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2006/05/22

独断的映画感想文:蝶の舌

日記:2006年5月某日
映画「蝶の舌」を見る.
1999年.監督:ホセ・ルイス・クエルダ.
フェルナンド・フェルナン・ゴメス,マヌエル・ロサノ(子役),ウシア・ブランコ.
ぜんそく持ちのモンチョは,8歳で小学校に行くことになる.
既に字は読めるモンチョだが,学校になじめるかどうか心配で堪らない.登校したモンチョは,皆にからかわれ思わずおしっこを漏らしてしまう.
教室から逃げ出した彼は,森に隠れ,村中の捜索を受ける事態に.翌日グレゴリオ先生が現れ,決して生徒を叩く様なことはしないから,とモンチョを連れ出す.教室では隣席のロケが,自分は初登校の日にうんこを漏らしたと告白するのだった….
心の温かい老教師グレゴリオ先生は,教室では詩を朗読させ,春になると野外に出て,蝶やクワガタを採集して回る素晴らしい教師だった.
時は1936年,スペインは共和派が選挙で多数派を占めたものの,資本家と軍部は王党派として対抗し,教会を巻き込んで一触即発の状況を呈していた.グレゴリオ先生は共和派であることを隠さず,教会にも行かない.
モンチョはその先生を敬愛しつつ,友達と喧嘩し,また仲良しになり,兄と共に村の楽団に参加して演奏旅行に出かけ,と元気な毎日を過ごしていく.
しかし,グレゴリオ先生が定年で退職した頃から,村の空気はおかしくなっていく.そして遂にある日,大きな悲劇が村を襲うのだった….
スペイン内戦の悲劇は様々に語られてきたが,これもまた1つのそのエピソード.
グレゴリオ先生の部屋をモンチョが訪れ,先生から「宝島」の本をもらうシーン,先生の手には無政府主義者クロポトキンの「麺麭(パン)の略取」がある.日本では幸徳秋水が訳したもの.先生が無政府主義系の共和派であることが暗示される(この時代,共産主義者というのは,スターリン主義者ということだ).
数の上では多数派の共和派に,権力と暴力で対抗する王党派,この状況で引き起こされる内戦の残酷さに胸が痛む.
状況が一挙に急を告げる映画の最後の15分間,裏切りと絶望が渦巻く中,モンチョはどういう行動を取るのか.この数ヶ月をグレゴリオ先生に導かれて生きてきたモンチョの,痛切な振る舞いが,そして最後の呼びかけが,深く印象に残る.
映画は同じ作者の3編の短編から脚本を起こしたもの.間のエピソードは従っていささか散漫になるが,大して気になりません.
音楽は「オープン・ユア・アイズ」「アザーズ」「海を飛ぶ夢」の監督,アレハンドロ・アメナーバル,多才な人です.
美しい映像と音楽,そして胸に残る結末.映画らしい映画.
★★★☆(★5個が満点)

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