独断的映画感想文:博士の愛した数式
日記:2006年8月某日
映画「博士の愛した数式」を見る.
2005年.監督:小泉堯史.
寺尾聡,深津絵里,吉岡秀隆,浅丘ルリ子,斉藤隆成.
小川洋子の同名小説を原作とする,ピュアなドラマ.
博士は交通事故がもとで,記憶が80分しか持たない.義理の姉の世話になって離れで一人暮らす博士の世話を,家政婦の杏子が担当することになる.
毎朝出勤すると「家政婦です」と自己紹介する杏子,すると博士は「君の靴のサイズは幾つかね」と聞く.「24です」と答えると微笑み「実に潔い数だ.4の階乗だよ」と博士は答える….
杏子は博士の数学に寄せる愛情とその純粋な人格に,次第に心を惹かれていく.
彼女に息子のいることを知った博士は,子供を一人にしておくべきではないと,共に博士の離れに来る様に勧める.平たい頭のためにルートと名付けられた息子も,毎日博士の家にやってくる様になった.物語はルートが大人になって数学の教師になり,その生徒に語る博士の思い出と数学の物語という形で進行する.
出てくる俳優は皆持ち味にぴったりの役どころを与えられ,それぞれに見応えがある.キャスティングの勝利と言えよう.
撮影場所の長野県佐久地方の風景も美しい.
音楽も控えめでかつ充分ドラマチックで素晴らしい.
この映画では何故か数学の言葉に見ていて反応してしまった.「友愛数」を説明する博士の言葉にぐっと来たり,杏子が完全数を発見したところで感動したり.
原作同様なかなか味のある映画です.
なお,このオイラーの公式が示された後に挿入された能の場面の解説がありましたので,ご紹介します.
蛇足:寺尾聡の肩付近にハエがまとわりついているシーンがあったが,何か意図があったのだろうか?
★★★☆(★5個で満点)
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» NO.147「博士の愛した数式」(日本/小泉堯史監督) [サーカスな日々]
丁寧に丁寧に、書き言葉が話し言葉に、
置き換えられていく。
小説を原作にした映画作品は多くあるが、僕は、ここ数年の邦画で、これほど原作がもっている気品を大切にしながら、当の作家も感動するような、映像化に成功した例を知らない。書き言葉を、話し言葉に。それは、簡単なように見えて、そうではない。また、季節や、背景や、小道具や、つまりあらゆる舞台装置を小説家は読者にイメージ化させようと文章で工夫する。映画は、映像で、�... [続きを読む]
受信: 2006/08/19 17:44
» 博士の愛した数式 [銀の森のゴブリン]
2005年 日本 監督・脚本:小泉堯史 原作:小川洋子『博士の愛した数式』(新 [続きを読む]
受信: 2006/08/19 18:21
» 「博士の愛した数式」(小川洋子著) [京の昼寝〜♪]
読み終わりました〜
映画と同様に、優しく温かい原作に触れて本当に良かったと思いますそれぞれの登場人物は映画を先に観た事によって、特に自分自身で登場人物を想像させるわけでなく、観た映画のイメージのまま読み進むことにしました 映画ではさりげないシーンのひとこまひとこまも、文字表現の中では本当に豊かに、かつ繊細です。 小川さんの文章は適当(これは悪い意味ではなく本当に女性らしいちょうどいい“さじ加�... [続きを読む]
受信: 2006/08/19 22:49
» 映画館「博士の愛した数式」 [☆ 163の映画の感想 ☆]
最近、記憶や数学を題材にした作品多いですよねぇ。この作品は、その両方を盛り込んだ作品ですねぇ~。
寺尾聰さんの囁くような声に途中何度か睡魔が襲ってきましたが、ゆったりとしたほのぼの気分になれる作品です。私の好みでいうと、もう少し「記憶が80分しか持たな...... [続きを読む]
受信: 2006/08/23 04:39
コメント
TBありがとう。
えー、蝿がまとわりつくシーンですか?
気がつかなかったけど。
博士が、数式に没頭しているときは、蝿がまとわり就いたりすることも、気にならない、ということかな。苦しい?(笑)
投稿: kimion20002000 | 2006/08/19 17:47
TBありがとうございます。
この映画は「嫌われ松の子一生」と並ぶ今年の収穫だと思います。さわやかで本当にいい映画でしたね。
能の解説も読んでみました。0の意味に関する解釈はほぼ僕の解釈と同じなので安心しました。
ハエの指摘は面白いですね。言われてみれば見たような気がしますが、はっきりとは覚えていません。偶然なのか意図的にしたことなのか分かりませんが、いずれにしても数字に没頭すると周りが見えなくなる博士の特徴がよく表れているのではないでしょうか。
投稿: ゴブリン | 2006/08/19 18:38