« 独断的映画感想文:白バラの祈り ゾフィー・ショル、最期の日々 | トップページ | 独断的映画感想文:黄昏 »

2007/07/15

独断的映画感想文:やわらかい生活

日記:2007年7月某日
映画「やわらかい生活」を見る.
2_1
2005年.監督:廣木隆一.寺島しのぶ,豊川悦司,田口トモロヲ,妻夫木聡,大森南朋.
ヴァイヴレータ」と同じ監督・主演の映画.
主人公優子が,出会い系サイトで知った痴漢Kさんと「合意の上の痴漢」をしているシーンから,映画はスタート.この出会いで知った蒲田という街に優子は引っ越してくる.
優子は39歳,街を歩き写真を撮り,それを自分のサイトに掲載している.気随気ままに生きているようだが,彼女は躁鬱病,入退院を繰り返し薬も症状に応じ服用している.
彼女の発病の原因には,両親の阪神大震災での死,恋人の地下鉄サリン事件での死,親友の9/11での死があるらしい.
この街で彼女は学生時代の友人本間やバッハと再会する.そのうちに九州のいとこ祥一が,奥さんと別居して転がり込んでくる.折しも鬱の大発作を起こした彼女を,幼なじみの祥一は優しく世話してくれるのだったが….
この映画には,ちと分かり難いところがある.
彼女が39歳になって蒲田に来るまでの間には,実はキャリアウーマンとしてばりばりに上昇志向を持って働いていた(その気配は,てきぱきとした仕事ぶりや単刀直入な話しぶりに見て取れる)期間があり,躁鬱病の原因もその辺にあるらしい.
だが,映画の中ではその詳しい状況はほとんど触れられない.だから,その過負荷な会社生活との対比として現在のふらふらとした「やわらかい」生活がある,ということがなかなかぴんと来ない.
それでもこの映画が魅力的なのは,何と言っても主人公を演じる寺島しのぶと,いとこ祥一を演じる豊川悦司の素晴らしさにある.
街をすたすたと歩く優子,その歩きぶりやたたずまいは何と魅力的なことだろう.あるいは男と話すときの時に手玉に取るような,時に少女の様にあどけない表情や瞳の動き.
また豊川悦司の男らしく優しく育ち良く,時に年相応に辛辣な表情や話し方の魅力.
それを描写する長回しを多用するカメラも素敵である.
この映画ではそういう二人の演技を存分に楽しめる.
最期のシーン,一人終い風呂にいる彼女の耳に幻聴が響くシーンは印象的.
★★★☆(★5個が満点)
人気blogランキングへ


« 独断的映画感想文:白バラの祈り ゾフィー・ショル、最期の日々 | トップページ | 独断的映画感想文:黄昏 »

コメント

ほんやら堂さん、こんにちは^^

舞台が蒲田ということでうちのすぐ近所なので、
見慣れた風景もあり親近感も増しました。
映画の中で映っていた「緑の象」も探してきましたので
TBさせていただきました! 見てみて下さいね^^

投稿: cyaz | 2007/07/16 16:06

TBありがとう。
このふたりの演技はおっしゃるように出色だし、僕も、その掛け合いがとても楽しめました。

投稿: kimion20002000 | 2007/07/21 02:26

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 独断的映画感想文:やわらかい生活:

» 『やわらかい生活』 [京の昼寝〜♪]
それとな〜く幸せ ■監督 廣木隆一■脚本 荒井晴彦■原作 絲山秋子(「イッツ・オンリー・トーク」文藝春秋刊)■キャスト 寺島しのぶ、豊川悦司、松岡俊介、田口トモロヲ、妻夫木聡、柄本明、大森南朋□オフィシャルサイト  『やわらかい生活』 みんな孤独で弱いけど、やわらかな時間が互いの心の隙間を埋めていく…橘優子(寺島しのぶ)、35歳。 独身。一人暮らし。 一流大学卒で、一流企業の総合職。 バリバリのキャリアウーマン…だった。 しかし、仕事も、男も全て失い、どん底のまんま蒲田に引っ越した... [続きを読む]

受信: 2007/07/16 15:55

» 「緑の象」を見つけました〜 [京の昼寝〜♪]
 先日、キネカ大森で観た『やわらかい生活』に出てきた「緑の象」を探してきました 映画は蒲田を舞台に描かれており、見慣れた風景やお店も出てきたのですが、なかでも「Love KAMATA」というサイトを立ち上げた寺島しのぶ演じる主人公の橘優子が、デジカメ片手に地元蒲田の色んな場所を写真に撮っていたうちの1枚がこの「緑の象」です  映画をご覧になった方は気になっていたかもしれませんが、映画をご覧になっていない方もどうですか?   象に見えますか(笑) 『やわらかい生活』のオフィシャル... [続きを読む]

受信: 2007/07/16 16:04

» mini review 07040「やわらかい生活」★★★★★★★☆☆☆ [サーカスな日々]
カテゴリ : ドラマ 製作年 : 2005年 製作国 : 日本 時間 : 126分 公開日 : 2006-06-10〜 監督 : 廣木隆一 出演 : 寺島しのぶ 豊川悦司 松岡俊介 田口トモロヲ 妻夫木聡 大森南朋 柄本明 肉親や恋人、友人を失い、すべてに無気力になり、東京のとある街、蒲田に引越した橘優子・35歳。下町だが「枠」のないこの街は、今の彼女にとって、とても居心地がいい所だった。 続き 走り続けてきて、見落としてきた。小さなスナップショット... [続きを読む]

受信: 2007/07/20 20:56

» (今日の映画)やわらかい生活 [Kozmic Blues by TM]
やわらかい生活 (2005/日) It's Only Talk [続きを読む]

受信: 2007/08/07 09:08

« 独断的映画感想文:白バラの祈り ゾフィー・ショル、最期の日々 | トップページ | 独断的映画感想文:黄昏 »