独断的映画感想文:スケアクロウ
日記:2007年5月某日
映画「スケアクロウ」を見る.
1973年.監督:ジェリー・シャッツバーグ.
ジーン・ハックマン,アル・パチーノ,ドロシー・トリスタン,アン・ウェッジワース.
ネタバレあります.
アメリカン・ニュー・シネマの傑作.
6年の刑期を勤めたマックスはピッツバーグで洗車屋を開業しようと旅をしている.デトロイトに身重の妻を残し5年間船に乗り組んでいたライオネルは,子供へのプレゼントを持って故郷を目指している.
ヒッチハイク仲間として知り合った二人は相棒となり,デトロイトに寄ってからピッツバーグで2人で洗車屋を開業しようということになる,そこから始まるロード・ムービー.
大男マックスはまじめな男だが自分本位で,かっとなると喧嘩を止められない.ライオネルは小柄な優男,争うくらいなら道化を演じようというひょうきん者.
その二人がコンビを組んでまずはマックスの妹コリーの家に立ち寄る….
男の友情と人生の哀歓を描いた映画だが,その切り口は独特のものだ.
この映画を印象づけるのは,その開幕シーン.
鉛色にどんより曇った空をバックに,奇妙に明るい冬枯れた丘を男が歩いて降りてくる.こちら側は道路らしく,その手前にある鉄条網を苦労してくぐり抜ける男.
このシーンで既に観客はこれから始まるドラマの予感に捉えられるだろう.
アンバランスな二人の出会いと育まれる友情,ヒッチハイク(何故か乗せてくれるのは年寄りばかりだ)と貨車でのうらぶれた旅路.不安と宙ぶらりんな感じを緊張感をもって維持していくこのロードムービーの,何と素晴らしいことだろう.
終盤,錯乱して倒れたライオネルに寄り添うマックスの真情に,涙を禁じ得ない.
この30年以上前の映画が今なお持つ現代性は,極めて印象的だ.
映画らしい映画.★★★★(★5個が満点)
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コメント
ここにもやって参りました♪♪♪
この時代の油の乗り切った二人が、しかも出ずっぱりの共演で観られるなんて!!
もう随喜物、涎物の作品でありますね。
ラスト、カウンターに靴を打ち付けるマックスの姿に総毛立つほど感動するですよ!
投稿: カゴメ | 2007/07/16 16:10