独断的映画感想文:スタンドアップ
日記:2007年3月某日
映画「スタンドアップ」を見る.
2005年.監督:ニキ・カーロ.
シャーリーズ・セロン,フランシス・マクドーマンド,ショーン・ビーン,リチャード・ジェンキンス,シシー・スペイセク.
夫の家庭内暴力に我慢できず,ジョージーは2人の子供を連れて家を出,実家に帰る.高校時代に男性遍歴があり,長男サミーの父親もわからないというジョージーを,父ハンクは受け入れなかった.
ジョージーは友人グローリーの紹介で父と同じ鉱山で働くことになる.初めて自分で稼ぎ自立を目指した彼女だったが,少数派の女性従業員への男性従業員のセクハラ・嫌がらせは激しいものだった….
1988年に起きた,全米初の集団セクハラ訴訟の実話に基づく映画.この後彼女はレイプされかけ,会社を訴えて法廷闘争に入る.3人以上の原告が集まれば集団訴訟を認めようという裁判所に,ジョージーは果たして仲間を集められるのか.彼女の「男性遍歴」が地域のうわさにもなり,子供のいじめにまで発展する中,長男はジョージーを嫌い,女性従業員も彼女に同調しない….
この映画は家族再生の物語でもある.この手の映画が今アメリカ映画にやたら多いと思えるのは気のせいか.
俳優としては友人夫婦役のフランシス・マクドーマンドとショーン・ビーン,両親役のリチャード・ジェンキンス,シシー・スペイセクがともに良い.
それまで娘には厳しさ一点張りだった父ハンクが,組合の集会で野次を浴びる娘をかばい,「共に働き仲間と思ってきたが,今この場で誇りに思えるのは,この娘だけだ」と宣言するくだりは感銘的だ.
主演のシャーリーズ・セロン自身,母親が家庭内暴力の激しい父親を射殺したという経験を持つ.この美貌の女優が社会派ドラマをよく演ずるのには,そのような事情もあるのか.
最後の法廷シーン,ジョージーを支持して原告の名乗りをあげる人の中に,実際にこの訴訟を戦った2名の元原告が混じっているのも興味深い.
しっかりしたつくりの映画.挿入されるボブ・ディランの歌も素敵.
★★★☆(★5個が満点)
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コメント
TBありがとうございましたm(__)m
昨年の僕の洋画ベストシネマのベスト1に選んだ映画です!
本当に勇気のある1本ですね。
何度かTBさせて戴きましたが反映されませんでしたので、URL置いておきます。
http://blog.goo.ne.jp/cyaz/e/8d12b62f55a5f3febc14faabbfabaf3d
投稿: cyaz | 2007/03/28 08:55
TB&コメント ありがとうございました。
この映画はジョージーが不当な扱いに対して立ち向かってゆく映画ですが、彼女が1人の女性として、人間として、あるいは生活者として独り立ちしてゆく映画でもあると思います。しっかりとした自分の考えを持ち、不当なことには泣き寝入りせず、自分の生活は自分で支えて行くという彼女の姿勢に深く共感しました。そして彼女を支えた両親と仲間たちにも熱いものを感じました。ニキ・カーロ監督の今後の作品にも注目したいと思います。
投稿: ゴブリン | 2007/03/29 23:03