独断的映画感想文:白バラの祈り ゾフィー・ショル、最期の日々
日記:2007年7月某日
映画「白バラの祈り ゾフィー・ショル、最期の日々」を見る.
2005年.監督:マルク・ローテムント.
ユリア・イェンチ,アレクサンダー・ヘルト,ファビアン・ヒンリヒス.
この映画を見ようと思ってから実際に見るまでの時間は長かった.この映画を見るのは,正直に言えばイヤだったのだ.
歴史的事実は明白で,映画は主人公の若すぎる死をもって終わるしかない.それを直視するのは耐え難いと思っていた,今日までは.
冒頭,ラジオから流れる甘いラブソングに耳を傾ける二人の少女,21歳のゾフィーと親友のギゼラだ.曲に合わせて歌う二人,目を見交わして微笑み合う.
やがて身支度をして部屋を出,別れる二人,ゾフィーはアトリエに向かう.そこでは謄写版印刷機で,白バラと名乗る反戦ビラを作っているのだ.
彼らは翌日,ミュンヘン大学でそのビラを撒くことにする.白昼のビラまきは危険だが,ゾフィーとその兄はやろうと主張する.
翌1943年2月18日,二人は大学でビラを撒くが,あえなく捕まり,ゲシュタポに引き渡される.その後の取り調べの後起訴され,22日には裁判で死刑を宣告,その数時間後には処刑されるゾフィー達の物語….
映画は緊張感溢れ,特にゲシュタポの尋問官モーアとのやりとりは目を離すことが出来ない.
ゾフィーとのやりとりの中でモーアは彼女の一命を助けようと思った様だ.調書の記述を曖昧にするから署名するようにと彼女に迫るが,ゾフィーはそれを拒絶する.モーアのいれてくれたコーヒーも,それが本当のコーヒーだと判った後は手をつけない.
あまりにも潔癖で打算を知らない彼女たちが,不憫にさえ思える.
白バラの組織にしても証拠となる品の隠し方さえ知らない,幼い組織だった.しかしその組織を足場にヒトラーの国家に命をかけ戦いを挑む.それが出来るのは何故だろうか.
映画の最後のシーンは長く記憶に残るだろう.
それは只ゾフィーが観客をじっと見詰めているシーンだが,彼女はその時ギロチンの上にいるのだ.
映画「ヒトラー~最後の12日間」のエピローグで,語り手の秘書のモデルとされたご本人が2002年にインタビューした映像があった.
自分は若く何も知らなかったのだからと自己弁明していたが,同い年にゾフィー・ショルがいたことを知り,目を見開いていれば判ったのだと思ったと述べている.
この映画のゾフィーショルの物語は,1990年代に東ドイツで発見された文献に基づいたものらしいが,ゾフィー・ショルとはドイツ人にとって戦後50年以上を経てなお,そういう存在だったのだ.
深く心を動かされる映画だった.主人公を演じたユリア・イェンチに敬礼.
★★★★☆(★5個が満点)
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コメント
こんにちわ、ほんやら堂さん♪♪♪
>この映画を見るのは,正直に言えばイヤだったのだ.
実はカゴメもでした。
最近、深刻な映画は気が重くって(苦笑)。歳のせいですかねぇ?
大人だと色んな言い訳を見つけて、
結局理想に殉じる事は出来なかったりするですが、
このゾフィーは頑ななまでに信念を貫きましたね。
でも、獄中で追い詰められた獣のように一声を放つ場面は胸を抉られるようでした。
投稿: カゴメ | 2007/07/16 15:55
はじめまして。
私、梶野と申します。
この度、「白バラの祈り」を舞台化する事になり、お知らせさせて頂きました。
私はヴィリー・グラフを演じます。
映画では冒頭のシーンだけでしたが舞台版ではみんなと共に奮闘します。
舞台版の今作品は学生の勇気ある行動が生々しく、命を賭けて信念を貫くさまが描かれていると思います。
舞台版も是非ご覧になってください。
詳細はこちらを下記をご覧下さい。
http://www.gekidanmingei.co.jp/whiterose.html
「梶野扱い」と伝えて頂くと一般料金6300円のところ5700円でご覧になれます。
宜しくお願い致します。
突然のメッセージで失礼致しました。
投稿: みのる | 2007/08/12 20:16