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2005年11月に作成された記事

2005/11/30

独断的映画感想文:CODE46

日記:2005年11月某日
映画「CODE46」を見る.
2003年.監督:マイケル・ウィンターボトム.
ティム・ロビンス,サマンサ・モートン.
CODE46とは,遺伝子の一致するもの同士の妊娠を規制する法規.
近未来の地球,パペルという身分証を持つ市民だけが管理された安全な都市に住むことができ,持たない市民は砂漠化した“外”で厳しい生活を強いられる.
そのパペルの偽造事件が発生,調査員ウィリアムが上海にやってくる.
パペルの発行を行うスフィンクス社の依頼により同社工場を調査,容疑者を尋問し犯人マリアを特定する.ウィリアムは,相手のわずか数語の発言から知りたい情報を得ることができる特殊能力者だ.
ところがウィリアムは別の容疑者を犯人と報告,マリアと一晩を共にする.帰国したウィリアムは,その後マリアが姿を消したことを知る….
安全で快適な“中”,市民はしかし身も心も徹底的に管理される.“外”では市民は保護されず,過酷な砂漠の生活を強いられるが,そこには何の管理もない自由がある.しかしそのどちらの生活も,荒涼とした絶望感に色濃く縁取られている.
近未来SFに特有のこういう設定は,嫌いではない.人間の自由と尊厳をかけ,あえてその絶望に挑戦するという希望のかけらがそこに埋め込まれているからだ.
映画は,毎年の誕生日ごとに夢に現れる男が鮮明になっていくというマリアのエピソード,イギリス映画らしい暗い色調,特徴ある沈痛な音楽により,運命的な結末を暗示して進行.アジア系の都市の情景や,市民の喋る言語が多種多様であること等印象的な作りとなっている.
主演2人の存在感が大きく,見応えあり.一見の価値ある映画(もっとも好き嫌いによりますが.本質的には古典的ロマンですからね).
★★★★(★5個が満点)
蛇足:マリアがぼかしの入った陰部を見せながら乳房を見せないのは何故だろうと思っていたら,CODE46のために出産の出来ない彼女の,子育ての象徴である乳房を見せない暗喩であるとの指摘がWeb上にあった.
なるほど.
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独断的映画感想文:レディ・ジョーカー

日記:2005年11月某日
映画「レディ・ジョーカー」を見る.
2004年.監督:平山秀幸.
渡哲也,徳重聡,吉川晃司,大杉漣,菅野美穂,長塚京三,岸辺一徳.
高村薫のベストセラーの映画化.
日の出ビールの社長が誘拐される.犯人グループは数日後社長を解放,身代金の密約を巡って警察・日の出ビール・犯人グループの三つどもえのさぐり合いが始まる.やがて警察の裏をかいて身代金が支払われるが,犯人達の目的は身代金ではなかった…?
原作は戦後日本を重層的に描いた長編である.それを2時間ちょうどの作品にまとめるのはなんぼ何でも無理があったみたいで,エピソードのそれぞれが中途半端な印象はぬぐえない.
総会屋の介入はどうなったのか,20億の身代金はどこへ消えたのか,刑事課長代理は何故突然自殺をしたのか,判然としない事項が多すぎる.
そもそもレディが何故グループの統合の象徴になったのかも,よく分からない.
作品がやろうとしていたことの大筋は間違っていなかったと思えるので,こういう点が残念である.
俳優では吉川晃司が良かった.長塚京三の演技は,この複雑な構成の作品に良いバランスを与えていると思える.惜しい作品.
★★★(★5個が満点)
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2005/11/24

独断的映画感想文:阿修羅城の瞳

日記:2005年11月某日
映画「阿修羅城の瞳」を見る.
2005年.監督:滝田洋二郎.
市川染五郎,宮沢りえ,渡部篤郎,内藤剛志,樋口可南子.
江戸の文化文政時代,闇にうごめく鬼達が跳梁する.その頭領阿修羅王が間もなく復活するという知らせに,鬼を成敗する組織鬼御門の首領延行と邪空はそれぞれに野心をたぎらせる.
5年前にある事件で鬼御門を辞めた出門は今は人気役者,ある日出くわした女盗賊つばきに惹かれ,二人は恋に落ちる.彼女は5年より前の記憶がない.
そのつばきの肩に現れた不思議な痣,それが物語の発端だった….
実力俳優を配した伝奇時代アクション映画.
宮沢りえは相変わらず良い(大ファンです).アクションもまずまず(つまりスタントとの入れ替わりにそう違和感がない).
渡部篤郎と市川染五郎の殺陣も見応えがある.
話しが話しなので俳優の演技は大げさに傾きがちだが,歌舞伎でおなじみなけれんみのある芝居は嫌いではない.
と言うわけでまずまずの映画なのだが,決定的にいけないのは舞台をそのまま映画にしたところか.
画面が常に「舞台」なので開放感がない.海岸縁のシーンさえ書き割りのような海があるだけ.
もう一つは特殊メイクやCG(?),特殊効果のセンスが悪いことか.
阿修羅王の出現するシーンで,仏像の顔だけが俳優の顔になるなんて,安もんのアイコラみたいで閉口する.
最後に登場する阿修羅城や炎上する江戸の街にはもうがっかり.もう少し何とかならないかな.
と言うわけで★★☆(★5個で満点)
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2005/11/23

独断的映画感想文:ハウルの動く城

日記:2005年11月某日
映画「ハウルの動く城」を見る.
2004年.監督:宮崎駿.
ソフィー:倍賞千恵子,ハウル:木村拓哉.
魔法を一つの原動力に暮らす世界,今,国は隣国と戦争を始めようとしている.
父の遺した帽子屋を営む若いソフィー,ある日ひょんなことから魔法使いハウルと行動を共にするが,そのために敵対する荒れ地の魔女の呪いで,90歳の老婆に姿を変えられてしまう.
彼女はハウルの「動く城」を探し当て,家政婦として潜り込んで暮らし始める….というわけで始まる恋と冒険の物語.
宮崎映画の一つの特徴は「飛ぶ感覚」である.映画の冒頭ハウルとソフィーが空中を飛ぶ.屋根の上からおそるおそる一歩を踏み出す.ひるがえるスカート,風に躍る髪,やがて慣れてきて次々と空中に歩を進めて飛び始める二人.
このシーンだけで感動し映画に引き込まれてしまった.
その後の展開はもうわくわくどきどき,物語の進展に引きずられてスクリーンにしがみついている始末,映画ってこうでなくっちゃ.
特に倍賞千恵子の声は印象的,その老婆の声と若いソフィーの声に魅了される.
ところでWeb上ではこの映画については賛否両論だそうな.
否定論者を見ると宮崎映画はこうであらねばならぬ,という論調が目立つ.宮崎監督も長年やってきて,難しいファンを作ってしまったものである.
もっと単純に映画に夢中になってはいけないのだろうか?本質的に単純な小生としては,そう思うばかりである.
★★★★(★5個で満点)
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独断的映画感想文:濡れた赫い糸

日記:2005年11月某日
映画「濡れた赫い糸」を見る.
2005年.監督:望月六郎.
北村一輝,高岡早紀,吉井怜,奥田英二.
クラブで行き会った美しい女一美,茂は一目惚れするが彼女は忍山という色町で働く娼婦だった.
仕事も辞めひものように忍山で彼女と暮らす茂,しかし彼女のヤクザの夫が出所すると一美はそのもとに帰り,追った茂は袋叩きに会う.
1年後ホストになっていた茂は恵利という女を引っかけ忍山に連れ込む.一時は順調に見えたひも生活だったが,恵利も茂の知らない秘密があって….
一美と恵利に翻弄されてしかし懲りずに忍山で暮らしていく,心優しい(というか詰めの甘い)男,茂の物語.
こういう場合,男が成長するか転落するか,あるいはいい加減に見えてもいざというときに命がけの戦いを挑むか,今までの望月映画ならそういう展開だったと思うのだが,今回はちょっと勝手が違う.
茂はそのどれでもないのだ.
茂の師匠格に当たる中沢は,その点もう少し輪郭のはっきりした男なのだが.
女も,決定的場面で男に命をかけるか,男を捨てるか,男に捨てられるか,という感じで見ていくとこれも違うのである.
特に強烈な個性の持ち主として描かれる恵利は,その過去に何があったのか,クライマックスの事件後どうなったのか,一切不明.
というわけで小生のような単純な人間には多少分かりにくい映画,映画の中では夢の中のシーンや時間の混線も起こるのでなおさら分かりにくい.
期待とはちょっと違ったというのが正直なところ.
★★★(★5個が満点)
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2005/11/22

独断的映画感想文:理由

日記:2005年11月某日
映画「理由」を見る.
2004年.監督:大林宣彦.
勝野洋,南田洋子,岸辺一徳,宮崎あおい,伊藤歩,その他大勢.
宮部みゆきの原作は読んでいないが,一風変わった映画である.主人公と言えるほどの中心人物はおらず,無数の関係者の証言で構成される犯罪物語.
荒川区にそびえるツインタワーの高層マンション.
その20階からの飛び降り自殺(?)を住民が発見.警官が駆けつけると当該室には後3人の死体,この部屋の住人砂川家4人殺し事件の発生である.
この部屋に住んでいた筈の小糸家はいつの間にか姿を消し砂川家と入れ替わっていたのだが,マンションの持ち主は石田という男に代わっており,石田が重要参考人として手配される.
物語はこの石田という男が江東区の簡易旅館で見つかったところからスタートするのだが….
映画は無数の証言者が入れ替わり立ち替わり登場して進行し,登場人物はカメラ目線で証言する.画面の切り替えには色調を変えた空と雲が多用され,その中心に聳え続けるツインタワー.人間はこの巨大なツインタワーのために右往左往する,小さな小さな存在のようだ.
大林監督が得意とするコラージュの連続のような映画.
印象深いが,映画として成功なのかどうかはよく分からない.原作を読んだ方が良さそうという感じがする.
★★★(★5個が満点)
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独断的映画感想文:番外 歌舞伎:児雷也豪傑譚話

日記:2005年11月某日
新橋演舞場で,歌舞伎「児雷也豪傑譚話(じらいやごうけつものがたり)」を見る.
原作:河竹黙阿弥.演出:尾上菊五郎.
菊之助,松緑,亀治郎,芝雀.
足利将軍の御代,大蛇の乗り移った大蛇丸は,執権照友に取り入りその養子となって天下に大乱を巻き起こそう魂胆.
その軍勢に攻め滅ぼされた尾形家の嫡子雷丸と,松浦家の綱手姫は,共に大蛇丸に谷底に突き落とされる.
しかし二人は仙素道人に救われ成長し,蝦蟇(がま)の妖術と蛞蝓(なめくじ)の妖術を授かって夫婦となり,敵討ちお家再興の旅に出る.二人は力を合わせ,かつ浪切の剣を入手すれば大蛇丸に勝てるのだと言う….
菊五郎の大胆な演出によるスピーディーで迫力ある舞台が楽しい.
特に大詰めの箱根地獄谷の場は,バックで大小の和太鼓・三味線・笛等のオーケストラがテンポ良く演奏する中,火の精たちと大蛇丸・児雷也.綱手の三つどもえの戦いが縦横に展開され思わず身を乗り出す.
ここで綱手を演じる市川亀治郎のアクション「女優」ぶりが見事,この人のアクションの軽快さは「十二夜」でも証明済みだが(但しこのときは三の線だった)今回も素晴らしい.
中盤の狂言仕立ての場では,菊五郎自ら扮する悪代官夫人のド派手な衣装や彼女が脇腹をつまんで「軽くやばい」と呟くギャグ,アンガールズやヒロシ,波田陽区のギャグを盛り込んだ小ネタが観客席を沸かせる.
蝦蟇の背中から大鷲に乗った児雷也が飛び出し飛翔する宙乗りも,目の前数メートルを通過していって大満足,楽しい四時間であった.
★★★★(★5個が満点)
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2005/11/16

独断的映画感想文:パッチギ!

日記:2005年11月某日
映画「パッチギ!」を見る.
2004年.監督:井筒和幸.
塩谷瞬,高岡蒼佑,沢尻エリカ,楊原京子,尾上寛之,真木よう子,オダギリジョー,大友康平.
1968年京都.
府立高2年の康介はひょんなことから朝鮮高校にサッカーの親善試合を申し込みに行く.そこで耳にした美しい音楽,それは「イムジン河」という朝鮮の歌だった.
それを演奏しているフルート吹きの美しい少女キョンジャに彼は一目惚れをしてしまう.
その少女と付き合いたいただその一心で,彼はギターを習い朝鮮語を自習し,彼女に電話をかけたのだった!彼女の誘いで在日の一族の公園での宴会に加わり「イムジン河」を歌った康介.そこで康介は朝鮮高校の番長アンソン(それが彼女の兄だった!)のグループと親友になる.
朝鮮高校は折しも日本人高校生グループと抗争のまっただ中だった.その抗争の中で,心を許した同学年のチェドキが命を落とす.
その葬儀に番長グループと共に参加した康介,しかし彼は在日の大人達に「日本人のガキは帰れ」と厳しく拒絶される….
時代性と暴力と音楽に激しく色づけられた青春恋愛物語.
1968年を描いた青春もの等と言われると,自分の年齢ではほとんど抵抗するすべはない.この映画も息もつかせず最後まで見終わった.
特に「イムジン河」がキーワードである.この映画に描かれているのと同様に,僕自身にとっても「イムジン河」は比類なく美しい歌として記憶に刻み込まれている.
しかもそれだけではなく,「イムジン河」事件は僕にとっては大きな青春の門であったのだ.
すなわち,1967年「帰ってきたヨッパライ」というコミックソング(失礼!)で深夜放送ファンを魅了したフォーク・クルセダーズ,彼らの期待された第2弾がこのうってかわった美しさを持つ「イムジン河」だった.しかもその内容は朝鮮半島の分断という重い現実をバックにしている.
発売前に既に深夜放送では大ヒットとなっていたこの曲は,しかし我が政府の介入により発売中止に追い込まれる.フォーク・クルセダーズが,その止むに止まれぬ心情をサトー・ハチローという作詞者を介して歌にし発表した「悲しくてやりきれない」が空前のヒットとなったことは,蓋し当然のことであった.これが「イムジン河事件」.
ところで映画に戻ると,この後康介は前から誘われていたラジオ局で,「イムジン河」を歌う.
この歌うシーンが良い.在日の大人達にどう言われようと,康介自身はどうすることも出来ない.彼に出来ることは真心を込めて「イムジン河」を歌うことだけだ.その真情が伝わってくるシーン.
この後の映画は,ある種のおとぎ話かも知れない.
現実はもっと苦々しいものだ,そしてその苦々しいものが当時から今に至っている.この映画のハッピーエンドは,従って夢なのかも知れないが,それでも良いのだ.元気の出る作品.
因みにラジオ局のシーンで,大友康平が上司を奥に連れ込んでは殴り倒して帰ってくるのは,ドリフのコントのパロディみたいで面白かった.
蛇足ながら京大西部講堂の屋根にオリオンの三つ星が描かれるようになったのは,1972年以降である.時代考証のミスか.
ところで,この映画に対し偏った見方だとか,監督は日本人とは思えないなどというコメントが散見されるのには唖然とさせられた.そういう見方もあるのかと驚嘆.
★★★★☆(★5個が満点)
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2005/11/10

独断的映画感想文:アレキサンダー

日記:2005年11月某日
映画「アレキサンダー」を見る.
2004年.オリバー・ストーン.
コリン・ファレル,アンジェリーナ・ジョリー,ヴァル・キルマー,アンソニー・ホプキンス,クリストファー・プラマー.
マケドニア王フィリッポスの妃オリンピアスは王と対立する激しい気性の女,世嗣アレキサンダーは両親の確執に心を痛めつつ成人する.
フィリポスの思いがけない暗殺により即位したアレキサンダーは,父を超えようとするかのように彼が計画した東方遠征に乗り出すのだった….
アレキサンドリアを治めるかってのアレキサンダーの部将プトレマイオスの回想による大王の一代記.見ている自分の気分がたまたま鬱だからなのか,何とも悲しみに満ちた映画である.
若きアレキサンダーが盟友の力を結集し,5倍の大ペルシャ軍を翻弄しダリウス1世を敗走させる.このガウガメラの戦いは凄い.
閲兵し,顔見知りの兵士に声をかけ,戦いの意義を強調して軍団を鼓舞するアレキサンダー.兵士は興奮し長槍を波打たせ,盾を打ち鳴らし足を踏みならす.やがて敵陣に向かいじりじりと行軍を始める軍団.
一方アレキサンダー麾下の騎馬隊は砂漠を疾走し,軍団の激突によって綻びた敵陣の隙に錐のように突撃する.砂塵の中ダリウスの前に忽然と現れるアレキサンダーの騎馬隊.
これが物語のピークであり,後は版図を拡大しながらも身も心も滅びていくアレキサンダーの一生.
この時代の王が男色家であってもあまり驚くことではないけれど,映画としてここまで見せなくても,と思う部分もあり.
両親との葛藤,全世界を統一しようという気概と現実の衝突等,アレキサンダーの苦悩は判らないではないけれど,一映画ファンとしては一言で言えば(少なくとも後半は)退屈だった.
この映画は前半で止めておくのが正解.
★★★(★5個が満点)
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2005/11/05

独断的映画感想文:海猫

日記:2005年11月某日
映画「海猫」を見る.
2004年.監督:森田芳光.
伊藤美咲,佐藤浩市,仲村トオル,ミムラ,蒼井優,深水元基,白石加世子.
伊藤美咲主演の悲恋物語,過激な濡れ場つき,というのがこの映画の売り.後者に関しては羊頭狗肉.前者に関してはどう言えば良いんですかね.
予告編等でバレバレだと思うからネタばらしにはならないと思うけど,美貌の娘伊藤美咲が漁師佐藤浩市に嫁ぎ,やがて弟の仲村トオルとも結ばれるという「悲恋」物語.
原作自体がそうなのか,思いこみの激しい物語である.
別の視点から見れば,この「悲恋」はとんでもない魔性の女の物語でしかない.嫁いできたと思ったら兄弟と通じ,後には姉妹であり従姉妹でもある2人の子が残される.
村一番の漁師と信望のあった兄は落ちぶれ,弟は死ぬ.佐藤浩市にも姑の白石加世子にも,同情を禁じ得ない.
伊藤美咲の弟も自立心無く不愉快な人物で,要するにこの姉弟は変な奴らである.到底つき合いたくない.
どうしてこの映画は,伊藤美咲に魅力と輝きを与えることができなかったのだろうか?
原因の一つは伊藤美咲の演技にある.
さして長いとは思えないワンカットの中で,伊藤美咲には落ち着きがない.体も顔も表情も視線も,じっとしているということがないのだ.最初から最後まで,このことが気になって仕方がなかった.
彼女の演技はやはりTV向きと言うことなのだろうか?
映画の冒頭で伊藤美咲の娘が婚約者に,興信所に調べさせた母親の過去をなじられ破談にされる.今時の若者としても,信じ難い対応である.
この3分間のプロローグで引いてしまい,最後までこの映画を好きになれなかった.
★(★5個で満点)
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2005/11/03

独断的映画感想文:五線譜のラブレター

日記:2005年11月某日
映画「五線譜のラブレター」を見る.
2004年.監督:アーウィン・ウィンクラー.
ケヴィン・クライン,アシュレイ・ジャッド,ジョナサン・プライス.歌手としてはシェリル・クロウ,ナタリー・コール,エルヴィス・コステロ.
海辺の家」の監督と主演のコンビが,コール・ポーターの伝記映画をミュージカルの形で作り上げた.
老齢の(と言うよりはもう死んでしまったのかも知れないが)コールが,ゲイブという男(つまり天使ガブリエル)に案内されて自分の伝記を上演する舞台を見るという趣向で,彼の人生と作った歌の数々が披露される.
裕福な家庭に生まれ,余技で歌を作っていたコールが,パリで巡り会ったリンダに恋し,彼女の協力でプロの音楽家としてデビューする.
男色家だったコールがリンダの献身的な愛にうたれ遂に結婚,ブロードウエイで大成功するが,断ちきれない男とのつきあいがその後もリンダを苦しめる.やがてMGMと契約してのハリウッド進出と,音楽家としての彼は順風満帆の活躍をするが,リンダとの愛は常に危機にさらされていた….
ジャズのスタンダードといえば必ず誰もが耳にするコール・ポーターの作品,コールが作り上げた作品に最後の評価を下してきたミューズの神が,このリンダだったという.
リンダを演じるのは昔から大好きなアシュレイ・ジャッド.美しくかつ知的で断固とした意志を持つリンダを,見事に演じている.
主演のケヴィン・クラインは,歌い踊り,ピアノを弾き,それらを吹き替えなしで実演,これも達者なものである.
何よりコールの音楽がすばらしい.
難しくて歌えないという歌手を指導して遂に歌えるようにした「昼も夜も」,その次第に出来上がっていく歌唱のぞくぞくするほどのすばらしさ.マイナーのバラードにアレンジされた,シェリル・クロウによる「ビギン・ザ・ビギン」の名唱.そして死期の近づいたリンダにコールが自ら歌う「ソー・イン・ラブ」.「キス・ミー・ケイト」の挿入歌であるこの名曲にじっと耳を傾けるリンダ,涙なくしては見られないシーンである.
映画はコールとリンダの愛情物語と言うこともできるだろう.是非見て欲しい.
★★★★☆(★5個が満点)
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