« 独断的映画感想文:黄昏 | トップページ | 独断的映画感想文:涙そうそう »

2007/07/22

独断的映画感想文:ウィスキー

日記:2007年7月某日
映画「ウィスキー」を見る.
Photo_7
2004年.監督:ファン・パブロ・レベージャ,パブロ・ストール.
アンドレ・パソス,ミレージャ・バスクアル,ホルヘ・ボラーニ.
ご注意!ネタバレあります.
ウルグァイのある街でくたびれた靴下製造工場を経営するハコボは初老のユダヤ人.しみったれた倹約家で十年一日のごとく工場に通い,靴下を売り暮らしている.
工場には庶務もこなす中年女性マルタと,女性従業員2人がいる.
ハコボは介護していた母親を看取ったのだが,1年たってようやく墓石を建立するということになり,ブラジルに住む弟エルマンが泊まりがけでやってくることになった.ハコボはマルタに,弟がいる間妻の役を演じてもらえないだろうかと頼む.
普段お互いに無駄口の一つもたたかない二人だが,マルタは二つ返事で引き受ける.やがてエルマンはやってきて二人のアパートに逗留するが,建立式の後彼は二人をブラジルへの小旅行に招待する.これもマルタが二つ返事で受け入れ,3人の旅行が始まる….
映画は地味でオーソドックス,分かり易いといえば分かり易い.
ハコボの変わらぬ日常は,3回延々と繰り返される朝の工場の開始風景で描かれる.カメラは固定で動きに乏しく,移動感や浮遊感のほとんどない構成.
そういう世界で暮らすハコボは,おもしろみのない仕事のこと以外はほとんど何も考えていない男,一方エルマンは兄と違って生活を楽しむ男らしく,人当たりも良い.
マルタも毎日淡々と同じ仕事を繰り返していた女性だが,エルマンが来てからはどんどん変わっていく.この対照的な兄弟と,その間でのマルタの変化が面白い.
とは言え,この映画は好き嫌いの分かれるところであろう.
映画に物語性や落ちを求める(僕のような)タイプの人には,この映画は結末を含めてちょっと物足りない.何故,どーしてということが後にどっさり残されるから.
監督は,後は観客の皆さんご自由にお考えください,というタイプらしい.
それにしても弟に妻がいると見せかけなければならない事情とは,何だろう(マルタは「事情はわかります」などと言っている).弟がくれた母親の介護の謝礼金を,ハコボが突然賭博に全額投じてしまうのは何故か.しかも(あのけちなハコボが)大当たりしたそのほとんど全額をマルタにやってしまうのは何故か(ハコボはマルタに何ら好意を持っていないのは明らかだ).
A型理科系の宿命として,こういうことが気になってしまう.
あと少し何かを足してくれればいいのに,という思いの残る映画.
★★★(★5個が満点)
人気blogランキングへ


« 独断的映画感想文:黄昏 | トップページ | 独断的映画感想文:涙そうそう »

コメント

ほんやら堂さん TBありがとうございます。
僕もこの映画もう一つ物足りないと感じました。淡々としすぎていて面白くない。どうも無理に平凡な日常性を作り出そうとしている感じがするのです。日常を作りすぎた、そういうことでしょうか。

投稿: ゴブリン | 2007/07/23 01:12

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 独断的映画感想文:ウィスキー:

» ウィスキー [銀の森のゴブリン]
2004年 ウルグアイ・アルゼンチン・独・スペイン監督:フアン・パブロ・レベージ [続きを読む]

受信: 2007/07/23 00:42

» 「ウィスキー」 [元・副会長のCinema Days]
 2004年の東京国際映画祭でコンペのグランプリと主演女優賞を受賞したウルグアイ映画。  監督のフアン・パブロ・レベージャとパブロ・ストールは“南米のカウリスマキ”と言われているそうで、冴えない中年男女を主人公にしている点や徹底的にストイックな作劇には共通点がある。だが、カウリスマキ作品よりも上映時間は長く、それだけに登場人物の追い詰め方は堂に入っている。 {/ichigo/} {/onpu/}  結局、人間は見かけは同じでも中身は千差万別なのだ。下町で零細な靴下工場を経営するユダヤ人の主人公と... [続きを読む]

受信: 2007/07/26 20:36

» NO.116「ウィスキー」(ウルグアイ他/ファン・パブロ・レベージャ+パブロ・ストール監督) [サーカスな日々]
どこかなつかしい、退屈で不器用な、人間模様。 ブラジルとアルゼンチンに接した人口330万人強のウルグアイから日本初上陸の作品が送り込まれた。「ウィスキー」。カンヌ映画祭でオリジナル視点賞と国際批評家連盟賞、そして東京国際映画祭でもグランプリと主演女優賞に輝いた作品である。監督は、弱冠30歳の二人組み、ウルグアイ本国では映画はいままでに全部合わせても60本の製作本数しかないという。 父から残されたうらぶれた靴下工場を経営するのはハコボ(アンドレス・パソス)。喜怒哀楽をあまり出さず、スターターがたど... [続きを読む]

受信: 2007/08/01 22:32

« 独断的映画感想文:黄昏 | トップページ | 独断的映画感想文:涙そうそう »