独断的映画感想文:パッチギ!
日記:2005年11月某日
映画「パッチギ!」を見る.
2004年.監督:井筒和幸.
塩谷瞬,高岡蒼佑,沢尻エリカ,楊原京子,尾上寛之,真木よう子,オダギリジョー,大友康平.
1968年京都.
府立高2年の康介はひょんなことから朝鮮高校にサッカーの親善試合を申し込みに行く.そこで耳にした美しい音楽,それは「イムジン河」という朝鮮の歌だった.
それを演奏しているフルート吹きの美しい少女キョンジャに彼は一目惚れをしてしまう.
その少女と付き合いたいただその一心で,彼はギターを習い朝鮮語を自習し,彼女に電話をかけたのだった!彼女の誘いで在日の一族の公園での宴会に加わり「イムジン河」を歌った康介.そこで康介は朝鮮高校の番長アンソン(それが彼女の兄だった!)のグループと親友になる.
朝鮮高校は折しも日本人高校生グループと抗争のまっただ中だった.その抗争の中で,心を許した同学年のチェドキが命を落とす.
その葬儀に番長グループと共に参加した康介,しかし彼は在日の大人達に「日本人のガキは帰れ」と厳しく拒絶される….
時代性と暴力と音楽に激しく色づけられた青春恋愛物語.
1968年を描いた青春もの等と言われると,自分の年齢ではほとんど抵抗するすべはない.この映画も息もつかせず最後まで見終わった.
特に「イムジン河」がキーワードである.この映画に描かれているのと同様に,僕自身にとっても「イムジン河」は比類なく美しい歌として記憶に刻み込まれている.
しかもそれだけではなく,「イムジン河」事件は僕にとっては大きな青春の門であったのだ.
すなわち,1967年「帰ってきたヨッパライ」というコミックソング(失礼!)で深夜放送ファンを魅了したフォーク・クルセダーズ,彼らの期待された第2弾がこのうってかわった美しさを持つ「イムジン河」だった.しかもその内容は朝鮮半島の分断という重い現実をバックにしている.
発売前に既に深夜放送では大ヒットとなっていたこの曲は,しかし我が政府の介入により発売中止に追い込まれる.フォーク・クルセダーズが,その止むに止まれぬ心情をサトー・ハチローという作詞者を介して歌にし発表した「悲しくてやりきれない」が空前のヒットとなったことは,蓋し当然のことであった.これが「イムジン河事件」.
ところで映画に戻ると,この後康介は前から誘われていたラジオ局で,「イムジン河」を歌う.
この歌うシーンが良い.在日の大人達にどう言われようと,康介自身はどうすることも出来ない.彼に出来ることは真心を込めて「イムジン河」を歌うことだけだ.その真情が伝わってくるシーン.
この後の映画は,ある種のおとぎ話かも知れない.
現実はもっと苦々しいものだ,そしてその苦々しいものが当時から今に至っている.この映画のハッピーエンドは,従って夢なのかも知れないが,それでも良いのだ.元気の出る作品.
因みにラジオ局のシーンで,大友康平が上司を奥に連れ込んでは殴り倒して帰ってくるのは,ドリフのコントのパロディみたいで面白かった.
蛇足ながら京大西部講堂の屋根にオリオンの三つ星が描かれるようになったのは,1972年以降である.時代考証のミスか.
ところで,この映画に対し偏った見方だとか,監督は日本人とは思えないなどというコメントが散見されるのには唖然とさせられた.そういう見方もあるのかと驚嘆.
★★★★☆(★5個が満点)
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コメント
はじめまして^^
TBありがとうございましたm(_ _)m
この映画は今年観た邦画の中でも上位に来る感動作でした!
「イムジン河」は、やはり青春時代の想い出の1ページとして心の中に残っています。
投稿: cyaz | 2005/11/17 23:35