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2007/03/22

独断的映画感想文:ヘヴン

日記:2007年3月某日
映画「ヘヴン」を見る.
2002年.監督:トム・ティクヴァ.
ケイト・ブランシェット,ジョヴァンニ・リビシ,レモ・ジローネ.
高層ビルの一室を訪れ時限爆弾を仕掛ける女フィリッパ.しかしその爆弾は掃除夫の手でゴミと共に運ばれ,エレベーターの中で爆発してしまう.
憲兵隊はフィリッパを逮捕,英語でしか応答しないフィリッパの通訳を,若い憲兵フィリッポが勤める.二人の運命の出会いである.
フィリッパは英語の教師,自分の夫や教え子を死に追いやった麻薬ディーラーの爆殺を計ったのだが,結果として無関係な市民4人を殺してしまった.その事実を知って失神するフィリッパ,一方憲兵隊は組織的テロリストの疑いをもって彼女を尋問するが,麻薬ディーラーに通じる憲兵隊の高官はフィリッパをどう始末するか思案していた….
という設定で始まるが基本的にフィリッパとフィリッポの盲目的恋愛の顛末である.
映像も音楽も美しく,特に後半のトスカナ地方の風景は素晴らしい.最初の設定はむちゃくちゃだと思うが,その後のケイト・ブランシェットの演技は見応えあり.
ところで僕が一番印象的だったのは逃避行下の息子に呼び出されたフィリッポの父親の態度である.
彼は引退した憲兵で,息子の勤めを心から誇りにしていた.その息子が取調中のテロリストと共に逃亡したのだ.その心中は如何ばかりだろう.
普通日本人の我々から見れば,何はともあれ息子を女から引き離し,説得して自首させ,あわよくば女を密告して捕まえよう,等という展開になりそうなところ.
しかしこの父親はフィリッパにただ「息子を愛しているのか?」と聞くのだ.「息子はあなたを愛している」とも言う.まるでそのこと以外に大事なことは何もないかのようだ.彼女が「愛している」と答えると父親は烈しく息子を抱きしめ,別れを告げて去っていく.既に二人が死を決意していることを悟ったのだ.この息子に対する盲目的共感が感銘的である.
いろいろ突っ込もうと思えば突っ込める映画だが,この父親の態度に免じて★★★☆(★5個が満点)
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