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2007/04/14

独断的映画感想文:出口のない海

日記:2007年は4月某日
映画「出口のない海」を見る.
2006年.監督:佐々部清.
市川海老蔵,伊勢谷友介,上野樹里,塩谷瞬,柏原収史,伊崎充則,高橋和也,香川照之,古手川祐子.
特攻兵器回天に搭乗した野球青年並木浩二の物語.
回天は一人乗り潜行艇だが,むしろ魚雷に人間をくくりつけたものと言った方がよい.大平洋戦争末期,連合艦隊もほぼ全滅した海軍は,起死回生の特攻兵器として回天を開発し,若い志願兵に訓練を施す.
甲子園投手だった並木は海軍に入り回天乗り組みを志願する.厳しい訓練の後,潜水艦に4隻の回天を搭載して出撃,しかし破損や故障により出撃し戦果を上げたのは1隻のみだった….
戦争映画としては可もなく不可もないという印象.こういう映画を作ることの意義は認めたとしても,重く感銘的な題材を扱っている映画としては,失敗作と言えるかも知れない.
細かいことでは海老蔵の敬礼がなっていないということと,古手川祐子の髪が栗色フェミニンであったことが気になった.これでいっぺんに安物のTVドラマになってしまう.
根本的なことでは,回天という兵器の絶望的な愚かしさが,結局描けていないのではないかということ.
回天は一旦出撃したら,敵艦にうまく突っ込もうが途中で方角を失ってしまおうが故障して立ち往生しようが,決して生還することは出来ない.ハッチは外から閉められ中からは開けられない.
映画では4隻の回天のうち1隻のみが出撃しこれは敵輸送艦を撃沈したが,後の3隻は出撃できなかった.しかし実際には出撃しても敵艦まで到達することが出来ず,むなしく海の藻屑になった例が多かったらしい.
その程度の能力の艇でしかないのに,中からは開けられない構造にして兵員を投入したこの60年前の我が国の絶望的な愚かしさ.
戦争を描くというなら,このことがちゃんと言えなくってどうするのか.
日本の戦争映画は事実を直視するという要素が,足りないのではないだろうか.
俳優では伊勢谷友介に存在感があった.上野樹里はマドンナ的存在であるのに,残念ながらあまり魅力を感じられず.
★★☆(★5個が満点)
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