独断的映画感想文:大いなる西部
日記:2005年7月某日
映画「大いなる西部」を見る.
1958年.監督:ウイリアム・ワイラー.音楽:ジェローム・モロス.
グレゴリー・ペック,チャールトン・ヘストン,ジーン・シモンズ,バール・アイブズ,チャック・コナーズ.
MGMのライオンが吠えた後突然始まるあの名曲,画面は疾走する6頭立ての駅馬車,この時点でぐいぐいと映画に引き込まれる.
この映画は音楽だけは40年前からファンだった.聞くだけで血湧き肉躍るすばらしいテーマ.ようやく見た映画の方は,166分の長尺ものだったが大満足.
カメラが引くと広大な大平原を駅馬車は走り抜け,わずか数戸の建物からなる宿場町に入っていく.ここから物語はスタートするのだ.
駅馬車から降り立つのは,西部には場違いな山高帽をかぶった紳士,実は東部出身の船乗りなのだが,遊学中の牧場主の娘に見初められ,婚約して今娘の住む西部の片田舎に着いたのだ.
ここでは放牧牛の水源を巡って牧場主が争いを繰り返し,婚約者の父は成功した牧場主だが,水争いの相手には力こそ正義で臨む男.その牧童頭は娘に執心し,東部男への反感を隠さない.
水源地の牧場を所有する,娘の親友は孤高の女性,彼女は祖父の遺訓を守って両者への水供給を認めているのだが….
血なまぐさい争いの渦中に現れた余所者の東部男が,この事態にどう立ち向かうのか?筋書きとしては大体予想通りなのだが,ワイラーのひと味違った西部劇はこうなのかと,目を見張ること多し.
力こそすべての西部で,丸腰のまま相手に立ち向かう東部男,彼がいかに苦境を打開するかは映画の中心なのだが,一方,力こそすべてを実践する西部の男たちにも決して冷たい目を向けているわけではないのが,この映画のもう一つの印象的なところである.
西部は広いだろうと自慢し,東部男に海の方が広いと言われてむっとする老人.乱暴狼藉を繰り返しながらいざ決闘となると卑怯未練の振る舞いに及んでしまう息子,その息子を撃ち殺してしまう父親の牧場主(この両方の俳優がよろしい).こういった西部の男たちへの監督の視線が,共感できる.
ジーン・シモンズ良いですね(この2年後の「スパルタカス」も良かったけれど),最初の登場シーンからあまりに美しく,結末が簡単に予測できちゃう.
若きチャールトン・ヘストンも新鮮(と言っても彼は2年前に「十戒」,翌年が「ベン・ハー」という既に大スター).
この映画は,主題曲に示されるとおりの,肯定的で楽観的な映画なのだ.悲劇を克服し前途には夢がある.この無条件の楽観主義が楽しい.ハリウッド黄金時代の傑作.一見の価値あり.
★★★★(★5個が満点)
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