独断的映画感想文:SAYURI
日記:2005年12月某日
映画「SAYURI」を見る.
2005年.監督:ロブ・マーシャル.音楽:ジョン・ウィリアムス.
チャン・ツィイー,渡辺謙,ミシェル・ヨー,役所広司,桃井かおり,工藤夕貴,コン・リー.
アジアのどこかの国の物語.
貧困のため花街に売られた千代は,同時に売られた姉とも生き別れとなり,置屋の下女として辛苦のうちに成長する.
そのある日,街で「会長」と呼ばれる紳士に呼び止められ,かき氷を買ってもらいお小遣いをもらう.その時もらったハンカチを大切にし,何時か芸者になって「会長」さんと巡り会いたいと心に誓うのだった.
15歳の時思わぬ運命の展開がある.勤める置屋のライバル芸者豆葉が,彼女を名指しで芸者に育てたいと女将に申し出たのだ.千代はSAYURIと名前を変え,いよいよ芸者の世界に身を投じることになる.
そこには軍人,貴族,実業家がきら星の様に集い,その中には「会長」の姿もあった.迫り来る戦争の暗雲の中,SAYURIは「会長」を慕いつつ,心ならずも別の男に水揚げを託してデビューを果たすことになる….
思っていたよりずっと良い映画だった.
役者が皆素晴らしい.チャン・ツィイーの美しさは尋常ではない.美貌だけでなく内面のすばらしさを感じさせる様な美しさである.SAYURIをいじめ抜く先輩芸者初桃役のコン・リーも良い.豆葉役のミシェル・ヨーは,着物の着こなしといい三味線の捌きといい日本人芸者としか思えない.同輩役の工藤夕貴の達者な演技には感銘する.桃井かおりと役所広司は期待通りのうまさ.
渡辺謙が出てくるとほっとする.特にともすれば息苦しい展開となる前半でこの人が出てきたときには,思わずため息が出る.一言で言えば日本人の良い意味の優しさというのだろうか,追いつめられたSAYURIの唯一の生きる希望という存在を的確に演じている.ラストシーンでの彼の登場には,涙を禁じ得ない.
映画評としては,日本と日本人の描き方がおかしいとか言う評が出るに決まっているのだが(現に早くもそういう評が出ている),この映画を評するにそんなところでぐだぐだ言うのはエネルギーの無駄という気がする.これは日本ではないアジアのどこかの国の出来事と思えばいいのだ.どうせスピルバーグのすることである,そのくらいのアバウトさしか期待するべきではない.
それより何より,この映画で俳優達が作り上げた素晴らしい世界を評価したい.
ジョン・ウィリアムスの音楽は物語の趣旨に反しあまりに騒々しい.いつまでスター・ウォーズをやっていれば気が済むのやら.
映像の美しさは水準以上.
子役の大後寿々花が可愛く,またその笑顔がチャン・ツィイーに似ているのに吃驚.
一言文句を言うなら,着物の着こなしだけは(チャン・ツィイー含め)もうちょっとちゃんとしようよね.
★★★★(★5個が満点)
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「芸者」をテーマにした映画。 芸者の世界を描いた映画を観るのは初めてだったのでと... [続きを読む]
受信: 2005/12/11 01:09
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【映画的カリスマ指数】★★★★☆
異国情緒溢れる熾烈な女の世界 [続きを読む]
受信: 2005/12/11 04:04
» SAYURI さゆり MEMOIRS OF A GEISHA [travelyuu とらべるゆうめも MEMO]
チャン・ツィイー、渡辺謙主演
チャン・ツィイーが綺麗でしたが子役の大後寿々花が良かった
千代は貧しい漁村に生まれ 小さな時に姉と祇園の置屋に売られる
その置屋の売れっ子芸者初桃が千代に辛く当たる
ある時幼い千代が橋のたもとで転んで泣いているのを
通りすがりの会長(渡辺謙)が声をかけかき氷を買ってもらう
その優しさにもう一度千代は会長に会いたいと思い
芸妓になり座敷に呼ばれ会いたいと 修行を重ね一流の芸妓になっていく
今まで売れっ子芸者初桃は妬み 妨害をくわえるのですが・・・・
ストーリ... [続きを読む]
受信: 2005/12/11 09:44
» SAYURI / Memorirs of a Geisha [我想一個人映画美的女人blog]
5年くらい前から、ハリウッドで「さゆり」を映画化すると聞いてた。それも、スティーブン・スピルバーグで。
その当時、主演は工藤夕貴と予定されてて、いつになったらやるのかな〜と思ってたら
忘れた頃にやってきた! それも、主演には"アジアンビューティー”の象徴とも言われて久しいチャンツィー{/kirakira/}を持ってきた★
本日、世界同時公開!
ここ数年のスピルバーグときたら、、、。{/face_z/}
なー... [続きを読む]
受信: 2005/12/11 10:34
» 「SAYURI」に脱帽! [万歳!映画パラダイス〜京都ほろ酔い日記]
予告編で見た時は、とんでもない映画の予感がした。でも、京都が舞台で、京都ロケをしたハリウッド大作とあっては、映画ブログで生きている僕にとって観ないわけにはいかない。で、日米同時公開初日に二条の「東宝シネマズ」へ駆け付けた。予感は裏切られた。いい意味で。....... [続きを読む]
受信: 2005/12/11 11:28
» SAYURI [映画君の毎日]
ずいぶん前からの予告編に魅かれて待ちに待ったSAYURI。
アメリカが描いた日本の伝統的な文化と美しい映像。
実際に期待以上の艶やかな日本の文化が描かれていた。
ストーリーはある芸者の激動の人生というよりはラブストーリー。
それでもアメリカ人が一生... [続きを読む]
受信: 2005/12/11 11:53
» SAYURI 評価額・1300円 [Blog・キネマ文化論]
●SAYURIをTOHOシネマ浜松にて鑑賞。 貧しさゆえに9歳で置屋に売られた少 [続きを読む]
受信: 2005/12/11 16:16
» 映画館「SAYURI」 [☆ 163の映画の感想 ☆]
予告編で観たときの印象、そのまんまの作品でした!
予告編以上に良くもなく、悪くもなく。。。
原作の「Memories of Geisha」、オーストラリアにいたころに外国人の友達に「読んだよぉ~!」って言われたんだけど、そのころ私はこの小説しらなくてなんとも答えよう...... [続きを読む]
受信: 2005/12/12 19:40
» SAYURI(MEMORS OF A GEISHA) [ダディャーナザン!ナズェミデルンディス!!]
その少女は、特別の輝きを持っていた・・・
運命の出会い・・・
絢爛
無垢
毅然
昔、ダウンタウンがやっていたGEISHA GIRLSの話ではありません・・・(笑)
[続きを読む]
受信: 2005/12/13 01:41
» 『SAYURI』 [京の昼寝〜♪]
不思議な瞳によって、伝説の運命を背負った少女・・・・・・“SAYURI”。
■監督 ロブ・マーシャル■原作 アーサー・ゴールデン(「Memoirs of a Geisha」)■キャスト チャン・ツィイー、渡辺謙、ミシェル・ヨー、桃井かおり、役所広司、コン・リー、大後寿々花、工藤夕貴□オフィシャルサイト 『SAYURI』 9歳で花街の置屋へ売られた千代は、下女として働いていた。... [続きを読む]
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» 「SAYURI」映画の魔法が幸せな気分にさせる [soramove]
「SAYURI」★★★★
チャン・ツィイー、渡辺謙、大後寿々花、ミシュエル・ヨー主演
ロブ・マーシャル監督、2005年、アメリカ
この映画に嫉妬した。
日本で描けない
日本の「美」を
そこに見たからだ。
戦前までは
あんな文化が
日本に存在していたのだと
...... [続きを読む]
受信: 2005/12/15 18:00
» ★「SAYURI」 [ひらりん的映画ブログ]
公開初日のナイトショウで観てきました。
時間の関係で2スクリーンやってるうちの小さいほうのスクリーンで見ることに。
あんまり混んでなかったよ。
チャン・ツィイー主演なのに・・・ねっ。 [続きを読む]
受信: 2005/12/15 22:47
» SAYURI [八ちゃんの日常空間]
予告編を観て「面白そうだな」と思っていても、観る優先順位は下の方で、もしかしたら観ないかもしれない、と思っていた。それがどうしたことだろう。前売り鑑賞券まで購入し、公開初日に観てしまった。それだけ惹きつけられていたのかも知れない。もちろん、観て正解だ。お...... [続きを読む]
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話は普通・・・。
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「水面(みなも)に映る影は静かに漂う」 [続きを読む]
受信: 2005/12/21 00:52
» SAYURI [toe@cinematiclife]
この映画の中で、すこしでも、え??と思うことが起こるたびに、これはアメリカの日本風アジア人街で起きてることなんだわ・・・。 なんて、勝手に自分に言い聞かせながら観てた。 結局、一人前の芸者になるために苦労を重ねた人が誰も出てこなかった映画だった気がする・・・。 <STORY> 第二次大戦直前の日本。 千代と佐津の姉妹は、家が貧しいために花町の置屋へ奉公に出される。 置屋を取り仕切るおかあさん(桃井... [続きを読む]
受信: 2005/12/29 01:18
» 映画の感想募集中! [フィルムナビ〔film-navi〕]
なんか飲みたい様、SAYURIのトラックバックありがとうございました。フィルムナビでは、さまざまな映画のクチコミ情報を集めています。映画の感想などをブログに書かれた時には、ぜひまたトラックバックして下さい。お待ちしております!... [続きを読む]
受信: 2006/02/01 23:10
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