独断的映画感想文:五線譜のラブレター
日記:2005年11月某日
映画「五線譜のラブレター」を見る.
2004年.監督:アーウィン・ウィンクラー.
ケヴィン・クライン,アシュレイ・ジャッド,ジョナサン・プライス.歌手としてはシェリル・クロウ,ナタリー・コール,エルヴィス・コステロ.
「海辺の家」の監督と主演のコンビが,コール・ポーターの伝記映画をミュージカルの形で作り上げた.
老齢の(と言うよりはもう死んでしまったのかも知れないが)コールが,ゲイブという男(つまり天使ガブリエル)に案内されて自分の伝記を上演する舞台を見るという趣向で,彼の人生と作った歌の数々が披露される.
裕福な家庭に生まれ,余技で歌を作っていたコールが,パリで巡り会ったリンダに恋し,彼女の協力でプロの音楽家としてデビューする.
男色家だったコールがリンダの献身的な愛にうたれ遂に結婚,ブロードウエイで大成功するが,断ちきれない男とのつきあいがその後もリンダを苦しめる.やがてMGMと契約してのハリウッド進出と,音楽家としての彼は順風満帆の活躍をするが,リンダとの愛は常に危機にさらされていた….
ジャズのスタンダードといえば必ず誰もが耳にするコール・ポーターの作品,コールが作り上げた作品に最後の評価を下してきたミューズの神が,このリンダだったという.
リンダを演じるのは昔から大好きなアシュレイ・ジャッド.美しくかつ知的で断固とした意志を持つリンダを,見事に演じている.
主演のケヴィン・クラインは,歌い踊り,ピアノを弾き,それらを吹き替えなしで実演,これも達者なものである.
何よりコールの音楽がすばらしい.
難しくて歌えないという歌手を指導して遂に歌えるようにした「昼も夜も」,その次第に出来上がっていく歌唱のぞくぞくするほどのすばらしさ.マイナーのバラードにアレンジされた,シェリル・クロウによる「ビギン・ザ・ビギン」の名唱.そして死期の近づいたリンダにコールが自ら歌う「ソー・イン・ラブ」.「キス・ミー・ケイト」の挿入歌であるこの名曲にじっと耳を傾けるリンダ,涙なくしては見られないシーンである.
映画はコールとリンダの愛情物語と言うこともできるだろう.是非見て欲しい.
★★★★☆(★5個が満点)
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