独断的映画感想文:東京タワー オカンとボクと、時々、オトン
日記:2007年5月某日
映画「東京タワー オカンとボクと、時々、オトン」を見る.
2007年.監督:松岡錠司.
オダギリジョー,樹木希林,内田也哉子,小林薫,松たか子,その他大勢.
リリー・フランキーのベストセラーの映画化.
1960年代,型破りな父と別れ,主人公まー君を連れて小倉から筑豊の実家に戻った母.まー君は時々は父親と過ごしながら,母のおいしい料理と漬け物を食べ,やんちゃな中学生に育っていく.
炭坑の町に嫌気が差したまー君は,高校は大分の美術系の高校に進み大学は東京の美大に進む.パートしながら仕送りしてくれるオカンに済まないと思いつつも怠惰な学生生活のあげく,留年しての卒業,さらに就職もできずお金の無心を重ねるまー君だった….
やがて母を東京に迎え東京タワーの下で共に暮らすというご存知の物語.
原作は家族全員が涙し,樹木希林のオカンとオダギリジョーの主人公というキャスティングにいやが上でも高まった期待だったが,結果はやや期待はずれ.
映画館ではここ彼処から涙をすする気配がしてきたのだから,これは僕の独断と偏見によるのは無論なのだが,泣けませんでした.
泣けなかった最大の原因は,多分おかしくなかったからである.
そもそも父親がまるで普通人である.最初の「アヴァンギャルド」なシーンこそむちゃくちゃであるが,後は大人しいもの,僅かに電話で怒鳴り倒したシーンがある程度で,これではなぜオカンがこの人と別れ・かつ離れられずにずっと一人で暮らしてきたか,よく判らない.オトンはもっと恐ろしく破天荒でめちゃくちゃおかしな人であろう.
オカンの姉妹のおばちゃん達だってそうである.大勢のきら星のような俳優を使った登場人物に紛れてその存在感が薄かったが,この九州のおばちゃん達こそオカンの強烈なバックアップ軍団で,この4姉妹の破天荒さも物語の太い軸だったはずである.
その辺の印象が薄かったことが,物語の起伏を平板にしてしまったように思える.
樹木希林,オダギリジョーの演技はまずまず,松たか子はやはりうまい.
でも往年の松竹母もの映画(といっても知る人は少なかろう,三益愛子・有馬稲子等が出ておりました)みたいになってしまったのは残念.
主人公は自他共にマザコンを認めているが,そのマザコンは只のマザコンではあるまいに.
★★☆(★5個が満点)
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コメント
トラックバックありがとうございました。
食い足りない映画でしたが、作り手側が“まあ、こんなもんでいいだろう”みたいな姿勢でいるのが愉快になれませんでした。
違和感を持ったのは、主人公が九州出身だったこと。普通、九州の人間は親を“オカン、オトン”とは呼びません。まあ、原作者の家庭ではそうだったのかもしれないけど、何だか・・・・。
仰有るように、キャスティングは良かったですね。
それでは、今後とも宜しくお願いします。
投稿: 元・副会長 | 2007/05/07 22:07
TBありがとうございましたm(__)m
TVにはTVの、映画には映画の、それぞれがそれぞれに味わいがありました。どのキャストというより、やはり観る側が自分のオカンに想い出を重ねるところに、この映画(原作)の良さと共感があったのでしょうね^^
投稿: cyaz | 2007/05/08 17:31