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2006/11/09

独断的映画感想文:かもめ食堂

日記:2006年11月某日
映画「かもめ食堂」を見る.
2005年.監督:荻上直子.
小林聡美,片桐はいり,もたいまさこ,ヤルッコ・ニエミ.
フィンランドはヘルシンキの街中にある「かもめ食堂」.サチエが一人で始めたこの食堂は,まだ客が来たことがない.この食堂は普通の日本食を出す食堂で,メインメニューはおにぎり(サチエによれば日本のソウルフードだ).
ある日日本アニメお宅のトンミ少年がやってきて物語は動き始める.彼は栄えある来店第1号お客として,永年コーヒー無料資格を獲得,以来毎日この店に入り浸り.
やがて何という目的もなくフィンランドに来たミドリ,両親の介護を終え旅行先のヘルシンキで荷物の紛失したマサコが,次々と店に無料従業員として居着く.次第に店には固定客がついて…という話.
エピソードはいろいろあるけれど,これ以外に特にドラマはありません.
しかしこの映画は気分が良い.
店がまず魅力的.朝から厨房に日が射し込むなんて,何という気持ちの良い食堂でしょう.
その厨房で手際よく,しかししっかりと作られる平凡な日本料理.ついファーストフードと言いたくなる「おにぎり」を,ソウルフードと言って作りまた食べるサチエの態度.
日本と全く別な時間の流れるこの国での日本食堂は,実に魅力に溢れている.
サチエ自身の魅力もまた素晴らしい.何事にも動じない,温かくかつ毅然としたその態度も好ましいが,厨房で立ち働くときの身のこなしがまた見ていて気持ちが良い.塩鮭を網の上で焼いているときの箸の持ち方と左手の添え方,揚げたてのトンカツをサックサックと包丁で切り,その包丁をさっと翻してトンカツの下に差し込んでお皿に盛りつけるきびきびとした動き.
身のこなしにリズムがあり無駄がなく,これを見ているだけで気分が良い.
食事を作ることの楽しさ大事さ,それを(気の置けない人達と)食べるときの幸福感・満足感・充実感.画面からはそのことがひしひしと伝わってくる.
映画はこのかもめ食堂がヘルシンキの街の人達で満席になる場面がクライマックスなのだが,如何にもそのことはこの映画のクライマックスにふさわしいと,観客は自然に納得することだろう.
もたいまさこ,片桐はいりも素敵.このお二人については,例え舞台がヘルシンキでも期待が裏切られることはありません(小林聡美は期待を大きく上回ります).
見て損はないほのぼの映画.人が一人も死ななくても,映画は撮れるのだ.
★★★★(★5個が満点)
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コメント

TB、感謝です♪

>しかしこの映画は気分が良い.店がまず魅力的.朝から厨房に日が射し込むなんて,何という気持ちの良い食堂でしょう.

あの採光の具合は本当に良く出来てます。
あんなに美しい湯気の流れ具合は初めて見ました。

>身のこなしにリズムがあり無駄がなく,これを見ているだけで気分が良い.

手際の良さに自信と明朗さが窺えて、自然とこちらも背筋が伸びますね。
しかも、押し付けがましさがなく、心が癒されるような清々しさ。
本当に見事です。

>人が一人も死ななくても,映画は撮れるのだ.

まず、ハリウッドでは絶対に無理な作品。
ちょっと誇らしくなりますね(笑)。

投稿: カゴメ | 2006/11/11 09:03

今年の日本映画の充実ぶりはどうでしょう。「博士の愛した数式」、「嫌われ松子の一生」、「フラガール」そして「かもめ食堂」。まだほんのわずかしか観ていないのに優れた映画がずいぶんあります。これから映画館やDVDでどんな日本映画と出会えるのか、楽しみで仕方がありません。

投稿: ゴブリン | 2006/11/18 10:22

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それはヘルシンキにある食堂でした。こころをこめた「いらっしゃいませ」とおにぎり。毎日ふつうで、おいしくて、小さいけれど堂々としていました。 ■監督・脚本 荻上直子■原作 群よう子(「かもめ食堂」幻冬舎刊)■キャスト 小林聡美、片桐はいり、もたいまさこ、マルック・ペルトラ、ヤルッコ・ニエミ□オフィシャルサイト  『かもめ食堂』 フィンランド、ヘルシンキの街角でオー�... [続きを読む]

受信: 2006/11/28 22:51

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