独断的映画感想文:復讐するは我にあり
日記:2005年12月某日
映画「復讐するは我にあり」を見る.
1979年.監督:今村昌平.
緒方拳,三國連太郎,倍賞光子,小川真弓,清川虹子.
昔からこの題名の意味がよく分からなかった.
例えば同様の構文で「○○は××にあり」を考えると「美は乱調にあり」などというのがある.
この場合は「美は(本質的に)乱調にこそある」という意味であろう.
では「復讐…」の場合はどうなるか.「復讐するということは(本質的に)私にこそある」では意味は通じないではないか.
しかし私というのが人間ではなかったら?というわけで,結局この言葉が聖書の言葉であり,「我」は主イエスであることを知って初めて,この言葉の意味,「悪事を行ったものはいずれ神に裁かれる」ということが分かるのだ.
前置きはさておき,この映画は,佐木隆三の原作に基づく連続強盗犯の犯行と逃亡の記録である.
五島列島のキリシタン出身の榎津家は,別府で温泉旅館を営む.
息子の巌は詐欺等で服役を繰り返していたが,父との葛藤等から家を飛び出し,1963年10月18日2名を殺害して現金を強奪,以降逮捕まで78日間逃走を続け,3人を殺害して多数の詐欺を繰り返す.映画はこの過程をドキュメンタリー的に追っていく.
巌とその妻,敬虔なクリスチャンである父親との関係が今ひとつ鮮明ではない様に見えるが,一方,巌の殺人行脚の過程は詳細で恐ろしい.
特に最後の2件の殺人を行う場面の描写は,息苦しくなるほどの迫力である.巌という男の底知れない不気味さ,執念がひしひしと感じられる.この場面,監督の仕込んだちょっとした仕掛けがあって,それがこの場面の恐怖と緊張を更に高めている.
傑作,一見の価値あり.
★★★★(★5個が満点)
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コメント
検索で貴記事を発見!拝読させて頂きました。
邦画でこれほど暗澹とさせられる作品は、
なかなかありませんね。
「さらば愛しき大地」も相当、暗かったけど。
緒方拳さんといい、三國さんといい、
清川さんといい、本当に存在感が圧倒的でした。
ということで、私の記事、TBさせてくらさい。
(ブログの趣旨にそぐわないと判断された場合には、遠慮無く削除して下さいませ)
投稿: カゴメ | 2006/02/12 09:05