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2005年9月に作成された記事

2005/09/25

独断的映画感想文:Ray/レイ

日記:2005年9月某日
映画「Ray/レイ」を見る.
2004年.監督:テイラー・ハックフォード.
ジェイミー・フォックス,ケリー・ワシントン,クリフトン・パウエル,シャロン・ウォーレン.
レイ・チャールスの伝記映画.といっても中心はデビューの1948年から60年代半ばまでの20年間.
しかしこの間にレイはC&Wからジャズ,ソウルからR&B,ゴスペルからポプスと次々にジャンルを広げてヒットを重ね,押しも押されもせぬ大歌手になっていく.
一方この20年間は,ヤクと女性遍歴で自分も周りをも苦しめていく過程でもあった.映画はレイの幼少時代にも時間を割き,母親(シャロン・ウォーレンがすばらしい)との関係,また特に幼くして死んだ弟との関係に焦点を当てる.このことが映画のドラマに奥行きを与えている.
しかし,この映画の楽しさは,それより何より演奏シーンのすばらしさ.
レイの歴史的名曲の数々が次々と出てくるだけでうれしい.
特に,クラブで契約時間が20分余ってしまい,即興的にブルースコードを弾き始めたレイが歌い,コーラスが加わり,ブラスがほんの数語の打ち合わせで加わっていって延々と演奏される「ホワッド・アイ・セイ」のシーン.背中がぞくぞくし,座っていられないほどの興奮,思わず手を打ち踊りたくなるような気分になる.
これらの音楽シーンを含め,ジェイミー・フォックスのまさに渾身の演技はすばらしい.
エンドタイトルを見ると,ほとんどの曲はレイ・チャールスの演奏だが,2曲ほどジェイミー自身の演奏も含まれているようだ.映画を見ている内にレイ・チャールス自身がそこにいるように思えてくる.
見て損は無し.
★★★★☆(★5個が満点)
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2005/09/24

独断的映画感想文:トレインスポッティング

日記:2005年9月某日
映画「トレインスポッティング」を見る.
1996年.監督:ダニー・ボイル.
ユアン・マクレガー,ユエン・ブレムナー,ロバート・カーライル,ジョニー・リー・ミラー.
ヤク中のスコットランドの若者たちの物語.
ストーリーの展開自体は起伏に少ないが,ヤクとセックスの目のくらむような日々の疾走感が印象的.
映像のテンポと音楽のリズムが快調である.
ヤクを止めよう・職を探そうという意志の一方,ヤクの快感・仲間とのつきあいも止められない.最後の起死回生の出来事は,主人公の人生を変えることになるのだろうか?
ユアン・マクレガーは,映像に出てきてからこれがユアンかと気付くまでしばらくかかったほど若々しい.丸坊主とスリムのGパンがかっこいい.
この映画にはまった若い衆が夢中になった気分は理解できる.監督のスカトロ趣味には閉口するし,全体に美しい映画とは言えないが,強烈な印象を残す映画.
年はとりたくないものである.
★★★☆(★5個が満点)
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2005/09/21

独断的映画感想文:ミッドナイト・ラン

日記:2005年9月某日
映画「ミッドナイト・ラン」を見る.
1988年.監督:マーティン・ブレスト.
ロバート・デ・ニーロ,チャールズ・グローディン,ヤフェット・コットー,ジョン・アシュトン.
元シカゴの警官ジャックは,買収を断ったために同僚にはめられ,今は保釈金保証人に雇われる賞金稼ぎ.ある日,ギャング・セラノの金を横領し慈善団体に寄付してしまった会計係デュークの,身柄確保と裁判所への護送を依頼される.
ところが,賞金稼ぎに舐められてたまるかと介入するFBI,報復のためデュークを捕らえようとするセラノ一味との三つ巴の混戦,おまけにデュークが一筋縄ではいかない男で,ジャックは予期せぬ悪戦苦闘を強いられる….
敵・味方の2人が度重なる襲撃をかいくぐりながら大陸を横断するロード・ムービーだが,相方のデュークは本当に一筋縄ではいかない男.命からがらの状態なのに,何かまだ隠し事をしているようなにやにや笑いがおかしい.
デ・ニーロもこの得難い相方を得て快調にコメディの小ネタを連発する.
途中9年ぶりに会った,離婚した妻と娘との再会劇も印象的.父親の苦難に貯金の180ドルの提供を申し出,後をじっと見送る娘がいじらしい.
笑いあり涙ありアクションありの,第1級のエンタテインメントである.
ジャックとデュークの関係の変化が見応えあり.
★★★★(★5個が満点)
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2005/09/14

独断的映画感想文:黄泉がえり

日記:2005年9月某日
映画「黄泉がえり」を見る.
2002年.監督:塩田明彦.
草薙剛,竹内結子,その他大勢.
九州の山村で不思議なことが起こる.
58年前神隠しにあった少年が,その時のままの姿で老いた母親のもとに帰ってくる.その後続々と死者が蘇り,肉親の元に戻ってくる.
調査のために来た役人の平太は,友人の葵と再会する.彼女は死んだ恋人俊介の蘇りを,強く願っていた.調査を続けると,その現象は山村の山奥を中心としたある範囲にのみ起こっていることが,判ってくる….
というファンタジー映画なのだが,何とも落ち着かない映画である.
まずヒロインのキャラクターにたいした魅力がない.色気のないガラッパチの女性という設定,本人は本当は平太が好きだったと後で言い出したりするが,それに説得性はない.
草薙剛の演技は「ホテルビーナス」以来腑に落ちない.内股で走る姿も絵にならない.
その他のきら星のような出演者は,何のためにキャスティングされたのだろう.
田中邦衛が精神科医師でカウンセラーって誰が考えても無理でしょう.
田辺誠一,長澤まさみ,伊藤美咲等の達者な俳優がほんのちょい役で出てくる(田辺誠一は3秒くらい?)のに,寺門ジモンや山本圭壱が出ずっぱりの脇役を演じるのは,どういう考えによるものか.
柴咲コウ演じる架空のシンガーRUIの役割も意味不明.ドラマには全く絡んでいないのだから,誰でも良いのだ.
その点もふくめ脚本には変なところがいっぱいある(例えば俊介の角膜っていったい何だったのだ.意味が無いではないか).
どうも話題作りが映画作りより重要視されているのではないかとの疑念を禁じ得ない.
個々のエピソードは良いものもあるが,終盤は早く終わってくれという感じ.時間の無駄だった.音楽は魅力的なので★☆(★5個が満点).
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2005/09/10

独断的映画感想文:カンゾー先生

日記:2005年9月某日
映画「カンゾー先生」を見る.
1998年.監督:今村昌平.
柄本明,麻生久美子,唐十郎,田口トモロヲ,世良公則,小沢昭一,松坂慶子.
終戦期,瀬戸内の田舎町で開業医をしているカンゾー先生こと赤城医師と見習い看護婦のソノ子の物語.
真摯な開業医として,日中戦争開始後激増している肝臓病の診断治療に奔走する赤城,その功績は東京の医界で激賞されるほどである.戦時の困難な状況下でますます研究に熱中する赤城,しかしその活動は思いもかけない事件で挫折する.
一方見習い看護婦のソノ子は,女郎の母親を持ち,両親を失って弟妹を養う苦難の日々.時々男に身を売っていたが,カンゾー先生に雇われてからは先生に信服し,ついには先生を愛するようになる.この二人を中心に,盟友の生臭和尚や外科医を巻き込んだ物語.
カンゾー先生は肝臓病の蔓延に警鐘を鳴らすが,何故肝臓病は蔓延しているのか?映画にも言っているとおり,肝臓病は日中戦争開始後激増しており,感染経路は経口・血液・性交なのである.肝臓病が蔓延する大陸に行った男達が,現地で何をしてきたか想像に難くない.
映画としては,何と言ってもソノ子のキャラクターと演じる麻生久美子が素晴らしい.激しく純情な聖娼婦の演技は一見の価値あり.
柄本・唐・世良の盟友3人組の活躍も印象的.
映画は極めて悲観的な状況を舞台にしているが,登場人物の生命力はそれを凌駕して楽観的である.共感できる映画.
★★★★☆(★5個が満点)
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2005/09/03

独断的映画感想文:情婦

日記:2005年9月某日
映画「情婦」を見る(へえ,仮名漢字変換には情婦って無いのね.差別なのかしら).
原作はアガサ・クリスチィ,原題は「検察側証人」である.
1957年.監督:ビリー・ワイルダー.
タイロン・パワー,マレーネ・ディートリッヒ,チャールズ・ロートン,エルザ・ランチェスター.
今どきの映画に習熟した人にはこの大どんでん返しはそうショックではないかも知れないが,純朴な1950年代の映画ファンにとっては大変なショックだったことは想像に難くない.
ロンドンのベテラン弁護士ロバーツは病み上がりで,口やかましい看護婦が禁酒禁煙を監視するやっかいな境遇だが,飛び込んできた殺人容疑のレナードの弁護を引き受ける.
彼は無職の自称発明家,金持ちの未亡人に気に入られ資金援助が得られるかと言うところで未亡人は殺される.
無実を訴え弁護を依頼した直後レナードは逮捕され,ロバーツは調査を開始する.公判はロバーツの見事な弁論で有利に運んでいたが,検察側最後の証人に何とレナードの愛妻クリスティーネが出廷する….
ここからは逆転に次ぐ逆転,幾重にも底の割れないどんでん返しの連続というクライマックスが見事の一言に尽きる.
特にクリスティーネ役のマレーネ・ディートリッヒの魅力が,この映画にドラマの奥深さを付け加えている.ロバーツに追いつめられ,それまでの冷静な彼女の形相が変わって「畜生!」と叫ぶその瞬間.追いつめる側のロートンとともにすばらしい演技である.
イギリス映画らしいユーモアが随所にちりばめられているのも素敵.
看護婦役のエルザ・ランチェスターは,「メリー・ポピンズ」でお母さん役をやったのでおなじみの女優,この映画でもなかなかの味わいである.
★★★★(★5個が満点)
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独断的映画感想文:CURE(キュア)

日記:2005年9月某日
映画「CURE(キュア)」を見る.
1997年.監督:黒沢清.
役所広司,萩原聖人,うじきつよし.
犯人の異なる連続殺人事件が起こる.
喉首を十文字に切り裂くという残酷な明確に共通した手口,しかし犯人はそれぞれに違い,共通項は何もない.担当刑事高部は,精神を病んでいる妻との関係の中,捜査のため悪戦苦闘を続ける.
やがてそれぞれの事件に関与しているかと思われる,記憶を失った男間宮が,捜査線上に浮かんでくる.
彼を「犯人」と確信する高部は,友人の精神科医佐久間の協力を得てその謎に迫る.しかし間宮の真の目的は,連続殺人ではなかった…?
記念碑的と言えるかも知れない黒沢監督の傑作.
違和感のある音響,だだっ広く無機質な部屋や家屋.不安感と緊張感を高める様々な仕掛け.その中で展開されるサイコサスペンス.
有能で冷静だが,ストレスによりどんどんとんがっていく高部,一方独特の間と,なり立たない会話で,言いようのない不安感に相手を追い込んでいく間宮のしゃべり,この両者を造形していく役所広司・萩原聖人がすごい.
話の構成全体は,連続殺人などを遙かにしのぐスケールであることがうかがわれ,一方細かい描写やとぼけたユーモアも織り込まれる.それらを繋いでいく,少しざらついた感じの色調で描かれる,美しい風景.
終わるまで目を離すことが出来ない魅力ある映画.
★★★★☆(★5個が満点)
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