独断的映画感想文:ラヴェンダーの咲く庭で
日記:2005年6月某日
映画「ラヴェンダーの咲く庭で」を見る.
2004年.監督:チャールズ・ダンス.
ジュディ・デンチ,マギー・スミス,ダニエル・ブリュール,ナターシャ・マケルホーン.
1936年コンウォールの漁村でのこと.岬の上に住む老姉妹,ジャネットとアーシュラは嵐の翌朝浜に打ち上げられていたアンドレアを救う.
彼はポーランド人でドイツ語を話す.姉妹はコミュニケーションに苦労しながらも,看護する内にアンドレアに対する親身な愛情がわいてくる.
アンドレアはヴァイオリンの名手であることが分かり,村の「ヴァイオリニスト」アダムにもらったヴァイオリンで,アンドレアは演奏を披露するようになる.その音色に魅せられた村に逗留中の画家オルガは,世界的名ヴァイオリニスト,ボリス・ダニロフの妹だった….
映画の進行に伴って分かってくるが,しっかり者で学問も家事万端も遺漏のない未亡人である姉ジャネットに比べ,アーシュラはナイーブなまま老嬢となったような女性である.そのアーシュラがアンドレアに恋心を抱く.姉に対抗して自分も必死にドイツ語を学ぶ(チキンの丸焼きを子犬の丸焼きと言ったりするが).
その妹(ジュディ)と見守る姉(マギー)の演技はともにすばらしい.
両名ともに男性で言えばナイトに相当するデイムの称号を持つ名優,片や「ハリー・ポッター」シリーズのマクゴナガル教授で有名,片や「007」シリーズのM役で有名.
他にもこの家庭の家政婦ドーカス役のミリアム・マーゴリーズも得難い存在感,彼女のユーモラスな演技に幾度も腹を抱えた.
ハリウッド映画には求めても得られない味わいの映画である.イギリスの美しい風景を映す映像の色調も心地よい.全編を彩るヴァイオリンの音色も美しい.
惜しいのはアンドレア役のダニエル・ブリュールのヴァイオリンを弾く演技がへたくそなことか.エリザベス・テイラー主演の「ラプソディ」も音楽映画だが,コンチェルトの演奏場面は胸が苦しくなるほどの迫力だった.それに比べると彼のヴァイオリン(を弾く演技)はもう一つ.最後の彼がソロを弾くオーケストラシーンも,もう少し長くても良かった.
蛇足を言うと,最後のコンサート場面で演奏される曲は,いかにもイギリス風(イェーガーの雰囲気)だったし,オルガがアンドレアを描いた肖像画は,いかにも1930年代にスラブ系の芸術家が描きそうな絵だったし,そういう点での細かい演出は見事だと思いました.ところで邦題の「ラヴェンダーの咲く庭で」はちょっと原作のイメージと違う.原題は LADIES IN LAVENDER .
★★★★(★5個が満点)
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