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2006/11/19

独断的映画感想文:ファイヤーウォール

日記:2006年11月某日
映画「ファイヤーウォール」を見る.
2006年.監督:リチャード・ロンクレイン.
ハリソン・フォード,ポール・ベタニー,ヴァージニア・マドセン.
ジャックはセキュリティ・システムの専門家,現在は銀行のセキュリティ部門の責任者となっている.
大邸宅に住みヨットと高級車を持つ生活.銀行は合併問題を抱えていて,ジャックは相手のセキュリティ担当者と意見が衝突している.
その最中,友人ハリーの紹介で現れた起業家のビルと会食をする.ところがその帰途ビルが彼の車に乗り込んでくる.ジャックの家族は既にビルの手下4人に襲われ監禁されており,ビルはジャックを脅迫して銀行の金をセキュリティを破って送金させようというのだ.
ここからジャック とビルとの知力を尽くした戦いが始まるが,ジャック の反抗の試みはことごとくビルに見破られ,ジャックはやむなく1億ドルの送金を違法に行う羽目になる….
物語の展開は息つく暇もなく,アクションの行方は予断を許さない.あっという間に最後まで見てしまう映画.

しかしこの映画には大きな問題がある.
この被害者であってかつ最後には勝利者となる(ハッピーエンドですから)ジャックは,どういう人間なのか?普通こういう映画では多少なりとも主人公の人となりが伺える展開があって,その正しく平安な生活が,悪党によって一挙に破滅に瀕せられるというのが常道だった.
ところがこの映画ではジャックがどういう人物か良く判らない.
大邸宅に住み忙しく働いている,社内に敵がいる,あまり美人でない秘書(失礼)が居る,子供につべこべと指示を出す,奥さんとはうまくいっているが恐妻家らしい,といった事実関係が述べられるが,彼が誠実な人なのか優しい人なのか,勇気のある人なのかどうかは判らない.ひょっとしたら卑劣で冷酷,2枚舌を使う裏切り者かも知れないのだ.
現に(ここからはネタばらし,未見の人は読まないで),一味の手下4人のうち2人は首領のビルに殺されるが,残り2人はジャックに殺されるのだ.ビルはもちろんジャックに殺される.ジャックは他に違法に送金もするし秘書は即刻首にするし(すべて犯人の指示だが),同僚を傷つけて銀行のシステムを破壊する.
こういう共感できない人物でも,主人公である限りはその行為に同意し,攻撃してきた一味を手段を選ばず殺害して良いのだろうか?そして一味を全滅させた挙げ句家族手に手を取ってハッピーエンドとなって良いのだろうか.
テロとの戦いをするアメリカとはまさに,こういう人々の構成する社会ではないのだろうか.この映画は,このような疑問を観客に抱かせる.
その意味で,この映画はエンタテインメントとして理屈抜きに楽しめない面がある.
映画の後味は悪い.その他にハリソン・フォードの老化もエンタテインメントとしては受け入れがたい.付け加えれば「ファイヤーウォール」という3流映画にふさわしい邦題も致命的.
★★★(★5個が満点)
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コメント

TB、感謝です♪

どーも昨今の米製映画は、トム・クルーズやスピルバーグ、このハリソン・フォードにしても、
「家庭を守る為には無茶OK」を全面に出して来てますね。
もともとアメリカは自警国家。
「自分のファミリーだけは己の力で守る」「政府も他の人間も頼りにならねぇ」
という気質が原点なので、
ついついこうなってしまい勝ちなんでしょうが・・・。
確かに、アメリカの権力を掌握しているごく一部の上層階級の連中にとっては、
都合の良い意識操作に使われてる気がしますね(苦笑)。

投稿: カゴメ | 2006/12/01 16:42

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