハリー・ポッター」シリーズのマクゴナガル教授で有名,片や「007」シリーズのM役で有名.
他にもこの家庭の家政婦ドーカス役のミリアム・マーゴリーズも得難い存在感,彼女のユーモラスな演技に幾度も腹を抱えた.
ハリウッド映画には求めても得られない味わいの映画である.イギリスの美しい風景を映す映像の色調も心地よい.全編を彩るヴァイオリンの音色も美しい.
惜しいのはアンドレア役のダニエル・ブリュールのヴァイオリンを弾く演技がへたくそなことか.エリザベス・テイラー主演の「ラプソディ」も音楽映画だが,コンチェルトの演奏場面は胸が苦しくなるほどの迫力だった.それに比べると彼のヴァイオリン(を弾く演技)はもう一つ.最後の彼がソロを弾くオーケストラシーンも,もう少し長くても良かった.
蛇足を言うと,最後のコンサート場面で演奏される曲は,いかにもイギリス風(イェーガーの雰囲気)だったし,オルガがアンドレアを描いた肖像画は,いかにも1930年代にスラブ系の芸術家が描きそうな絵だったし,そういう点での細かい演出は見事だと思いました.ところで邦題の「ラヴェンダーの咲く庭で」はちょっと原作のイメージと違う.原題は LADIES IN LAVENDER .
★★★★(★5個が満点)
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2005/06/05

独断的映画感想文:コラテラル

日記:2005年6月某日
映画「コラテラル」を見る.
2004年.監督:マイケル・マン.
トム・クルーズ,ジェイミー・フォックス.
冷血な殺し屋ヴィンセントに乗り込まれたタクシー運転手マックス.ヴィンセントは一夜のうちに5人の殺しという,ハードスケジュールを目指し,マックスに協力を強制する.
ヴィンセントは虚無的な殺し屋だが約束は守る.その点でマックスとヴィンセントの間には,微妙な関係が成り立っている.
マックスは最後に殺されるかもしれないが,それまでは協力者としてヴィンセントはマックスの命を守り,マックスをある意味で信頼して行動するのだ.
しかし非情な殺しの繰り返しに耐えきれず,マックスはヴィンセントとの対決を決意する….
映画のテンポ,音響効果,スピード感のある映像と緊張感ある物語の展開に乗せられて最後まで見通した.
トム・クルーズは表情の種類の乏しい俳優だと以前から思っていたが,今回は殺し屋の無表情がよく似合っている.最終局面でマックスを追ってくるヴィンセントは,ターミネーターのロボットのように不気味だ.
途中挿入されるジャズバーのシーンは,その後のどんでん返しも含め秀逸.見て損は無し.
★★★☆(★5個が満点)
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2005/06/04

独断的映画感想文:珈琲時光

日記:2005年6月某日
映画「珈琲時光」を見る.
2003年.監督:ホウ・シャオシェン.
一青窈,浅野忠信.
この映画は小津安二郎生誕100周年映画.しかし何故この監督が?という疑問は残る.
台湾から帰った陽子は、古書店店主の肇と会う.探していた台湾の音楽家のCDを受け取るためだ.
陽子はこの台湾の音楽家の資料を探し続けるが,それが何故なのかは分からない.
一方陽子は群馬の実家に帰った折,母に妊娠中であることを告げる.結婚はしない自分で生んで育てるという陽子,しかしそれが何故なのかは分からない.
陽子は鬼子母神の自宅から都電に乗り,山手線に乗り換えて秋葉原や神保町に出る.
映画はその電車のシーンを執拗に追う.高崎線や下仁田線,京浜東北や東急線も登場,特にお茶の水から秋葉原を望む,総武線・中央線が8の字に交差しその下を丸ノ内線が抜けていく望遠のシーンは,美しい.また肇が乗ってる京浜東北線と併走する山手線に陽子が乗っているシーンも,よく撮ったなーと思う.
しかしこの映画の意味するところは何なのか.
映画らしいシーンへのこだわりは感じられるが,結局何なのさというのが終わった後の感想.
サイトを探すと,実は陽子はフリーライターだとか,両親は早くに離婚,目の不自由な親戚に育てられた,今の母は後添えだとか書いてあるが,そんなことは映画を見てもちっとも分かりません.
実の母が家出をしたというのも映画終了の15分前くらいに分かることで,それが物語として広がることもありません.
この映画はふつうのサラリーマンやOLとは違う人たちが出てくるが,その人たちが何故そういうことをしているのか,どういう人なのかは説明しない.妊娠しちゃったという事実は早くに分かるが,それが物語として展開することもない.
題名に惹かれて見た映画だが,それこそどうしたらいいのだろうか,途方に暮れる映画.
★★(★5個が満点)
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