独断的映画感想文:ALWAYS 三丁目の夕日
日記:2006年6月某日
映画「ALWAYS 三丁目の夕日」を見る.
2005年.監督:山崎貴.
吉岡秀隆,堤真一,小雪,堀北真希,薬師丸ひろ子,須賀健太.
この映画には偏見を持っていた.
その理由は日本アカデミー賞を独占したからである.その他にもいくらでも良い映画,良い演技はあったであろうに,あれほどの独占を果たし,この映画以外にはこの年何も作られなかった様な結果を残すとは.
我が家では,この結果は主催TV局の陰謀だということになっている.従って西岸良平の原作は好きだったが,この映画には偏見が入ってしまったのだった.
それはさておき,物語は昭和33年,集団就職で上野に着いた六子は鈴木オートの社長に連れられ,建設中の東京タワーに程近い夕陽商店街にやってくる.
鈴木オートは予想と違いぼろぼろの町工場だったが,優しい奥さんがいた.
向いの駄菓子屋には,売れない作家で最近は子供向きの小説を書いている茶川竜之介がいて,なじみの飲み屋のママから押しつけられた孤児の古行淳之介をかかえて弱っている.
この2家族を中心に展開される30年代の東京,TV,冷蔵庫,洗濯機がやってきて誰もが明日はもっと豊かになると信じていた時代の話….
30年代を描き,子供を主題にし,貧乏人を扱えば,この種のほのぼの映画は成功すると言っていい.この映画はあくまでもメルヘンとして見るべきだろう.
実際は30年代にはまだ子供は病気でよく死んでいた.小児マヒの蔓延は忘れることができない.CGには描かれないが,道路はあんなにすべすべでなくて穴ぼこだらけだった.もっと野良犬はいっぱいいて,草っぱらで寝たりしたら,確実に犬のうんこを踏んだ筈だ.
そんなことを思い出しながら見たこの映画だが,正直見た後は偏見を忘れた.なかなか良くできた映画である.
一番良かったのは子役の須賀健太君,台詞はともかく,泣くのをこらえながら幾度も幾度も首を振って竜之介を見上げるあの必死の顔つきには,泣かされた.
他には薬師丸ひろ子も良かった.優しい顔ながら,短気な社長が逆上するのを,たった一言で鎮めるドスのきいた声は,絶品である.
総じてよくまとまった映画,★★★☆(★5個が満点).
しかし日本アカデミー賞独占はやはり無理,あれはやっぱり陰謀だったのではあるまいか.
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コメント
確かに日本アカデミー賞独占は腑に落ちませんね。僕は去年初めて日本映画の年間ベストテンを付けようと思ったほどで、昨年は充実した作品が多く作られた年だと思っています。当然賞はあちこちに分かれるはずですがねえ。主催TV局の陰謀かどうかは分かりませんが、何らかのバイアスがかかっていたことは確かでしょう。
でもこの映画自体はよくできていたと僕も思います。大いに楽しめましたし、ずいぶん泣かされました。人情ものに弱いもので。
TBも送ったのですが、うまく入ったかな?
投稿: ゴブリン | 2006/06/17 01:10