独断的映画感想文:ホテル・ルワンダ
日記:2006年3月某日
映画「ホテル・ルワンダ」を見る.
2004年.監督:テリー・ジョージ.
ドン・チードル,ソフィー・オコネドー,ホアキン・フェニックス,ニック・ノルティ,ジャン・レノ.
1994年のルワンダ虐殺で多数の避難民の命を救った,ホテル・ミル・コリンの支配人ポールの物語.
外国資本の四つ星付きホテルの支配人として,彼は日頃から情報に通じ,賄賂を使いこなし,要人への贈り物を欠かさずホテルを運営してきた.
ところが,多数派のフツ族と少数派ツチ族の内戦にようやく和平協定が結ばれた直後,大統領・首相が相次いで暗殺され,ツチ族と穏健派フツ族に,急進派フツ族の民兵が襲撃を開始する.
ポールはフツ族だが妻はツチ族だった.
ポールの家に現れた兵士は,妻子と周辺のツチ族住民を連行しようとするが,ポールは巨額の賄賂で彼らの命を買い戻す.ポールは彼らをミル・コリンに避難させた.民兵もうかつに手を出さないこのホテルに,避難民は続々と集まる.
ポールは彼らをすべて客として迎え,一方それまで培った手練手管・人脈の限りを尽くしてホテルと避難民を守る.
やがてベルギー軍の介入部隊がホテルに現れるが,その部隊はホテル滞在の外国人のみを避難させ,ホテルに駐留していた国連軍まで共に撤収して去っていった….
この絶望的な状況からポールが如何に道を切り開いていくのか,結果は最後まで予断を許さない.
映画は感動的で,幾つかの場面で涙を禁じ得なかった.緊張感が全編を貫き,ドラマは間断なく展開する.目を背けたくなるような現実に注視してこの映画を作り上げた努力には,敬意を表したい.
ただ,この映画は明快に民兵を虐殺者とする立場に,立っている.
このことは当たり前かも知れないが,僕は違和感を持たざるを得なかった.
この違和感は,リドリー・スコット監督の「ブラック・ホーク・ダウン」を見たときにも感じたものだ.リドリー・スコットはアメリカ軍の司令官を厳しく批判しながらも18名の米軍の死者を描き,一方ほとんど無差別に殺された1000人のソマリア民兵・市民の立場には,立とうとしなかった.「ブラック・ホーク・ダウン」は感動的な映画だが,この違和感はどうすることもできない.
ルワンダで殺された100万人は,また殺した方の人々は,ではどういう人だったのだろう.ある時殺す側に立った人も,その後殺される立場に変わったということも多いのではないだろうか.
★★★☆(★5個が満点)
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