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2005年10月に作成された記事

2005/10/28

独断的映画感想文:ザ・ダイバー

日記:2005年10月某日
映画「ザ・ダイバー」を見る.
200年.監督:ジョージ・ティルマン・Jr.
ロバート・デ・ニーロ,キューバ・グッティング・Jr,シャーリーズ・セロン.
貧農の息子カールは,栄達を夢見て海軍に志願するが,黒人はコックにしかなれないという現実にぶち当たる.水泳で艦長の目にとまりコックから甲板員になれたカールは,2年間出願し続けようやくダイバーの学校に入学を認められる.そこの教官サンディはかってマスター・ダイバーを務めた厳しい男だった….
黒人初のマスター・ダイバーになった男の試練と栄光の物語.実録もの.
まあ,展開は意外なことは何もありません.故無き差別に苦しみ超人的な努力でその壁を一つ一つ打ち破る.
クライマックスが,敵役が座長を務める公聴会というのもハリウッド映画の大得意.
不可能と思える挑戦を,かっての鬼教官の協力で突破できるかどうか?アメリカ人らしい正義感の押しつけですが,単純に感動する.
はまった人は傑作と叫び,斜に構えた人はアメリカ流正義感に辟易するだろう.
でも映画の罪じゃありません.面白い映画です.
★★★☆(★5個で満点)
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2005/10/24

独断的映画感想文:キングダム・オブ・ヘブン

日記:2005年10月某日
映画「キングダム・オブ・ヘブン」を見る.
2005年.監督:リドリー・スコット.
オーランド・ブルーム,リーアム・ニーソン,エヴァ・グリーン,ジェレミー・アイアンズ,ハッサン・マスード.
十字軍華やかなりし1184年,イベリン卿ゴッドフリーは息子バリアンを捜しだし,父の名乗りを上げる.
ゴッドフリーは,キリスト教徒とイスラム教徒の共存政策をとるエルサレムの王ボードウィン4世に忠誠を誓う,高潔な騎士だった.彼はバリアンに共にエルサレムに行くことを勧める.
バリアンはエルサレムに赴き,王に忠誠を誓うが,途中の負傷でゴッドフリーは到着後命を落とし,バリアンは跡を継いでイベリン卿となる.
王の妹シビラは奔放な女性だが,その夫でテンプル騎士団を率いるギーは狂信的キリスト教者で,王の意向に背きサラセン王サラディンへの挑発を繰り返す.物語はギーのもたらす破滅と,攻め寄せる圧倒的なサラセン軍とのエルサレム攻防戦へと展開する….
題名の「キングダム・オブ・ヘブン」は,エルサレム王の実現した,異教徒共存政策による束の間の繁栄を指すようだ.このコンセプトにより,観客は現代の宗教問題や,十字軍の歴史的評価というややこしい問題から離れ,単純に史劇を楽しむことができる.
オーランド・ブルームはやや地味目で,サラセンの大軍を前にエルサレム市民を一致団結させるカリスマ性には欠けるかもしれないが,その辺は好みというものだろう.
ジェレミー・アイアンズがやはりうまい.サラディン王役のハッサン・マスードは,役のキャラクターも俳優も共に魅力的.
最終局面,バリアンの「王にとってエルサレムとは何か」との問いに「無だ」と答え,去って行く途中振り向き「しかし全てだ」と付け加えたときの笑顔が,印象的.
★★★☆(★5個が満点)
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2005/10/21

独断的映画感想文:スリング・ブレイド

日記:2005年10月某日
映画「スリング・ブレイド」を見る.
1996年.監督:ビリー・ボブ・ソーントン.
ビリー・ボブ・ソーントン,ロバート・デュヴァル,ドワイト・ヨアカム,ジョン・リッター,ルーカス・ブラック.
カールは知的障害者,父親に疎まれ,離れの小屋で一人住まいして成長した.
12歳の時,学校で自分をいじめていたジェフと母親の不倫を目撃,二人をスリング・ブレイドという草刈り用の刃物で殺害した.25年間医療刑務所で過ごした後,治療終了として釈放される.
カールは極めておとなしく,不足を言わない.エンジン修理の腕が良く,修理工場に雇われ暮らす.コインランドリーで知り合った少年フランクと仲良くなり,彼の母に招かれそのガレージに住み込む.
フランクの父は数年前に貧困を苦に自殺,母親の恋人ドイルが時々泊まりに来るが,彼は横暴で口答えを許さず酒乱である.
カールとフランクは心を通わせるようになるが,ある日ドイルが乗り込んできて自分が家長になると宣言,カールを追い出しフランクに絶対服従を強いる.ドイルに憎悪をつのらせるフランク,一方カールはゲイのヴォーンに母子の行く末を頼むと言い別れを告げる….
カールはいわゆる聖愚者である.
無私で無欲,愚者であるが物事の本質は知っている.その前に立つとき,普通の人間はまるで鏡に映されたように,自分の欲や利己心に気付かされるのだ.
そのカールが,子供ではあるが大人の世界の苦渋をいやと言うほど味わっているフランクと仲良しになる.カールは愚者ではあるが大人だ.昔,少年の自分が持っていたような怒りや憎悪をフランクが持つのに,心を痛める.
その二人がほとんど言葉を交わさずに,ただ並んで座っているシーンは,何とも言えない哀しさだ.
心にしみる,見て良かったと思う映画.
それにしても,ビリー・ボブ・ソーントンの作り上げたカールというキャラクターは,どうだろう.
だいたいカールが画面に出てきてから,ビリーだと納得するまでにずいぶんかかった.口元に絶えず表れる緊張,刈り上げた髪,短いズボンで悠然と歩く姿,咳払いをまじえた癖のあるしゃべり方,少し猫背の姿勢.
聖愚者カールの印象は,強烈である.
監督インタビューによれば,まず先にカールというキャラクターが出来て(それは不遇の端役時代に,楽屋の鏡に向かって独白している中で生まれた),それから脚本が出来たという.
脚本はまず舞台化され,次に短編映画化され,最後にアカデミー賞を取ったこの映画となった.如何にビリーがこのキャラクターに入れ込んでいたかが判る.
名優ロバート・デュヴァル演じるカールの父親も(短いシーンだが)印象深い.
一見の価値あり.
★★★★☆(★5個が満点)
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2005/10/17

独断的映画感想文:解夏

日記:2005年10月某日
映画「解夏」を見る.
2003年.監督:磯村一路.
大沢たかお,石田ゆり子,富司純子,林隆三,田辺誠一,古田新太,柄本明,松村達雄,石野真子,渡辺えり子.
ベーチェット病を患う主人公の,発病から失明までの物語.
映画の中で禅寺の老師(松村達雄,最後の好演)が言うには,昔釈迦が雨期の托鉢説教を禁じ,その期間90日は庵にこもって瞑想にふけるよう命じたという.90日の行に入る日を結夏,終わる日を解夏という.
失明の恐れに苦しむ期間を行ととらえ,失明した日にはその恐れ自体からは解き放たれる,その日があなたの解夏だと老師は言う.
映画は絶望と恐怖に苦しむ主人公が,如何に解夏を迎えるのかを描く.
主人公が,その目に焼き付けようという長崎の風景が美しい.長崎の人はどう言うか分からないが,俳優の長崎弁の台詞も耳に心地よい.丁寧な作りの映像に好感が持てる.
ただし脚本には違和感のあるところもある.
恋人はどうしてモンゴルに行ったのだろう.モンゴルロケといえば大変なことだと思うが,それが何かの伏線になるわけでもないようだし,只行って来ただけ.主人公が小学生から暴行される夢のシーンも,後につながると思えない.
こういった挿入されるエピソードが意味不明である.誰か説明してください.
キャスティングはやたら豪華,ちょっとひねった映画なら別に1本とれちゃいそうなほど,何でこんなに豪華なのか,誰か教えてください.
でもまあ悪い映画じゃありません.石田ゆり子のアップがフェイドアウトするラストシーンが印象的だった.
★★★(★5個が満点)
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2005/10/15

独断的映画感想文:ゲーム

日記:2005年10月某日
映画「ゲーム」を見る.
1997年.監督:デヴィッド・フィンチャー.
マイケル・ダグラス,ショーン・ペン,デボラ・カーラ・アンガー.
投資会社の社長ニコラスは冷徹な仕事人間.父も同様の人間だったが48歳で自殺している.
妻とも別れ,父の時代からの家政婦と豪壮な邸宅に暮らしている.
何年かぶりに連絡を取ってきた弟と会い,彼から48歳の誕生祝いに「人生が一変する」と「ゲーム」会社CRSの会員証をもらう.興味を引かれ,心理テスト,体力テスト等を受け会員登録をしたニコラス.
ところが,ある日奇妙な人形が届いてから彼の生活に異変が起き始める.
邸宅は幾度も侵入され,予約の覚えのないホテルからの通知,行きつけのレストランのウェイトレスとの思いがけないトラブル,仕事にも差し障りが出始め「ゲーム」としてはしゃれにならない状況にニコラスはとまどい,やがて怒りを感じる.
ついには命の危険にさらされ,ニコラスはCRS社の真の意図を見ることになるが….
この映画は面白いです.
どんでん返しに次ぐどんでん返し,この人はと思った人に裏切られ誰も信用できない状況に追いつめられるニコラス(唯一信用できるのが別れた妻のみというのも哀しいね),拉致され気付くと無一文でメキシコの墓場に捨てられている.ここからどうやってアメリカに帰り着くのだ?CRSへのニコラスの復讐劇はそこから始まるのだが….
せっかくショーン・ペンを使っているのに,弟との関係が今ひとつ鮮明でないのが残念だが,それを除けば一見の価値あり.
★★★★(★5個が満点)
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2005/10/11

独断的映画感想文:25時

日記:2005年10月某日
映画「25時」を見る.
2002年.監督:スパイク・リー.
エドワード・ノートン,フィリップ・シーモア・ホフマン,バリー・ペッパー,ロザリオ・ドーソン,アンナ・パキン.
ヤクの売人をしているモンティは,密告により逮捕され7年の判決を受ける.その収監を翌日に控えた,彼の24時間の物語.
小柄でハンサムな彼にとって,7年間の刑務所生活は地獄の日々となるのは想像に難くない(って言うんだけど,日本の刑務所とはえらい違いですね).
その絶望,彼を密告したのが妻ではないのかという疑心,老父との別れ等に苦しみつつ,その夜の友人とのパーティー,ヤクの組織からの呼び出しへの対応を淡々と片づけていくモンティ.
これと平行して,夜のパーティーに集まる親友,ジェイコブとフランクの生活も描かれる.
フランクとはアイルランド系同士,ジェイコブは名前の通りユダヤ人.その二人がパーティーに行く前落ち合うフランクのアパートは,眼下にグラウンド・ゼロ(9/11テロの爆心地)を見下ろす高層アパートだ.
一方画面では,絶望の余りモンティが吐く他民族への毒舌も描かれる.
そういえば,映画の冒頭に描かれるN.Y.の美しい夜景で,二筋のサーチライトがまっすぐ上空に向かって伸びていたのは,何を意味していたのだろうか?
この様に映画はきわめて象徴的なシーンを交えて進行し,モンティの深まる絶望と焦燥,あるいはある種の和解,一筋の希望,そして現実の受け入れを淡々と描いていく.
モンティは自業自得で自分の人生を台無しにした男だが,一方で検察との取引も,ヤクの組織への従属も,自分の不利を承知できっぱりと拒否する男でもある.
そういう男とその親友を通じて,監督はアメリカの何を描こうとしているのか.
硬派でならす監督らしい,印象深い映画.
★★★★(★5個が満点)
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2005/10/10

独断的映画感想文:メッセージ・イン・ア・ボトル

日記:2005年10月某日
映画「メッセージ・イン・ア・ボトル」を見る.
1999年.監督:ルイス・マンドーキ.
ケヴィン・コスナー,ロビン・ライト・ペン,ポール・ニューマン.
今どきの米国映画には少数派かも知れない悲恋映画である.
離婚し息子と暮らすシカゴトリビューンの調査員テリーサは,ある日休暇中のケープコッド海岸で手紙入りの瓶を拾う.
手紙はキャサリンという女性に宛てたラブレターで,ボスのコラムニストがそれを記事にしてしまう.
読者から同様の手紙2通が更に寄せられ,差出人はノースカロライナ州のギャレットという男と分かりテリーサは彼に会いに行く.ここから始まるラブストーリー.
僕はこのケヴィン・コスナーは好きですね.
無口で木訥,かなり気むずかし屋だがなかなか男らしい.第一瓶に手紙を入れて出すなんて,意外とロマンチストじゃないですか.
キャサリンは彼の亡妻なのだが,彼とキャサリンの間にあったらしい葛藤の表現もほどよく,彼とキャサリンの実家との和解過程も納得がいく.
ロビン・ライト・ペンも素敵,見てて楽しい女優さんです.
途中の経過がやや間延びして見えるのは,恋愛の進行が分かりにくいからではないだろうか?どの時点でギャレットはテリーサにぐっと来たのか,あるいは二人はいつ結ばれたのか,その辺が(特に小生のような男女の機微にうとい者にとって)何とも分かりにくい.
ケープコッド,ノースカロライナの海の描写は美しく,シカゴとの対比も鮮やかだ.
ところでこの映画は悲恋ものだが,その結末に至る最後の状況設定には異論あり.
あまりに唐突である.これでは悲劇性が消し飛んで,あっけにとられるだけであろう.もう少し別の設定がありそうなものだが.
惜しいってところで★★★☆(★5個で満点)
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2005/10/09

独断的映画感想文:バックドラフト

日記:2005年10月某日
映画「バックドラフト」を見る.
1991年.監督:ロン・ハワード.
カート・ラッセル,ウィリアム・ボールドウィン,ロバート・デ・ニーロ.
シカゴの消防士の物語.
目の前で殉職した消防士の父を持つブライアンが,消防学校を卒業して街に戻ってくる.兄スティーブンが隊長を務める第17小隊に配属されたのだ.
折しも街では,バックドラフトという火炎逆流現象を利用した放火殺人が続いていた.それを調べる調査官シャドー,一方市会議員は消防の予算を合理化しようと画策.
こういった舞台で進む,新人訓練物語,父への憧憬と兄弟の相克,放火殺人ミステリ,そして何より消火活動のアクション物語.
話の流れがテンポ良く,場面ごとのメリハリがきいて引き込まれる.
消火活動シーンの火炎の描写は特筆すべきものだし,消防車の疾走,消防士の活躍等のカメラワークがすばらしい.
ドラマは後半盛り上がり,特に放火犯が判明した時点で繰り広げられる化学工場の消火活動シーンは,感動的である.バグパイプの一団に先導される荘重な葬送シーンでは涙を禁じ得ない.
最後のシーン,また出動していく消防車から引いて俯瞰される,シカゴの下町と遠望される高層ビルの夕景も,すばらしかった.
数シーンしか出ないが,収監中の放火犯を演じるドナルド・サザーランドの演技が秀逸.
全体に満足度高し.
★★★★☆(★5個が満点)
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2005/10/05

独断的映画感想文:ドッペルゲンガー

日記:2005年10月某日
映画「ドッペルゲンガー」を見る.
2002年.監督:黒沢清.役所広司,永作博美,ユースケ・サンタマリア,柄本明.
医療機器メーカーで人工人体の開発に取り組む早崎は,天才と称されつつ今はスランプで崩壊寸前.
ある日部下から,知り合いの弟が自殺の前にドッペルゲンガーを見たという話を聞く.数日後,自宅に忽然と彼のドッペルゲンガーが現れ,行き詰まった彼の研究に協力すると言い出す….
このドッペルゲンガーは従来のイメージとは若干異なり,多重人格が実体化したようなドッペルゲンガーである.
後に早崎と知り合う永井由佳の,自殺した弟などはそのドッペルゲンガーが本人の自殺後も元気に創作活動に励んだりして,由佳は「あれ」は弟ではない,と悩んだりする.
早崎のドッペルゲンガーも本人の研究環境を変えたり,金を調達したり,情報を取ってきたり,本人がその気があったのに手を出せなかった女をやっちまったり,大活躍する.
おかげで早崎は人工人体を完成するのだが,その人工人体を医療機器メーカーに売り込もうと始まるロード・ムービーで,映画の雰囲気は一変する.最初はホラーかと思っていたのに途中はスプラッターコメディ,最後は青春コメディのようなエンディング.
早崎という男はこの映画で,スランプに悩んだあげくドッペルゲンガーに分裂し,おかげで研究が完成し,最後にドッペルゲンガーと再統一を果たすのだが,この再統一版早崎がえらく爽やかである.本人はドッペルゲンガーが出るくらいだから相当変わった男で,その周りの由佳や助手に雇った君島も変わっているのだが,映画はそんなことにお構いなくこの爽やかなエンディングに突っ走っていく.
まあ,そういうエンディングってありかよって言う立場も無論ある訳だが,この奇妙な雰囲気が,この映画の持ち味なのだろう.
息の詰まるようなホラーを撮った監督が,今回は含み笑いをしながら奇妙な映画を作ったという感じである.
★★★★(★5個が満点)
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