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2007年7月に作成された記事

2007/07/29

独断的映画感想文:涙そうそう

日記:2007年7月某日
映画「涙そうそう」を見る.
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2006年.監督:土井裕泰.
妻夫木聡,長澤まさみ,麻生久美子,塚本高史,平良とみ,小泉今日子,船越英一郎.
ご注意,ネタバレあります.
沖縄本島の昼は市場で配達を,夜は飲食店従業員で働く洋太郎,今日はおばあのいる島から本島の高校に合格した妹カオルがフェリーでやってくるのだ.
母は洋太郎が幼い頃,ジャズマンと再婚,その連れ子カオルと洋太郎は兄妹として育つ.ところが父はいつか姿を消し,母は病死,兄妹はたった二人でおばあのいる島へ渡った.
母が死ぬとき,泣きそうになったら鼻をつまみなさいと言われ,その教えを守って泣くのを我慢して二人は成長した….
この様に始まるカオルと洋太郎の兄妹の物語.
洋太郎は店を持つため日夜働き,ようやく海を見晴らす丘の古い家を手に入れ,手作りで改装して開店にこぎ着ける.
ところがその土地を売った男は詐欺師だった.店は失われ後には借金が残る.しかし洋太郎は屈せずに,成績優秀なカオルを大学に入れるため,尚更頑張るのだった….
結論から言うとこの心優しい兄は,働き過ぎから急死するのだ.映画の結末は妹の涙で終わる.
この点でこの映画は惨憺たる世評を浴びているようである.
曰く,何も殺すことないじゃないか,泣かせるためだけの薄っぺらい映画,ショボい物語.
しかし「涙そうそう」という歌が森山良子の兄の急死をモチーフとして作られていることは周知の事実であり,この映画が「兄の急死」という展開になることは予め分かっているとも言える.その点ではいささか気の毒なな評価だとも思えるのだが.
後に深く残る映画ではないが,「泣かせる」映画としてはまずまずの出来.妻夫木・長澤の演技は見応えあり.個人的には,二人の間では僅かに長澤の勝ちと思える.
ところで,その不幸な生い立ちを知った上で洋太郎を騙し,兄妹に借金の山を残す詐欺師を演じた船越英一郎が,「友情出演」だとクレジットされているのは,いささかブラックな冗談ではないだろうか?
★★★(★5個が満点)
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2007/07/22

独断的映画感想文:ウィスキー

日記:2007年7月某日
映画「ウィスキー」を見る.
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2004年.監督:ファン・パブロ・レベージャ,パブロ・ストール.
アンドレ・パソス,ミレージャ・バスクアル,ホルヘ・ボラーニ.
ご注意!ネタバレあります.
ウルグァイのある街でくたびれた靴下製造工場を経営するハコボは初老のユダヤ人.しみったれた倹約家で十年一日のごとく工場に通い,靴下を売り暮らしている.
工場には庶務もこなす中年女性マルタと,女性従業員2人がいる.
ハコボは介護していた母親を看取ったのだが,1年たってようやく墓石を建立するということになり,ブラジルに住む弟エルマンが泊まりがけでやってくることになった.ハコボはマルタに,弟がいる間妻の役を演じてもらえないだろうかと頼む.
普段お互いに無駄口の一つもたたかない二人だが,マルタは二つ返事で引き受ける.やがてエルマンはやってきて二人のアパートに逗留するが,建立式の後彼は二人をブラジルへの小旅行に招待する.これもマルタが二つ返事で受け入れ,3人の旅行が始まる….
映画は地味でオーソドックス,分かり易いといえば分かり易い.
ハコボの変わらぬ日常は,3回延々と繰り返される朝の工場の開始風景で描かれる.カメラは固定で動きに乏しく,移動感や浮遊感のほとんどない構成.
そういう世界で暮らすハコボは,おもしろみのない仕事のこと以外はほとんど何も考えていない男,一方エルマンは兄と違って生活を楽しむ男らしく,人当たりも良い.
マルタも毎日淡々と同じ仕事を繰り返していた女性だが,エルマンが来てからはどんどん変わっていく.この対照的な兄弟と,その間でのマルタの変化が面白い.
とは言え,この映画は好き嫌いの分かれるところであろう.
映画に物語性や落ちを求める(僕のような)タイプの人には,この映画は結末を含めてちょっと物足りない.何故,どーしてということが後にどっさり残されるから.
監督は,後は観客の皆さんご自由にお考えください,というタイプらしい.
それにしても弟に妻がいると見せかけなければならない事情とは,何だろう(マルタは「事情はわかります」などと言っている).弟がくれた母親の介護の謝礼金を,ハコボが突然賭博に全額投じてしまうのは何故か.しかも(あのけちなハコボが)大当たりしたそのほとんど全額をマルタにやってしまうのは何故か(ハコボはマルタに何ら好意を持っていないのは明らかだ).
A型理科系の宿命として,こういうことが気になってしまう.
あと少し何かを足してくれればいいのに,という思いの残る映画.
★★★(★5個が満点)
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2007/07/19

独断的映画感想文:黄昏

日記:2007年7月某日
映画「黄昏」を見る.
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1981年.監督:マーク・ライデル.音楽:デイヴ・グルーシン.
ヘンリー・フォンダ,キャサリン・ヘプバーン,ジェーン・フォンダ.
ニューイングランドのゴールデン・ポンドと呼ばれる別荘地.引退した教授ノーマンと妻エセルがやってくる.ノーマンの80歳の誕生日をここで祝おうという夫妻,疎遠だった娘チェルシーが婚約者とその子供を連れてやってくるという.
ノーマンは物忘れが進み,別荘付近のなじみの道を見失うこともある.それでも毒舌家の人格は変わることがなく,心得たエセルとやり合いながら別荘暮らしを楽しんでいる.
やがてやってきたチェルシー達は,ノーマンの誕生日を共に祝った後,息子ビリーを預け,ヨーロッパに結婚旅行に旅立つ.ノーマンは70歳近く年の離れたビリーにとまどいながら,やがて釣りを共にすることによりうち解けていく….
親子の和解と人生の黄昏を描く秀作.
この映画のポイントはいくつかある.
一つは実人生でも不仲だったジェーンとヘンリーのフォンダ親子がこの映画で和解したということ(らしい).一つはヘンリー・フォンダとキャサリン・ヘプバーンがこの映画で共にオスカーを取ったということ.もう一つはベトナム戦争が終わり,アメリカが一息ついた時期にこの映画は撮られたということ.
ニューイングランドの夏から秋にかけた風景描写が美しい.
その中で親子の葛藤と和解が描かれる.
一人娘のチェルシーに対し,ノーマンは息子に対するような育て方をしたらしい.チェルシーはそれに応えるべく努力をしたが,常に父に認められなかったという意識を持った.そのことが大人になった今も,チェルシーを苦しめている.
しかし一夏を共に過ごして意気投合しているビリーとノーマンを見て,チェルシーの意識が徐々に変わっていくようだ.
そのあたりのヘンリー・フォンダの演技は素晴らしい.名演なのかそのまんまなのか判然としないほど.
この映画のもう一つのポイントは,エピローグにある.
チェルシー等が去り,二人になった後突然訪れる死の影.老夫婦がその死の影をどう受け入れるかも味わい深い.
年を取りやがては死に至る.その誰にもやってくる状況に改めて感動するのは,年のせいもあるかも知れない.
★★★★(★5個が満点)
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2007/07/15

独断的映画感想文:やわらかい生活

日記:2007年7月某日
映画「やわらかい生活」を見る.
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2005年.監督:廣木隆一.寺島しのぶ,豊川悦司,田口トモロヲ,妻夫木聡,大森南朋.
ヴァイヴレータ」と同じ監督・主演の映画.
主人公優子が,出会い系サイトで知った痴漢Kさんと「合意の上の痴漢」をしているシーンから,映画はスタート.この出会いで知った蒲田という街に優子は引っ越してくる.
優子は39歳,街を歩き写真を撮り,それを自分のサイトに掲載している.気随気ままに生きているようだが,彼女は躁鬱病,入退院を繰り返し薬も症状に応じ服用している.
彼女の発病の原因には,両親の阪神大震災での死,恋人の地下鉄サリン事件での死,親友の9/11での死があるらしい.
この街で彼女は学生時代の友人本間やバッハと再会する.そのうちに九州のいとこ祥一が,奥さんと別居して転がり込んでくる.折しも鬱の大発作を起こした彼女を,幼なじみの祥一は優しく世話してくれるのだったが….
この映画には,ちと分かり難いところがある.
彼女が39歳になって蒲田に来るまでの間には,実はキャリアウーマンとしてばりばりに上昇志向を持って働いていた(その気配は,てきぱきとした仕事ぶりや単刀直入な話しぶりに見て取れる)期間があり,躁鬱病の原因もその辺にあるらしい.
だが,映画の中ではその詳しい状況はほとんど触れられない.だから,その過負荷な会社生活との対比として現在のふらふらとした「やわらかい」生活がある,ということがなかなかぴんと来ない.
それでもこの映画が魅力的なのは,何と言っても主人公を演じる寺島しのぶと,いとこ祥一を演じる豊川悦司の素晴らしさにある.
街をすたすたと歩く優子,その歩きぶりやたたずまいは何と魅力的なことだろう.あるいは男と話すときの時に手玉に取るような,時に少女の様にあどけない表情や瞳の動き.
また豊川悦司の男らしく優しく育ち良く,時に年相応に辛辣な表情や話し方の魅力.
それを描写する長回しを多用するカメラも素敵である.
この映画ではそういう二人の演技を存分に楽しめる.
最期のシーン,一人終い風呂にいる彼女の耳に幻聴が響くシーンは印象的.
★★★☆(★5個が満点)
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2007/07/09

独断的映画感想文:白バラの祈り ゾフィー・ショル、最期の日々

日記:2007年7月某日
映画「白バラの祈り ゾフィー・ショル、最期の日々」を見る.
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2005年.監督:マルク・ローテムント.
ユリア・イェンチ,アレクサンダー・ヘルト,ファビアン・ヒンリヒス.
この映画を見ようと思ってから実際に見るまでの時間は長かった.この映画を見るのは,正直に言えばイヤだったのだ.
歴史的事実は明白で,映画は主人公の若すぎる死をもって終わるしかない.それを直視するのは耐え難いと思っていた,今日までは.
冒頭,ラジオから流れる甘いラブソングに耳を傾ける二人の少女,21歳のゾフィーと親友のギゼラだ.曲に合わせて歌う二人,目を見交わして微笑み合う.
やがて身支度をして部屋を出,別れる二人,ゾフィーはアトリエに向かう.そこでは謄写版印刷機で,白バラと名乗る反戦ビラを作っているのだ.
彼らは翌日,ミュンヘン大学でそのビラを撒くことにする.白昼のビラまきは危険だが,ゾフィーとその兄はやろうと主張する.
翌1943年2月18日,二人は大学でビラを撒くが,あえなく捕まり,ゲシュタポに引き渡される.その後の取り調べの後起訴され,22日には裁判で死刑を宣告,その数時間後には処刑されるゾフィー達の物語….
映画は緊張感溢れ,特にゲシュタポの尋問官モーアとのやりとりは目を離すことが出来ない.
ゾフィーとのやりとりの中でモーアは彼女の一命を助けようと思った様だ.調書の記述を曖昧にするから署名するようにと彼女に迫るが,ゾフィーはそれを拒絶する.モーアのいれてくれたコーヒーも,それが本当のコーヒーだと判った後は手をつけない.
あまりにも潔癖で打算を知らない彼女たちが,不憫にさえ思える.
白バラの組織にしても証拠となる品の隠し方さえ知らない,幼い組織だった.しかしその組織を足場にヒトラーの国家に命をかけ戦いを挑む.それが出来るのは何故だろうか.
映画の最後のシーンは長く記憶に残るだろう.
それは只ゾフィーが観客をじっと見詰めているシーンだが,彼女はその時ギロチンの上にいるのだ.
映画「ヒトラー~最後の12日間」のエピローグで,語り手の秘書のモデルとされたご本人が2002年にインタビューした映像があった.
自分は若く何も知らなかったのだからと自己弁明していたが,同い年にゾフィー・ショルがいたことを知り,目を見開いていれば判ったのだと思ったと述べている.
この映画のゾフィーショルの物語は,1990年代に東ドイツで発見された文献に基づいたものらしいが,ゾフィー・ショルとはドイツ人にとって戦後50年以上を経てなお,そういう存在だったのだ.
深く心を動かされる映画だった.主人公を演じたユリア・イェンチに敬礼.
★★★★☆(★5個が満点)
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独断的映画感想文:リトル・ミス・サンシャイン

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日記:2007年7月某日
映画「リトル・ミス・サンシャイン」を見る.
2006年.監督:ジョナサン・デイトン.
グレッグ・キニア,トニ・コレット,スティーヴ・カレル,アラン・アーキン,ポール・ダノ,アビゲイル・ブレスリン.
フーヴァー家はかなりピンチな一家.
父リチャードは「9段階成功法」なる勝ち組になる方法を講演して歩き,現在著作出版を画策しているが,その行方は危うい.にもかかわらず持論を家族や子供にまで公私構わず主張し皆を辟易とさせている.
その父グランパは薬と女を年甲斐もなく追い回し養老院を叩き出されて舞い戻った不良老人だが,孫娘には優しい.
息子ドウェーンはこの家族に愛想を尽かし,パイロットになる日まで口はきかないと誓いを立てたツァラトゥストラ愛読者.
孫娘オリーブは愛らしい小学生だが,「ミス・リトル・サンシャイン」出場を夢見て,グランパ振り付けのダンス特訓に明け暮れている.
そこに実の兄でゲイのプルースト研究家・フランクが自殺未遂を起こして転がり込んできた.
主婦たるシェリルは逆上寸前,そこにたまたまオリーブが全米大会出場権を獲得との連絡が入る.
金もない一家は,やむなく黄色のおんぼろバスに全員が乗り込んで,アリゾナのアルバカーキからカリフォルニアを目指す,というロード・ムービー.
一家には次々に,まるで試練の様にトラブルが襲いかかる.
おんぼろトラックはクラッチが壊れてしまい,やむなく一家は押しがけしては飛び乗るという離れ業でドライブを続けることになる.リチャードの出版話はドライブの途中でパーになったことが判明し,一家は破産のピンチに直面する.その他にも次から次にトラブルが舞い込み,旅の行く末は予断を許さない….
勝ち組でなければならないと主張するリチャードのこの一家は,これ以上はないほどの負け組である.
それでもピンチな状況でこの一家の支えとなるのは,当初は欠点としか思えないそれぞれの特徴なのだ.諦めずにがんばれるのは,リチャードが決して諦めるなと叱咤激励するからだ.ちび・デブ・眼鏡のオリーブが自信を失わずにダンスに挑戦できたのは,彼女の全てを認めて励まし続けたヤク中のグランパがいたからだ.
その結果この一家は,その独自の価値観の家族を再生することが出来たと言える.
映画のエネルギーとアビゲイル・プレスリンの愛らしさにやられた.
★★★★(★5個が満点)
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2007/07/05

独断的映画感想文:セルピコ

日記:2007年7月某日
映画「セルピコ」をみる.
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1973年.監督:シドニー・ルメット.アル・パチーノ.
警察学校を卒業したセルピコは念願のNYPD(ニューヨーク警察)の警官となる.しかし杓子定規に建前を守る一方規律はゆるみ熱意に欠ける警察の体制と,なりふり構わず捜査に没入するセルピコとは,次第に事ごとにぶつかるようになる.
やがて配属された分署で彼は封筒に入った現金を受け取った.同僚や上司に相談するが誰も取り合わない.警官達は店から賄賂を集金しては,同僚同士で分け合っていたのだ.
一人金の受け取りを拒否するセルピコは,次第に同僚から孤立し,やがて敵意を抱かれるようになる….
実在の人物に取材した映画だが,最後に捜査中銃撃され,重傷を負って担ぎ込まれるまで(映画はそのシーンから始まる)の戦いは,極めて印象的だ.
孤立し何時死に直面するか判らない日々の連続に,セルピコは肩を怒らせ攻撃的になり,背を丸めて歩く生活を送る.彼を愛している女性達でさえ,堪らずに彼の元を去っていく.その長い孤独な日々.
遂に腐敗の告発が認められ,金色バッジを得て査問会で証言を行うに至るが,映画は旅支度をして波止場で愛犬と出国を待つ彼の姿で終わる.
俳優としては,この映画は殆どアル・パチーノのワンマン映画と言って良い.この頃の若々しいアル・パチーノは好きである.目が澄んで,はにかみとか怯えとかいう青年特有の表情が魅力的だ.
「ゴッド・ファーザー」以降のアル・パチーノは次第に怪優あるいは怪演という言葉のふさわしい毒々しい演技に変わっていった様に思う.
★★★☆(★5個が満点)
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2007/07/03

独断的映画感想文:ブラック・ダリア

日記:2007年7月某日
映画「ブラック・ダリア」を見る.
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2006年.監督:ブライアン・デ・パルマ.
ジョシュ・ハートネット,アーロン・エッカート,スカーレット・ヨハンソン,ヒラリー・スワンク.
ジェームズ・エルロイの同名小説の映画化.小説は現実に起きた猟奇殺人事件をもとにしている.
同じロス市警の刑事,先輩のリーと後輩のバッキーは共に元ボクサー,警察予算獲得のためのチャリティー試合で「Mr.アイス」と「Mr.ファイア」として戦った二人はそれを機に親友となり,リーの同棲相手ケイと3人で行動を共にするようになる.
強盗と少女暴行を繰り返す凶悪犯を追っていた彼らの事件現場近くで,胴を切断され口を引き裂かれた女性の全裸惨殺死体が発見される.リーはこの猟奇事件に異常な執念を示して取り組むのだった.
被害者ベティの関係者としてやがて大富豪の娘マデリンが浮かび上がってくる.バッキーは男漁りで名高いこのマデリンと付き合うようになる….
事件の闇は深く,リーとバッキー,ケイとマデリンの互いの関係は一筋縄では行かない.
この映画の独特の色調,闇と光の使い方は嫌いではない.しかし,それにしても話が複雑すぎる.その複雑な話の解決編が,腐敗しきった変質的な人々の悪行に全て帰すというのは,腑に落ちない結論であった.
俳優ではスカーレット・ヨハンソンが良くない.この人はやはりアメリカの鈴木紗理奈ではないだろうか.ヒラリー・スワンクは良かった.このマデリンという人物の独特の美しさ・醜さを充分に表現していたと思う.
印象に残る映画だが,後味はあまり良くなかった.複雑な筋に引き回されたという感じだろうか.
★★★(★5個が満点)
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独断的映画感想文:ブラック・レイン

日記:2007年6月某日
映画「ブラック・レイン」を見る.
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1989年.監督:リドリー・スコット.
マイケル・ダグラス,高倉健,アンディ・ガルシア,松田優作,若山富三郎,内田裕也,安岡力也.
松田優作の遺作.
刑事ニックは,現場叩き上げの背広の官僚を嫌うやり手デカである.同僚のチャーリーと居たレストランで偶然日本人やくざを目撃する.
そのやくざ佐藤は,白昼公然と敵対組織のやくざを刺殺し逃亡したのだ.後を追って佐藤を取り押さえたニックは,チャーリーと共に佐藤を日本に護送することになる.
ところが空港で佐藤はまんまと待ち受けていた偽警官と共に逃亡し,ニック達は拳銃を取り上げられ,オブザーバーとして大阪府警の松本警部補と共に捜査状況を見守ることになる….
映画はこの2人のアメリカ人刑事が日本警察とぶつかりつつ,間に立つ松本と共に佐藤を追い詰めるその経過を追う.
今この映画を見ても,アメリカ映画が日本を舞台にする時の「日本を滑稽視している」などという感じは全く気にならない.そんなことはどうでも良い.
素手のアメリカ人刑事に悪夢のように日本やくざが襲いかかる舞台として,この80年代の大阪心斎橋や阪急梅田のたたずまいはまことにふさわしい.
その異形の空間から立ち上がる松田優作の迫力の何と素晴らしいことか.この俳優を失った喪失感を,改めて感じざるを得ない.
映画自体もテンポ良く緊張感ある仕上がりで,最後のまとめは調子が良すぎるが(違法捜査をしてマシンガンの乱射劇まで引き起こしたアメリカ人刑事が何で手のひらを返したように表彰されるのか),全体としては良い出来である.
この映画の思わぬ収穫は若いアンディ・ガルシアの魅力だろう.アンディ・ガルシアと高倉健のデュエットによる「ホワッド・アイ・セイ」の熱唱には,珍プレイ好プレイ賞を(どっちだ)捧げたい.
見て損はない映画.★★★★(★5個が満点)
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独断的映画感想文:ディパーテッド

日記:2007年6月某日
映画「ディパーテッド」を見る.
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2006年.監督:マーティン・スコセッシ.
レオナルド・デカプリオ,マット・デイモン,ジャック・ニコルソン,マーティン・シーン,アレック・ボールドウィン,マーク・ウォールバーグ.
リメイクものだが元の「インファナル・アフェア」は未見.
マサチューセッツ州ボストン,犯罪の多い南部地区出身のビリーは,警察学校卒業後アイルランド系のギャング・コステロを標的とした覆面捜査官に任命され,刑務所を経験した後,地区で麻薬の売人を始める.しばらくしてコステロの目に留まり,首尾良くその子分となる.
一方,幼い頃からコステロの庇護下で育ったコリンは,警察学校を優秀な成績で卒業,見事州警察に採用されコステロを標的とした特別捜査班に配属される.
お互いを知らぬまま二人は対照的な立場で隠密活動を続けるが,両組織とも内部にスパイがいることを嗅ぎつけ,組織内の鋭い追求が始まるのだった….
152分の長尺だが緊張感があって長さを感じない.
ただし脚本上整理のつかないところが幾つかある.
一つは最終的にコリンは何を目指していたのだろうかと言うことがよく判らない.あの結末は只の行きがかりだったのだろうか?そのままコリンは二重生活を続けるつもりだったのだろうか?
もう一つは,コリンとビリーが偶然同じ女医を愛するという展開なのだが,そのことにどれだけの意味があるのかが判らない.ドラマとしての必然性をあまり感じない.
デカプリオ,ニコルソンの演技は相変わらず素晴らしい.デカプリオに比べるとマット・デイモンはやや見劣りするか.「ボーン・スプレマシー」でのマットの方がよく似合っていたような気がする.
ところで最後の10分間の展開は議論百出のようだが,とにかく呆気にとられる結果となる.どんでん返しといえばその通りだが,僕にとってはあまりに後味が悪かった.殺戮と暴力のみが印象として残ってしまった.
★★★(★5個が満点)
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