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2007/05/02

独断的映画感想文:ゆれる

日記:2007年は4月某日
映画「ゆれる」を見る.2006年.監督:西川美和.
オダギリジョー,香川照之,伊武雅刀,新井浩文,木村祐一,真木よう子.
都会で写真家として成功した弟は、母親の一周忌で帰郷する.家業を手伝っている律儀者の兄は温かく迎えてくれるが,父親は故郷を捨てた弟に頑なである.
兄のスタンドで働いている智恵子は昔の弟の恋人だった.弟は彼女と一夜を共にする.
翌日,兄弟は彼女と3人で川釣りに行き,兄と智恵子が川に架かった吊り橋を渡っていたとき、智恵子は転落死する.橋の上から呆然と見下ろす動転した兄,弟は目撃した内容を隠し,何も見なかったと説明する.
事故だと思われた一件は,しかし兄が自分が突き落としたと自白したことから、殺人事件として展開することになる….
「藪の中」に似て関係者の証言が交錯する中で明らかにされる兄弟・家族の葛藤が,この映画のメインである.その葛藤は都会に出てうまくやったものと,田舎に残って律儀に家を守ってきたものとの葛藤でもあり(父親とその弟がすでにそうだった),智恵子を巡る兄弟の葛藤でもある.
それを巡って「ゆれる」心を演じる,オダギリジョーと香川照之.二人の主張は時により状況により変わっていく.
その交錯が「藪の中」状態なのだが,芥川の「藪の中」を映画化した黒澤の「羅生門」では相矛盾する証言がそれぞれに映像として示され,そのどれが真実なのか誰も判らない.
一方この「揺れる」ではいくつか示される事件の映像のうち,最後に示される弟の回想シーンが真実なのだという印象を,観客に与えてしまうのではないだろうか.ただそうなると兄と弟の人物評価は黒白が決定的になり,監督の意図したものと変わってくるかもしれない.
この映画にはそういう疑問点があった.しかしそれでも,香川照之・オダギリジョーの両俳優を見るだけで満足感高し.
また,カメラ(高瀬比呂志)がなかなか良く,これも見応えあり.
保守的な僕の目から見ると斬新な映像が多い(切りかけのトマトのアップとか,窓をノックしようとして途中で止まった白い腕とか)ことが印象的だった.
★★★☆(★5個が満点)
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» 『ゆれる』 [京の昼寝〜♪]
あの橋を渡るまで、兄弟でした。 ■監督・原案・脚本 西川美和■キャスト オダギリジョー、香川照之、伊武雅刀、新井浩文、真木よう子、蟹江敬三、 木村祐一、田口トモロヲ、ピエール瀧 □オフィシャルサイト  『ゆれる』 母親の一周忌で久々に故郷へ帰るところから物語は始まる。 写真家として活躍する猛(オダギリジョー)の兄で温厚で実直な稔(香川照之)が、猛とも幼馴染の智恵子(真木よう子)をつり橋から突き落とした容疑で逮捕された。 やがて裁判が始まり、これが事故死なのか、殺人な... [続きを読む]

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