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2006年8月に作成された記事

2006/08/30

独断的映画感想文:八日目

日記:2006年8月某日
映画「八日目」を見る.
1996年.監督:ジャコ・ヴァン・ドルマル.音楽:ピエール・ヴァン・ドルマル.
ダニエル・オートゥイユ,パスカル・デュケンヌ,ミュウ=ミュウ.
離婚し妻子と別居しているアニーは,セールスマンの研修担当講師.毎日「自信を持って笑って」とセールスマンを鼓舞激励する講演をして歩く.
妻ジュリーは仕事人間の彼について行けず,娘2人を連れて実家へ帰った.
アニーは娘達との面会日に,二人を駅に迎えに行くことを忘れてしまう.気付いて駆けつけた時には,娘達は待ちくたびれて帰った後だった.ショックを受けたアニーはすべてに自信を失い,休暇を取って夜車を走らせるが,途中犬を轢いてしまう.その傍らに立っていたジョルジュはダウン症の青年だった.
施設から抜け出し母の家に帰るというジョルジュを,アニーは成り行きから送っていくことになる.
精神的には子供で母の住所もよく分からないジョルジュを,母の家に送り届け(母親は数年前に死んでいた),ついで姉の家に送り届け(姉は引き取りを拒否する),最後に施設に送り届けるロード・ムービー.
その間にアニーは妻の家に立ち寄るが,妻にも娘にも拒否される.その哀しさ,むなしさに泣きじゃくるアニーを,ジョルジュはしっかりと抱きしめてくれる.
この映画には突っ込みたいところもいろいろある.
特にジョルジュが最終的に取った行動には賛否があるだろう.それがエピローグに示された様なアニーの復活につながり得たかどうかも,よく分からない.
しかしそういうことを超えてこの映画が感動をもたらすのは,二人のこの感情表現においてであろう.
ジョルジュは精神的に子供である.辛いこと悲しいことがあると子供の様に泣きわめく.だだっ子の様に地団駄を踏む.うれしいと心から笑う.アニーは呆れて眺めるばかりだ.
ところがそのアニーが妻ジュリーと会うと,ジュリーが自分の意のままにならないことにたまりかね暴力をふるい,それをジョルジュに止められて子供の様に泣きわめくのだ.
世の中で自分の感情を殺し,信じてもいない信念のもとに他人を鼓舞激励する講演をすることを生業とする,その強烈なストレス.アニーが泣きわめきたい心情は痛烈に観客の胸を打つ.
そのアニーをやさしく抱き留めてくれるのは,子供だとばかり思っていたジョルジュだ.自身がダウン症である俳優パスカル・デュケンヌがジョルジュを演じて好演.
ピエール・ヴァン・ドルマルの音楽も美しい.
この作品はまだ淀川長治氏存命中のものであり,淀川さんの「新シネマトーク」で取り上げられているこの作品の紹介も,なかなかに感動的.★★★☆(★5個が満点)
ところで題名の「八日目」とは,天地創造を7日間かけてやった神様が8日目に作ったものは何でしょう?という問題.答えは「ジョルジュ」.
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2006/08/23

独断的映画感想文:ロード・オブ・ウォー

日記:2006年8月某日
映画「ロード・オブ・ウォー」を見る.
2005年.監督:アンドリュー・ニコル.
ニコラス・ケイジ,イーサン・ホーク,ブリジット・モイナハン,イアン・ホルム,ジャレッド・レトー.
劇映画であるが,事実に基づくという点ではセミドキュメンタリーか.
ロシア移民でN.Y.のリトルオデッサに住むユーリーは,街で目撃したロシアマフィアの銃撃戦に触発され,武器商人の道を歩む.彼はこの方面の天才で,瞬く間に富を得,憧れのモデル嬢エヴァと結婚する.
その彼につきまとうインターポールの刑事バレンタインは論理明快な正義漢,幾度となくユーリーに煮え湯を飲まされるが,彼の執拗な追及で遂にユーリーは窮地に追い込まれることになる….
極めてシニカルな映画.見て楽しいエンタテインメントではない.
といって退屈する訳ではない,観客は引き込まれ最後まであっという間に見終わるだろう.
しかし何ともため息の出る映画である.死の商人の物語はいろいろと見聞きしてきたと思うけれど,これほどビジネスライクなキャラクターは初めて見たという気がする.
その血にまみれた仕事ゆえに妻子に去られ,両親に絶縁され,たった一人の弟を亡くしても,ユーリーはその仕事を止めようとはしない.駆け出しの頃にはくよくよと悩む一人の人間だった彼も,バレンタインに追い込まれる頃には人間性を失った無感動な男になっている.
映画を見ている観客は,どうしても主人公の立場に立つことになるから,その彼が当たり前に見えてくる.仕事の汚さに麻薬に逃避し,遂に身を滅ぼす弟のヴィタリーの方が人生の敗残者の様に見えてくる.正義漢バレンタインなど,まるで青臭い理屈を振り回す話の通じない警官の様に見えてくるのだ.
ユーリーが才覚と勇気でバレンタインを出し抜いて取引を成功させる様に,思わず喝采していたりする.
戦争とビジネスは度し難いものだ.
戦争は決してやってはいけないと言いながら,戦場での一瞬の栄光にあこがれる気持ちは,僕の中にもない訳ではない.ビジネスで成功することは,(女はどうだか判らないが)男にとって何物にも換えがたい歓びであることも確かだ.
とはいえ普通の人間は,戦争と妻子や親兄弟の間には厳然とした価値観の差を持つだろう.それでも世界からは戦争は無くならない.
この国だってほんの60年前にはまわり中に戦争を配っていた張本人だったのだ.しかし僕達は戦争をしなくても生きていけるやり方を,体得してきたのではなかったか?そのやり方をゴミの様に捨て去ろうと,今しつつあるのではないだろうか?
★★★☆(★5個が満点)
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2006/08/19

独断的映画感想文:博士の愛した数式

日記:2006年8月某日
映画「博士の愛した数式」を見る.
2005年.監督:小泉堯史.
寺尾聡,深津絵里,吉岡秀隆,浅丘ルリ子,斉藤隆成.
小川洋子の同名小説を原作とする,ピュアなドラマ.
博士は交通事故がもとで,記憶が80分しか持たない.義理の姉の世話になって離れで一人暮らす博士の世話を,家政婦の杏子が担当することになる.
毎朝出勤すると「家政婦です」と自己紹介する杏子,すると博士は「君の靴のサイズは幾つかね」と聞く.「24です」と答えると微笑み「実に潔い数だ.4の階乗だよ」と博士は答える….
杏子は博士の数学に寄せる愛情とその純粋な人格に,次第に心を惹かれていく.
彼女に息子のいることを知った博士は,子供を一人にしておくべきではないと,共に博士の離れに来る様に勧める.平たい頭のためにルートと名付けられた息子も,毎日博士の家にやってくる様になった.物語はルートが大人になって数学の教師になり,その生徒に語る博士の思い出と数学の物語という形で進行する.
出てくる俳優は皆持ち味にぴったりの役どころを与えられ,それぞれに見応えがある.キャスティングの勝利と言えよう.
撮影場所の長野県佐久地方の風景も美しい.
音楽も控えめでかつ充分ドラマチックで素晴らしい.
この映画では何故か数学の言葉に見ていて反応してしまった.「友愛数」を説明する博士の言葉にぐっと来たり,杏子が完全数を発見したところで感動したり.
原作同様なかなか味のある映画です.
なお,このオイラーの公式が示された後に挿入された能の場面の解説がありましたので,ご紹介します.
蛇足:寺尾聡の肩付近にハエがまとわりついているシーンがあったが,何か意図があったのだろうか?
★★★☆(★5個で満点)
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独断的映画感想文:ミュンヘン

日記:2006年8月某日
映画「ミュンヘン」を見る.
2005年.監督:スティーブン・スピルバーグ.
エリック・バナ,ダニエル・クレイグ,キアラン・ハインズ,マチュー・カソヴィッツ,ハンス・ジシュラー,マリ=ジョゼ・クローズ.
重い映画である.
イスラエルとパレスチナの問題について,何かを言える立場ではないが,個人的にはシオニズムは支持しない.パレスチナの戦闘グループがテロリストであると言うならば,イスラエルはテロ国家であろう.イスラエル建国はパレスチナからの土地の簒奪であるが,アメリカがネイティブアメリカンに今更土地を返す筈がないのと同じ意味で,現実は変えられないと思う.
しかしではどうしたらパレスチナ問題が解決するのかと言えば,皆目見当がつかない.ただ暴力の連鎖を止め,これ以上の簒奪を止め,失われた命への鎮魂を願うばかりである.
スティーブン・スピルバーグはこの映画のイントロダクションで,この映画は何かを主張するものではないが,見終わったとき観客はイスラエルに対する共感を持つだろうか,と問いかけている.
1972年のミュンヘンオリンピック,選手村のイスラエル選手団宿舎をパレスチナゲリラ「黒い9月」が襲撃,選手を人質にとって立てこもる.事件は,ドイツ警察との銃撃戦で「黒い9月」と人質の全員が死亡するという,最悪の結果に終わった.
イスラエル首相ゴルダ・メイアは直ちに報復のためパレスチナキャンプを爆撃,数十人のパレスチナ人を殺害した後更にモサドに命じ,パレスチナゲリラ(「黒い9月」と限定しない)の幹部11人の暗殺を指示する.
5人の暗殺チームはモサドの軍籍を抹消され,豊富な資金を与えられて仕事に取りかかる.
リーダーのアヴナーは情報屋ルイに巨額の金を支払い,パレスチナゲリラの居場所を突き止めては一人一人殺していく.映画はその過程を丁寧に追っていく.
最初の殺しは素人同然だった.しかし次第にチームワークもとれ,暗殺はうまく進んでいく.しかしいつか彼らの心に疑問が湧いてくる.「ユダヤ人は高潔でなくてはならない.子供の頃からそう聞かされてきた.俺たちのやっていることは高潔だろうか?」そしてそのころ,彼らの存在は次第に知られてきて….
この5人のチームの物語は典型的なテロリストの物語である.彼ら自身の悩みもまさに,「敵と同じ事」をしていて一体どうなるのだろうという点にある.
スピルバーグはこの経過をリアルに淡々と描き,その事実の重さを描写していく.事実の重さをそのまま描き切れたという点で,スピルバーグの仕事は納得のいくものであった.
エンタテインメントではないが(映画の長尺さもそのことを示している),見るべき映画と思う.
ジョン・ウィリアムスの沈痛でしかし抑制の効いた音楽も心に残る.
ただ,この映画でイスラエルへの共感を持つことは,最後までできなかった.
★★★★(★5個が満点)
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独断的映画感想文:男たちの大和/YAMATO

日記:2006年8月某日
映画「男たちの大和/YAMATO」を見る.
2005年.監督:佐藤純彌.
反町隆史,中村獅童,鈴木京香,松山ケンイチ,長島一茂,蒼井優,寺島しのぶ,仲代達也.
子供の頃から軍艦といえば「戦艦大和」である.別に軍事少年だった訳ではないが,軍艦は好きだったし何と言っても大和は強く美しい.
しかも沖縄特攻での悲劇的な最後は,吉田満の「戦艦大和ノ最後」に詳しい.このほとんど散文詩といっても良いほどの名著は,中学時代に通読した.
その印象が,まだ胸の奥底にそのまま残っている.そういう僕にとって,この映画は是非見たい映画だった.
映画は東シナ海に眠る戦艦大和の海中の映像,そこから引き上げられた遺品を見入る女性の姿から始まる.女性は大和生き残りの内田二曹の娘,内田真貴子.昨年亡くなった父の供養の為,大和の沈没海域に行きたいと言う.
枕崎漁協の神尾も大和の生き残り水兵で,内田の部下だった.神尾は漁船で15時間はかかるというその海域に,真貴子と向かう.神尾の胸中に,大和に乗り組んだ自分の姿が蘇る….
世界最大の戦艦大和に乗り組んだ水兵神尾達同期は,様々な部署に配属され,内田二曹,森脇二曹らに鍛えられる.戦局は悪化の一路を辿り,レイテ海戦で壊滅的打撃を受けた連合艦隊は,沖縄戦の開始を受け,大和に片道のみの燃料を積んで海上特攻に出撃させる….
大和の最後の死闘シーンは凄惨ながら感動的である.
この映画にとって主人公は,やはりその圧倒的な偉容の大和であったのだ.その大和が襲い来る航空機の爆撃・雷撃により,将兵の必死の戦闘にも拘わらず破壊されていく.
軍艦という鉄の構造物が,爆撃・雷撃で破壊されるとき,それを守備している生身の人間がどんな死に方をするか,映画はその一端を表現し得ていると思う.
これが「戦艦大和ノ最後」で吉田満が表現したことだったのではないか?その事実そのものが,感銘的で悲劇的である.
一方映画の人間のドラマはいま一つであった.
「男たちの」大和と言う割には男たちのドラマはほとんど無い.母親や家族との別れは涙を禁じ得ないが,その主人公達はまだ少年同様の水兵達だ.
反町隆史や中村獅童は良い演技をしているが,与えられたドラマはあまりに短い.
まして語り部としての仲代達也や鈴木京香の位置づけは,設定そのものに無理がある.
老漁師神尾は既に79歳,真貴子はどう考えても50歳以上と思われる.語り部としてはなんぼ何でも老齢過ぎるのではないだろうか.もう少し別の設定は考えられないものだろうか?こんな無理矢理の語り部を設定するより,もっと大和自身にその悲劇を語らせる方が良かったのではないかと思う.
大和のセットは素晴らしく,CGもまずまずではあったが,欲を言えば機関の音や高速航行中の振動等の,大和の息遣いと言うべきものがあればもっと良かった.
久石譲の音楽は,肩に力の入った詠嘆調で冒頭から最後まで一本調子,好きになれなかった.
期待が大きかっただけに注文も多かった映画,でも★★★☆(★5個が満点).
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2006/08/17

独断的映画感想文:Mr.&Mrs. スミス

日記:2006年8月某日
映画「Mr.&Mrs. スミス」を見る.
2005年.監督:ダグ・リーマン.
ブラッド・ピット,アンジェリーナ・ジョリー.
結婚後6年の夫婦.出会いは南米で劇的に恋に落ち結婚したのだが,お互いに仕事を持っている二人は忙しさにかまけ,最近はすっかり倦怠期である.
しかも仕事上の秘密がお互いにばれ,一挙に夫婦げんかに.しかしそのけんかの中で互いの愛が再び燃えあがり,無事に元の鞘に戻るというラブコメ.
但し普通のラブコメとちょっと違うのは,二人が別々の組織に属する殺し屋同士であるということである.
という訳でただのラブコメではない,アクションラブコメがこの映画.
ジョンとジェーンは実は別々の組織に属する殺し屋,ある作戦で仕事がかち合い互いの素性を知ることになる.正体を知られた上は相手を抹殺するのが業界の原則,二人は自宅を舞台にショットガンと拳銃で渡り合う.更に襲ってきた組織のヒットマンとの銃撃戦・カーチェイスと,映画は息をもつかせぬアクションの連続へ.さてこの結末は….
ジョンより遙かに殺し屋として非情なのはジェーンの方で,殺しの実績もジョンの5倍ある.アクションの迫力もアンジェリーナ・ジョリーの方が上であろうか.ブラピのどことなく気後れした演技がおかしい.
スーパースター二人の華麗なアクションが存分に楽しめるエンタテインメント.見て損はなし.
★★★☆(★5個が満点)
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2006/08/15

独断的映画感想文:シン・シティ

日記:2006年8月某日
映画「シン・シティ」を見る.
2005年.監督:フランク・ミラー,ロバート・ロドリゲス,クエンティン・タランティーノ.
ブルース・ウィリス,ミッキー・ローク,クライヴ・オーウェン,ジェスカ・アルバ,ベニチオ・デル・トロ,イライジャ・ウッド,デヴォン・青木.
アメコミの「シン・シティ」を原作としたサスペンスだが,映像はコミック紙面を意識したモノクロの,一種独特の美しさである.
その一部がカラーなのも鮮やか.仲間を裏切る若い娼婦の青い瞳,たった一夜の逢瀬で男を虜にした女の,ブロンドの髪・赤い唇・深紅のハート形のベッド.
その映像の展開するテンポも快調である.映画のプロモーションフィルムとして作られ,そのままプロローグに使われた,夜の殺しの場面から,映画にぐいぐいと引き込まれていく.
物語はオムニバス形式で,3人の男達がそれぞれに愛する女(達)のために悪と戦うサスペンス,しかし終わってみれば3つの物語はすべてつながっているという構成の見事さ.
登場人物の男女はそれぞれに魅力的で,これも見応えがある.
俳優では特にクライヴ・オーウェンが好き.また彼とからんだ悪役のベニチオ・デル・トロの魅力も,素晴らしい.
ミッキー・ロークはこの映画を「ドミノ」と同じ年に撮っている訳だが,素晴らしい活躍である.
ロバート・ロドリゲスといえばあのクソ映画「レジェンド・オブ・メキシコ/デスペラード」の監督だが,とても同一人とは思えない.一見の価値あり.
でもシリーズにするって噂には同意しかねる.
★★★★(★5個が満点)
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2006/08/07

独断的映画感想文:悦楽

日記:2006年8月某日
映画「悦楽」を見る.
1965年.監督:大島渚.
中村賀津雄,加賀まり子,野川由美子.
貧乏学生の中村賀津雄は,家庭教師で教えている加賀まり子に恋しているが,彼女は化粧品会社の御曹司と結婚してしまう.
彼は,加賀まりこの少女時代に彼女に暴行した犯人が,成長した彼女を恐喝してきたのに親の依頼で対応し,列車から犯人を突き落とし殺してしまう.ところがこれを目撃していた男がいた.
その男小沢昭一は横領犯の公務員で,ばれて捕まるのは時間の問題,自分の横領した金を中村賀津雄に預かれと言う.もし彼が使ってしまったら,殺人のことをばらすぞという訳である.
間もなく男は捕まり,彼のもとに3000万の金が残る.中村賀津雄は,男の刑期までにその金を女性とのつき合いに使ってしまおうと,女遍歴に走る.
ところが女もいろいろな上に,それぞれに男がついていてその男もいろいろで…という映画.
彼は4人の女性を金で買っていわば囲う訳だが,それぞれの女性とその男に関するエピソードがなかなか面白い.しかし彼がそこまで思い詰めた相手の加賀まりこは,実は…という点がこの映画のポイントの様だ.
映画そのものが目指したものよりは,僕の場合は脇役の小沢昭一,戸浦六宏,渡辺文雄,小松方正の元気な活躍が懐かしかった.
★★★(★5個が満点)
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独断的映画感想文:誰がために

日記:2006年8月某日
映画「誰がために」を見る.
2005年.監督:日向寺太郎.音楽:矢野顕子.
浅野忠信.エリカ.池脇千鶴.
今は写真館を営む民郎は,かってパレスチナに渡った写真家.幼なじみのマリの紹介で,その友人亜弥子と付き合う様になる.
やがて二人は結婚し亜弥子は子供を身ごもるが,行きずりの少年がある夕方亜弥子を殺害する.映画は民郎の激しい喪失感とマリの励ましを描いていくのだが….
映画の主題は妻子を少年に殺された男の葛藤を描くことなのだが,それはそれで理屈は判るのだが,この映画にはそのことを訴える力がどうも希薄である.
浅野忠信がどうも影が薄く,現実感がない.
その原因は脚本にあるのではないだろうか?
亜弥子と民郎が結ばれた夜,民郎の胸の中で亜弥子が自分の少女時代を物語る.自分には幸せな家族の思い出というものがないと言う.その話がどうも一般的で具体性に乏しく,人ごとの様だ.恋する男と結ばれて,話す自分の生い立ちってこんな調子なのだろうか?
同じような印象を,マリが民郎に復讐を止めさせようと話す言葉の中にも感じた.
この時も一般的観念的な台詞が並べられる.幼なじみ(しかも彼女は民郎を愛している)が,復讐とはいえ罪を犯そうとするのを必死で止めようとするとき,こんな調子なのだろうか.
少年が亜弥子を殺した理由も今ひとつ判然とせずじまい.良い俳優が出てる割には,映画全体の迫力が今ひとつだったのは残念だった.
矢野顕子のピアノソロの音楽は,メロディアスで抑揚が効き,美しかった.
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