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2006年1月に作成された記事

2006/01/30

独断的映画感想文:エリ・エリ・レマ・サバクタニ

日記:2006年1月某日
テアトル新宿で映画「エリ・エリ・レマ・サバクタニ」を見る.
2005年.監督:青山真治.
浅野忠信,中原昌也,宮崎あおい,筒井康隆,岡田茉莉子.
2015年,レミング病というウィルス疾患が蔓延する地球.このウィルスは発病した人を自殺させる.
ミヤギは,二人の若者が創造する「音」が,発病を防ぐことを突き止め,感染した孫娘ハナのために探偵を雇い彼らを捜す.
その二人,ミズイとアスハラは,とある漁村に住み,「音」を探すのに余念がない.ある時は廃屋の自殺者の傍らからがらくたを拾い集め,ある時は貝殻や野菜を集めて音を収録する.
遂に彼らの所在を突き止めたミヤギは,ハナや探偵とナビのペンションに滞在し,彼らに演奏してくれる様懇願する….
地球が滅亡の縁に立たされ,個人がその救いの鍵を握るという点では,1986年のタルコフスキーの傑作「サクリファイス」を思い出す.この映画も「サクリファイス」同様に美しい映像でつづられるが,その描く世界はそれほど深刻には見えない.
街も普通だし(時々電柱に首をつった死体がぶら下がっている程度),パニックが起こっているわけでもない.ラジオでは軽薄なDJが,日本で300万人がもう死んだって等と言っているが,死の影が迫っている気配はない.
しかしミヤギ達の到着後に起こった一つの事件が状況を動かし,目の前に死が突きつけられる.そしてミズイは,ハナのために演奏をする決意をする.
果たしてその演奏はハナを救うことが出来るのか.
映画の中盤にも音源のシーンがある.
このシーンでは,廃物から作ったスチール弦が弓で弾かれ押しつけられ叩かれて,すさまじい音を出す.このシーンは延々と続けられ,僕にはほとんど耐え難かった.
ところが最終局面のライブシーン,浅野忠信演じるミズイが様々な音源を駆使しながらギターを弾き,かきむしり,すさまじい音響で演奏し続ける.草原の中央でスピーカーに囲まれじっと聞き続けるハナ.
この何時までも続く「音」が,僕にはついに「音楽」に聞こえてきたのだった.言葉で説明するのは難しい,不思議な感動が胸を満たす.
ミヤギが失った近親者のことをナビと話すシーンが良かった.「死んだときは神は何ということをするのかと思いました.ところが死んでみると…」「かえって,いつもそばにいる様に感じるんでしょう?」「そうなんです」
後に引きずる映画である.
★★★★(★5個が満点)
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2006/01/19

独断的映画感想文:青春の門

日記:2006年1月某日
映画「青春の門」を見る.
1981年.監督:蔵原惟繕,深作欽二.
松阪慶子,菅原文太,若山富三郎,佐藤浩市,杉田かおる,渡瀬恒彦.
1975年の吉永小百合,大竹しのぶ版に次ぐ,ベストセラーの2回目の映画化.
この物語は主人公の成長物語だが,子役を何度も入れ換えて描く必要があるので,必然的に主人公は母タエということになる.
この松阪慶子が好演,せりふが少ないが雰囲気だけで圧倒的な存在感の文太兄いと並んで素晴らしい.
信介役の佐藤浩市はこれが新人作ということだし,出番も後半のみと言うことで,存在感はむしろオリエ役の杉田かおる.
信介とオリエの初めての夜が明け,18歳の高校生と16歳の娼婦の早朝の港のシーン,ここまで手をつないできた幼なじみの二人が向かい合う.「もうここに来てはいけない」とオリエが大人の顔で言う.お互いに背を向けて離れていく二人,信介を見送るオリエの表情は哀切である.
このシーンの杉田かおるの演技は印象的.
全体的に荒々しさに欠けると思うが(やくざ,炭坑,戦後動乱期という条件で,この程度の筈はないという気がする),最後まで面白く見れた.
但し山崎ハコの音楽は軽すぎる.もう少し重い感じがこの大叙事詩にはふさわしいのでは?
★★★☆(★5個が満点)
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2006/01/10

独断的映画感想文:スクール・オブ・ロック

日記:2006年1月某日
映画「スクール・オブ・ロック」を見る.
2003年.監督:リチャード・リンクレイター.ジャック・ブラック,ジョーン・キューザック.
ロックお宅のデューイは自分のバンドからも首にされ,転がり込んでいた元ロック仲間の教員ネッドからも,家賃を払わなければ立ち退きだと迫られるピンチ.
デューイはそこでネッドにかかってきた補助教員募集の電話を悪用し,ネッドになりすまして私立学校に就職する.
もとより教える術のない彼は,秘密のプロジェクトだと生徒をだましてクラスをロックバンドに仕立て,次第に生徒の心をつかんでいく….
とここまで書けば後はお定まりの展開,バンドコンテスト出場目指して子供達の奮闘が始まり,それに絡んでロックの名曲が流れ…と言うことなのですが,この映画にはのれなかった.
問題は僕の性格にある(かもしれない).
僕は小心者で嘘がつけない.映画の中で現れる嘘も気になってフィクションとして楽しめない.
まあおとぎ話だからこんなこと気にする方が悪いのだろうが,この映画でデューイが始めるロックバンドはすべて嘘の上に成り立っている.
教師だというのも嘘,バンド作りが秘密のプロジェクトだというのも嘘,校長に話す内容も同僚と話す内容もすべて嘘,親友にも嘘をつき子供達もだまし抜く.最後には子供の前で親たちに,子供にはラテン語を教えているという嘘をしゃーしゃーとつく.
すべてすぐにばれる見え見えの嘘をどうしてここまでつくのだろう.クラスの子供にロックバンドを組ませるのなら,ここまで嘘で固めなくったって良いじゃないか.
素材としては面白かったが以上の理由で楽しめず.
★★(★5個が満点)
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独断的映画感想文:ライトスタッフ

日記:2006年1月某日
映画「ライトスタッフ」を見る.
1983年.監督:フィリップ・カウフマン.
サム・シェパード,エド・ハリス,デニス・クエイド.
マーキュリー計画の7人の宇宙飛行士とその周辺の人々を描くドキュメントタッチの映画.
マッハの壁を初めて破ったイェーガーの挑戦から始まり,宇宙飛行士7人の選抜と有人宇宙船の実現までを描く.2時間40分はいささか長いが,面白かった.
特に結局宇宙飛行士には志願しなかったが,テストパイロットとして伝説の存在となったイェーガーが素敵.
空や宇宙への挑戦が一歩間違えば死につながる中,挑んでいった男達の物語は見応えがある.
但し音楽のビル・コンティはひどい.メイン・テーマは明らかにチャイコフスキーのぱくりだろう.
他にホルスト的なものもある.この音楽がアカデミー賞作曲賞ってのには笑ってしまう.アカデミー賞って何なんでしょうね.
そりゃあチャイコフスキーだったら感激するでしょう.
音楽を除いて★★★☆,音楽は無し.(★5個が満点)
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2006/01/04

独断的映画感想文:猟奇的な彼女

日記:2006年1月某日
映画「猟奇的な彼女」を見る.
2001年.監督:クァク・ジェヨン.
チョン・ジヒョン,チャ・テヒョン.
ロマンチック・コメディ.
ぐうたら大学生キョヌがひょんなことから付き合うことになった彼女は,酒を飲めば泥酔,けんかっ早く,凶暴で純情.このかなり風変わりな彼女との,ごくオーソドックスなロマンスが描かれる.
次第に明らかになる彼女の過去,そして冒頭に仕込まれたネタが展開する最終場面,感動的なハッピーエンドが待っている.
この映画が評判になりヒットしたのもよく分かる.恋というものの楽しさ切なさを,誰しも思い出すであろう.
しかし,僕にはこの映画は生理的にだめであった.
その理由は開始8分後の映像にある.これで引いてしまい,後は映画を楽しめなかった.
★★★(★5個が満点)
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独断的映画感想文:フォーガットン

日記:2006年1月某日
映画「フォーガットン」を見る.
2004年.監督:ジョセフ・ルーベン.
ジュリアン・ムーア,ドミニク・ウェスト.
この映画は予告編が魅力的.
飛行機事故で子供サムを失ったテリーは,事故後傷心の日々を送っている.ところがある日,息子のアルバムが消えていた.ビデオテープも.夫は僕達には息子はいなかったという.隣人も同様.図書館で調べるが,飛行機事故の記事はない.これは一体どういうことか?
時折公園で会っていた,同じ飛行機事故で娘を亡くした男アッシュの部屋を尋ねると,彼の部屋の壁紙の下からその娘の描いた絵が出てくる.彼女を逮捕しに来た国家安全保障局に,アッシュは突然娘を思い出したと叫び出す….
出だしは予告編通り快調なのだが,謎の底が浅い.
何故かは知らないがこの映画は90分の長さで,そのぶん謎を深める余裕がないのか,最初彼女がひょっとしてこうではないのか?と言ったことがそのまま真相.
でもまさかと思って見続けるのだが,結局最後までそれだった.
ロマンスが発生するわけでもなく,夫との関係が深まるわけでもない.
いろいろな点でもう少しな映画でした.
★★★☆(★5個が満点)
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独断的映画感想文:ザ・インタープリター

日記:2006年1月某日
映画「ザ・インタープリター」を見る.
2005年.監督:シドニー・ポラック.
ニコール・キッドマン,ショーン・ペン.
アフリカのマトボでは政権を取るズワーニ派に対抗する2派が入り乱れ,その正当性を巡って国連総会での大統領演説が焦点となる.
国連でマトボ語の通訳をするシルヴィアはある日,大統領暗殺計画の密談を偶然耳にする.それを当局に通報するシルヴィア,一方シルヴィアの意外な過去を知り担当するシークレット・サーヴィスのケラーは動揺する….
展開は面白いし先の読めない映画.
このドラマの舞台はアフリカと国連本部なのだが,アフリカの描写は少ないし,主人公達のニューヨークでの生活もそれほど描かれているわけではない.主人公達はN.Y.に住んでいるにもかかわらず,二人の住むアパートが多少描かれる他はその生活はほとんど描かれない.
この映画は国連を描いているのだ.
しかしこの映画の描写と裏腹に,現実のアメリカは国連の決議など無視しているではないか.国際刑事裁判所など認めてさえいないではないか.
アメリカの現実と,映画の中の国連の現実との矛盾の反映か,映画の結末が物寂しいものだったのは残念.
それにしてもニコール・キッドマンの美しいことよ.
★★★☆(★5個が満点)
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独断的映画感想文:茶の味

日記:2006年1月某日
映画「茶の味」を見る.
2003年.監督:石井克人.
手塚理見,三浦友和,佐藤貴広,坂野真弥,我修院達也.
何とも説明しにくい映画である.コメディであるのは間違いないのだが.
春野一家は5人家族,父は催眠療法士,母はアニメイラストレイター,一は高校生,幸子は小学生.かなり壊れている祖父は実は以前アニメイラストレイターだったようだ.
他に居候の様で実は一番稼ぎのあるらしいスタジオミキサー・アヤノが同居している.
家族はそれぞれに悩みを抱えているが,幸子の悩みが一番大きいらしい.
彼女は逆上がりが出来ないで毎日特訓しているほかに,巨大な自分の分身の登場に悩まされている.授業を受けていると,校庭の半分を覆って自分の分身が寝そべっていたりするのだ.これでは落ち着いて勉強など出来るものではない.
他に一(はじめ)は片思いの女子学生が転校した上,転入してきた別の女子高生が何と自分と同じ囲碁が趣味だというので逆上.
家族それぞれが問題を抱えているが,普通のサラリーマン家庭とはちょっと異なる問題ばかり.
映画の調子もかなり変.
小学校の朝礼で自作詩を朗読する長髪の教頭.高校の図書館の壁には「清寂!」と書いてある.静寂の間違いか.授業での教師の講義は全くの意味不明.父親の催眠療法の診察室には神棚がある.
映画はそこかしこに訳の分からないシーンを挟みつつ,大団円に向かってゆったりと進んでいく.
ロケ地栃木県茂木の風景の美しさ.絶えず鳴いている鳥たち,雉の鳴き声も聞こえる.
何と言えばいいのか,この映画はお正月向きですね.このほのぼのさを受け止めるには正月くらいがちょうど良い.この映画には心温まるエピソードが満載,見て損は無し.
★★★★(★5個が満点)
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