独断的映画感想文:ブロークバック・マウンテン
日記:2006年10月某日
映画「ブロークバック・マウンテン」を見る.
2005年.監督:アン・リー.
ヒース・レジャー,ジェイク・ギレンホール,ミシェル・ウィリアムズ,アン・ハサウェイ.
ワイオミングのブロークバック・マウンテンにある放牧場に2人の若者が雇われる.2人はシーズンの間山の放牧場に野営し,羊をコヨーテから守って管理するのだ.
初対面の2人はやがて互いの身の上を語り合い,次第に友情を深めていく.
シーズンも深まったある夜,山に上がるはずだったイニスは飲み過ぎ毛布をかぶって仮眠するが,夜明け前寒さに耐えかねジャックのいるテントに潜り込む.
それは突然のことだった.二人は突き動かされる情念のままお互いを求め,結ばれる.
翌朝山に登り羊の群れを見るイニス.そこには,コヨーテに襲われ引き裂かれた羊の死体があった….
その後二人はシーズンを終え,ワイオミングとテキサスのそれぞれの家族の元に戻る.それぞれ結婚し子供をもうけ,平和に暮らしていたが,4年経ってジャックがイニスのもとを訪れた.
出会った瞬間に燃え上がる二人の愛,その後年に数回ずつの逢瀬を重ねて二人の愛は深まっていく….
この映画が描くのは,ゲイでもなければ破綻する平凡な家庭でもない.1つの特異な恋愛の一部始終である.
この二人は真性のゲイではないが(平凡な結婚をし子供も作っている),少なくともイニスの方は妻アルマを愛しつつ,それ以上にジャックを愛し続けた.イニスのジャックに対する愛情は真摯なものであり,ジャックへの一途な思い(貞操感と言っても良いか)は,ゲイとか男色とか言う言葉で表現しきれるものではない.
ジャックはそれに比べ,イニス以外の男性にも,妻以外の女性にも手を出す男である.しかしイニスに対する愛情が独特のもので,極めて深いものであることは,疑い得ない.
そしてそのことは,二人が結ばれたブロークバック・マウンテンの美しく荒々しい自然と,そこでの二人の経験とに,固く結びついたものと思われる.
監督はこの恋愛劇を真正面から描いており,観客は時にその描写に大きな違和感を持つだろう.
しかしニューヨークならいざ知らず,南部ではゲイのカップルが社会的に蔑まされ,時にはリンチによって虐殺されることもある事が描かれるにつれ,観客はこの恋愛劇と彼らの苦悩を次第に受け入れていくのだ.
イニスが最後に手に入れた心の平安は,思いもかけないものではあったが,それはしみじみとした共感をもたらすものだった.
見て損はなし.
★★★★(★5個が満点)
人気blogランキングへ
コメント
TB、感謝です♪
性愛と友愛は紙一重だなぁぁ、と(笑)。
どーも、単純な友愛が性愛も伴うものになると、
途端に“悪しき物”に変じる様な社会的通念がある訳ですが、
それって歴史的に見ると、日本では近世に入って以降の事で、
昔はもっと大らかに受け止められていたですね。
普遍的なのは、
「人を好きになるのは良い事です!」
という山本寛斎氏の言葉に尽きるだろうと(笑)。
投稿: カゴメ | 2006/10/31 09:26