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2005/10/21

独断的映画感想文:スリング・ブレイド

日記:2005年10月某日
映画「スリング・ブレイド」を見る.
1996年.監督:ビリー・ボブ・ソーントン.
ビリー・ボブ・ソーントン,ロバート・デュヴァル,ドワイト・ヨアカム,ジョン・リッター,ルーカス・ブラック.
カールは知的障害者,父親に疎まれ,離れの小屋で一人住まいして成長した.
12歳の時,学校で自分をいじめていたジェフと母親の不倫を目撃,二人をスリング・ブレイドという草刈り用の刃物で殺害した.25年間医療刑務所で過ごした後,治療終了として釈放される.
カールは極めておとなしく,不足を言わない.エンジン修理の腕が良く,修理工場に雇われ暮らす.コインランドリーで知り合った少年フランクと仲良くなり,彼の母に招かれそのガレージに住み込む.
フランクの父は数年前に貧困を苦に自殺,母親の恋人ドイルが時々泊まりに来るが,彼は横暴で口答えを許さず酒乱である.
カールとフランクは心を通わせるようになるが,ある日ドイルが乗り込んできて自分が家長になると宣言,カールを追い出しフランクに絶対服従を強いる.ドイルに憎悪をつのらせるフランク,一方カールはゲイのヴォーンに母子の行く末を頼むと言い別れを告げる….
カールはいわゆる聖愚者である.
無私で無欲,愚者であるが物事の本質は知っている.その前に立つとき,普通の人間はまるで鏡に映されたように,自分の欲や利己心に気付かされるのだ.
そのカールが,子供ではあるが大人の世界の苦渋をいやと言うほど味わっているフランクと仲良しになる.カールは愚者ではあるが大人だ.昔,少年の自分が持っていたような怒りや憎悪をフランクが持つのに,心を痛める.
その二人がほとんど言葉を交わさずに,ただ並んで座っているシーンは,何とも言えない哀しさだ.
心にしみる,見て良かったと思う映画.
それにしても,ビリー・ボブ・ソーントンの作り上げたカールというキャラクターは,どうだろう.
だいたいカールが画面に出てきてから,ビリーだと納得するまでにずいぶんかかった.口元に絶えず表れる緊張,刈り上げた髪,短いズボンで悠然と歩く姿,咳払いをまじえた癖のあるしゃべり方,少し猫背の姿勢.
聖愚者カールの印象は,強烈である.
監督インタビューによれば,まず先にカールというキャラクターが出来て(それは不遇の端役時代に,楽屋の鏡に向かって独白している中で生まれた),それから脚本が出来たという.
脚本はまず舞台化され,次に短編映画化され,最後にアカデミー賞を取ったこの映画となった.如何にビリーがこのキャラクターに入れ込んでいたかが判る.
名優ロバート・デュヴァル演じるカールの父親も(短いシーンだが)印象深い.
一見の価値あり.
★★★★☆(★5個が満点)
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