独断的映画感想文:タクシー・ドライバー
日記:2005年7月某日
映画「タクシー・ドライバー」を見る.
1976年.監督:マーティン・スコセッシ.
ロバート・デ・ニーロ,シビル・シェパード,ジョディ・フォスター,ハーヴェイ・カイテル.
カンヌのパルム・ドールを取った名作.
ベトナム帰還兵のトラヴィスは不眠症,夜勤のタクシー・ドライバーになってN.Y.を流すが,眼にはいるのは街角に立つ娼婦や薬の売人達.
乱れた世の中にいらだちをつのらすトラヴィスだが,ある日大統領選候補者の事務所で働くベッツィに恋をする.
せっかく口説き落としてデートに持ち込んだものの,彼女をポルノ映画館に連れ込んだため振られてしまう.トラヴィスはあきらめきれず,選挙事務所まで出かけて彼女につきまとうが追い払われてしまう始末.
そんなある日,彼のタクシーに飛び込んできて結局ポン引きに引きずり出されていった若い娼婦の姿が,彼の目に焼き付く.その後も幾度か眼にするその若すぎる娼婦.トラヴィスは何事かをなそうと準備を始めるのだった….
命がけで戦って帰ってきた母国は,何故か自分を受け入れない.自分を支えるのは戦闘で身につけた銃の扱いだけ.なまった体を鍛え上げ,銃の訓練に明け暮れる彼は,自分に忍び寄っている狂気に気がついているだろうか?
70年代の青春の狂気というものは他人事ではない.僕があの時代を切り抜けたのは,幾多の幸運と周囲の友人達とのつながりがあってこそだったろう.
そのことをしみじみと思い起こさせる印象深い作品.
デ・ニーロのトラヴィス像は傑出している.彼は2年後に名作「ディア・ハンター」でアカデミー主演男優賞にノミネートされているが,この作品の硬直したトラヴィス像はまた別の魅力を放っている.
若き(!)ジョディ・フォスター,ハーヴェイ・カイテルも素晴らしい.
夜のN.Y.を流すデ・ニーロのイエロー・キャブのバックに流れるバーナード・ハーマンの音楽も,一世を風靡したもの.
★★★★(★5個が満点)
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