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2007/01/28

独断的映画感想文:ジャーヘッド

日記:2007年1月某日
映画「ジャーヘッド」を見る.
2005年.監督:サム・メンディス.
ジェイク・ギレンホール,ジェイミー・フォックス,クリス・クーパー,ピーター・サースガード,ルーカス・ブラック.
海兵隊員アンソニー・スオフォードの原作による湾岸戦争を巡る実録もの.戦争と軍隊のある面をリアルに描いた作品である.
ある面というのは,兵士は如何に作られるか,ということだ.
兵士とはコマである.望ましい兵士像とは従って,命令に忠実に疑問を持たず,言われたとおり(できれば熱烈なる敵愾心を持って)敵弾の飛び交う中に飛び出していって敵を殺してくるものである.
そういう兵士を如何に作るかがこの映画の前半,そうやって作られた兵士が戦場でどのようになるかがこの映画の後半.
ジャーヘッドとはラバのこと,俗語で海兵隊員のことであるが,直訳すればビン頭である.そのビンの中は空っぽということだろうか.
僕が子供の頃はまだ,先の大戦中の日本軍の内実が社会の記憶として生々しかった.内務班と呼ばれる兵舎の日常では,上官による暴行虐待侮辱いじめが横行していた.
僕が子供の頃最も怖れていたのは,何時か軍隊が復活して徴兵されたとき,上官として僕の生殺与奪の権力を握る人がどういう人になるか分からないということだった.
体力に恵まれず運動神経は無きに等しかった僕は,いずれにしろ弱兵にしかなれない.そういう存在が兵の上官である上等兵や下士官からどんな目に遭わされるかは,子供の僕にとっても明白であった.
小中学生のいじめが今話題になっているが,これは先の大戦が終わるまで全ての召集された兵が直面していた問題と同質に思える.この映画を見て,子供の頃の記憶が,上記のように蘇った.
戦闘シーンはなく,いわゆる戦争物とは一線を画すが,戦争と兵士についての,ある視点を示す映画である.
★★★★(★5個が満点)
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コメント

ほんやら堂さん TB&コメントありがとうございました。
う~ん、そういう記憶が残っているということは僕よりずっと上の世代ですね。子供の頃の僕にとって戦争は漫画や父に連れられて観に行った戦争映画の世界であって、決して現実味はありませんでしたから。
<兵士を如何に作るかがこの映画の前半,そうやって作られた兵士が戦場でどのようになるかがこの映画の後半>
まさにご指摘のとおりだと思います。ただ僕の印象に一番強く残ったのは、帰国後のエピソードです。戦闘マシーンとして作り上げられた人間は社会復帰後も「砂漠」を引きずっている。一種の戦争後遺症物としても解釈できると思いました。

投稿: ゴブリン | 2007/02/19 01:47

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