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2006/08/19

独断的映画感想文:博士の愛した数式

日記:2006年8月某日
映画「博士の愛した数式」を見る.
2005年.監督:小泉堯史.
寺尾聡,深津絵里,吉岡秀隆,浅丘ルリ子,斉藤隆成.
小川洋子の同名小説を原作とする,ピュアなドラマ.
博士は交通事故がもとで,記憶が80分しか持たない.義理の姉の世話になって離れで一人暮らす博士の世話を,家政婦の杏子が担当することになる.
毎朝出勤すると「家政婦です」と自己紹介する杏子,すると博士は「君の靴のサイズは幾つかね」と聞く.「24です」と答えると微笑み「実に潔い数だ.4の階乗だよ」と博士は答える….
杏子は博士の数学に寄せる愛情とその純粋な人格に,次第に心を惹かれていく.
彼女に息子のいることを知った博士は,子供を一人にしておくべきではないと,共に博士の離れに来る様に勧める.平たい頭のためにルートと名付けられた息子も,毎日博士の家にやってくる様になった.物語はルートが大人になって数学の教師になり,その生徒に語る博士の思い出と数学の物語という形で進行する.
出てくる俳優は皆持ち味にぴったりの役どころを与えられ,それぞれに見応えがある.キャスティングの勝利と言えよう.
撮影場所の長野県佐久地方の風景も美しい.
音楽も控えめでかつ充分ドラマチックで素晴らしい.
この映画では何故か数学の言葉に見ていて反応してしまった.「友愛数」を説明する博士の言葉にぐっと来たり,杏子が完全数を発見したところで感動したり.
原作同様なかなか味のある映画です.
なお,このオイラーの公式が示された後に挿入された能の場面の解説がありましたので,ご紹介します.
蛇足:寺尾聡の肩付近にハエがまとわりついているシーンがあったが,何か意図があったのだろうか?
★★★☆(★5個で満点)
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コメント

TBありがとう。
えー、蝿がまとわりつくシーンですか?
気がつかなかったけど。
博士が、数式に没頭しているときは、蝿がまとわり就いたりすることも、気にならない、ということかな。苦しい?(笑)

投稿: kimion20002000 | 2006/08/19 17:47

 TBありがとうございます。
 この映画は「嫌われ松の子一生」と並ぶ今年の収穫だと思います。さわやかで本当にいい映画でしたね。
 能の解説も読んでみました。0の意味に関する解釈はほぼ僕の解釈と同じなので安心しました。
 ハエの指摘は面白いですね。言われてみれば見たような気がしますが、はっきりとは覚えていません。偶然なのか意図的にしたことなのか分かりませんが、いずれにしても数字に没頭すると周りが見えなくなる博士の特徴がよく表れているのではないでしょうか。

投稿: ゴブリン | 2006/08/19 18:38

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