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2005年12月に作成された記事

2005/12/31

独断的映画感想文:モーターサイクル・ダイアリーズ

日記:2005年12月某日
映画「モーターサイクル・ダイアリーズ」を見る.
2003年.監督:ウォルター・サレス.
ガエル・ガルシア・ベルナル,ロドリゴ・デ・ラ・セルナ.
1952年のこと,アルゼンチンの医学生エルネストと年上の生化学生アルベルトは,おんぼろバイク「ポデローサ」号で南米大陸冒険の旅に出る.
アルゼンチンからアンデスを越えチリへ,その後ペルー・サンパブロのハンセン氏病患者施設を訪ね最後はベネズエラのカラカスを目指す.
若く理想に燃えているが好奇心旺盛,女性にもあこがれる二人は,たかり同然の貧乏旅行を続けるが,ポデローサ号は遂にチリでポンコツくず鉄となる.つまりモーターサイクル・ダイアリーはここで終わり.
しかし彼らは更に徒歩とヒッチハイクで旅を続ける.
過酷なチリの銅山で働こうという労働者夫婦との交流,ハンセン氏病施設でのボランティア活動を通じた患者との交流を通じ,二人は変わっていく….
美しい映画である.ポデローサ号の疾走,あるいは河を行く貨客船の姿はいかにも映画らしい.
南米の大自然の描写も素敵.
貧しい人々との交流で顔つきも厳しいものに変わっていく二人.サンパブロの施設でのお別れパーティーの夜,エルネストは「南米は一つの混血国家なのです.その南米とペルーのために」と挨拶して乾杯するのだが,それを聞くアルベルトや施設の人々の面持ちは感銘的である.
反植民地主義,民族主義,共産主義が未来と正義の旗印だった時代の雰囲気が,感じられる.
俳優では「ブエノスアイレスの夜」のガエル・ガルシア・ベルナルが魅力的.
エルネスト・“チェ”・ゲバラ・デ・ラ・セルナは後にキューバ革命をカストロと共に成功させ,日本にもキューバ政府閣僚として来たことがある.その後ゲバラは南米各地の革命にゲリラとして参加,ボリビアの戦闘で射殺された.
アルベルトはその後盟友エルネストのためキューバに病院を寄贈し,キューバに移住した.今も健在である.
アルベルトを演じたロドリゴ・デ・ラ・セルナはゲバラの又従兄弟だそうな.
一見の価値あり,★★★★(★5個が満点)
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2005/12/29

独断的映画感想文:女囚701号 さそり

日記:2005年12月某日
映画「女囚701号 さそり」を見る.
1972年.監督:伊藤俊也.
梶芽衣子,横山リエ,渡辺やよい,扇ひろ子,夏八木勲,小林稔侍,たこ八郎.
70年代の映画らしく情念が物語の展開軸.
恋人の刑事のためにやくざ組織への潜入捜査を志願,素性がばれて暴行されたナミは,自分が刑事の出世に利用されていたことを知る.
その刑事を復讐のため襲い懲役刑となったナミ,刑務所での地獄の様な日々が彼女を待っていた….
荒唐無稽なストーリーだし,刑務所の描写は現実的と言うよりは舞台劇の様だが,その中に込められたエネルギーは70年代ならではのもの.
この映画は梶芽衣子でもっている.と言うより彼女の復讐に燃える眼の力で成り立っている.その魅力は抗しがたい.
一世を風靡したシリーズの第1作にふさわしい.
冒頭に流れる梶芽衣子の「恨み節」もまずまず,藤純子の「緋牡丹博徒」の歌に比べたら出色の出来.
ところで小林稔侍がタコ八郎とコンビでアホ看守役で出ている.稔侍さんて,当時はこういうスタンスだったのね.
★★★☆(★5個で満点)
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独断的映画感想文:バットマン ビギンズ

日記:2005年12月某日
映画「バットマン ビギンズ」を見る.
2005年.監督:クリストファー・ノーラン.
クリスチャン・ベイル,マイケル・ケイン,リーアム・ニーソン,モーガン・フリーマン,ゲイリー・オールドマン,ケイティ・ホームズ,渡辺謙.
幼い日に空井戸に落ちたとき出会ったコウモリに衝撃を受けたブルースは,その後両親を犯罪で失う.
そのトラウマから,ブルースは犯罪者の群れに身を投じ悪と言うものを理解しようとする.ヒマラヤ山麓の刑務所であてのない服役生活をしていた彼は,影の同盟と名乗る一団に救われ,悪と戦うための技を徹底的に仕込まれる.
生まれ故郷のゴッサムへ帰った彼は,街を牛耳る悪と対決する決意を固めるのであった….
人気アメコミものシリーズの最新作は,バットマンが如何にして誕生したか,何故悪と戦うのかを詳細に論証した作品となった.
バットマンものを見るのはこれが初めて.もっと荒唐無稽なコミカルなものかと思ったあては外れ,テロに脅える腐敗した都市と,それを救う思想的にも強固に武装した選ばれし者を描く重苦しい内容であった.
映画は退屈する間もなく面白く展開して,見て損はなしと思えるのだが,超大金持ちのブルースが何故身を挺して悪と戦うのかの説明は鬱陶しい.
この辺はスパイダーマンと比べてみればその差がはっきりする.
スパイダーマンは超能力を得てそれを悪との闘いに当然のごとく使わざるを得ない.しかしそのためスパイダーマンは恋人に自分の正体も明かせず(恋人が悪との闘いに巻き込まれるのを恐れるからである),正業にも就けず,その苦しさのために肝心の超能力さえ失いかける.
一方バットマンは大金持ちで,超能力はないがそれを補う新兵器は金の力でいくらでも調達できる.
その彼が,自分は何故悪と戦うのかを(何故自分は選ばれし者なのかを)自分自身に論証しなければならない.この映画はそういう内容なのだ.
9/11を経たアメリカという国のやりきれなさを,感じずには居られない,その意味で重苦しい印象を後に残す映画.
★★★(★5個が満点)
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2005/12/24

独断的映画感想文:スイミング・プール

日記:2005年12月某日
映画「スイミング・プール」を見る.
2003年.監督:フランソワ・オゾン.
シャーロット・ランプリング,リュディヴィーヌ・サニエ,チャールズ・ダンス(「ラヴェンダーの咲く庭で」の監督である).
シリーズものがヒットしている女流ミステリ作家サラは,新作のアイディアに行き詰まる日々.編集者ジョンの薦めで彼の南仏の自宅に逗留し,著作に専念することにする.
そこはプール付きの美しい邸宅,気分も一新勇躍著作に没頭する彼女だが,ある晩ジョンの娘ジュリーが飛び込んでくる.驚いたサラはジョンに連絡を取ろうとするがつながらない.毎夜別の男を連れ込むジュリーとの奇妙な同居が始まる….
最終的に殺人事件にいたるサスペンスなのだが,奇妙な味の映画である.
作品世界をタイプするのが仕事の中年のイギリス女性サラ,彼女は節制のためかヨーグルトばかり食べている.一方食欲旺盛,酒やマリファナにふけり奔放に男を引き込むジュリー.
映画は美しい南仏の風景を挟み,鏡越しに登場人物を写すシーンの多用,色彩の対比,十字架への登場人物のこだわり,ジュリーの体の傷跡の描写等,細かい仕掛けで観客を幻惑しつつ進行する.
挿入される明らかにサラの妄想と思えるシーンもあって,ことの真相はどうなっているのかは,予断を許さない.
そして最終局面のあっと驚くどんでん返し,その後の象徴的な最後のシーン,謎はかえって深まって映画は終了する.観客はまるで映画の仕掛けた迷路に取り残されたようだ.
いかにもヨーロッパ映画らしい映画,一見の価値あり.問題の鍵は「プール」にあると思えるのだが….
主演二人の美しいヌードにも驚かされる.特にシャーロット・ランプリングは撮影時58歳か,「愛の嵐」で始めて見たヌードは27歳のものだった筈ですが,いやあ驚きました.
★★★★(★5個で満点)
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独断的映画感想文:カーサ・エスペランサ

日記:2005年12月某日
映画「カーサ・エスペランサ」を見る.
2003年.監督:ジョン・セイルズ.
ダリル・ハンナ,リリ・テイラー,マギー・ギレンホール,マーシャ・ゲイ・ハーデン,メアリー・スティーンバージェン,スーザン・リンチ,リタ・モレノ,ヴァネッサ・マルティネス.
南米のとある国,孤児院の孤児を外国の養い親に斡旋している.
その養い親になろうと6人のアメリカ女性がホテルに長逗留している.6人の女性の逗留生活,それぞれの事情が次第に明らかになる.
並行して描かれるこの国のストリート・チルドレンの暮らしやホテルのメイドの身の上,職を求め得られない男達の焦燥.それらを通じて映画はこの国とアメリカのそれぞれの人々の生活を描き出しているのだ.
結末らしい結末には至らないが,それぞれの事情で切実に養子を求めるアメリカの女達,それを演じている女優達に見応えがある.
オスカー女優が3人いる(誰でしょう?).「ウェスト・サイド・ストーリー」のリタ・モレノの健在ぶりもうれしい.「海辺の家」のメアリー・スティーンバージェンも懐かしい.
地味だが面白かった.
★★★☆(★5個が満点)
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2005/12/23

独断的映画感想文:昭和残侠伝

日記:2005年12月某日
映画「昭和残侠伝」を見る.
1965年.監督:佐伯清.
高倉健,三田佳子,池辺良,梅宮辰夫,松方弘樹,山本麟一.
大ヒットシリーズの第1作,主題歌唐獅子牡丹が健さんの歌で冒頭から流れる.
戦後を舞台に(テロップで「昭和21年頃」と出るのがおかしい.頃ってのが)伝統的テキ屋稼業関東神津組と新興愚連隊新誠会が対立,神津組は親分以下次々殺され,遂に最後の殴り込みという典型的やくざ映画スタイルです.
高倉健・池辺良の2人が良かった.
しかし後はたいした魅力なし.映像ももう少し美しく撮れないだろうか.
戦後の混乱期だから仕方がないが,「緋牡丹博徒花札勝負」の画面のうっとりする様式美は見ることが出来ない.
健さんの背中の唐獅子牡丹もちっとも美しくなかった.
三田佳子はやくざの奥さんて言うよりは一般家庭の主婦って感じ,特に最後のシーンは最悪でした.この三田佳子の演技で,全編が一挙に学芸会レベルに転落した感じ.
★☆(★5個が満点)
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独断的映画感想文:肉体の門

日記:2005年12月某日
映画「肉体の門」を見る.
1988年.監督:五社英雄.
かたせ梨乃,渡瀬恒彦,西川峰子,山咲千里,名取裕子,松居一代,マッハ文朱.
五社映画らしく,終戦直後の貧しさ汚さ猥雑感よりは,きらびやかな女達の闘争に重点が置かれた娯楽映画.
1トン爆弾の不発弾が宙ぶらりんになっている,誰も近づかない新橋の焼けビルを根城に,小政のおせん率いる娼婦達が生活している.
近くのマーケットを支配する袴田組や隣接するラク町のお澄一派と張り合いながら稼いでいる彼女たち.ある日拳銃を持った復員兵が転げ込んできて物語は動き始める….
言わずとしれた田村泰次郎の戦後ベストセラーの映画化,もう何本目になるのかしらん.
しかし戦後43年目ともなるとずいぶん雰囲気は変わってくる.
鈴木清順版にあったぎらぎらする獣のような視線がありません.みんな顔もきれい.
印象に残ったことと言えば,元女子プロマッハ文朱の喧嘩シーンかな.名取裕子も良かった.
ボルネオ・マキって結構重要な役所だと思うけど,印象薄かった.
全体に見終わって感銘は残りませんでした.
★★☆(★5個が満点)
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独断的映画感想文:コンスタンティン

日記:2005年12月某日
映画「コンスタンティン」を見る.
2005年.監督:フランシス・ローレンス.
キアヌ・リーヴス,レイチェル・ワイズ.
形而下学的悪魔ものである.
悪魔払いのプロ,ジョン・コンスタンティンはある自殺事件を通じ,刑事アンジェラと知り合う.自殺したのは彼女の双子の妹,イザベルだった.天上界と悪魔界,人間界のバランスが崩れかけていると感じたジョンは,肺ガンで危機的状況にある肉体を顧みず,その真相に挑む….
とまあこう書きましたが,要するに非倫理的,非形而上学的悪魔払い人がジョンなのですな.
対する悪魔憑きが,行ってみれば天井に張り付いて牙をむいているという極めてゾンビ的な状況なので,最初からなあんだというレベル,このレベルは以後裏切られることはない.
最後は悪魔との対決だが,これも昔からある悪魔は論理的に騙せるというレベルの勝負なので,最後のハッピーエンドもあまり感銘深いものではない.
面白いけど後に残るものはない.時間つぶしということですね.こんな悪魔もの,日本では絶対に発想しない.アメリカとイギリスくらいではないだろうか?
★★★(★5個が満点)
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2005/12/12

独断的映画感想文:復讐するは我にあり

日記:2005年12月某日
映画「復讐するは我にあり」を見る.
1979年.監督:今村昌平.
緒方拳,三國連太郎,倍賞光子,小川真弓,清川虹子.
昔からこの題名の意味がよく分からなかった.
例えば同様の構文で「○○は××にあり」を考えると「美は乱調にあり」などというのがある.
この場合は「美は(本質的に)乱調にこそある」という意味であろう.
では「復讐…」の場合はどうなるか.「復讐するということは(本質的に)私にこそある」では意味は通じないではないか.
しかし私というのが人間ではなかったら?というわけで,結局この言葉が聖書の言葉であり,「我」は主イエスであることを知って初めて,この言葉の意味,「悪事を行ったものはいずれ神に裁かれる」ということが分かるのだ.
前置きはさておき,この映画は,佐木隆三の原作に基づく連続強盗犯の犯行と逃亡の記録である.
五島列島のキリシタン出身の榎津家は,別府で温泉旅館を営む.
息子の巌は詐欺等で服役を繰り返していたが,父との葛藤等から家を飛び出し,1963年10月18日2名を殺害して現金を強奪,以降逮捕まで78日間逃走を続け,3人を殺害して多数の詐欺を繰り返す.映画はこの過程をドキュメンタリー的に追っていく.
巌とその妻,敬虔なクリスチャンである父親との関係が今ひとつ鮮明ではない様に見えるが,一方,巌の殺人行脚の過程は詳細で恐ろしい.
特に最後の2件の殺人を行う場面の描写は,息苦しくなるほどの迫力である.巌という男の底知れない不気味さ,執念がひしひしと感じられる.この場面,監督の仕込んだちょっとした仕掛けがあって,それがこの場面の恐怖と緊張を更に高めている.
傑作,一見の価値あり.
★★★★(★5個が満点)
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独断的映画感想文:ボーン・スプレマシー

日記:2005年12月某日
映画「ボーン・スプレマシー」を見る.
2004年.監督:ポール・グリーングラス.
マット・デイモン,ジョーン・アレン,ブライアン・コックス.
同じ主演の前作「ボーン・アイデンティティ」の続編.
インドのゴアで愛妻と暮らす元秘密工作員のボーン,しかし記憶は相変わらず空白があってたびたび悪夢に悩まされる.
ある日突然殺し屋に襲われ,妻は狙撃され死亡.ヨーロッパに戻ったボーンは拘束され,自分が身に覚えのない殺人事件で手配中であることを知る.
ここからボーンの①自分は何の罪で追われているのか,②真犯人は誰か,③妻の復讐,④記憶の回復という目的に向けた死闘が始まる.
記憶は空白だらけだが,その一方で体の反応は目にもとまらぬほど速い.超人的なボーンの活動で徐々に黒幕が浮かび上がってくるかと見えるが….
手持ちカメラの画像による揺れてぶれまくる画面,すさまじいカーチェイス,たった一人で包囲網を死力を尽くして突破していくボーンの闘い.最初から最後まで画面から目を離すことは出来ない.
陰謀の世界に生きるもの達の,絶対的な孤独を象徴する青を基調とした映像は,魅力的である.
無表情に戦う殺人機械としてのボーンと,蘇る記憶におびえ悩むボーンとを演じるマット・デイモンが素晴らしい.
★★★★(★5個が満点)
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2005/12/10

独断的映画感想文:SAYURI

日記:2005年12月某日
映画「SAYURI」を見る.
2005年.監督:ロブ・マーシャル.音楽:ジョン・ウィリアムス.
チャン・ツィイー,渡辺謙,ミシェル・ヨー,役所広司,桃井かおり,工藤夕貴,コン・リー.
アジアのどこかの国の物語.
貧困のため花街に売られた千代は,同時に売られた姉とも生き別れとなり,置屋の下女として辛苦のうちに成長する.
そのある日,街で「会長」と呼ばれる紳士に呼び止められ,かき氷を買ってもらいお小遣いをもらう.その時もらったハンカチを大切にし,何時か芸者になって「会長」さんと巡り会いたいと心に誓うのだった.
15歳の時思わぬ運命の展開がある.勤める置屋のライバル芸者豆葉が,彼女を名指しで芸者に育てたいと女将に申し出たのだ.千代はSAYURIと名前を変え,いよいよ芸者の世界に身を投じることになる.
そこには軍人,貴族,実業家がきら星の様に集い,その中には「会長」の姿もあった.迫り来る戦争の暗雲の中,SAYURIは「会長」を慕いつつ,心ならずも別の男に水揚げを託してデビューを果たすことになる….
思っていたよりずっと良い映画だった.
役者が皆素晴らしい.チャン・ツィイーの美しさは尋常ではない.美貌だけでなく内面のすばらしさを感じさせる様な美しさである.SAYURIをいじめ抜く先輩芸者初桃役のコン・リーも良い.豆葉役のミシェル・ヨーは,着物の着こなしといい三味線の捌きといい日本人芸者としか思えない.同輩役の工藤夕貴の達者な演技には感銘する.桃井かおりと役所広司は期待通りのうまさ.
渡辺謙が出てくるとほっとする.特にともすれば息苦しい展開となる前半でこの人が出てきたときには,思わずため息が出る.一言で言えば日本人の良い意味の優しさというのだろうか,追いつめられたSAYURIの唯一の生きる希望という存在を的確に演じている.ラストシーンでの彼の登場には,涙を禁じ得ない.
映画評としては,日本と日本人の描き方がおかしいとか言う評が出るに決まっているのだが(現に早くもそういう評が出ている),この映画を評するにそんなところでぐだぐだ言うのはエネルギーの無駄という気がする.これは日本ではないアジアのどこかの国の出来事と思えばいいのだ.どうせスピルバーグのすることである,そのくらいのアバウトさしか期待するべきではない.
それより何より,この映画で俳優達が作り上げた素晴らしい世界を評価したい.
ジョン・ウィリアムスの音楽は物語の趣旨に反しあまりに騒々しい.いつまでスター・ウォーズをやっていれば気が済むのやら.
映像の美しさは水準以上.
子役の大後寿々花が可愛く,またその笑顔がチャン・ツィイーに似ているのに吃驚.
一言文句を言うなら,着物の着こなしだけは(チャン・ツィイー含め)もうちょっとちゃんとしようよね.
★★★★(★5個が満点)
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