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2007/03/02

独断的映画感想文:ニライカナイからの手紙

日記:2007年3月某日
映画「ニライカナイからの手紙」を見る.
2005年.監督:熊澤尚人.音楽:中西長谷雄.
蒼井優,南果歩,平良進,金井勇太.
蒼井優の初主演映画.
安里風希の父はカメラマンだったが早くに亡くなった.母は風希が7歳の時に別れたきりだ.
風希は,郵便局長である祖父と竹富島の村の人々に包まれ,成長した.母親からは風希の誕生日ごとに1通の手紙が来て彼女を励ます.
成長した風希はカメラマンを目指し,祖父の反対を押し切って東京の写真家の住み込みアシスタントとなる.厳しい仕事の毎日,母の手紙の消印局を訪ねても,母の住所を知ることはできない.
しかし母の手紙にあった「20歳の誕生日に会って全ての事情を話す」という言葉を頼りに,風希は自分の写真を撮り始める….
美しい映画である.
沖縄竹富島の海と草原と空.ピアノを中心とした音楽も心地よい.
子役も良かったが14歳から20歳を演じた蒼井優が素晴らしい.よくある筋立てながら,蒼井の演じる風希の喜びと悲しみを,観客は我が身のこととして映画に引き込まれるだろう.
竹富島の人々も素晴らしい.
最終局面,哀しみにうちひしがれた風希の下へ,島の人々が次々に現れる.ささやかな贈り物を手に彼女を訪れ,声をかけその身体にそっと触れ,挨拶をして帰っていく.何時までも続くその人々の列.
僕は風希の哀しみそのものより,むしろこの場面の島の人々の人情に深い感動を覚えた.
ところでこの映画をめちゃくちゃにしているのは,郵政のコマーシャルである.
沖縄でも東京でもところを選ばず,執拗に画面に現れる郵政の職員・ゆうパックの映像.
映画の山場で,平良進のおじいにかける郵便局長前田吟の「手紙を配るのが我々の仕事じゃないですか」という,取って付けたような場違いの浮いた台詞.
どうしてこういうことをするのだろう.
竹富島の船着き場には,円筒型の古いポストがある.きらめく海を背にしたそのポストの映像は,夢のように美しい.この映像で観客は皆,手紙や郵便のことを,懐かしく思い出すだろう.
郵政官僚にはそれでは不充分だったのだろうか?
映画を食い物にするな.という訳で差し引き★★(★5個で満点)
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» mini review 07010「ニライカナイからの手紙」★★★★★★★★☆☆ [サーカスな日々]
カテゴリ : ドラマ 製作年 : 2004年 製作国 : 日本 時間 : 未入力 公開日 : 2005-06-04〜2005-08-05 監督 : 熊澤尚人 出演 : 南果歩 前田吟 蒼井優 中村愛美 「風希、お誕生日おめでとう・・・」涙を必死にこらえながら竹富島の船着場で母 昌美を見送った6歳からずっと、風希と母をつなぐものは、毎年誕生日に送られてくる手紙だけだった。竹富島で祖父 とふたりで暮らす風希。やがて、父の...... [続きを読む]

受信: 2007/03/05 15:53

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