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2005年8月に作成された記事

2005/08/29

独断的映画感想文:静かなる男

日記:2005年8月某日
映画「静かなる男」を見る.
1952年.監督:ジョン・フォード.
ジョン・ウェイン,モーリン・オハラ.
アイルランド系・ジョン・フォードがアカデミー監督賞をとった名作.
アイルランド系移民の子としてピッツバーグで育ったショーンが,故郷の村に帰ってくる.
彼は少年の頃住んだ家を買い戻し村に住みつくが,隣家のメアリー・ケイトと心を通わす様になる.ところがその兄のダナハーは気むずかし屋の乱暴者,説得されて結婚は認めたものの,持参金を渡すのは拒否する.
メアリー・ケイトは持参金なしで嫁いだことを恥と考え,持参金が支払われるまではとベッドを共にすることを拒否.ショーンはアメリカで起きた事件以来,人と争うことを自分に禁じてきたのだが….
架空の村イニスフリーの村人が巻き起こす心温まる寓話.
アイルランドの大自然に抱かれ,アイルランドらしい困難をアイルランド流に克服して成就する恋愛物語.心が豊かになる映画らしい映画である.
特に最後の30分間,ショーンがメアリー・ケイトを5マイルの道を文字通り引きずってダナハーの家まで押しかけ,その後ダナハーと延々と殴り合う(間に水入りで二人で黒ビールを飲み合う休憩つき),村中を巻き込んだ大乱闘は,一見の価値あり.
見終わった後拍手喝采をしたくなる.映画ってこうでなくっちゃ.
★★★★☆(★5個が満点)
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独断的映画感想文:女ざかり

日記:2005年8月某日
映画「女ざかり」を見る.
1994年.監督:大林宣彦.
吉永小百合,三國連太郎,津川雅彦,藤谷美紀,月丘夢路その他大勢.
言わずとしれた丸谷才一のベストセラーの映画化だが,何が言いたい映画なのかさっぱりわからない.
大新聞社の論説委員となった弓子が書いた社説が,与党のさる支持団体の逆鱗に触れ,新聞社の新社屋問題と絡め弓子の更迭が求められる,その事件の顛末である.
弓子は離婚後一人娘を育てているが,大学教授の洋吉と不倫,同僚の十三から想いを寄せられている.この弓子が吉永小百合ってどう見ても受け入れ難いじゃないですか.
論説委員たちの衒学的な会話も鬱陶しい,の一言に尽きる.吉永小百合の前でふるちん(失礼!)になって見せる津川雅彦には殺意を覚える.
また弓子の与党への反撃で,愛人の洋吉が妻を通じた与党幹事長の知り合い,娘の婚約者の伯父が与党重鎮が師と仰ぐ書道の大家,実の伯母(女優)が首相のかっての愛人だった等々の人脈があって,それを駆使していくというのもほとんどおとぎ話である.
あり得ない存在の主人公があり得ない状況下で清く正しく明るく振る舞っていくという小百合映画,見終わってもなんだか悪い夢を見た様な気がする.
希有な体験ではあるから興味のある方はどうぞ.
☆(★5個で満点)
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2005/08/23

独断的映画感想文:“アイデンティティー”

日記:2005年8月某日
映画「“アイデンティティー”」を見る.
2003年.監督:ジェームズ・マンゴールド.
ジョン・キューザック,レイ・リオッタ,アマンダ・ピート,アルフレッド・モリナ.
予備知識なしに見たがホラー映画とさえ言えるほどのスリラー映画.
ある嵐の夜,死刑執行の迫った連続殺人犯のための会合が,判事を迎えて開かれようとしている.
一方とあるモーテルに嵐のために閉じこめられた11人の男女,管理人と3人連れの家族,母親は交通事故で重傷,彼女をはねた運転手のエドは元警官,その雇い主の女優,警官と護送中の殺人犯,新婚の夫婦と娼婦.道は閉ざされ電話も無線も通じない中,一人また一人とむごい殺され方で,あるいは事故で,命を失っていく.
いったい何が起こっているのか.モーテルにいる彼らは何故死んでいくのか,判事の会合は何のために開かれているのか.緊張感と共に謎は深まる.
プロットはよく考えられていて,特に僕のような先読みのできない観客にとっては思いもかけない結末となる.最後まで緊張の途絶えることはない.
しかし,惜しいかな,最後の結末がいけません.ものの哀れというものがない.
どんでん返しといえばそうなのだが,後味の悪い結末となってしまった.せっかくあそこまで持って行ったのに惜しいと思う.
★★☆(★5個が満点)
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2005/08/21

独断的映画感想文:恋のエチュード

日記:2005年8月某日
映画「恋のエチュード」を見る.
1971年.監督:フランソワ・トリュフォー.
ジャン・ピエール・レオー,キカ・マーカム,ステイシー・テンデター.
1900年頃の話.
パリに住むクロードは作家の卵,母の友人の娘,アンがイギリスから訪れる.
アンは彫刻家志望,その人柄に魅せられ,クロードはイギリスを訪れる.アンは母と妹と暮らしており,妹のミュリエルは目の病気のため引きこもりがちの生活である.アンはクロードにミュリエルとつき合うようしきりと勧め,クロードもミュリエルの高潔な人柄に惹かれていく.
姉妹の母親はクロードの気持ちに気付き,クロードは隣家で暮らすことになるが,それをきっかけにクロードは遂にミュリエルに結婚を申し込む.ミュリエルもそれに答えるが,親同士の話し合いで1年間の婚約期間で様子を見ることになる….
と,ここまでは前置き,その後パリに戻ったクロードは仕事が上手く行き始め,結婚する意志が薄れていくが,当初気後れしていたミュリエルは逆にクロードへの愛が燃えさかる.
クロードはミュリエルに破談を申し込み,ミュリエルはそれに応じる手紙を出すが,心はクロードへの愛で苦しみ続けるのだった.
ところが数年後,パリで彫刻の修行を本格的に始めたアンと再会したクロードは,成長した彼女の美しさに惹かれ,遂に二人は結ばれる.ところが….
というわけで物語は次々に「ところが」を連発しながら思いも寄らぬ結末へと展開していく.情熱的で自由なアンと高潔で一途なミュリエル.この二人に愛されたクロードが,恋のエチュードと考えていたものが,如何に苦い結果をもたらしたか.フランス恋愛ものと思って見始めた映画の結末は,想像以上に深刻なものだった.
恋とは何でしょう?そして人生とは何でしょう?
トリュフォー監督39歳の傑作.
イギリスの海岸に立つ姉妹の家(「ラヴェンダーの咲く庭で」を思い起こさせる),マッチ箱のような客車を牽き走る蒸気機関車,海岸の草地を走る姉妹とクロードの自転車等,すばらしいロケーション撮影である.
★★★★☆(★5個が満点)
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2005/08/20

独断的映画感想文:スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐

日記:2005年8月某日
映画「スターウォーズ・エピソード3/シスの復讐」を見る.
2005年.監督:ジョージ・ルーカス.
ユアン・マクレガー,ナタリー・ポートマン,ヘイデン・クリステンセン,サミュエル・L・ジャクソン.
ジョージ・ルーカスの乾坤一擲の作品にふさわしく,見応えのある作品.
前2作と異なり,全体に悲劇の色調が漂いそれがクライマックスに向けて緊張感を高めていく.
アナキンの暗黒面への転落に対しては諸説ある様だが,皇帝により周到に張り巡らされた罠の中で,逃れられない運命だったというしかない.ミスがあったとすれば準備不足で乗り込んだマスター・メイスの方だろう.
しかし暗黒面に落ちたことで彼が失ったもの,また受けた苦しみを思うとき,暗澹とならずにはいられない.その悲劇性は,完結編にふさわしいものだ.
それにしても,宇宙や惑星都市の映像の美しさ,不思議な動物やロボットたちを交えた活劇映像の魅力は,かけがえのないこのシリーズの楽しみだった.またいつかそれらの映像に再会したいものである.
★★★★☆(★5個が満点)
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独断的映画感想文:天国の本屋~恋火

日記:2005年8月某日
映画「天国の本屋~恋火」を見る.
2004年.監督:篠原哲夫.
竹内結子,玉山鉄二,香里奈,新井浩文,香川照之,原田芳雄.
天国もののファンタジー.
演奏会のできが悪くクビになったピアニスト健太,やけ酒を飲んで気が付くとなんと天国の本屋にいる.
怪しい店長の言うには,死んでいないが短期アルバイトとして採用されたのだという.仕方なく彼は本の朗読や配達という本屋の仕事に精を出す.
店で知り合った翔子は彼が子供の頃あこがれたピアニスト,彼女との交流の中で,彼女が生前作ろうとして未完成だった組曲を完成させることになる.
一方地上のある町では町興しの青年会が花火大会を復活させようとしている.特に伝説の打ち上げ花火「恋する花火」を復活させようと奔走する香夏子は,亡き翔子の姪である.
彼女は「恋する花火」を作っていた元花火師を捜し出すが,その瀧本は翔子の恋人であり,事故で翔子の左耳を聞こえなくさせた本人だった….
天上で進行する未完成組曲の作成,地上で進行する伝説の花火の復活,その両者が成就する奇跡の夏の夜,という仕掛けで進行する美しいドラマ.
ロケ地北海道の自然が,こんな天国も良いなと思わせる.竹内結子の,静的な翔子と動的な香夏子の二役も印象的.
僕は昔から生者と死者ものに弱く(例えば「異人たちとの夏」),この映画でも,健太と同じ短期バイトの由衣が失った弟と巡り会い別れるシーン(生前と同様,童話を朗読してやるのだ.その童話がまた良い童話)には,泣いてしまった.
松任谷夫妻の音楽が良かった.特に,作られていくピアノ組曲は全て松任谷正隆さんのオリジナルなのだろうか.
最後の花火大会シーンも素晴らしい.迫力ある音と美しい映像,そこに重ねられるドラマの最高潮は見応えあり.
そんなこんなで★★★★(★5個が満点)
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2005/08/18

独断的映画感想文:ターミナル

日記:2005年8月某日
映画「ターミナル」を見る.
2004年.監督:スティーヴン・スピルバーグ.
トム・ハンクス,キャサリン・ゼダ・ジョーンズ,スタンリー・トゥッチ.
東欧のクラコウジアからやってきたビクター・ナボルスキは,N.Y.に着いたその日に祖国の政変によりアメリカへの入国資格を失う.彼は空港から出てはならぬと命じられ,それに従って67番ゲートの工事中の区画に住み込み,暮らし始める.
金は無し英語は喋れずという彼が,空港の中という閉鎖空間でどのように金を稼ぎ友人を作り恋をして,遂には目的を達するかというヒューマンドラマ(らしい).
この映画はひどく中途半端な映画.
まずナボルスキのN.Y.に来た理由が到底共感しがたい.
またこれはおとぎ話だからその理由はそれで良しとするとしても,それならそれで最後のジャズシーンが(あんなスカみたいなものでなく),涙の出るほど感動的なものでないとおかしくないか?
次に彼は何故10ヶ月もの間空港内にいたのか?
空港管理者によれば,隙を見てただ出て行けば良いのに何故彼は出て行かないんだと言うことらしいし,友人が何人もできた段階でいつでも彼は出て行けただろう.
しかし彼は出て行かない,それは何故か.それもおとぎ話だからなのだろうか?
最後にキャサリン・ゼダ・ジョーンズとの恋は何だったのか.
最後にすれ違うシーンの味気なさ,あれはキャサリンにとって空港外で会う彼はおとぎ話の外だったからなのだろうか?
清掃員グプタとの友情の結末にも納得がいかない.グプタがあんなことになるのなら,ナボルスキはさっさとクラコウジアに帰るべきだった.
アメリカ人スピルバーグの撮るヒューマンドラマとは,所詮理解不能なものとしか言い様がない.エピソードは満載,それらは面白いが,終わってそれがどうしたと言いたくなる.
★☆(★5個が満点)
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2005/08/17

番外:独断的歌舞伎感想文:法界坊

日記:2005年8月某日
歌舞伎座夜の部「法界坊」を見る.
串田和美演出.
勘三郎,扇雀,勘太郎,七乃助,亀蔵,橋乃助,福助.
法界坊は初見だがこの勘三郎の「串田法界坊」は見応えあり.
吉田家再興を図る松若君(「くん」ではありません,「ぎみ」です)は,永楽屋の手代に身をやつし,家宝の鯉魚の掛け軸を探している.
松若には野分姫という許嫁がいるがこれは子供の時に別れたきりで,今は永楽屋の娘お組と恋仲.ここに同じくお組に夢中の掛け軸の所有者山崎屋,お組に一目惚れした法界坊,お組に下心ある永楽屋番頭正八,国から出てきた野分姫が入り乱れ,お組を手に入れよう掛け軸を我がものとしようという大騒動となる.
法界坊はお組を襲うが失敗,それでも掛け軸を手に入れたものの,お組誘拐にはまたも失敗,野分姫を斬り殺すが吉田家の忠臣甚三郎にあっさり倒されてしまう.
ところが法界坊と野分姫の霊は合体霊となり,松若君とお組を苦しめる….
舞台はスピーディーな展開で台詞も早口(野分姫だけが育ちの良さでスローモーなのもギャグとなっている),勘三郎のサービス精神旺盛なことは並大抵ではない.
序幕で座敷にいる松若・お組が痴話喧嘩している後ろに山崎屋,法界坊が入れ替わり立ち替わり現れては次々掛け軸をすり替えるめまぐるしい展開や,お組を法界坊,正八がまた入れ替わり立ち替わり襲うところなど抱腹絶倒である.
勘三郎は宙乗りもサービス.細かいところにも小ネタを満載で仕込み,客を退屈させない.
一方で型どおりの見得の美しさ,大喜利の浄瑠璃の舞踊のすばらしさは見事.満足度の高い3時間であった.
★★★★☆(★5個が満点)
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2005/08/15

独断的映画感想文:アイランド

日記:2005年8月某日
映画「アイランド」を見る.
2005年.監督:マイケル・ベイ.
ユアン・マクレガー,スカーレット・ヨハンソン,スティーヴ・ブシェミ.
近未来.人々は「汚染」のため地下都市に隔離されて生活している.唯一汚染を免れた「アイランド」に抽選で選ばれた人が送られ,青空の下,海で泳いで平和に暮らすのだという.
リンカーンはこのところ悪夢に悩んでいる.それは見たこともない船に乗り「アイランド」に行く途中溺れる夢だ.
好奇心の強い彼は,「汚染地区」で働くスタッフのマックに会いに行きそこで蛾を捕まえる.汚染地区には生物は居ないのではなかったか?
更にある日スポーツ仲間で仲の良い女性ジョーダンが抽選に当たる.彼は更に汚染地区を経由して病棟に忍び込み,そこで信じられない光景を目にしたのだった….
「汚染」「アイランド」とは真っ赤な偽り,彼らはセレブたちの臓器供給用のクローンだったのだ.これから後はリンカーンとジョーダンの逃避行から始まり全編すさまじいアクションの連続,主人公の2人が逃げていくのに巻き込まれ,何百人何千人の人が命を落としたか,なんてことは気にしていられません.とにかく息もつかせぬカーチェイス,爆破シーン,銃撃戦,のオンパレード.
まあハッピーエンドで終わるわけですが,そうびっくりするほどのどんでん返しがあるわけでなく,そこそこといったところか.
スカーレット・ヨハンソンは鈴木紗理奈に似た感じの女優,しかも表情が2種類しかない(びっくりした顔と笑った顔)ところまで似ている,これもそこそこといったところか.
アクション好きにお勧め.マック役のスティーヴ・ブシェミがまあ良かった.
★★★(★5個が満点)
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独断的映画感想文:ジア 裸のスーパーモデル

日記:2005年8月某日
映画「ジア 裸のスーパーモデル」を見る.
1998年.監督:マイケル・クリストファー.
アンジェリーナ・ジョリ,フェイ・ダナウェイ,エリザベス・ミッチェル.
1970年代のスーパーモデル,ジアの実録もの.ジアの生涯と彼女を語る人々の証言といった構成で描かれる.
TV映画ではあるが,ゴールデングローブ賞ノミネート.
アンジェリーナ・ジョリの渾身の演技に惹かれ,ジアという人物への共感を持たざるを得ない.映画の中で親友のリンダが言っているように「愛して,愛して」と全身で訴え続け,遂にそれが得られなかったのが,ジアの悲劇である.
それはジアのせいでもあるのだが,彼女を取り巻く環境にも原因がある.そしてその結果と言うにはあまりに悲惨な結末.この世界では珍しくないケースなのだろうが,アンジェリーナの演技がその悲劇性を印象づける.
ところで,この翌年の「17歳のカルテ」でも同様のエキセントリックな役を演じ賞を取っている彼女だが,「トゥーム・レイダー」シリーズを見ると少し役柄が変わってきているようですな.
★★★☆(★5個が満点)
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独断的映画感想文:オープン・ユア・アイズ

日記:2005年8月某日
映画「オープン・ユア・アイズ」を見る.
1997年.監督:アレハンドロ・アメナーバル.
エドゥアルド・ノリアガ,ペネロペ・クルス,ナイワ・ニムリ.
バニラ・スカイ」のリメイク元である.
内容は同じ.親の遺産に恵まれ,容姿端麗なプレイボーイ:セザールが出会った親友の彼女ソフィア.ソフィアに惹かれて別れたヌリアは,彼につきまとい遂に車で無理心中を図る.顔に醜い傷を負った彼は,しかしそれ以降周辺に不思議なことが起こるのに気づく.
映画の現在は,彼は拘禁中で精神科医のカウンセリングを受けている.カウンセリングで次第に明らかになっていく過去の事件の経緯.彼は何故殺人者となったのか.精神科医とセザールは,夢の中で記憶されていた会社「エリー」を探し出しそこに乗り込むのだが….
夢と現実の交錯,夢の中の夢,現実での錯乱が織りなす不思議な展開,遂に明かされる真相は,果たしてこれも夢なのかどうか?
最後の画面で.セザールの夢の中の人物と特定され,青空の下セザールを見つめて佇む3人の人物,彼らの表情が何とも言えない雰囲気を醸し出している.
スペイン映画らしさを期待すると少し違うのだが,面白い映画.
ところで,これをリメイクしたトム・クルーズの「バニラ・スカイ」は,この映画に何も加えることが出来なかったという気がする.
★★★★(★5個が満点)
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2005/08/03

独断的映画感想文:17歳のカルテ

日記:2005年8月某日
映画「17歳のカルテ」を見る.
1999年.監督:ジェームズ・マンゴールド.
ウィノナ・ライダー,アンジェリーナ・ジョリ,ウーピー・ゴールドバーグ.
60年代末,自殺未遂を起こした17歳のスザンナは,精神病院に入院することになる(これもいささか唐突な話ではあるが,映像的には彼女に幻覚があるか時間的混乱があるかのような示唆がある).
若い女性ばかりの病棟に入った彼女は,最初こそ違和感を覚えるものの,そのうち病棟の「仲間」たちとの生活に心地よさや連帯感さえ感じるようになるのだった….
この映画は主人公スザンナの目で見た思春期の女性と精神病棟の物語だが,中心となる登場人物は,アンジェリーナ・ジョリ演じるリサという女性,反抗的で思ったことをそのまま言い,感情豊かな魅力的な女性だ.
自分の思いを文章にはするが行動に表すのが不得手なスーザンは,たちまち彼女の虜となる.
しかしリサは行動力はあるが,その判断は病的なものがあった.やがていくつかの経験を経て,スザンナは自分の未熟さとリサの限界を認めるようになる.
その意味でこの映画は精神病棟を描きながら,スザンナと周辺の女性の思春期の成長の物語でもある.原作は主人公と同名の女性の実体験によるノンフィクション,そのせいか,映画は病棟にいる患者に同情的で,彼女たちが本当に精神病患者なのかどうかに曖昧な点が残る.逆に言うと,正常として最後に退院していくスザンナは,果たして本当に治癒したのか?という疑問が残るのだ.
その点は別として,アンジェリーナ・ジョリとウィノナ・ライダーは出色の出来.二人の演技だけでも見応えある映画となった.ボブ・ケネディの立て看,マーチン・ルーサー・キングJr.の暗殺,その時代の音楽等も懐かしい.
★★★(★5個が満点)
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2005/08/01

独断的映画感想文:グッバイ、レーニン!

日記:2005年7月某日
映画「グッバイ・レーニン」を見る.
203年:監督:ヴォルフガング・ベッカー.
ダニエル・ブリュール,カトリーン・ザース,チュルパン・マハートヴァ.
1989年,ベルリン.テレビ修理屋に勤めるアレックスの母クリスティアーネは,夫が西に亡命した後教師として模範的な党員として二人の子供を育ててきた.
建国40周年に沸く街,クリスティアーネも表彰される会場へと急ぐが,街頭で反体制デモに参加して逮捕されるアレックスを見た彼女は,心臓発作で倒れる.
それから8ヶ月,彼女は奇跡的に意識を回復するが,その間に東ドイツは解体していた.クリスティアーネにショッキングなものはいっさい見せてはいけないと医師に言われ,アレックスは彼女の病室を東ドイツ時代のままに修復して退院させる.彼女はやがてテレビを見たいといいだして….
この後は窮地に追い込まれるアレックスと彼の周辺の人々のコメディ.
彼がアマチュア映像作家と組んで作り上げ,ビデオで流す「東ドイツ」は,西ドイツを吸収したり宇宙飛行士が活躍したり素晴らしい.
一時回復したクリスティアーネが路上に立ちつくす前を,ヘリコプターに吊り下げられ夕陽を浴びて運ばれていく巨大なレーニン像(の上半分).像はゆっくり回転し,彼女に向かって微笑みながらその右手を差し出す,そのシュールな夢の様なシーン.
歴史の流れに巻き込まれていく人々の中で,思わぬかたちで自分の生まれ育った歴史と家族史を総括する羽目になったアレックス達の,何となく暖かい物語だった.
6月に「ラヴェンダーの咲く庭で」で出会ったダニエル・ブリュールが良い.
★★★☆(★5個が満点)
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独断的映画感想文:靴に恋して

日記:2005年7月某日
映画「靴に恋して」を見る.
2002年.原題は「piedras(岩石)」.監督:ラモン・サラサール.
アントニア・サン・ファン,ナイワ・ニムリ,アンヘラ・モリーナ,ルドルフォ・デ・ソーザ.
主人公は5人の女,それぞれ「黄色いスニーカーを履く女」「盗んだ靴を履く女」「小さい靴を履く女」「扁平足の女」「スリッパを履く女」と説明がついている.
邦題はこのことから靴をテーマにつけられているのだろう.予告編も靴中心に作られているが,いささか無理矢理という感じで,原題は「岩石(英語名はstones)」.
映画はこの5人の女とそのパートナーや家族の,次第に交錯していく人生模様・恋愛模様を描くもの.
この5人の女たちの恋はいずれもうまくいかない.恋ってこんなに難しいものだったろうか?恋だけじゃない,人生そのものがなかなかうまくいかないのだ.
しかし駄目だと思ったときに意外な出会いがあって,彼女らの人生はそれぞれ全く新しい展開を見せていく.ある人は再生を掴み取り,ある人は苦渋の人生へと向かう.
映画はその一つ一つの軌跡を巧みな場面転換でつなげていきながら描写する.ゲイ達者な俳優たちに演じられた物語は,最後まで緊張感をとぎれさせない.
スペイン映画らしい,我々の日常とは異質な世界の物語だが,人生への共感は相通じるものあり.
★★★☆(★5個が満点)
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