独断的映画感想文:(ハル)
日記:2006年5月某日
映画「(ハル)」を見る.
1996年.監督:森田芳光.
深津絵里,内野聖陽,戸田菜穂.
パソコン通信を通じた恋愛物語.
この映画は1996年の作品である.当時はメールはパソコン通信と言って今ほど手軽なものではなかったのだが,まあ内容に大きな違いはない.チャットもあれば1対1のメールもある.
映画フォーラムで出会った(ハル)と(ほし),どこか心引かれるものがあってお互いのパソコン通信が始まる.仕事はうまく行かず,恋人は離れていくという(ハル)は,本名速水昇,一方当初東京に住む男性ということだった(ほし)は,実は盛岡市に住む女性藤間美津江,高校時代からの恋人を交通事故で失い,もう恋をすることなど二度とないと思っている.
実生活では仕事が変わったり,言い寄る異性が出来たり,新しいことを始めたりする2人だが,パソコン通信ではそのことを報告したりしなかったり,あるいは誇張して言ったり.
(ハル)にはオフでつきあい始めた女性がいたが,その女性ともパソコン通信上ではかなり際どいことを言ったりする.パソコン通信ってこんなものだったかしら.
観客は一方で二人の実生活を見ながら,お互いのパソコン通信内容を見ることになる.お互いの実生活での友人や恋人とのつきあいに対し,パソコン通信での二人のつきあいはどうなるのだろうかと気をもむのだ.
ところが中盤映画は動き始める.お互いを見たいという話から,出張で(ハル)が新幹線で通過する盛岡近くの畑の路上に(ほし)が出かけハンカチを振ることになる.お互いをビデオカメラで撮る二人.このときから何かが動き始めた様だ.
やがて帰省してきた妹から,(ほし)は意外な話を聞くことになる….
パソコン通信上ではいろいろ言うが,実は極めて誠実で臆病とも言える実生活を送っている(ハル)と(ほし)を,内野聖陽と深津絵里が好演.
淡々と進む東京と盛岡の日常の映像が美しい.
映画の3割ほどはパソコン通信の内容を表示する画面なのだが,似た様な表示をした「リリィ・シュシュのすべて」に比べて遙かに見易かった.最近こういうオーソドックスな恋愛映画に貴重感を感じるのは何故だろう.
★★★☆(★5個が満点)
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